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エマはそうじま!  作者: ローズリリー
3/5

開かずのカーテン(前編)

初恋がさわやかだと、その後の恋愛もすくすくうまくいくと思いませんか?

大人になってこじらせるかどうかって、結局最初の恋の病のかかり方で決まる気がします。

ま、こじらせても治すことはできますよね!

   開かずのカーテン

「まあ琴美ちゃんおひさしぶり。さ、中へどうぞ。」

 よく晴れた午後。琴美は同じピアノ教室に通っていた、岩橋雅紀いわはしまさきの家を訪れた。雅紀の母はあいかわらずモデルのようにきれいだ。

「来てくれてうれしいわ。雅紀とお約束?」

「はい。ピアノ演奏会の招待状を持ってきたんです。メッセージを送ったら、雅紀君、今日塾はお休みだって言っていたので。」

「そうだったの。」

 雅紀の母に案内されてリビングに入ると、琴美はびっくりした。

 昼間だというのに、部屋のカーテンがすべて閉まっていたのだ。

(こんなお天気のいい日に、カーテンを閉めているなんてどうしたのかしら。バラのお庭が見える窓は、この家族のお気に入りのはずなのに。)

「琴ちゃん。」

 ふり返ると雅紀が立っていた。

「雅紀君。すごく背が伸びたね、びっくりしちゃった。」

 雅紀はふっとほほえんだ。

「ときどき高校生にまちがえられるよ。琴ちゃんも髪がのびたね。よく似合う。」

「……ありがと。」

 ほめられて、琴美はほおがかあっと熱くなった。

 一つ年上というだけじゃない。美人の母親似の雅紀は、小さい頃から大人びていてかっこいい。ピアノ教室では、生徒の女の子だけでなく、先生にもお母さんたちにも大人気だった。

「それで、今日はどうしたの?」

「牧村先生の演奏会で、私も弾かせてもらえることになったの。」

 琴美の夢はピアニストだ。発表会ではなく、プロの演奏会に出られるのは、夢に一歩近づいた気がしてうれしい。

「すごいな、琴ちゃんの初デビューだね。」

 雅紀は招待状を受けとると中をひらいた。

「来週だね。うん、もちろん聞きに行くよ。」

「ありがと、よかった。牧村先生もみんなも、きっと大よろこびするわ。」

「ぼくもみんなに会うの、楽しみだよ。あ、でも最近はぜんぜん弾いてないから、怒られちゃうかもしれないな。」

 雅紀は冗談っぽく言うと笑った。成績がいい雅紀は、今から大学受験に備えて塾に通い始め、去年ピアノ教室をやめたのだ。

「牧村先生、雅紀君に期待してたから。勉強の方はどう?」

 雅紀の顔からすっと笑顔がきえた。

「うん――。まあまあかな。」

(あれ? なんだか、へんな感じ……。)

「琴ちゃんはピアノがんばってるんだね。夢に向かって進んでて、えらいな。」

 こんどは琴美の顔がくもる。

「本当はね、不安でいっぱいなの。もし失敗したらと考えただけで手足が震えそう。本番が近づいているのに、練習に集中できないの。」

 それは誰にも言えない琴美の本音だった。

 牧村先生や両親にうちあけたら「そんな弱気でどうするの。」と、さらにプレッシャーをかけられるに決まっている。エマと司は親身にきいてくれるだろうけれど、きっと心配をかけてしまう。

「そっか。そういうの、わかるな。ぼくも大事な試験の前に、逃げだしたいくらい不安になることがあるよ。」

「えっ。」

 琴美はびっくりした。

「雅紀君が? 信じられない。だって発表会のときだってなんだって、いつも平然としてるのに。」

 なんでもできる雅紀は、つねに余裕があるのだと思っていた。

「そう見えるだけだよ。ぼくだって緊張くらいする。」

「そうだったの……。」

 人の心の中は、外から見ているだけではわからないんだな、と琴美は思った。

「琴ちゃんなら大丈夫だよ。本番でいい演奏がちゃんとできる。」

「だといいけど。自信ないの。」

「自信過剰のほうが危険だよ。足りないくらいでちょうどいいんじゃないかな。そうだ、ひさしぶりに一緒に弾かない?」

 雅紀は優しい。緊張でかたくなっていた琴美の心が、花がひらくようにほぐれていく。

「うん。」

 ピアノが置いてある部屋へ行くと、そこもカーテンがぴったり閉じられていた。

 琴美が思わずドアのところで止まると、雅紀がふりかえった。

「琴ちゃん?」

「どうしてカーテンを閉めているの?」

 雅紀は「ああ、そっか。」と笑った。

「先月くらいかな。ある朝起きたら、家中のカーテンが開かなくなってさ。レールがさびちゃってたんだ。ほら、ここ。」

 雅紀はカーテンをひっぱり、レールを見せた。

 琴美はぎょっとした。

「これ……。」

 溶けてかたまった金属のようなものが、レールとカーテンフックにべったりとついていた。銀色の『さび』はカーテンにまでしみ出していて、すべてがガチガチに固まっている。

「クリーニングを頼んだんだけど、やすりで削っても落ちないらしいんだ。レールごと取りかえるしかないんだって。そうなるとかなり大がかりな工事になるしね。カーテンもあきらめなきゃいけないから、なかなか決められないんだ。両親が結婚したときに、お母さんのおじいちゃんが贈ってくれた、大切なカーテンだから。」

 雅紀が生まれたあと、おじいちゃんは亡くなったそうだ。リビングには、優しい笑顔で雅紀を抱っこしているおじいちゃんとご両親の写真が飾ってある。岩橋家の跡取りの誕生を、誰よりもよろこんでいたそうだ。

「じゃ、この先ずっとカーテンを閉めっぱなしなの?」

「それはわからないけど、お母さんの気持ちを大事にしてほしいから。――それに空が見えなくなって、僕はちょうどいいんだ。」

 最後の方は小さな声だったので、琴美はよく聞きとれなかった。

「え、なに?」

「うん。何を弾こうか?」

 雅紀は棚の楽譜入れを探しはじめた。

「琴ちゃんの好きなショパンのワルツは? 確かこのあたりに楽譜が……。」

「あれ、飛行機はどうしたの?」

 雅紀は飛行機が大好きで、模型をグランドピアノの蓋に飾っていたのだ。それがなくなっている。

「ああ……そうじしてるときにうっかり落としてさ、壊れちゃったんだ。」

「そうなの? 残念ね。あれ、お気に入りだったのにね。」

「まあね。でも物は壊れるものだから。さ、座って。」

 並んで椅子に座ると、琴美は雅紀が大きくなったことを実感した。

 二人はピアノを弾き始めた。

 雅紀の長い腕が鍵盤の上をゆうゆうと移動する。

「なんだ。琴ちゃん、すっごく上手になってる。これなら心配いらないよ。」

 話しかけられて、琴美は一瞬気がそれた。

「あ。」

 うっかり雅紀の手に指をぶつけてしまった。

 そのとたん、火にさわったように手が熱くなった。

「あつっ――。」

「どうしたの? 大丈夫?」

 琴美がびくっと手を引っ込めたので、雅紀は驚いて手をのぞきこもうとした。

「なんでもないの、ぜんぜんへいき。やだな、失敗しちゃった。」

「ほめたばっかりなのに。琴ちゃんのそういうとこ、変わってないね。」

 雅紀があははと笑った。

「そうかも。」

 琴美も笑った。けれど手には、しびれるような感覚が残っていた。


     *


「恋よ。恋。それは恋ってやつだわ! まちがいないっ。」

 三人の秘密基地、トレーラーの中。エマは手にもったバターポップコーンを食べるのも忘れて、大きな声で断言した。

「あのなー賀田月。スナック菓子にぎりしめたまま恋とかさけんでも、ぜんぜん説得力ねーぞ。」

「え? だって『恋するときはびりびりびりーって感電するような衝撃が走る』って、伸吾ちゃんが言ってたよ。」

「知るか。そもそも緒川はそんなことを言いたいんじゃないと思うぜ。」

 半泣きの琴美は大きくうなずいた。

「それ以来、どうしてもピアノをちゃんと弾けないの。」

 エマは大きくうなずいた。

「わかるなー。琴美ちゃんはあふれる想いに胸がいっぱいで、ピアノが手につかなくなっちゃった、てことでしょ? うーん、わかる、わかるわあ……私もルパンのことを考えると、宿題が手につかなくなっちゃうもん。」

「いや、ぜんぜんちがう。賀田月のはやりたくないから集中できないだけだ。」

「そんなことないってば。めっちゃ、やる気あるよ。」

「あっそ。で、緒川はピアノが弾けないってどういうこと? 手がうまく動かないとか?」

「なんていうか、でたらめな音が鳴るの。」

「は?」

 エマと司は同時にきき返した。

「今までと同じように弾いているのに、ぜんぶ調子はずれの曲になるの。」

 エマと司は顔を見合わせた。どうにも信じられない。

琴美はとてもピアノが上手で、音楽の授業で先生の代わりに弾くことだってあるくらいなのだ。

「演奏会前で、ちょっと神経質になってるだけなんじゃない?」

「そうだよ。下手だって、緒川が思い込んでるだけだよ。」

「いいえ、気のせいなんかじゃないわ。」

 琴美はくびをふり、超高性能ICレコーダーを取り出してスイッチを押した。

「キラキラ星変奏曲よ。演奏会でこの曲を弾くの。」

 軽快で明るい音楽が流れ出し、エマが「ふん、ふん」とごきげんでリズムをとり始めたとたん、メロディが積み木をたおすようにガラガラっとくずれた。

 エマと司はおもわず座ったままずっこけてしまった。

 猫か子犬が鍵盤の上を暴れまわっているようにしか聞こえない。

「ひどいでしょ?」

 琴美はにぎりこぶしを膝にのせ、真っ赤になっている。

「いやっ、そんなさ、いうほどひどくない。な、賀田月。」

 司は助けを求めるようにエマに目配せし、エマも大きくうなずいた。

「うん、ぜんっぜん問題ないよ。星があっちこっちでまたたいてる雰囲気がすんごい出てるもん。なんていうかこう、宇宙のビッグバン大爆発で流れ星が乱れ飛んでる、って感じ?」

 エマの言葉に、司がなにかつっこみたそうな目をしたけれど、ぐっと飲み込んで「だよな。」と言った。

「……二人とも優しいのね。ムリしないで。」

 琴美はうつむいたままだ。

「パパの病院で手を診てもらったんだけど、なんともないって言われたわ。たぶん精神的なものだろうって。だけど本番はもうすぐだし、それどころか、このままずーっと治らなかったら、私……。」

 琴美の大きな目にじわっと涙がにじんだ。

「あああっ、ティッシュ、ティッシュ。」

 エマがいうのとほぼ同時に、司がサッと箱をとって琴美にさしだした。

「……ありがと。」

 琴美は涙をふいた。

「プレッシャーで身体がうまく動かなくなることは、一流のアスリートにだってよくあるんだ。ずっとこのままなんてことはないよ。」

「ほんとに? 司君。」

 琴美は鼻をすすりあげた。

 司は笑顔で「ああ。」と力強くうなずいた。

「そうだよ。サッカーだけがとりえの……あ、ちがうちがうっ。人生全力サッカー少年の司ちゃんが言うんだから、まちがいないよ。」

「おい賀田月、オレにへんなキャッチコピーつけるなっつーの。」

 司が不満そうに鼻をならすと、琴美は少し笑った。

「よかった、笑顔になったね。」

 エマと司はほっと胸をなでおろした。

「ね、これ飲んで。落ち着くでしょ。」

 エマはおみやげに持ってきたユニコーンシェークをすすめた。琴美はひと口飲むと「おいしい。」と言った。エマと司もそれぞれお気に入りのシェークをストローでずずーっと吸いこむ。

「それにしても、そのカーテンにくっついていた銀色のかたまりっていうのが、なんか気になるのよねえ。」

 エマはきみどり色に染まった口をひらいた。

「今カーテンはどうでもいいだろ。」

「でも司ちゃん。鉄さびってさ、ふつうは赤茶色じゃない?」

「あ、それはオレも引っかかった。ぱっと見、緒川はどう思った?」

「正直、ぎょっとしたわ。なんていうか、銀色スライムがかたまった、みたいな感じだったの。」

 エマは背すじがぞくっとした。

「ってことは、もしかして――。」

「天麻のしわざ?!」

 みなの声がそろった。

「あらっ、あなたたち、なかなかするどいじゃない。」

 ポンッという音とともに、三人の頭上に舞羽があらわれた。

「あ。舞羽、おかえり!」

「ただいま。」

 舞羽はふわりとテーブルの上に座った。

「フェアリー・クイーンの舞踏会はぶじに終わった?」

 エマが聞くと、舞羽は胸をはって大きくうなずいた。

「おかげさまでね。妖精界にデビューする今年の新人たちは、覚えがはやくて助かったわ。ドレスやステッキの手配もすべて順調だったしね。」

 舞羽は人間界でのできごとをフェアリー・キングに報告する役目の他に、新人妖精の教育係もしている。妖精の飛行ダンスや、マナーを教えるのが仕事なんだそうだ。

「琴美、手をみせてちょうだい。」

 琴美はうなずいて、おそるおそる手をさし出した。

「ふーん……なるほどね。」

 舞羽は虹色のステッキをさっと振りかざした。

「手が……!」

 琴美の手のひらが、銀粉をまぶしたようににぶく光った。

「琴美ちゃん、天麻に憑かれたの?!」

 エマは真っ青になった。こんなこわい思いは誰にもしてほしくないのだ。

 舞羽は「いいえ。」とくびをふった。

「たぶん琴美は、別のだれかに憑いた天麻の影響を受けているだけよ。」

「つまり天麻に憑かれてるのは、岩橋家の人間、てことか。」

 司のことばに、トレーラーの空気が重くなった。

 ということは岩橋家の問題が解決しないと、琴美の手ももとに戻らないのだ。

「残念だけど、そうなるわね。」

 琴美はさくらんぼみたいなくちびるをきゅっとかんだ。

「エマちゃん、司君。私、雅紀君一家を助けたい。協力してくれる?」

 自分のことより、まず雅紀たちのことを考えるところが優しい琴美らしい。

「もちろんよ。みんなでがんばりましょ!」

「ああ、オレたちがついてる。安心していいぜ。」

 二人の力強い声に、琴美は「ありがとう。」とうなずいた。

「ところで、天麻っていったいぜんたい何人いるの?」

 エマは舞羽に質問した。

 妖精の舞羽でさえエマたちに助けを頼んでいるのに、天麻はたった一人であちこちの人間にとりつくことができるのは不思議だ。

 舞羽は困ったように眉をよせ、ため息をついた。

「天麻は一人だけれど、何千、何億って存在するのよ。」

「なんだそれ?」

 司はくびをひねった。

「そうねえ。例えるなら、スライムとか粘土みたいなものって感じかしら。何個にもわけることができるし、また一つにくっつくこともできるの。」

 エマは天麻がスライムみたいにみゅいんとのびて、二人に分かれる姿を想像した。

 ブキミ過ぎる。

「それって、ちょっと気もち悪い……。」

 琴美も同じことを考えていたようだ。

「何万個にもわけたら、一つあたりの量は減るよな。そうしたら力も弱まるんじゃないの?」

「司、そこがやっかいなのよ。風邪のウィルスだって、たった一つでも感染するときはするでしょう? どんなに分かれても、一つ一つの力はぜんぜん変わらないのよ。」

「そういうことか。」

 三人はうーんとうなってしまった。

「天麻が何個になっても関係ないさ。オレたちはブキミな分身の術は使えないけど、手分けすることはできる。」

 司が言うと、エマと琴美もうなずいた。

「そうこなくちゃ。まず、天麻が岩橋家の誰に憑いているのか調べるのよ。私はこのことを、フェアリー・キングとクイーンに報告するわ。これ以上天麻の災いが強くならないよう、岩橋家一帯の結界を強くしてもらうの。おまじない程度にしか効かないし、一時しのぎだけど、ないよりはかなりマシよ。」

「戻ってきたばかりなのに、大変だわ。」

 琴美が言うと、舞羽はパチッとウインクをした。

「あらやだ、これが私の仕事なのよ。気にしないでちょうだい。」

「妖精なんだから、魔法とかテレパシーみたいなもので連絡できないの? パソコンやスマホはなくても、せめて電話くらいあればいいのに。」

「こっちの世界でも自由に魔法が使えるなら、あなたたちをハートすっきり隊に任命しないわ。妖精界と人間界は次元が違うから、魔法はかなり制限がかかるし。妖精界には電話なんてないから、こうやって行き来するほかに方法がないの。」

「へえ、妖精の魔法も万能ってわけじゃないんだな。」

 司が妙に感心したように言った。

「とにかく行ってくるわ。じゃあね!」

 舞羽は妖精界にトンボ帰りした。

 残されたエマたち三人はさっそく作戦会議を始めた。

「親が大事にしてる物なら、天麻が憑いているのは両親のどっちかの可能性が高いよな。緒川、もっとくわしい話をきいてこられる?」

 琴美はうなずいた。

「雅紀君のお父さんはお仕事であまりお家にいないから難しいわ。でもお母さんなら大丈夫よ。お家でフラワーアレンジメント教室の先生をしているの。演奏会で牧村先生にプレゼントするお花を作ってくださいってお願いをして、それとなく話をきいてみるわ。ただ雅紀君は毎日のように塾があって、夜遅くじゃないとお家にいないみたい。」

「わかった。そっちはオレと賀田月であたろう。」

「うん。でもどうやって? 私たちは雅紀君に会ったことないし……。」

 司はあごに手をあてて考えた。

「そうだな。雅紀さんが通ってる塾に行って、偶然のふりをして話しかけてみよう。例えば、この塾に入るかどうか迷ってるんだけど、授業の内容とか雰囲気とかはどうですか? とかなんとか、質問してみるとか。」

「あっそれいい! 司ちゃん、さえてるね。」

「まーな。」

 琴美は雅紀のお母さんに会いに行く約束をとりつけ、エマと司は雅紀が通う塾の入り口で、まちぶせをすることにした。


「司ちゃん司ちゃん、あれ! あれが雅紀君じゃない?」

 琴美に見せてもらった写真だけで、雅紀がわかるかどうか心配だったけれど、一目でわかった。

「だな。緒川の説明と背格好が一致してる。」

 琴美が「雅紀君はピアノ教室のアイドルだったの。」と言っていたように、雅紀はかなりのイケメンだ。サラサラヘアに、きりっとしているのに優しそうな目、いかにも優等生な雰囲気。現代版の王子様といった感じだ。

「よし行こう。」

「えっ、待って、いきなり?! なんか、かっこよすぎて話しかけにくい。学年だって上だし――。」

 直前でエマがためらうと、司はムッとしたように眉をあげた。

「は? そんな場合じゃねーじゃん。早くしないと帰っちゃうぞ。」

「だってさあ。」

「緒川の友達なんだから、きっといい人だよ。心配いらない。」

「う、うん。」

 なかば引きずられるようにしてエマは雅紀に話しかけた。

「こんにちは! この塾いいですか?!」

「えっ?」

 いきおいよく話しかけてきたエマに、雅紀は体を引いてたじろいだ。

「おいっ、もっと自然にしないと、あやしいだろ。」

 司がエマのわき腹をひじでこづいた。

「そんなのムリだよ! 自然にっていうのが一番難しいんだよ? だから、ちょっと待ってって言ったのにっ。」

「君たち、もしかしてくじらが丘中学校の子?」

 エマと司がひそひそ声でもめていると、雅紀が笑顔できいてくれた。

「はい。」

 司はさわやかに返事をした。

「やっぱり。その校章、友達がつけてるのと同じだから。」

 雅紀はエマがパーカーの胸元につけている校章をさした。くじらが丘中学校には制服がない。そのかわりに生徒はつねに校章をつけている。くじらの形をした校章は、他の中学校の生徒にも「かわいい」と人気で、ちょっと有名なのだ。

「いきなり失礼しました。オレたち塾を探しているんです。ここは評判がいいって、親にすすめられたので見学にきました。それで実際に通っている人にも、話をきいてみたかったんです。」

 司がきちんと要望を伝え、エマもくび振り人形みたいにブンブンうなずいた。

「なんだ、そういうことだったんだ。いいよ、ぼくでよければ。」

 ニッコリ微笑んだ顔がとってもステキで、エマは見とれてしまった。

 雅紀は二人を塾の中にある談話スペースに連れていってくれた。

 歩きながらエマは小声で司に話しかけた。

「やっぱり琴美ちゃん、ただの恋の病ってやつなんじゃない? こーんなにかっこいい男の子って、生まれて初めて見たもん。」

 ルパンは想像でしか会えないので、比べる対象から外した。

「あのなー、緒川の銀色になった手を確かめたじゃん。それはないよ。」

「あ、そっか。」

 雅紀のイケメンっぷりに、重要なことが吹っ飛んでしまった。

 誰かに恋をすると手が銀色になるのなら、ながらくルパンに憧れているエマは、全身銀色の宇宙人のようになっているだろう。

 三人は丸いテーブルをかこんで座り、自己紹介をした。

「で、聞きたいことって?」

「えっ?」

 エマは頭の中がまっしろになった。肝心の質問を何も考えていなかった。あせって司をみると、司はスラスラとしゃべりだした。

「はい。オレはサッカーをしていて、どんな形でもいいから将来の仕事にしたいんです。それには勉強も必要だから、サッカーをしながら塾に通えるかどうかが重要だと思って。それでここの授業のスピードとか、宿題の量なんかを知りたいんです。」

司が言うと、雅紀は「そっか。」とうなずいた。

「それは入るクラスやコースにもよるけど――両立できるかどうか、ってことなら難しい質問だな。」

「え、どうしてですか?」

 エマが聞くと、雅紀は困ったように目を伏せた。

「現実の状況が、自分の希望に必ず合うとは限らないから。二つは真逆で、どちらか選ばなければいけないことも、あるってことだよ。」

「はあ。」

 エマにはピンとこない。ようするに理想と現実はちがうってことかな? とくびをひねった。司は雅紀が答えるのをじっと待っている。

「でも、サッカーを続けることが許される環境にいるなら、その夢は何があっても手放すべきじゃないと思う。」

 雅紀のきれいな目がきらりと光った。

「つまり、自分次第ってことですか……。」

 司は雅紀の言葉をかみくだくように、ふんふんとうなずいた。

「うん。あいまいなことしか言えないけどさ、玉木君ならできそうだって、僕は思う。」

「はい。ありがとうございます。」

 司は嬉しそうに答えた。

 そんな司の横で、夢かあ、とエマは複雑な気持になった。

 琴美はピアニスト、司はサッカー。二人には夢があるのに、エマはなりたいものがまだ何も見つからない。

 おばあちゃんは、

「人と比べないで、エマちゃんのペースでしっかり探せばいいの。夢というのはね、何になるか、じゃないわ。人生で何をするか、何をしないか。それが大切なのよ。」

 と言うけれど、将来に向かってどんどん進んでいるみんなと一緒にいると、ときどきすごくあせる。

「雅紀君の夢ってなんですか?」

「僕の夢?」

 雅紀はぎくっとしたようにエマにきき返した。

「それは……決まってる。パパの会社を継ぐことだよ。そのために日本で大学を卒業してから、留学もしたいんだ。」

「留学?! すっごく、大変そう……。」

 日本語で勉強するだけでも精一杯だというのに、わざわざ外国へ行って勉強するなんてエマには考えられない。

「はっきりした夢があってうらやましいです。私はまだ、わからなくて。」

 エマが憧れのまなざしを向けると、雅紀は少し気まずそうに眉をよせた。

「そんなことないよ。」

「夢って、どうやって見つけるんですか?」

「人それぞれじゃないかな。しいていうなら、見つけるっていうより、『これにする』って決めるものだと思うよ。」

 雅紀はふいと目をそらした。きれいな横顔は少しいらだっているように見える。

(あれ? 雅紀くん、なんだか様子が変わったみたい……。)

 エマはなにか気にさわることを言ってしまったのかと、不安になった。

 そのとき、黒い詰襟の学生服を着た人が談話スペースを通りかかった。

「あれ? 雅紀君、まだ残ってたんだ。」

「あ、お兄さん。もう帰ります。」

「そう。今日やった公式、ちゃんと復習しとけよ。」

「はい。ありがとうございました。」

 雅紀は座ったままおじぎをした。

「あの人は誰ですか? 先生?」

 エマは雅紀に聞いた。制服を着ているから大学生ではないだろう。

「ううん、今の人は『お兄さん』だよ。この塾出身の高校生で、自習のてつだいとかをしてくれるんだ。」

「そうなんですか。」

「いいですね。サッカークラブでもOB(クラブの卒業生)がたまに来てくれることがあって、すごく勉強になります。」

「うん。みんな親切に教えてくれるよ。高校のこととかもきけるし、相談にのってくれるんだ。」

「そっかあ。じゃここに入ったら私も『お姉さん』にいろいろ質問できるかな。」

「お姉さん?」

 雅紀はきょとんとした顔になった。

「残念ながら『お姉さん』はいないんだ。相談役はさっきの『お兄さん』一人だけだよ。」

 雅紀は笑顔で言った。


「やっぱいい人だったじゃん。まっすぐでさ。」

 帰り道、エマと司は雅紀について話していた。

「将来の目標も決まってるしさ、特に悩んでるような感じもしなかった。雅紀さんの可能性は、ほぼなさそうだな。」

 司はエマにあわせてゆっくり自転車をこぎながら言った。

「うん……。」

「賀田月、なんか引っかかるの?」

 司はエマを横目で見た。

「あの塾、どうして『お姉さん』がいないのかなあ。」

数学の問題を教えてもらうならどっちでもいいけれど、進路や高校生活のことを聞くなら、女の子は断然『お姉さん』に聞きたい。

「なーんだ、そんなことか。単純に、帰りが遅くなって危ないからじゃねーの。」

「そっか。」

 そう言われるとそれが正解に思える。

「さびたカーテンって、雅紀さんのお母さんが大事にしてるんだよな。そしたらやっぱ、天麻に憑かれてるのはお母さんなんじゃないかな。明日緒川の方も聞いてみて、どうするか作戦立てようぜ。」

「うん。」


 次の日の放課後、エマはおばあちゃんのいるケアセンターに行った。部屋に行くと、おばあちゃんはうたた寝をしていた。

(お昼寝してる。)

 エマは足音をたてないように、しのび足でそーっと近づいた。

 ベッドの横の棚には、エマが選んだスニーカーが新品のままおいてある。

 おばあちゃんの骨はようやくくっついた。そろそろリハビリを始める頃だとお医者さんが言うので、買ってきたのだ。

(おばあちゃん、リハビリできるようになるのかな……。)

 エマの胸がじわりと痛んだ。

 スニーカーをプレゼントしたとき、おばあちゃんはとても喜んでくれた。

「はげみになるから、ここに飾っておくわ。」

(あのとき、おばあちゃんは『履く』とは言わなかったんだよね。)

 もしかしたらこのスニーカーは、おばあちゃんにとって重荷なのかもしれない。そう思ったら「リハビリをがんばって。」なんてとても言い出せない。ケガをして、一番つらいのはおばあちゃんなのだ。

「あら……エマちゃん、来てくれたのね。」

「あっ。ごめんなさい、起こしちゃった。」

「いいえ。お昼寝ばかりしてたらよくないから、目が覚めてよかったわ。今日はどんなことがあったの? 聞かせてちょうだい。」

 おばあちゃんはニコニコと笑った。

「うん!」

 家族のこと、学校のこと、司と琴美のこと。毎日のように来ているのに、話したいことはたくさんある。おばあちゃんは優しくうなずきながら、びっくりしたり、笑ったりして聞いてくれた。

 今日は雅紀のことも話した。司の相談に真剣に答えてくれた上に、王子様のようにステキなこと。

「まあ、そんなにかっこいい子なら、おばあちゃんも会ってみたいわ。」

「もうね、芸能人みたいなんだよ。それに海外留学が夢なんてすごいでしょ――あれ? 夢はお父さんの会社を継ぐことだっけ……。」

 しゃべりながらエマはくびをかしげた。雅紀のいらだった横顔が頭をよぎる。

「もしかして雅紀君は、自分の夢が重荷なのかな。」

「あら、どうして?」

「うーん。なんとなく。その話をしていたら、一瞬だけ、あんまり楽しそうじゃなかったから。」

 琴美も司も、自分の夢について話すときは生き生きしている。けれど、雅紀は遠い目をしていて、なんだか怒っているようにさえ感じた。

「そうねえ……。エマちゃんの話だと、雅紀君は『サッカーを続けることが、許されるのなら』って、司君に言っていたのよね。」

「うん。ぜったいに夢を手放すな、って。」

「ということは、もしかしたら雅紀君には、続けたくても続けられないことがあるのかもしれないわねえ。」

「えっ、そうなの?」

 エマは司の質問にまっすぐに答えていた雅紀を思い返した。

「でも、ウソをついてるような感じではなかったよ。」

 だからエマにはよくわからないのだ。

「そう……。もしかして雅紀君は、自分の気持ちを閉じ込めているのかしら。」

「閉じ込めるって、じゃ雅紀君は自分がやりたいことをあきらめて、やりたくないことをやってるってこと?」

「そうなるわね。」

「ええ?! 意味わかんない、なんでそんなことするの。」

「あら、わりとよくあることなのよ。ご両親とか、まわりの人たちの期待に応えようとして、自分をおさえたり、むりにがんばったりしてしまうの。きっと雅紀君はとても優しい子なのね。」

 ちょっと話をしただけで、エマも司も雅紀が大好きになった。

「うん。とってもいい人だよ。司ちゃんも言ってた。」

「みんなの気持ちを考えるのは大切なことよ。でもこの場合は、あまりいいことではないかもしれないわね。」

「どうして?」

「自分の本当の気持ちが、だんだんわからなくなってしまうことがあるのよ。『心』がどこにあるのか見失ってしまったら、いつか後悔するかもしれないわ。」

(それって、心がなくなっちゃうってこと――?!)

 エマは全身がゾクッとした。

「そんなの、いやだ。おばあちゃん、なんとかできないの?」

「そうね。雅紀君が自分でそのことに気づいて、変えていくしかないわね。彼の心の中のことだもの。」

「そっか……。」


 エマと琴美と司は秘密基地に集まって、調べたことを報告しあった。

「カーテンのことを聞いたら、雅紀君のママはかなり落ち込んでたわ。」

「やっぱ、天麻が憑いているのは雅紀さんのお母さんで決まりだな。そうなると、そのカーテンを取りかえるしかないよな。」

「でもそれができないから、困ってるのよね。」

 司はひじをついて、あごをのせた。

「じゃあさ、そのカーテンの下半分を切って、別の新しいものにくっつければ?」

「司君、折り紙じゃないんだから。」

 めずらしく琴美がつっこんだ。司は普段は細かいのに、ときどき大ざっぱになる。

「あ! そういうの、おばあちゃんがよくやってるよ。ドレスの汚れた部分を切って新しくワンピースを作ったり、古い着物で髪飾りとかバッグを作るの。」

「そうか、リメイクってことね! いいかもしれないわ。」

 琴美はぱっと顔を上げ、明るい声で言った。

「緒川、このことを雅紀さんの母さんに伝えられる?」

「ええ、もちろんよ。」

「よし、じゃあオレと賀田月はカーテンをなおしてくれる店を探そう。」

 司と琴美は立ち上がろうとした。

「ま――待って。」

 エマは思わず口をひらいていた。

「あのね、雅紀君の可能性も、まだあるんじゃないかな。」

「ええ?」

 司と琴美はそろってきき返した。

「それはないだろ。一緒に確かめたじゃん。」

「エマちゃん、どうしてそう思うの?」

「えっとね。それはその、自分にフタっていうか、雅紀君が優しいからっていうか、つまり――。」

 エマは昨日おばあちゃんと話したことを説明しようとしたが、頭の中でうまくまとまらなくなってしまった。

「つまり、なんとなくよ!」

 エマが言うと、司は大きなため息をついた。

「賀田月、それは根拠のないカンってやつだろ。そんな漠然とした理由じゃ動けない。あんまり時間がないんだぜ。」

「わかってるわ。でもだからこそ、まちがえられないでしょ?」

 演奏会はもう明後日なのだ。それまでに、琴美の手をもとに戻さなければいけない。

 司は腕を組んで考え込んだ。

「確かにそうだけどさ。緒川はどう思う?」

「そうね。雅紀君は自分のこと、あんまり話さないから……。」

「ねえ、司ちゃんと私で、もう一回雅紀君にきいてみない?」

「でも緒川にも話さないことを、オレたちがきき出すのはかなり難しいぜ。」

 確かにそうだ。全員だまり込んでしまった。

「そうだわ、『お兄さん』がいるじゃない!」

 エマは思わず大きな声を出した。

「雅紀君に兄弟はいないわよ。」

「ううん、そのお兄さんじゃないの。」

「あっ、塾の先輩か。いろいろ相談できるって言ってたっけ。賀田月、さえてるじゃん。シャーロック・ホームズと張り合えるぜ。」

「当然よ。ルパンの相棒として活躍する妄想を、毎日しているんだからね。このくらい朝飯前ってやつよ。」

 エマが胸をはると、司があきれたように目を細めた。

「その妄想ってやつ、オレたち以外にはあんま言わない方がいいぞ。やばいやつだと思われる。というかオレらもちょっと引いてるからな。」


 琴美はリメイク案を雅紀の母に伝え、司は伸吾に協力してもらい、カーテンをなおしてくれるお店を探すことにした。

 エマはふたたび塾に行った。授業中らしく廊下や階段には誰もいない。

(どーしよ。とりあえず、こないだの談話スペースで待ってようかな。またあの『お兄さん』が通るかもしれないし。)

 しばらくエマが談話スペースの椅子に座っていると、エマと同じ歳くらいの子たちがたくさんあらわれた。どうやらどこかのクラスで授業が終わったらしい。

「あれ、賀田月さんじゃない。」

 その中の一人の女子が話しかけてきた。くじらが丘中で、エマと同じクラスの近藤さんだった。まるいメガネが似合う、優しい子だ。

「あっ、近藤さん。この塾に通ってるの?」

「そうよ。もしかしてエマちゃんもここへ通い始めたの?」

(そうだ、近藤さんに『お兄さん』がどこにいるかきいてみよう。)

「ううん。この塾ってどんな感じかなあ、ってちょっと見学に来てみたの。ねえ、ここって『お兄さん』がいるんでしょ? お話きいてみたいんだけど、今どこにいるかわかる?」

「お兄さん? いないよ、私一人っ子なの。」

「ううん、近藤さんのお兄さんじゃなくて、この塾の卒業生の先輩で、自習をみてくれたり、いろいろ相談にのってくれるっていう『お兄さん』だよ。」

 エマが説明すると、近藤さんはとまどったようにくびをかしげた。

「えっと、そんな人この塾にはいないよ。」

「え?」

 今度はエマがくびをひねる番だ。

「でもここに通っている人が『お兄さん』がいるって――。」

「そんなの、聞いたことないわ。そもそも、塾で自習はしちゃいけない決まりになってるの。みてくれる先生がいないと、何かあったときに危ないからって。」

「そうなの?」

「賀田月さん、それって誰に聞いた話なの? ちゃんと案内してもらった方がいいと思うけど……。私、事務の先生にお願いしてあげようか?」

 話を聞きながら、エマの胸は嵐の前の木々のようにざわざわしていた。

「えーとよく思い出したら、かん違いしてたみたい。ほらそのう、私って早とちりなところあるから。」

 エマは笑ってごまかした。

「そうなの? ふふ、賀田月さんらしいね。じゃ私帰るね。今日は塾の宿題、たーくさん出ちゃったんだ。」

「うん。またね。」

 近藤さんと別れて一人になると、エマは急にこわくなった。

(それじゃ、あの高校生は、誰だったんだろう。)

 エマは『お兄さん』の顔を思い出そうとしたけれど、頭に浮かぶのはボタンまで黒い詰襟の学生服だけだ。

(まっ黒い服……。)

 雅紀が実際にはいない『お兄さん』がいるなんてウソをつくとは思えない。

(だとしたら、ウソをついているのは『お兄さん』だよね――。)

 エマは椅子を蹴るように立ち上がった。

(舞羽に会わなきゃ!)

 エマは家まで全速力で走った。


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