出来損ない 8
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「良かったんですか? 本当に、これで……」
彼の体は切断され、斬られた箇所は燃えている。
体は上半身しか残っておらず。その残る部分さえ燃えてなくなってしまうのに、さほど時間はかからないだろう。
そう同じく体の消滅が始まっている彼女は思う。
キラキラと光となって、その体はなくなっていく。
「オマエはどうなんだ、更紗?」
「私は自分に逆らって、優くんを残すことを選んでしまいました。与えられた役割すら果たさずに。この消滅は必然です」
──だから受け入れます。
元から与えられたに過ぎない自我。
なかったと思うことに違和感はない。
「ああでもしなきゃ、アイツはまだここにいたぜ? あぁ……カレンには謝れなかったな」
「許してくれますよ、きっと。それにしても迫真の演技でしたね。まさか、カレンさんを道連れにしようとするとは思いませんでした」
可笑しそうに更紗は笑う。
「ところで……何で俺は膝枕されてるんだ?」
「だって、向かい合ってお話しできないじゃないですか。最後までこうしていますよ?」
最後まで……この白い世界が無くなるまで。
火の手は回り、焼け崩れていく思い出の場所。
例え幻でも悲しいと思ってしまう。
「この光景を優くんは見たんですか?」
尋ねたかった。私は何も知らなかったから。
友達だったはずなのに……。
「見た。もう俺だけだった。生きてたのは……。最後に見えたのは、焼けた柱が俺に倒れてきたところまでだ。後はお決まりの、目覚めたら病院のベッドの上だった。ってやつだ」
淡々と語る。そこに先ほどまでの激情はない。
「その後は……?」
「親戚中をたらい回しだ。誰も受け入れようとはしなかった。あの人以外は。そいつに引き取られて都会に出て五年を過ごした。これで終わりだ……」
何も語らない。
いま話したことは何も語っていないだろう。
上部だけしか言わないつもりなんだ。
「カレンさんはどことなく似てましたね?」
これまでと違い明確に表情が変わる。
ズルいと自分でも思うけど、こう言うしかない。
「……だからなのか? 俺はカレンに突きつけた刀を動かせなかった。まるで腕が石のようだった」
「シスコン」
少し辛辣な言葉だったかな?
つい口に出して言ってしまった。
「──なんだ。聞きたかったのはそれか?」
素直に、はいとは言えない。
彼が亡くしたのは両親だけではない。
たった一人の半身さえ失ってしまったのだ。
「……そんな簡単に言われると」
彼は私に教えてくれた。
最後まで自分にさえ言わなかったことを。
その内容に私は少し救われた。
──良かった。
優くんに嘘をついたことを悔やんでいました。
私は彼にわざと何も伝えなかった。
知らなければ無茶はしないだろうと思って。
その予想は外れ、彼は戦うことを選んだ。
何もかもが上手くいっていない。
でも何かが味方している。
でなければ、とうに破綻しているだろう。
その何かは彼を導くのだろう。
そんな予感がする。
最後までそばに居られなくてごめんなさい。
でも、あなたを想っている人は私だけじゃないから……。
彼を見送った彼女も光となって消え、そこは誰もいなくなった。




