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できそこないの勇者 『ツイノモノガタリ』  作者: KZ
 火神 優(かがみ ゆう)
68/337

 出来損ない 6

♢44♢


 どうして(オレ)は諦めない?


 埋まることのない差。続けても勝ちへの展望も見えないだろうに……。

 いくら力を削いでも終わる気がしない。


 俺が優勢なのは揺るがない。

 それなのにオマエは、何度となく這いつくばっても起き上がる。目から光が消えない。


 他者が介入する余地はなく、助けなんてこないだろうに。


 ──この強さはなんだ?

 なにがオマエを立ち上がらせる?


 わからない。


「どうして諦めない。なんで立ちあがる?」


 卑怯なことをしてまで得たチャンス。

 本当なら選びたくない選択肢だった。

 それをしてまで、俺を屈服させられない……。


「生き残った俺は生きなきゃならない。でなけりゃ、本当に意味すらなくなってしまう」


「わからない」


「諦めないのは思い出したからだ」


「……なにを?」


「諦めない人たちがいることを。言われたろ。お前が起こした戦いだって。だったら、俺が一番最初に諦めるわけにはいかない」


 だから立ち上がると。諦めないと俺は言う。


「お前だって同じだろ? 復讐と口にしたのに、その復讐ってやつはこの世界を救ってからの話だろ?」


 言われれば、そうだ。

 この世界を見捨てようとも、諦めようとも思ってない。


 どうしてだ? 何故……。


「覚えてるはずた。救われない辛さを……悲しさを。俺は、それを誰にも味あわせたくない」


 あぁ……おれのようになってほしくなかったんだ。


 何かを、誰かを、恨んで憎んで、自分さえも許せなくて。ただ、それを思い知らせてやりたかった。


 でも、そんなのはおれひとりでじゅうぶんだ。


 絶対に消えない。

 この燃える光景が俺の中にある限り絶対。


 憎しみは無くならないし、恨みは消えない。

 それは変わらないだろう。


 だけど、俺にだって助けられる誰かがいるなら。

 救えるなら。それは無視できない。


 知ってるから……。


 助けてくれる誰かも、救ってくれる誰かも、いなかったことを。


 だったら、俺はその誰かと違う道を選ぶ。

 助けてられるなら助けるし。救えるなら救う。


「それに……逃げるのはやめにしたんだ」


 全部が悪ではない。

 だって(オレ)は今日も生きている。


「もう、怯えて生きていくつもりもない」


 全部が善ではない。

 だけど俺は生き残ってしまった……。


「そう決めたんだ」


 俺が生きる意味は、恨みを晴らしてやるためだと思ってきたのに。

 この感情は強いものだったのに……。


 ♢


「……俺の負けだ。このまま続けてもオマエの心は砕けない。負けは無くても勝ちも無い。それどころかオマエを消してしまっても、俺は(オレ)になれない……」


 ここまでで得た事実だ。


 削いだ力は俺に蓄積されている。

 だが、もう制御可能な域を超えた。

 これ以上は自身の許容量を上回る。


 続ければ破裂は避けられない。


 それでも続け俺を消滅させても、俺は存続できない。

 対消滅。どちらも残らなかったら誰が貴族を殺すんだ?


 投げだすつもりはない。

 狂わせたのは間違いなく自分なんだから。

 最後までケリはつける。


 けど、わからない……。


 最初から無理だったのか?

 始めから間違えていたのか?


 いや、たとえ間違えていても、俺は同じ選択肢を選ぶ。それだけは絶対だ。


「成り代ることが叶わないなら、存在する意味さえない。俺はおとなしく消えることにする……」


「──待てよ! 勝手に決めんな!」


「意味すら無いと言ってるだろ。だけど、このまま消えたらオマエは貴族に勝てない。奪った力は俺の中にあるからな」


 これを返すには方法が一つしかない。


「俺を殺せ。それしか道はない。くだらない真似をした代償だ。おとなしくやられてやる」


 我ながら嫌な言い方だと思う。

 でも、それすら出来ないのが俺だ。


 とんだ出来損ないだ。本当に。


「やらなきゃ勇者役なんて勤まらない。奪われたものは奪い返せ。そして、二度と無様な姿を見せるな……それが俺の願いだ」


 決断しろ。俺を喰らい先に進め。


 成り代わることが叶わないというのなら、俺の存在する意義は、オマエを進ませる為だろ。


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