表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
できそこないの勇者 『ツイノモノガタリ』  作者: KZ
 火神 優(かがみ ゆう)
69/337

 出来損ない 7

 殺せと俺は言う。


 このまま戻っても勝てないから。

 奪われたものを取り返していけと。


 そんなことのために消えられるというのか?

 やっと手に入れた自由を捨ててまで……。


 燃え盛る炎は強くなり、俺たちも巻き込まれそうなほど火の手はまわってきていた。


「いつまでそうしてる。もう時間は迫ってきてるんだ。全部を無駄にするつもりなのか?」


 同じ顔。同じ存在。コイツは俺なんだ。

 ……簡単に割りきれない。


「情でも湧いたのか? だったら──」


 ドクン! と胸が跳ねた。

 それは感じたことのあるものだった。


「これならどうする? もう止められない」


 熱い。熱のせいか?

 そんなはず無い。今まで暑さなんて感じなかった。


 なら、これはあの時の……。


「──やめろよ! マナさんに言われたこと忘れたのか!」


 村でのあれをやるつもりだ。

 あの時は何とかなった。だけどそれは止めてくれた人がいたからだ。


「もう止められない。直ぐに吹き飛ばされるぜ。その前に俺を殺せ」


 暴走した力は膨張を続ける。

 もう止められない。制御するつもりがコイツには無い。


「逃げ道もなくしてやったんだ。もうこれで、一つしか道はない。元々がイレギュラーだったんだ。消えたところでなんの損失もない」


 ──そんなはずないだろ。


「だったら二人して消えるのか? 別にそれでも俺は構わない。 ……なんだ迎えが来たみたいだな」


 ……迎え?


 それが意味するのは一つだけ。

 もう終わりが近いということだ。


 ──更紗(さらさ)なら。


 微かな希望を持って振り返る。

 そこに目的の人物はおらず、代わりに向かってきているのは……。


「──カレン? なんでここに……」


「どうやってここに。じゃないのか?」


 そうだ。どうやってここに……。

 俺の中なんだろここは。更紗はどうしたんだ?


「遠いよ。遠かった。何でこんなに高いところに家があるの? 燃えてるし……」


 カレンは走ってきたのだろう。

 息は上がり呼吸も苦しそうだ。


「魔法も使えないし。ずっと全力疾走だったんだから」


 ……魔法が使えない?

 使わないと俺は言ってたけど関係あるんだろうか。


「それに、何で分裂してるの?」


 分裂……なのか。これは。


「それより! カレンさんも優くんも、落ち着いてないで!」


 更紗の声だけが聞こえる。彼女が案内してきたのだろう。


 ……サラサはどうしたんだ?


「ちょっと色々あって。拗ねちゃった……」


 予想外の理由だった。


「あの子の話はいいですから! そっちの優くんは何でこんなことを?」


「こうでもしなきゃ俺は踏ん切りがつかないと思ってな。力を戻さなきゃ貴族には勝てないだろ?」


「そうですけど。何もこんなことをしなくても、やり方は他にだって……」


 ねぇよ……。と一蹴される更紗。


「カレン、お前なら殺せるか? あの化け物を」


「わかんない。魔法は効くはずだけど速さが足りない。私じゃ貴族との近接戦闘はできない。懐に入られたらと思うとゾッとする」


 あの貴族は強い。

 魔法だけに頼らずその肉体をもって戦う。

 今の人間たちの上位互換と言っていい。


 元々持つ魔力も脅威でしかない。

 魔法だけでは対抗できない。


「だったら、やっぱりオマエがやるしかない。とっとと役目を果たしに行けよ」


 未だに決断できないのか(オレ)はうんと言わない。


 ……仕方ない。


 嫌でもやってもらわなければならない。

 もう一つ卑怯な真似をするとしよう。


 俺の視線は黒い髪の彼女に向かう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ