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3.仲直り

予告通り、ユキト君頑張ります。奔走というほど奔走してませんが許してください。

クレアちゃんの出番少ないです。ごめんなさい。


疲れた。

非常に疲れた。

一日中ツバサさんとイツキさんが喧嘩していて、

正直空気が終わっていた。

排気ガスマシマシいっちょ上がり、って感じだった。

二人とも拗ねていて、目も合わせず、互いの名前を出したら

一気に不機嫌になり、席替えで隣になった時も、今にも藁人形取り出して

五寸釘で叩きそうな形相だった。

(先生が調節したのか、ツバサさんとイツキさんが隣、俺とクレアさんが

 その後ろだった。)

一日中気まずい空気が流れてくるので疲れたし、何度も口論が始まりそうに

なっていたので、止めるのに必死だった。

入学初日で、ろくに授業もなかったのに、この疲労はなぜ……?


「ねえ、ユキト君。ちょっといいかな?」


放課後になったので寮に帰ろうと思っていたら、

クレアさんに声をかけられた。

少し困ったような表情をしていて、言わんとしていることが

すぐに分かった。絶対ツバサさんとイツキさんのことだ。


クラスの人がいなくなったのを見計らって、クレアさんが口を開いた。


「その、ツバサとイツキ君のことなんだけど。」


「あれ、どうやったらいいんだろうな。」


俺の言葉に、クレアさんが何度も頷く。

イツキさんはプライド高いし、ツバサさんは絶対に曲げない信念がある。

まさに水と油。決して相容れない二人。


「でも、これから一年間、お互い分かり合える立場にあるから、

 仲良くして欲しいと思うんだよね。」


そこなのだ。俺たちは、他の人と違って「友達」というものが

ろくに出来ない。いや、それは俺だけなのかもしれないが、

混血であるだけで溝ができるので、クレアさんが言っていることは正しい。


「それに、あの空気の間に毎日立たされるの、正直しんどいしな。」


俺の零した本音に、クレアさんが小さく苦笑した。

女子と話したのなんていつぶりだろうか。

教室で二人きりだし、少し緊張してしまう。


「あ、あのさ。嫌ならいいんだけど、私寮生じゃないから、

 共有スペースとかで、ツバサとイツキ君のことについての

 話し合いとか出来ないし………その………」


クレアさんが急に押し黙った。

俯いてしまうので顔が良く見えない。身長差のせいで尚更だ。

屈んでその顔を覗き込もうとすると、クレアさんが急に顔を上げた。

そのせいで、無駄に顔が近くなる。

あ、クレアさん、まつ毛長いんだな……。


「連絡先、交換しない⁈」


彼女の声は裏返っていた。顔を赤くしていて、よほど勇気を出したことが

窺えた。まあ、そりゃあ勇気いるだろう。混血だからって遠ざけられて、

連絡先交換する相手もいなかったし。いや俺だけなのかもしれないけど。


「いいよ。て言うか、ありがと。」


連絡先を交換して最初に思ったのが、初めて、家族以外と交換したなあって

事だったのが、凄くバカらしく思えて来た。


「じゃあ、私、お母さん待ってるし、帰るね!なんかあったらメールして!

 じゃあね!」


手を振って、彼女は走って教室を去って行った。

イツキさんとツバサさんの仲、取り持ちに行くか。

物凄く足が重かったのは、多分錯覚だと思う。




「なんで俺が、アイツに謝らなきゃいけないわけ?」


イツキさんが、コーヒーを啜りながら言った。

コーヒーは俺が淹れたものだ。何故か(多分マオ先生の仕業)

寮部屋が同じになったので、コーヒーで機嫌取りしながら和解を

勧めてみたのだけれど、あっけなく失敗に終わった。

イツキさんがこれだから、多分ツバサさんも謝る気ないだろうな、

と嫌な想像をして胃が痛くなった。


「人の事情も知らないで、ネチネチケチ付けてくる奴に、

 俺は謝りたくないね。絶対。」


「Tシャツ、許可取ってるのか?」


「当たり前だろ。」


パーカーは、寒さが苦手な人は着ていいことになっているので

公式に許可されているが(俺はケモミミを隠すためだけど)、

Tシャツはそうではない。

それに、ワイシャツでいいのだからTシャツの許可を取ることは

難しいし少ない。

なぜ、と聞くと、それを知りたかったらコーヒーを淹れる腕を上げろと

いなされた。そう甘くはないらしい。

しかし、許可をとっていたと言うことは、話はややこしい事になる。

ツバサさんはその事実を知らなかったから、彼女の主張は間違っていないし、

イツキさんは許可を取っているから間違っていない。

落ち度がない喧嘩は、どちらかが折れてはい終わり、と出来ないのだ。


「じゃあ、二人同時に謝ろう。イツキさんもツバサさんも悪くないなら、

 それしかないだろ。」


「面倒くせえ〜。ていうか和解しなくても俺はいいし。

 あとイツキさんって言う呼び方キモい。呼び捨てでいいから。」


かなり拗ねてしまっている。これは放っておいたらまずい。

絶対取り返しつかなくなる。


「ほら、行くぞ!」


「ユキトがジュース奢ってくれるなら行く。」


ニヒルに笑い、勝ちを確信したように飄々としている。

たかが仲直りに150円出せねえと思ってやがる。

でも、あのヤバすぎる空気から逃げ出せるなら、そんなの安い物だ。

人間関係作るのが苦手な俺にとって、あの雰囲気がどれだけ地獄か。


「奢るから行くぞ。」


イツキのTシャツの首根っこを掴み、引きずっていく。


「はあ?マジかよ!ちょ、ちょちょちょ、ちょっと待て!

 そこはやっぱりいいや、じゃないのか⁈」


「男に二言はないよな。」


イツキはプライドが高い。こういう風に煽ってやれば、

渋々ながらについてくるはずだ。

予想通り、怠そうにあくびしながら、後ろを着いてきた。

せめてもの嫌がらせか知らないが、共有スペースの自販機は

良いのがない、とか言って校舎裏の自販機にされたのがムカつく。


「何買うんだ?」


「え、1番高い奴だけど?160円の奴。」


屈託のない笑顔がムカつく。1発殴りたくなったが、

多分ここで殴ったらもっと関係が拗れるので我慢する。

てかコイツ、人をイラつかせる天才か?


自販機の前に着くと、先客がいた。女子生徒。

ボブヘアで、特徴的な椿の簪で、オッドアイ……オッドアイ?

ツバサさんだった。

水を買っていてツバサさんは、驚いたようで仰け反った。


「な、なんでここにアンタらが居んのよ!」


「あ、いや……。」


うまく答えられなかったのは、気まずかったからだ。

ツバサさんの目元が、赤く腫れていた事に気づいたから。

………泣いていたのだ。


「お前、なんで泣いて………」


イツキに注意されて気づいたのか、ツバサさんは着ていた

ジャージのフードを被って顔を隠した。


「………今日のことは、ごめん。」


先に謝ったのはツバサさんだった。

続いて謝ろうとしたイツキを制し、言葉を並べる。


「マオ先生から聞いた。Tシャツ、許可取ってたのに、

 口煩く注意してごめん。混血関連で苛ついてたから、

 イツキで解消しようとしてた。……ごめん、」


「あ、いや……。」


イツキは、モゴモゴと言葉を誤魔化す。

ツバサさんは謝らないと思っていたから、

多分何を言っていいか分からないのだと思う。


「俺も、皮肉ったりしてごめん。」


それだけはっきり言って、自分の財布で110円の水を買って逃亡した。

仲直りでき、た?

ツバサさんは、ふーっと大きくため息を吐き、

ペットボトルのキャップを開けて一気に半分以上飲んだ。


「ああ!もう!あんなにすぐ和解出来るなら泣かなけりゃ良かった!

 バッカみたいじゃん。ユキト、色々動いてくれたんでしょ。ありがと」


そういって、拳を突き出してくる。

困惑していると、「ん」といって拳を動かす。

こっちもグーを作って、こつんとぶつけると、満足げに笑った。

そのまま去ろうとするので、その背中に慌てて付け足す。


「あ、ツバサさん。また明日!」


言うと、ツバサさんは振り返った。


「さん要らない!また明日!」


ツバサとイツキは、相容れないと思っていたが、違った。

性格はどっちも根は良くて、自分の意思がはっきりしてる。

サイダーとコーラって感じだ。似てるけど全然違う。面白い二人。

あと、ツバサは風紀委員長だけど、優等生ではない。


いろいろ発見があった1日だ。

イツキに奢るつもりだったけどどっか行ったし、

自分で何か買うか。

と、自販機に向き直ったのだけど。


「俺、財布持って来んの忘れてる……」


イツキにバレたら、多分殺されるだろうと思った。


仲直りしましたね。

案外あっさりですが、まあこんなもんでしょう。

実はコレをあげる前に下書きがあるのですが、一切見てないんですよね。

もう下書きとは(哲学)って感じです。

1日に2本って、もうこんなペースで出来る気がしない。

私は、二日坊主です(←だめやん)


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