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できそこないの勇者 『ツイノモノガタリ』  作者: KZ
 火神 優(かがみ ゆう)
72/337

 動き出す世界

♢47♢


「終わったな……。最後は呆気なかったな。カレンの魔法様々だな。本当にありがとう」


 素直に感謝を述べる。

 もう立ってられず、俺は瓦礫を背に座り込んでいる。


 治癒されたというには手荒で正直かなりしんどい。

 そんな中、俺より重症であろう男は平気な顔でやってきた。


「──よう。お姫様はどうしたんだ?」


 スタークの言葉に直ぐには答えられず、カレンと顔を見合わせる。

 スタークの言う、お姫様ことサラサは大して話もせずにいなくなってしまった。


 あいつにも、ありがとうと伝えたかった……。


 一番の功労者はサラサだろう。

 あいつは結局、あの後一人も死なさずに最後まで戦わせた。簡単に全滅だって有り得たのに……。


「いなくなっちゃった。あれは相当怒ってたかも」


「だな。カレンが謝っても聞く耳を持たない感じだったし」


 でも……重要なことを教えてくれた。


 整理が追いつかないだろうから、俺から話すつもりはない。何よりカレンにとって重要な話だ。

 他人がどうこう口を挟むべきじゃない。


「そうか。俺も礼の一つも伝えたかったんだけど、いないんじゃしょうがない」


 三人とも同じことを思っている。

 本人は知らないだろうけど。


「スタークは立ってて平気なのか? 俺より重症に見えるんだけど……」


「マナの薬のおかげだな。何も感じなきゃ怪我の具合なんてわかんねーよ」


 大丈夫なのか、それ?

 そういえば俺も痛くはない。全身に気怠さがあるけど。


「私向こうに戻るね。こっちはもう大丈夫そうだし」


 そう言いだしたカレンを心配したが、村の方が気になるのも事実だ……。

 俺はついていったところで足手まといだし、無傷のカレンが行った方がいい。


「任せるよ。俺は動けないし」


「わかった。直ぐに治癒してくれるように伝えるから。また後でね」


 そう言い残しカレンは飛び去る。

 残されたのは男二人。


「……なんかあったのか?」


「ちょっとな。聞くなよ。話さないからな」


 瓦礫と化した屋敷。貴族はもういない。

 これで、何かが変わったのか?

 まだ、なんの自覚もない。ただ奪っただけ。


 ……いや、救ったんだ。この国を。


 そう思わなければ。

 アイツに言われてしまう。


 スタークは何も聞かず、俺は一人感慨にふける。

 すると、微かに何かが聞こえる気がした。


「……く……ユウ……──ユウくんーー!」


 と、ものすごい勢いで青い物体が迫ってきていた。

 ブレーキなどかけず、そのまま衝突してくる。


 本人としては抱きついたつもりだったのだろうが、俺としてはトドメの一撃でしかなかった……。


 勿論、マナさんによって俺の意識は奪われた。


 ♢


 黒い光が天を衝く。その光景を待ち望んだ。


 ……やっと終わりが始まる。


 手に入れるべきものは得た。必要なものは揃えた。


 思わず笑い出しそうだった。

 しかし、自分を諌め平静を装う。

 まだ、始まったばかりだ。


 足元に転がる死体も、醜く逃げる道化も同じに見える。


 ……もう興味はない。

 元から利用価値の有無しか違いなど無かったのだ。


「嬉しそうだな」


 いつの間にか戻ってきていた女に声をかけられた。

 コイツと話をする気分じゃないのだが……。


 サラサに触れられた瞬間、何もない白い場所に立っていた。

 何も無い一面の白。移動したのではない。


 なら、この空間は……。


「どうだ、この空間は? 意識の中に入りこめる。ここは、お前の中というわけだ」


 成る程。感覚も同じ。

 一見すると違いは分からないな。


「随分と面白い真似ができるようになったな。 ──どうしたんだ。その頬は?」


 赤く腫れた頬。よくよく見れば、サラサは泣いたのか目も赤かった。


「……ぶたれた」


「ユウの奴か? 女に手を上げる様には見えなかったが……」


「──違う! カガミではない! あの女。カレンと言ったか、覚えていろ」


 ……カレン?


 どうして、その名前が出てくるのか分からないが、尋ねれば長くなると判断し話を進めることにした。


「貴族はどうなった」


「燃え尽きた。灰すら残らずにな。それより妾の話に何か言うことは無いのか? 」


「仲良くしろよ。あれは強いぞ?」


「ふざけるな! どうして妾が……そのため息は何だ?」


 ため息も出るさ。

 マナの相手をしてるような感じだ。


 納得のいかないサラサは暴れるが、八つ当たりに付き合ってやるつもりはない。


「貴族は何か言ってたか」


「増援が来ると言ってたな。そんな気配は無いが……」


 やはり仕掛けはしておいて正解だったな。

 使い慣れない道具など使ったのが運の尽きだったな。


「なんだ、妾にも説明せよ」


 これ以上、機嫌を損ねるのは得策じゃないか。


「あの貴族は、どうやって増援とやらを頼んだと思う?」


「言われてみれば、離れた場所と会話する術など……。そうか、お前の差し金か」


 その通り。マナが使った通信の技術は大型であるが装置化している。


 貴族のいる場所には全て設置してある。

 魔王様は、たいそう気に入り配備に何の疑問も抱かなかった。


「何事も用意はしておくべきだな。奴等は便利なことは理解するが、どうやってそれが動いているかには興味がないらしい」


 なら、どういう仕組みで通信ができているのかなど気にしない。直接やりとりできているわけではなく、途中で中継点があることなど知りもしないはず。


「改ざんなど容易というわけか……」


「魔王様は結構お使いになられるからな。台詞のサンプルくらいは記録してある。後は本人が話しているように見せかけるだけだ」


「届いていると思って死んだと思うと哀れだな。その言葉は正しく伝わりもしないとは」


 伝わったところで、直ぐに行動したかは微妙だと思うがな。


「この後はどうする? 貴族の死は誤魔化せまい?」


「最大限に危機を煽るさ……。犯人は見つからず、なお貴族を狙うだろうと。幸いこの地の人間は協力してくれる。余計な手間もかからないしな」


「なんで領主を見逃した? あれが告げ口すれば台無しになるのではないか?」


 どう答えたべきか。

 見逃したのではなく殺すつもりがなかった。


 俺は……な。


「主人を裏切り、死なせた奴に何ができる? 再起は有り得ない。それに俺には価値が無くても、そうじゃない奴がいるのさ……」


 どこにも行けない奴等がとる行動など、簡単に予想がつく。

 先立つものが無ければ何もできやしない。


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