出来損ない 7
殺せと俺は言う。
このまま戻っても勝てないから。
奪われたものを取り返していけと。
そんなことのために消えられるというのか?
やっと手に入れた自由を捨ててまで……。
燃え盛る炎は強くなり、俺たちも巻き込まれそうなほど火の手はまわってきていた。
「いつまでそうしてる。もう時間は迫ってきてるんだ。全部を無駄にするつもりなのか?」
同じ顔。同じ存在。コイツは俺なんだ。
……簡単に割りきれない。
「情でも湧いたのか? だったら──」
ドクン! と胸が跳ねた。
それは感じたことのあるものだった。
「これならどうする? もう止められない」
熱い。熱のせいか?
そんなはず無い。今まで暑さなんて感じなかった。
なら、これはあの時の……。
「──やめろよ! マナさんに言われたこと忘れたのか!」
村でのあれをやるつもりだ。
あの時は何とかなった。だけどそれは止めてくれた人がいたからだ。
「もう止められない。直ぐに吹き飛ばされるぜ。その前に俺を殺せ」
暴走した力は膨張を続ける。
もう止められない。制御するつもりがコイツには無い。
「逃げ道もなくしてやったんだ。もうこれで、一つしか道はない。元々がイレギュラーだったんだ。消えたところでなんの損失もない」
──そんなはずないだろ。
「だったら二人して消えるのか? 別にそれでも俺は構わない。 ……なんだ迎えが来たみたいだな」
……迎え?
それが意味するのは一つだけ。
もう終わりが近いということだ。
──更紗なら。
微かな希望を持って振り返る。
そこに目的の人物はおらず、代わりに向かってきているのは……。
「──カレン? なんでここに……」
「どうやってここに。じゃないのか?」
そうだ。どうやってここに……。
俺の中なんだろここは。更紗はどうしたんだ?
「遠いよ。遠かった。何でこんなに高いところに家があるの? 燃えてるし……」
カレンは走ってきたのだろう。
息は上がり呼吸も苦しそうだ。
「魔法も使えないし。ずっと全力疾走だったんだから」
……魔法が使えない?
使わないと俺は言ってたけど関係あるんだろうか。
「それに、何で分裂してるの?」
分裂……なのか。これは。
「それより! カレンさんも優くんも、落ち着いてないで!」
更紗の声だけが聞こえる。彼女が案内してきたのだろう。
……サラサはどうしたんだ?
「ちょっと色々あって。拗ねちゃった……」
予想外の理由だった。
「あの子の話はいいですから! そっちの優くんは何でこんなことを?」
「こうでもしなきゃ俺は踏ん切りがつかないと思ってな。力を戻さなきゃ貴族には勝てないだろ?」
「そうですけど。何もこんなことをしなくても、やり方は他にだって……」
ねぇよ……。と一蹴される更紗。
「カレン、お前なら殺せるか? あの化け物を」
「わかんない。魔法は効くはずだけど速さが足りない。私じゃ貴族との近接戦闘はできない。懐に入られたらと思うとゾッとする」
あの貴族は強い。
魔法だけに頼らずその肉体をもって戦う。
今の人間たちの上位互換と言っていい。
元々持つ魔力も脅威でしかない。
魔法だけでは対抗できない。
「だったら、やっぱりオマエがやるしかない。とっとと役目を果たしに行けよ」
未だに決断できないのか俺はうんと言わない。
……仕方ない。
嫌でもやってもらわなければならない。
もう一つ卑怯な真似をするとしよう。
俺の視線は黒い髪の彼女に向かう。




