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できそこないの勇者 『ツイノモノガタリ』  作者: KZ
 火神 優(かがみ ゆう)
75/337

 動き出す世界 4

♢50♢


 父と母には話をした。

 彼女から聞いたことを全部。


 その上で私のしたいことを伝えた。

 このムサシの国の外を見に行きたいと。


 今は、この日本と呼ばれる世界を。

 やがては、壁の向こうの世界を。

 そして……私の生まれた世界を。


 いつかは、そんな日が来ると思っていたと父は言った。母はその日が来ないで欲しかったと言った。


 この場所は私にとって大事な場所に違いはない。でも、これは私が決めたことだ。


 ううん、決まっていたのかもしれない。

 君と出会った時から……。


 私は彼の絶望を知った。

 それでも戦う彼の力になりたいと思った。

 彼の側面であった、もう一人の彼。

 最後は自身に討たれた彼。


 素直に口にすれば、違う展開もあったのではないのか? そう考えてしまう。


 でも、それしか選べなかったのだろう……。

 彼は素直じゃなかったから。


 託された。二人から。彼を思う二人から。

 その思いを何も口にしなかった二人から。


 なら、まずはそれをちゃんと繋げる。

 どちらにせよこの世界を救わなければ、私のしたいことは最初で終わってしまう。


 だから自分のためだ。

 そのために彼と行こう。


 同じ道を行くのなら、一人より二人の方がいいに決まってる。

 そのためには、まずこのムサシの国のことを。


 そう決意を秘め私は扉をノックした。


 ♢


 間違いなく、ノックの音は聞こえていると思うんだけど?


 ……応答がない。


 ドアノブに手をかけ開けてみるべきか逡巡する。

 すると、中から話声が聞こえることに気づいた。


 内容までは分からないが、男の人が怒鳴っているようだった。


 まさか先客がいるとは思わなかった。

 街の人はスメラギという名前に萎縮してしまって、誰も会長に近づこうとしない。


 その人に、こんなに強くものをいう人がいるのか?


 どうしようか迷っていると、見知った顔が通路を曲がってきた。相手は私に気づき近寄ってくる。


「ちょうどいいところに来たな。悪いんだが、コレ動かしてみてくれないか?」


 そうスタークは両手に抱えている箱のような物を、こちらに突き出す。


 ……なんだろう、これ?


 動かすといっても、どうすればいいのか分からない。


「これ、なんなの?」


「通信機だ。ぶっ壊れたのをマナが何とか修理したんだが、本人がどっか行っちまって……」


 ……ああ、またなのか。


 素直な感想だった。

 ちょこちょこサボる。いつのまにかいなくなる。

 そんな感じで、あの人はよく怒られているようだった。


「どうすればいいの?」


 でも、なんとなく今どこにいるのか分かる気がする。きっと彼のところに行ったのだ。


「魔力を流してくれりゃあいい。式は全部組み込まれてる。元の大きさの半分くらいになったんだぜ? これでもな」


 それは何というか……。

 持ち運べる大きさになったのは凄いのではないだろうか?


 魔法陣が組み込まれてるなら、触れるだけ。

 どのくらいの量を必要とするのか分からないから、少しずつ魔力を流し込む。


 側面に刻まれた陣が浮かび上がる。


「──動いた。これでどうするの?」


「そのまま続けてくれ。ちょっと持ってろ」


 スタークはそう言ってどこかに行ってしまう。


「ちょっと、どうするのよ。これ……」


 独り言になってしまった。

 直ぐに戻ってくるのだろうか?

 遊びに来たわけじゃないんだけど。


 背後からドアの開く音がした。

 そこから出てきたのは……。


 騎士だった。それも砦を預かる地位の騎士。

 貴族に傷をつけることができた人間。


 怒鳴っていたのはこの人だ。

 でも、部屋から出てきた顔は嬉しそうだった。


「おや、君は。ああ君も、カイ……スメラギ殿に用事か? 長々と話してしまった。悪かったな」


 私は会釈し疑問に思う。

 今、なんと言いかけたのだろう。と?


 スメラギは貴族の名。ゼロは私の知る彼の名。

 ……なら今のは?


 会長というのを言い直したのか?

 別にそう呼ぶ人がいるのだから、会長と呼んでも問題ないと思うんだけど。気にしすぎだろうか?


「私の要件は済んだ。どうぞ」


 そう扉を開けたままにしてくれる。

 両手がふさがっていることへの配慮だろう。


「ありがとうございます」


 お礼を言い私は部屋の中へ足を踏み入れた。


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