表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
できそこないの勇者 『ツイノモノガタリ』  作者: KZ
 火神 優(かがみ ゆう)
70/337

 出来損ない 8

♢45♢


「良かったんですか? 本当に、これで……」


 彼の体は切断され、斬られた箇所は燃えている。

 体は上半身しか残っておらず。その残る部分さえ燃えてなくなってしまうのに、さほど時間はかからないだろう。


 そう同じく体の消滅が始まっている彼女は思う。

 キラキラと光となって、その体はなくなっていく。


「オマエはどうなんだ、更紗(さらさ)?」


「私は自分に逆らって、(ゆう)くんを残すことを選んでしまいました。与えられた役割すら果たさずに。この消滅は必然です」


 ──だから受け入れます。

 元から与えられたに過ぎない自我。

 なかったと思うことに違和感はない。


「ああでもしなきゃ、アイツはまだここにいたぜ? あぁ……カレンには謝れなかったな」


「許してくれますよ、きっと。それにしても迫真の演技でしたね。まさか、カレンさんを道連れにしようとするとは思いませんでした」


 可笑しそうに更紗は笑う。


「ところで……何で俺は膝枕されてるんだ?」


「だって、向かい合ってお話しできないじゃないですか。最後までこうしていますよ?」


 最後まで……この白い世界が無くなるまで。

 火の手は回り、焼け崩れていく思い出の場所。

 例え幻でも悲しいと思ってしまう。


「この光景を優くんは見たんですか?」


 尋ねたかった。私は何も知らなかったから。

 友達だったはずなのに……。


「見た。もう俺だけだった。生きてたのは……。最後に見えたのは、焼けた柱が俺に倒れてきたところまでだ。後はお決まりの、目覚めたら病院のベッドの上だった。ってやつだ」


 淡々と語る。そこに先ほどまでの激情はない。


「その後は……?」


「親戚中をたらい回しだ。誰も受け入れようとはしなかった。あの人以外は。そいつに引き取られて都会に出て五年を過ごした。これで終わりだ……」


 何も語らない。


 いま話したことは何も語っていないだろう。

 上部だけしか言わないつもりなんだ。


「カレンさんはどことなく似てましたね?」


 これまでと違い明確に表情が変わる。

 ズルいと自分でも思うけど、こう言うしかない。


「……だからなのか? 俺はカレンに突きつけた刀を動かせなかった。まるで腕が石のようだった」


「シスコン」


 少し辛辣な言葉だったかな?

 つい口に出して言ってしまった。


「──なんだ。聞きたかったのはそれか?」


 素直に、はいとは言えない。

 彼が亡くしたのは両親だけではない。

 たった一人の半身さえ失ってしまったのだ。


「……そんな簡単に言われると」


 彼は私に教えてくれた。

 最後まで自分にさえ言わなかったことを。

 その内容に私は少し救われた。


 ──良かった。


 優くんに嘘をついたことを悔やんでいました。


 私は彼にわざと何も伝えなかった。

 知らなければ無茶はしないだろうと思って。

 その予想は外れ、彼は戦うことを選んだ。


 何もかもが上手くいっていない。


 でも何かが味方している。

 でなければ、とうに破綻しているだろう。


 その何かは彼を導くのだろう。

 そんな予感がする。


 最後までそばに居られなくてごめんなさい。

 でも、あなたを想っている人は私だけじゃないから……。


 彼を見送った彼女も光となって消え、そこは誰もいなくなった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ