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できそこないの勇者 『ツイノモノガタリ』  作者: KZ
 火神 優(かがみ ゆう)
67/337

 出来損ない 5

♢43♢


 多少の問答があった。

 どっちも譲らなかったし仕方ない。 そう思おう。

 先に手を出したのは向こうだし……。


 微力ながら治癒も効果があった。

 教わっていてよかった。あれなら、ユウの傷でも少しなら動けるはずだし。


 ──でもね。何でこうなったんだろう?


 どうして私は見知らぬ場所にいるんだろう。

 気づいたらこの場所にいた。


 サラサと名乗った彼女の台詞はこうだ。

 私が引っ叩いた頬を抑えながら……。


「お前が迎えに行ってこい……。妾はもう知らん。ぶたれたのなど初めてだ……」


 もう一回言うけど、最初に手を出してきたのは向こうなのに。


 ──ここどこーーーー?!


 一人立ちつくしていると誰かに声をかけられた。


「良かった。 ──あれっ、あなたは? サラサはどうしたんでしょうか?」


 そう声だけが聞こえる。


 私はここに至るまでのことを説明した。

 互いに情報交換が必要だと判断したから。


 更紗という同じ名前の声の彼女は謝罪を口にする。


「ごめんなさい。遅いとは思っていたんですけど、そんなことで拗ねるなんて……」


 あれ、拗ねてたんだ……。

 悪いかなとも思うけど、おあいこだろう。


「それより! 案内しますから急いでください! (ゆう)君が、このままじゃ──」


 そう声だけの彼女は言う。

 私は案内のままに走り出す。



 ※



 街だろうか。景色はこの世界とは違う。

 建物はどれも立派で見たことのない……。


 そうじゃない……覚えがある。


 この世界は彼の世界だ。つまり、私のいた世界でもあるはずだ。


 町並みは記憶と一致しない。

 でも似てる。同じ世界なら当然か。


「どうかしましたか? 何か気になることでも?」


 気になるかと聞かれれば全部が気になる。


「ユウの世界では、みんなこんな町なのかな?」


「そうですね……。都会ではビルが目立ちますが、彼の住んでいたこの町は、日本のどこにでもある普通の町です。ここは一般的と言って問題ないと思いますよ?」


 やっぱり……。

 なら、私が懐かしいと感じるのも間違ってはいないんだろう。


「ところで、あなたはどうしてそんなことを?」


「私ね、こちら側の記憶もあるの。もう微かではあるけど覚えてる」


「あたなは導かれてしまったんですね。この世界に……」


 迷い込むではなく、導かれると彼女は言う。


「迷い込むじゃなくて……?」


「こちらの方からすればそう見えますが、その実は違います。世界は選んで招いている。必要だと思う存在を。必要になる存在を。かつてこの世界を救った勇者がそうであったように。あなたも選ばれてしまった」


 これまでの認識が揺らぐ。

 そもそもの話が変わってくる。


「世界は悲鳴をあげています。二つの交わるはずのない場所が繋がってしまったことによって……。始まりがなんだったのか。過去を知らない私たちには分かりませんが、二つの世界はズレが生じたまま時間だけが過ぎてしまった」


 内容が頭に入ってこない。


「正すのには、そちら側を正常に戻す必要がある。ズレの原因である貴族と呼ばれる彼等を排除しても……。そのためには彼等の力を借りるしかなかった。私たちの世界の神の名を持つ支配者達の力を」


 でも、ここで立ち止まる暇はない。

 だけどこれだけは尋ねたい。


「私は母親が一緒だった。導かれたのはどっち?」


 彼女が答えを知っているとは思っていない。

 けど答えがあるのなら、私はそれを知りたい。


「私にそこまでは……。でも彼女なら、二つの世界を視ることができるサラサなら分かるかもしれません。あの子は特別です。誰よりも……どんな存在よりも。何も自分ですることができない彼女は、その代償に全てを持っています。およそ人が望む全てを……」


 意味がわからない。

 できないのに、もっているとはどういう意味?


「ごめんなさい。これ以上は私の口からは言えません。でも、あなたの質問の答えは彼女が知っている可能性はあります」


「私、引っ叩いちゃったんだけど教えてくれるかな?」


「あー、……多分としか。あの通りなので、絶対とは言えないです」


 ……失敗したかな。


 街並みを走り、通り過ぎながら思った。

 目的地にはまだ着かない。


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