出来損ない 6
♢44♢
どうして俺は諦めない?
埋まることのない差。続けても勝ちへの展望も見えないだろうに……。
いくら力を削いでも終わる気がしない。
俺が優勢なのは揺るがない。
それなのにオマエは、何度となく這いつくばっても起き上がる。目から光が消えない。
他者が介入する余地はなく、助けなんてこないだろうに。
──この強さはなんだ?
なにがオマエを立ち上がらせる?
わからない。
「どうして諦めない。なんで立ちあがる?」
卑怯なことをしてまで得たチャンス。
本当なら選びたくない選択肢だった。
それをしてまで、俺を屈服させられない……。
「生き残った俺は生きなきゃならない。でなけりゃ、本当に意味すらなくなってしまう」
「わからない」
「諦めないのは思い出したからだ」
「……なにを?」
「諦めない人たちがいることを。言われたろ。お前が起こした戦いだって。だったら、俺が一番最初に諦めるわけにはいかない」
だから立ち上がると。諦めないと俺は言う。
「お前だって同じだろ? 復讐と口にしたのに、その復讐ってやつはこの世界を救ってからの話だろ?」
言われれば、そうだ。
この世界を見捨てようとも、諦めようとも思ってない。
どうしてだ? 何故……。
「覚えてるはずた。救われない辛さを……悲しさを。俺は、それを誰にも味あわせたくない」
あぁ……おれのようになってほしくなかったんだ。
何かを、誰かを、恨んで憎んで、自分さえも許せなくて。ただ、それを思い知らせてやりたかった。
でも、そんなのはおれひとりでじゅうぶんだ。
絶対に消えない。
この燃える光景が俺の中にある限り絶対。
憎しみは無くならないし、恨みは消えない。
それは変わらないだろう。
だけど、俺にだって助けられる誰かがいるなら。
救えるなら。それは無視できない。
知ってるから……。
助けてくれる誰かも、救ってくれる誰かも、いなかったことを。
だったら、俺はその誰かと違う道を選ぶ。
助けてられるなら助けるし。救えるなら救う。
「それに……逃げるのはやめにしたんだ」
全部が悪ではない。
だって俺は今日も生きている。
「もう、怯えて生きていくつもりもない」
全部が善ではない。
だけど俺は生き残ってしまった……。
「そう決めたんだ」
俺が生きる意味は、恨みを晴らしてやるためだと思ってきたのに。
この感情は強いものだったのに……。
♢
「……俺の負けだ。このまま続けてもオマエの心は砕けない。負けは無くても勝ちも無い。それどころかオマエを消してしまっても、俺は俺になれない……」
ここまでで得た事実だ。
削いだ力は俺に蓄積されている。
だが、もう制御可能な域を超えた。
これ以上は自身の許容量を上回る。
続ければ破裂は避けられない。
それでも続け俺を消滅させても、俺は存続できない。
対消滅。どちらも残らなかったら誰が貴族を殺すんだ?
投げだすつもりはない。
狂わせたのは間違いなく自分なんだから。
最後までケリはつける。
けど、わからない……。
最初から無理だったのか?
始めから間違えていたのか?
いや、たとえ間違えていても、俺は同じ選択肢を選ぶ。それだけは絶対だ。
「成り代ることが叶わないなら、存在する意味さえない。俺はおとなしく消えることにする……」
「──待てよ! 勝手に決めんな!」
「意味すら無いと言ってるだろ。だけど、このまま消えたらオマエは貴族に勝てない。奪った力は俺の中にあるからな」
これを返すには方法が一つしかない。
「俺を殺せ。それしか道はない。くだらない真似をした代償だ。おとなしくやられてやる」
我ながら嫌な言い方だと思う。
でも、それすら出来ないのが俺だ。
とんだ出来損ないだ。本当に。
「やらなきゃ勇者役なんて勤まらない。奪われたものは奪い返せ。そして、二度と無様な姿を見せるな……それが俺の願いだ」
決断しろ。俺を喰らい先に進め。
成り代わることが叶わないというのなら、俺の存在する意義は、オマエを進ませる為だろ。




