真実 3
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「ちょっと付き合って?」
スカーレットがそう言った直後、右手を掴まれ気づいたら暗闇の中にいた。
今までベランダにいたはずなのに……。
それに落下してる?
浮遊感があり、次に落下している感じがする。
それを繰り返している。
浮遊感はあるが浮遊しているわけではなく、重力に従い普通に下に落ちる。
その途中でまた違和感を感じ、最初に戻る。
先ほどからある、この感じは何だ?
「どうしたの、高いところ苦手だった?」
彼女は今なんて言った……。
高いところ?
つまり……この落ちる感じは間違いじゃない?
「聞いていい?」
「──なに?」
「……今、どんな状況?」
「後ろ見て」
言われたので振り返ってみる。
すると灯りが見えた。
先ほどまでいたであろう街の灯りがだ。
違和感の後に街から遠ざかる。
少しずつ……確実に。
これは、移動している? 何らかの方法で。
「……あんまり聞きたくないんだけど、これどうやってるの?」
「ちょっとずつ転移してる。長い距離を移動するともたないから、ちょっとずつね」
──聞かなければよかった!
高所恐怖症というわけではない。
けど、暗闇の中これは中々の恐怖だと思う。
昼間なら……あんまり変わらないか。
「着いた」
その一言ののち急に落下が止まらなくなった。
──えっ?
このままだと地面に叩きつけられるんだけど……。
「どうしたの?」
「──これ着地は?」
「「えっ?!」」
お互いが同じ声を発した。
「アナタ、魔法使えてたよね? 着地くらい……」
「──できない!」
彼女はどうするつもりなんだ?
自分だけは着地できるんだろう。なら、それをこっちにも使えないんだろうか。
「嘘……」
「君こそなんとかならないの?」
「浮遊の魔法なんて使えないし。それに村の中で魔法なんて使ったら……。二人分の重量を支えるのも私には無理だし。ええっと──」
スカーレットは残り時間がわずかになりつつあるのに、この場面でテンパっている。
彼女はあてにできない……。
村の灯りがあり、もう地面が見える。
すぐそこまで地上は近づいている。
あと、数秒といったところかな?
そう思うと不思議と冷静になれた。
サウスが言っていたことを思い出す。
自己強化をしていれば、と。
そして、スカーレットの攻撃を躱した動きを思い出す。壁を蹴って飛び上がり着地した。
自分でやったのではないが、自分の体だ。
──なら、出来ないはずがない!
「スカーレット。自分でなんとかするから」
「……それ、大丈夫なの?」
要は勢を殺せばいいんだろ?
落下途中に器用に魔法を使うなんて、今の自分ではできない。
でも、紙を引きちぎり魔法陣だけを出現させることならできる。
二枚分。空中二箇所に陣が現れる。
斜めに設置したそれに足をかける。
一枚目から二枚目に飛び移る。
それにより激突は避けられた。
このくらいの高さなら、怪我もないだろう……。
スカーレットは先に下に着いていた。
彼女はギリギリで、再び自分が着地できる高さまで転移し、あとはそのまま落下し普通に着地していた。
……あったじゃないか着地方法。
僕にも同じようにしてくれれば良かったじゃないか。
「すごいすごい! 曲芸みたいだった!」
「……曲芸って。それより、ここは?」
「あの街から一番近い村よ」
一番近い村でこれなのか?
街と比べると明らかに見劣りする。
灯りこそあるようだが、街灯がいくつかあるくらいだ。建物は古く材質も質素に思える。
「この村はマシな方。全部見て回ったけど、他は夜は灯りさえ無い場所もあった。この国は、あの街が全てを奪ってる。この国の人が暮らしてさえいない場所にお金をかけてる。そして……」
彼女が言葉を切った時、誰かが近づいてくる気配を感じた。
スカーレットも同じものを感じたのだろう。
「──誰! そこに居るのは!」
村の外れに着地したはずなのに……。
「あんな派手な真似をしておいてよく言う。アスカ……どうしてここにいる? ソイツは誰だ?」
獣のような耳。人とは違う鋭い爪。口元から見える牙。ロミオの横にいた従者の片方。
獣人と呼ばれていた男。
獣のような部分を持つこと以外は分からない。
この男は何も喋らなかった。
ただ、いただけだったから。
「……知り合い?」
戦闘態勢のスカーレットが問う。
「……ロミオの横にいた男」
「貴族の? アナタなんでここにいるの?」
そう……それがまず分からない。
「オレはここで生まれ育った。ここはオレの村だ。オレは答えた。次はオマエらが答える番だ」




