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 異世界にて

 皆様、お久しぶりでございます。

 一人目のお話はいかがだったでしょうか?


 ワタクシは大変満足いたしました。

 黒の駒が一つですが消えましたから。


 しかも! 実はもう一つ消えたというではありませんか! なんと喜ばしい。


 此度はそこに至るまでのお話。


 盤だけ見れば、ただ二つ駒が無くなっただけ。

 しかし、実際は物語がある。

 ワタクシには理解できませんが、それが重要だと思う人もいらっしゃるでしょう。


 さて、貴族の子という白なのか黒なのか曖昧な彼ら。

 どちらにも転びえる。故に難しい……。


 ……あなたならどうしますか?


♢1♢


 きらびやかな街並み。

 贅沢な装飾に彩られた街。


 それがムツの国だった。表向きは綺麗な国。


 行き交う人々は街と同じように着飾り、気品の良さをうかがわせる。

 ムツの国。その中で最も大きな街は多くの施設が存在する。


 ──娯楽。


 街にはあらゆる娯楽がひしめいている。

 カジノもあれば劇場もある。

 それも一つではなく多数のだ。


 食事に関しても現実世界と遜色ない。

 本当に異世界なのかと思うほどだ。


 街は夜でさえ明かりは消えず、都会にいるのと変わらない。


 都会と、日本と、僕たちの世界との違いは、ここは管理された場所だということだろう。


 貴族と呼ばれる支配者によって……。


 彼は階級を定めた。

 頂点を自らの父。オリジナルの貴族に。

 次にその息子である自分。

 次に半人半獣の彼ら。

 次に地位を持つ人間。


 ……残りはその他大勢。


 それは消費される人々。

 一人握りが何不自由なく暮らすために。

 その欲望を満たすために。


 消費される人々。


 ここは、そんな国であり世界なんだろう。

 そう思えばそれでお終い。

 自分たちの世界より明確に階級が理解できるだけ。


 それだけだったはずなのに……。


 どうして見過ごせなかった?

 僕は、どうして……ここに立っている。


 今いる場所は舞台。

 人が殺し合う舞台。

 何人もが命を落とす舞台。


 娯楽で、賭けで、ゲームで、生き死にを決める場所。


 舞台の下と上。

 見上げる自分。見下ろす彼。


 その視線は交わり彼は言う。


「──、(きみ)はそちら側の人間じゃない。今なら引き返すことができる。こちらに来て一緒に彼等の奮闘に期待しようじゃないか?」


 ……何が奮闘だ。

 ここいる人間に抗うすべなど無い。

 ただ、見世物になって死ぬだけだ。


 鋭い牙や爪を持つ、現実ではお目にかかることのない生き物。

 直ぐにでも一斉に飛びかかってくるのは明らかだ。


 ──これはゲームだ。


 最後まで生き延びる人間を当てるという、酷く悪趣味な遊び。


 一人だって助からない……そんなゲーム。

 彼等は金を賭けている。この狂った催しに。

 その為にわざわざ、この国に来たのだろう。


 この国では金さえあれば何でも買える。


 ……人でさえ。


 あらゆる物が売られている。


 ……意思など関係なく。


 吐き気がする……。

 何が貴族。何が支配者。


 お前たちは只の略奪者。

 売られていく人たち以下の価値しか無い。


 いや、価値など無い。そうだろう?


 世界には生きたくても生きられない人がいるのに。

 世界には死にたくなくても死んでしまう人がいるのに。


 ……人だと思うから情けをかける。情がわく。

 なら、こいつらは人じゃない。

 貴族の言う眷属であり、魔物と変わらない。


「彼は殺すな。使い道はいくらでもある。残念だよ。キミとは仲良くできると思っていたのに……」


 赤い瞳の彼は本気で言っている。

 彼は生まれた時から、特別な存在として育ってきたんだろう。


 これが常識であり日常なんだ。


 だから責めない……。

 でも、認めることも出来ない。


 行いを正すことは無理だろう。

 彼は人間として生きていくのは無理だ。


 ここに通う奴等も同じ。情けも容赦も必要無い。


 意識は黒く染まっていく……。


 幕が上がり、舞台は始まる。

 表は綺麗なこの国。裏側は醜く歪んだ場所。

 そこで始まる狂った催し。


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