動き出す世界 8
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馬車に揺られマナは直ぐに眠ってしまった。
相当、無理をしてたみたいだな。
ずいぶんとユウとカレンを気に入ったようだ。
明日と思っていた出発だが、そう悠長なことも言ってられなくなった……。
まさか日も経たずに貴族がもう一人消えるとは。
そろそろ連絡してもいい時間だろう。
電話とまではいかなかったが、これはこれで使えるものだな。
マナの改良により持ち運びができるくらいには小型化した。箱はあくまで外装。機械部分は中身だ。
動力は魔法。多少は魔力は蓄えられるのか。
「なに……」
連絡をよこせと言った本人は、眠そうな声だ。
「……お前、起きてるのか?」
「起きてるでしょ……バカなの?」
「不機嫌の理由は何だ?」
機嫌の良くないときは、とことん最悪だからな。
「……決まってるでしょ。誰も相手してくれないからよ……」
それは。毎夜付き合う物好きはいない。
平気で朝まで付き合わされるからな。
おまけにトモエは貴族。
普通の人間は萎縮して酒の味など分からないだろうし、知ってる奴はそもそも付き合わない。どうしても一人なのだ。
「少しは控えようとは思わないのか?」
「そんな話なら切るわよ……」
本当にそうするつもりだったのだろう。
「──それでは話が進まないのでやめてください!」
しかし、横からそれを止められた。
「会長も構うのは遠慮してください。 ……もしかして移動中ですか?」
よく気づいたものだ。
そんなに音は良くないと思うのだが。
「ああ、そっちに向かってる」
「──本当! 帰ってきたら当然、ワタシに付き合うわよね?」
正直に言えば遠慮したい。が、機嫌をとっておかなければならないからな……。
「一回くらいは付き合うよ……」
受話器の向こうでトモエは嬉しそうにはしゃぐ。
「マナにスターク。二人も合わせれば三日は大丈夫ね」
「スタークはいないぞ。あいつは遅れてくる」
スタークは、ユウとカレンに付けてきた。
「なら、二回は付き合って貰うわよ」
仕方ない……か。
「分かったよ。それでムツを落とした奴はどうした?」
「今日は泊まっていただきました。会長が戻られるまで引き止めますか?」
一悶着あったと思っていたが、何もなかったのか?
「……いや、トモエが話したならそれでいい。好きにさせておけ」
別段興味は無い。
障害にならなければそれでいい。
「……疑われないんですね。本当にやったのかと……」
「そのくらいは出来るだろう。ムツの国にいた奴は唯一の一般人。四家のどこにも属していないイレギュラー。出来損ないたちの中では異質な存在だ。捨て駒の中にあった未知数だからな」
そう……ただ一人。魔法など関わりのない人間。
何をしに、この異世界に来たのか。
興味がないわけではないが、俺とは縁がないだろう。こいつとは出会わない。そんな気がするからだ。
なら、この世界で誰に出会うのか……。
「それより、何故送られた先で協力者とやらを殺したのかの方が興味がある。何を聞いた? 教えてくれないか?」
そして語られるムツの国での出来事。




