出来損ない 9
♢46♢
少年の瞳から迷いは消えていた。
その隣には少女が寄り添う。
二人の眼差しが捉えるのは怪物。
貴族と呼ばれる、この世界の支配者。
支配者の名に恥じぬ、理不尽なまでのその強さ。
望めば滅ぼすことなど容易だろう。
だが、決めたのだ。選んだのだ。
だから少年たちは──
もうブレない。そう言われたから。
もう迷わない。そう決めたから。
少年は選んだ。切り捨てて進むことを。
少女は決めた。繋げることを。
彼は隣に立つ彼女に誓った。
一緒に戦ってくれる彼女に。足りなかったものも得た。
「……それでいい。二度と会うこともないだろう。もう、止まるなよ。守ってみせろ……」
僅かでもアイツの熱量を。その怒りを……憎しみを。
割合の問題だったのだろう。
互いにそれが偏っていた。
だけど傾いた天秤は水平になった。
今まで奪い続けてきた貴族に、もう情けはかけない。これは誰かがやるべきこと。
いつかではなく、今。それが叶うのは自分だけ。
ここから始めよう……俺の物語を。
♢
少年は魔法を使えない。
ただ武器を振るうことしかできない。
少女は武器を使えない。
ただ魔法を扱うことしかできない。
どちらかだけでは足りない。
なら足して、掛け合わせていこうと決めた。
カレンの魔法が流れ込んでくる。
俺のための魔法。みなぎる力は自分の理解を超える。
手に持つ折れた刀は炎を纏いその姿を新たにする。
日本刀のシルエットはなくなり、無骨な剣へと姿を変える。両手で扱わなければならないほどの大きさに変化する。
振るえば炎が舞い。
その熱はあらゆる物を焼き尽くし、焼き斬る。
無策のまま貴族に突っ込む。
理性のない獣と化した貴族もそのまま向かってくる。
理性すら消えても魔法を扱う頭は無くならなかったようで、黒い風が全てを切り刻むべく放たれる。
回避は必要ない。
後ろの彼女は鎧であり槍だ。
俺が盾であり剣であるように。
槍は風を燃やす。
炎で型どられた槍は風とぶつかり炎へと戻る。
目の前に広がる炎もまた彼女の魔法だ。
炎は貴族にまとわりつく。勢いを増して。
悲鳴のような声が貴族から上がる。
もう、刃が届く距離だった。
振るう剣は風の鎧ごと貴族を斬る。
飛び込みの一撃。
宙を飛んだまま体を捻りもう一撃。
二撃で首と胴を両断する。
切断箇所は切り口から発火し、離れた部分を焼き尽くす。
着地したら、そこからさらに一撃。
足元から胴体に。トドメの一撃。
地に足がつき、最後の一撃を下から振り上げる。
「──お前の心臓はそこだったよな!」
足元から心臓への一閃。
剣は何か硬いものを捉え、石のような黒い塊を斬り裂く。
空に登るような黒い閃光が上がる。
その閃光が意味するのは貴族の死。
彼等の最期の輝き。
それを理解する人は驚いただろうか? 喜んだろうか?
一つ分かるのは、悲しむ者はいないということだ。




