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できそこないの勇者 『ツイノモノガタリ』  作者: KZ
 火神 優(かがみ ゆう)
79/337

 動き出す世界 8

♢53♢


 馬車に揺られマナは直ぐに眠ってしまった。

 相当、無理をしてたみたいだな。

 ずいぶんとユウとカレンを気に入ったようだ。


 明日と思っていた出発だが、そう悠長なことも言ってられなくなった……。

 まさか日も経たずに貴族がもう一人消えるとは。


 そろそろ連絡してもいい時間だろう。

 電話とまではいかなかったが、これはこれで使えるものだな。

 マナの改良により持ち運びができるくらいには小型化した。箱はあくまで外装。機械部分は中身だ。


 動力は魔法。多少は魔力は蓄えられるのか。


「なに……」


 連絡をよこせと言った本人は、眠そうな声だ。


「……お前、起きてるのか?」


「起きてるでしょ……バカなの?」


「不機嫌の理由は何だ?」


 機嫌の良くないときは、とことん最悪だからな。


「……決まってるでしょ。誰も相手してくれないからよ……」


 それは。毎夜付き合う物好きはいない。

 平気で朝まで付き合わされるからな。


 おまけにトモエは貴族。

 普通の人間は萎縮して酒の味など分からないだろうし、知ってる奴はそもそも付き合わない。どうしても一人なのだ。


「少しは控えようとは思わないのか?」


「そんな話なら切るわよ……」


 本当にそうするつもりだったのだろう。


「──それでは話が進まないのでやめてください!」


 しかし、横からそれを止められた。


「会長も構うのは遠慮してください。 ……もしかして移動中ですか?」


 よく気づいたものだ。

 そんなに音は良くないと思うのだが。


「ああ、そっちに向かってる」


「──本当! 帰ってきたら当然、ワタシに付き合うわよね?」


 正直に言えば遠慮したい。が、機嫌をとっておかなければならないからな……。


「一回くらいは付き合うよ……」


 受話器の向こうでトモエは嬉しそうにはしゃぐ。


「マナにスターク。二人も合わせれば三日は大丈夫ね」


「スタークはいないぞ。あいつは遅れてくる」


 スタークは、ユウとカレンに付けてきた。


「なら、二回は付き合って貰うわよ」


 仕方ない……か。


「分かったよ。それでムツを落とした奴はどうした?」


「今日は泊まっていただきました。会長が戻られるまで引き止めますか?」


 一悶着あったと思っていたが、何もなかったのか?


「……いや、トモエが話したならそれでいい。好きにさせておけ」


 別段興味は無い。

 障害にならなければそれでいい。


「……疑われないんですね。本当にやったのかと……」


「そのくらいは出来るだろう。ムツの国にいた奴は唯一の一般人。四家(よんけ)のどこにも属していないイレギュラー。出来損ないたちの中では異質な存在だ。捨て駒の中にあった未知数だからな」


 そう……ただ一人。魔法など関わりのない人間。


 何をしに、この異世界に来たのか。

 興味がないわけではないが、俺とは縁がないだろう。こいつとは出会わない。そんな気がするからだ。


 なら、この世界で誰に出会うのか……。


「それより、何故送られた先で協力者とやらを殺したのかの方が興味がある。何を聞いた? 教えてくれないか?」


 そして語られるムツの国での出来事。


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