出来損ない 3
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俺は、その噴き出す感情をそのままぶつけてくる。
感情の分。その刀は重く感じる。
何度打ち合っても弱まる気配はない。
「どうした? ──もう終わりかよ!」
鍔迫り合いの格好になり、俺は語りかけてくる。
決着。その言葉がずっと頭から離れない。
どちらが勝ってもどちらかが消える。
この感情を消してしまっていいのかと考える。
「勝った気になるのは早いぜ? 死ぬのはオマエかもしれないんだからな!」
互いに一太刀ずつ刃が体を斬る。
痛みは無い。けど、何かが削られる感覚がある。
その何かは、大事なもののような気がしてならない。
受けに回れば今以上の消失は免れない。
そして続ければ、本当にどちらかは消えてしまう。
この俺が見せる感情は、押し殺してきた感情に他ならない。
「あまい、どこまでも……。意識してしまえば自身にさえ躊躇うのか? ──そんなだから守りたいものも守れないんだよ!」
自分というのは厄介だ。誤魔化せないし偽れない。
「オマエに足りないのはこれだろ? 優しいのは悪いことじゃない。だけど、それだけじゃダメなんだよ……」
こいつの熱量が俺には足りない。
わかってる……。
それだけで世界が構成されてないことくらい。
戦う上で役に立たないことだって。
「あの貴族って生き物は、存在するだけで人を不幸にする。あれを殺すのは誰かがやらなきゃならないことだ。でも、その誰かは誰にでもできるわけじゃない。あの騎士たちは殺したかったはずだ」
だから戦った。
「オマエは理解してた。 ──迷うなよ! やると決めたらやりきれよ。死んだ人間に恥じるような生き方をするなよ」
…………。
「人ってのは後悔する生き物だ。だけど、その後悔を次に繋げることのできる生き物だ。俺たちは同じく後悔して、それぞれ違うものを掴もうとしてる。どっちが正しかったのは選んだ後にしか分からない……」
終わったあとにしか分からないんだ。
「正しいと思うならブレるな。貫き通せ!」
「……お前は……」
こいつ本当は、なり代わろうなんて思ってないんじゃないのか?
さっきから俺に話さなくたっていいことを言ってる。
「ちっ、ダメだな俺は……。余計なことが口にでる。こればかりはどうしようもない」
似た者同士。自分なんだから当たり前か。
なら、こいつだって分かってくれるはずだ。
「……やめないか。俺はお前が消える決着を望まない。今は無理でも、互いに納得できる落とし所は見つけられるはずだ。今はあの貴族を倒すのが優先だろ?」
「……そうだな。オマエの言う通りだ。こんなことをしてる場合じゃないよな」
解ってくれた。
俺は刀を捨て歩み寄ってくる。
そして手が届く距離で立ち止まる。
「でもな──」
自分の内から大きく何かが削れる。
これまでとは比較にならない消失感。
貴族に受けた傷。腹部のそこが抉れていた……。
「落としどころなんて見つからない。真逆のことを言ってる奴等に、そんなものがあると思うか? あまい、本当に。俺が消えるのを望まないと言うのなら、オマエが消えろ」
さらに消失感は強くなる。
このままじゃ本当に消える。
「……なんで……だ」
抵抗し刀を振るうが受け止められ、そのまま奪われる。
「俺が上手くやる。俺たちについた差は、もう縮まらない。同じであるがゆえに不可能だ。 ……じゃあな」
景色は変わり背景は炎に包まれる。
舞っているのが桜の花びらなのか、火の粉なのか……。
この光景は忘れられないものだ。幻想的にさえ見える。
だけど……やがて炎は全てを燃やすだろう。




