異世界にて 2
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異世界の存在が公になった。
だけど、それは何の現実味も無い話であり、非日常でしかない。
誰もが騒いではいるが、その誰もが自分には関係ないと思っているはずだ。
……どこか違う場所の、違う国の出来事だと思っている。
かく言う僕もそうだった。
あの日。妙な封書が届くまでは……。
♢
ポストに入っていた自分宛の封筒。
差出人は無し。切手も貼っていない不自然な封筒。
おそらく家に直接届けられたんだろう。
無視して捨てようと思っていた。
興味があったわけでは無いし、何かの広告かあるいは詐欺か……。
そんなことを考えながら、家族の分も手紙を仕分けていた。
ふと時計に目をやると約束の時間が迫っている。
──急ぎ家を出なくては!
手短に支度を済ませ家を出る。
捨てようと思った封筒は、慌てていたからなのか、自分でも知らないうちにポケットに突っ込んでいたんだ。
慌てて家を出たわけだが、その目的地は病院。
理由はお見舞い。時間のある時は必ずこうしている。
……今年になってからだ。
今年になり何度となく通った病院。
しかし受付は顔パスとはいかず、きちんと手順を踏まないと面会はできない。
通い慣れたと言っていい。
広い病院内ではあるが、病室までは迷うことなくすんなり到達する。
目的の病室の前まで来たところで、すれ違う看護婦さんに声をかけられた。
「今日もお見舞いですか? 飛鳥さん」
見知った顔。佐倉さんという看護婦さんだ。
訪れるたびに顔を合わせるようになり、最近は少し話をするようになった。
「はい。学校は休みですから」
「受験の時期だものね。いいわね。高校生は……」
受験の日から数日間。学校は休みだった。
採点や合否のため校内に立ち入ることもできない。
したがって休み。学生ならではの休みだろう。
働いている人から見れば、羨ましいと思われても仕方ないと思う。
「……妹ちゃんは病室よ。私は仕事に戻ります……」
佐倉さんには、いつもならもう少し絡まれるのだが、今日はやけにあっさりしている……。
休みが欲しいのだろうか。
楽な仕事ではないだろうし……大変だよな。
去っていく後ろ姿は、私疲れています。
そう語っているようだった。
♢
日に日に体調は悪くなるばかりだ。
原因も分からない……そう聞いた。
医者である父が言っているのだから、間違いはないだろう……。
面会は中断された。
急変というのだろうか。
簡単に病室から追い出されてしまった。
……当然だな。
ただの学生である自分に何が出来るわけでもないのだから。いくら将来的に医者を志そうと、現状では何の力もない。
何一つ出来る事すら見つけられない。
無力な存在だ。そう諦め帰路についた。
自宅に戻り、部屋のベッドに倒れこむ。
どうすることも叶わない自分が嫌になる。
声をかけることすら叶わないのだから。
寝転んだ時、違和感を覚えた。
──ポケットに何か入ってる……あの封筒か。
体だけ起こして、開けることなく半分に破る。
もう半分に破ったところで、中身の一部が床に落ちた。拾い上げゴミ箱に向かうつもりだった。
ふと紙の一部分が目に入った。
そこには異世界。そう書かれていた。




