動き出す世界 4
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父と母には話をした。
彼女から聞いたことを全部。
その上で私のしたいことを伝えた。
このムサシの国の外を見に行きたいと。
今は、この日本と呼ばれる世界を。
やがては、壁の向こうの世界を。
そして……私の生まれた世界を。
いつかは、そんな日が来ると思っていたと父は言った。母はその日が来ないで欲しかったと言った。
この場所は私にとって大事な場所に違いはない。でも、これは私が決めたことだ。
ううん、決まっていたのかもしれない。
君と出会った時から……。
私は彼の絶望を知った。
それでも戦う彼の力になりたいと思った。
彼の側面であった、もう一人の彼。
最後は自身に討たれた彼。
素直に口にすれば、違う展開もあったのではないのか? そう考えてしまう。
でも、それしか選べなかったのだろう……。
彼は素直じゃなかったから。
託された。二人から。彼を思う二人から。
その思いを何も口にしなかった二人から。
なら、まずはそれをちゃんと繋げる。
どちらにせよこの世界を救わなければ、私のしたいことは最初で終わってしまう。
だから自分のためだ。
そのために彼と行こう。
同じ道を行くのなら、一人より二人の方がいいに決まってる。
そのためには、まずこのムサシの国のことを。
そう決意を秘め私は扉をノックした。
♢
間違いなく、ノックの音は聞こえていると思うんだけど?
……応答がない。
ドアノブに手をかけ開けてみるべきか逡巡する。
すると、中から話声が聞こえることに気づいた。
内容までは分からないが、男の人が怒鳴っているようだった。
まさか先客がいるとは思わなかった。
街の人はスメラギという名前に萎縮してしまって、誰も会長に近づこうとしない。
その人に、こんなに強くものをいう人がいるのか?
どうしようか迷っていると、見知った顔が通路を曲がってきた。相手は私に気づき近寄ってくる。
「ちょうどいいところに来たな。悪いんだが、コレ動かしてみてくれないか?」
そうスタークは両手に抱えている箱のような物を、こちらに突き出す。
……なんだろう、これ?
動かすといっても、どうすればいいのか分からない。
「これ、なんなの?」
「通信機だ。ぶっ壊れたのをマナが何とか修理したんだが、本人がどっか行っちまって……」
……ああ、またなのか。
素直な感想だった。
ちょこちょこサボる。いつのまにかいなくなる。
そんな感じで、あの人はよく怒られているようだった。
「どうすればいいの?」
でも、なんとなく今どこにいるのか分かる気がする。きっと彼のところに行ったのだ。
「魔力を流してくれりゃあいい。式は全部組み込まれてる。元の大きさの半分くらいになったんだぜ? これでもな」
それは何というか……。
持ち運べる大きさになったのは凄いのではないだろうか?
魔法陣が組み込まれてるなら、触れるだけ。
どのくらいの量を必要とするのか分からないから、少しずつ魔力を流し込む。
側面に刻まれた陣が浮かび上がる。
「──動いた。これでどうするの?」
「そのまま続けてくれ。ちょっと持ってろ」
スタークはそう言ってどこかに行ってしまう。
「ちょっと、どうするのよ。これ……」
独り言になってしまった。
直ぐに戻ってくるのだろうか?
遊びに来たわけじゃないんだけど。
背後からドアの開く音がした。
そこから出てきたのは……。
騎士だった。それも砦を預かる地位の騎士。
貴族に傷をつけることができた人間。
怒鳴っていたのはこの人だ。
でも、部屋から出てきた顔は嬉しそうだった。
「おや、君は。ああ君も、カイ……スメラギ殿に用事か? 長々と話してしまった。悪かったな」
私は会釈し疑問に思う。
今、なんと言いかけたのだろう。と?
スメラギは貴族の名。ゼロは私の知る彼の名。
……なら今のは?
会長というのを言い直したのか?
別にそう呼ぶ人がいるのだから、会長と呼んでも問題ないと思うんだけど。気にしすぎだろうか?
「私の要件は済んだ。どうぞ」
そう扉を開けたままにしてくれる。
両手がふさがっていることへの配慮だろう。
「ありがとうございます」
お礼を言い私は部屋の中へ足を踏み入れた。




