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 真実 3

♢9♢


「ちょっと付き合って?」


 スカーレットがそう言った直後、右手を掴まれ気づいたら暗闇の中にいた。


 今までベランダにいたはずなのに……。

 それに落下してる?


 浮遊感があり、次に落下している感じがする。

 それを繰り返している。


 浮遊感はあるが浮遊しているわけではなく、重力に従い普通に下に落ちる。

 その途中でまた違和感を感じ、最初に戻る。


 先ほどからある、この感じは何だ?


「どうしたの、高いところ苦手だった?」


 彼女は今なんて言った……。

 高いところ?

 つまり……この落ちる感じは間違いじゃない?


「聞いていい?」


「──なに?」


「……今、どんな状況?」


「後ろ見て」


 言われたので振り返ってみる。


 すると灯りが見えた。

 先ほどまでいたであろう街の灯りがだ。

 違和感の後に街から遠ざかる。


 少しずつ……確実に。


 これは、移動している? 何らかの方法で。


「……あんまり聞きたくないんだけど、これどうやってるの?」


「ちょっとずつ転移してる。長い距離を移動するともたないから、ちょっとずつね」


 ──聞かなければよかった!


 高所恐怖症というわけではない。

 けど、暗闇の中これは中々の恐怖だと思う。

 昼間なら……あんまり変わらないか。


「着いた」


 その一言ののち急に落下が止まらなくなった。


 ──えっ?

 このままだと地面に叩きつけられるんだけど……。


「どうしたの?」


「──これ着地は?」


「「えっ?!」」


 お互いが同じ声を発した。


「アナタ、魔法使えてたよね? 着地くらい……」


「──できない!」


 彼女はどうするつもりなんだ?

 自分だけは着地できるんだろう。なら、それをこっちにも使えないんだろうか。


「嘘……」


「君こそなんとかならないの?」


「浮遊の魔法なんて使えないし。それに村の中で魔法なんて使ったら……。二人分の重量を支えるのも私には無理だし。ええっと──」


 スカーレットは残り時間がわずかになりつつあるのに、この場面でテンパっている。

 彼女はあてにできない……。


 村の灯りがあり、もう地面が見える。

 すぐそこまで地上は近づいている。


 あと、数秒といったところかな?


 そう思うと不思議と冷静になれた。

 サウスが言っていたことを思い出す。


 自己強化をしていれば、と。

 そして、スカーレットの攻撃を躱した動きを思い出す。壁を蹴って飛び上がり着地した。

 自分でやったのではないが、自分の体だ。


 ──なら、出来ないはずがない!


「スカーレット。自分でなんとかするから」


「……それ、大丈夫なの?」


 要は勢を殺せばいいんだろ?

 落下途中に器用に魔法を使うなんて、今の自分ではできない。

 でも、紙を引きちぎり魔法陣だけを出現させることならできる。


 二枚分。空中二箇所に陣が現れる。

 斜めに設置したそれに足をかける。

 一枚目から二枚目に飛び移る。

 それにより激突は避けられた。


 このくらいの高さなら、怪我もないだろう……。


 スカーレットは先に下に着いていた。

 彼女はギリギリで、再び自分が着地できる高さまで転移し、あとはそのまま落下し普通に着地していた。


 ……あったじゃないか着地方法。

 僕にも同じようにしてくれれば良かったじゃないか。


「すごいすごい! 曲芸みたいだった!」


「……曲芸って。それより、ここは?」


「あの街から一番近い村よ」


 一番近い村でこれなのか?


 街と比べると明らかに見劣りする。

 灯りこそあるようだが、街灯がいくつかあるくらいだ。建物は古く材質も質素に思える。


「この村はマシな方。全部見て回ったけど、他は夜は灯りさえ無い場所もあった。この国は、あの街が全てを奪ってる。この国の人が暮らしてさえいない場所にお金をかけてる。そして……」


 彼女が言葉を切った時、誰かが近づいてくる気配を感じた。

 スカーレットも同じものを感じたのだろう。


「──誰! そこに居るのは!」


 村の外れに着地したはずなのに……。


「あんな派手な真似をしておいてよく言う。アスカ……どうしてここにいる? ソイツは誰だ?」


 獣のような耳。人とは違う鋭い爪。口元から見える牙。ロミオの横にいた従者の片方。


 獣人と呼ばれていた男。

 獣のような部分を持つこと以外は分からない。

 この男は何も喋らなかった。

 ただ、いただけだったから。


「……知り合い?」


 戦闘態勢のスカーレットが問う。


「……ロミオの横にいた男」


「貴族の? アナタなんでここにいるの?」


 そう……それがまず分からない。


「オレはここで生まれ育った。ここはオレの村だ。オレは答えた。次はオマエらが答える番だ」


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