投資
♢13♢
──商会の目的?
そんなの決まってるヨ。世界征服。
要は全部欲しい。アレもコレも全部。
それには邪魔ネ、黒い民。
あぁ……ここだと貴族だったカ? とにかくアレヨ。
早速、一人消えてくれた。
そのおかげで新しい商売始められるネ。
ここの貴族もいなくなってくれると、尚嬉しい。
だから、協力してやるヨ?
手は出さない。だけど、それ以外は融通してやるから、オマエ結果だせ。
スメラギ? ワガママなのはみんな知ってるヨ。
イイトコ無しな女だけど、優秀だよ。上手くやってる。誰も気づいてない。
会長は言うまでもないネ。でも、ホットイタラ世界すら壊しそうだから注意は必要ネ。
誰か分からない? 黙って聞いとけヨ……。
これか? 仕入れてきた武器ネ。
オマエ魔法もダメ。近接戦闘もダメなんだから、武器使った方が早いネ。
これなんてどう? 最新式の銃ヨ。
無駄に魔力有るオマエ向き。
弾も要らないから一度買えばずっと使えるヨ?
撃ち出すのは魔力そのもの。
持ってる限り無限に魔力吸われるけど、そこはご愛嬌ネ。触ってなければ大丈夫ヨ。たぶん……。
発案がマナだから仕方ないネ。
頭はイイのに詰めが甘いから、出来上がるのはこんなんばかり。残念なヤツだヨ……。
その発想は素晴らしいと思う。
それを形にする力もある。ただ、いつも経費がかかり過ぎネ。
量産できないから採算も取れない。
アレに任せといたら破産するヨ……。
それを安く買い上げて、高く売る。
酷い? 商売ってそういうものヨ。
♢
世界は人がいて商売があって成り立ってる。
貴族はそれが分かってない。
望めば手に入るから仕方ない。
そんなモノだから価値が分からない。
苦労を知らないヤツは生きてる価値ないヨ。
ただ生きて、ただ死ぬはできない。
生きるのにはモノが必要で、モノを買うには金がいる。ここの貴族はそれしか分かってない。
人には意思があり、それが人なんだと分かってない。モノと人の区別がつかない。
国を発展させるのはいいヨ。
でもそれは、そこの人の為じゃなくてはならない。
自己満足では意味ないネ。
ワタシの知ってるヤツ言ってたヨ。
民が無ければ王はありえないって。
貴族は王様だけで世界が成り立ってると思ってる。
他は召使い、奴隷、人形。そう思ってるけど、どれも違う。
そんな事だから破滅するヨ。アイツらはもうお終いネ。
自分たちが一番だと思ってるヤツは知らない。分かってない……。
おかしいと気づいた時は、取り返しがつかないところまで行ってるヨ。
それはもう始まってる。
腐った実は地面に落ち、虫に喰われる。
虫けら扱いしてるヤツらにはちょうどいい最後ネ。
さて勇者様。オマエはどうする?
腐っても貴族は貴族。半端な力では対抗できないヨ。武器では足りないかもしれない……。
なら、逃げるか? 掴んだ腕を離して。
そんな真似はしないよね。
そうじゃなきゃ投資の意味ないネ。
♢
黒崎 飛鳥が去った店の中。
彼は気づかなかったが、ここはどこでもない。壁の内側のどこにでもあるしどこにもない。
普通には入れない場所。
置いてある品物はどれも何かを逸脱している。
この世界では手に入らないものもある。
店主である彼女は世界を巡り品物を集めた。半分趣味であり半分商売だ。
彼女も飛鳥と同じく、探し物をしにこの場所に訪れた。
そして、それを見つけた。
探し物は誰かのためだった。
店のカウンターには携帯電話が置かれている。別に欲しかったわけではない。
同じような物は既にあるし、第一ここでは使い道がない。
理由を付けて預かった。
珍しいから構造が知りたいとか、そんな理由を付けて。
代わりに少しばかりお小遣いを渡した。三人で遊ぶには十分な額だ。
一人になった彼女は語りかける。その携帯電話に。
「……久しぶりネ。会長と悪巧みもいいけど、あの男はやめといた方がいいと思うヨ?」
相手は答えない。
しかし、彼女は構わず言葉を続ける。
どうせ聞いているのだ。姿は見えなくても聞いているはずだ。
「何が気に入った? そんなヤツじゃなかったはずネ。ワタシは会長のこと上部しか知らない。あの男は何も語らないから……。知ってるのはトモエくらいだろ」
商会にいるのは面白そうだったから。
戦い以外の方法で貴族を絡めとる男が。それを後押しする女が。
一人で商売することは出来るが、商売とは人との繋がりだ。なら、繋がりはあった方がいい。
看板娘は頭が良いし、護衛隊長は腕が立つ。その二人の親同然の男女は怪物ときている。
こんなに愉快な人間たちが集まっている場合は稀だろう。
それに見てみたい。この場所のいく末を。
「悪巧みは上手くいってるみたいネ。トモエの目的は壁の内の統一かもしれないけど、会長とオマエは何が望みカ?」
それにも興味がある。
「ただ、惚れただけなんて言わないよネ?」
相手はやはり答えない。このまま無視を決め込むつもりのようだ。
「じゃあ、お節介はこのくらいにしておくヨ。サラサ……」
それで話しかけるのをやめた。
少しつつけば乗ってくると思っていたが、少しは成長したようだ。
飛鳥も可哀想ね。こんなのに憑かれて。
でも、それがある限りは大丈夫だ。企みのためなら手を貸すだろう。
しかし、飛鳥は気づいている気配がない……。
サラサならこの国の内情も容易に知り得るだろうに。つまり、飛鳥に接触していない。
──何のために?
考えても分からない。
ただ、携帯電話を見つめるしかできない。不意にそれが震え画面に文字が表示される。
「余計なお世話だ!」
一言。そう表示される。
……あまり成長してないみたいね。




