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できそこないの勇者 『ツイノモノガタリ』  作者: KZ
 火神 優(かがみ ゆう)
65/337

 出来損ない 3

♢41♢


 俺は、その噴き出す感情をそのままぶつけてくる。

 感情の分。その刀は重く感じる。

 何度打ち合っても弱まる気配はない。


「どうした? ──もう終わりかよ!」


 鍔迫り合いの格好になり、俺は語りかけてくる。


 決着。その言葉がずっと頭から離れない。

 どちらが勝ってもどちらかが消える。

 この感情を消してしまっていいのかと考える。


「勝った気になるのは早いぜ? 死ぬのはオマエかもしれないんだからな!」


 互いに一太刀ずつ刃が体を斬る。


 痛みは無い。けど、何かが削られる感覚がある。

 その何かは、大事なもののような気がしてならない。


 受けに回れば今以上の消失は免れない。

 そして続ければ、本当にどちらかは消えてしまう。


 この俺が見せる感情は、押し殺してきた感情に他ならない。


「あまい、どこまでも……。意識してしまえば自身にさえ躊躇うのか? ──そんなだから守りたいものも守れないんだよ!」


 自分というのは厄介だ。誤魔化せないし偽れない。


「オマエに足りないのはこれだろ? 優しいのは悪いことじゃない。だけど、それだけじゃダメなんだよ……」


 こいつの熱量が俺には足りない。


 わかってる……。

 それだけで世界が構成されてないことくらい。


 戦う上で役に立たないことだって。


「あの貴族って生き物は、存在するだけで人を不幸にする。あれを殺すのは誰かがやらなきゃならないことだ。でも、その誰かは誰にでもできるわけじゃない。あの騎士たちは殺したかったはずだ」


 だから戦った。


「オマエは理解してた。 ──迷うなよ! やると決めたらやりきれよ。死んだ人間に恥じるような生き方をするなよ」


 …………。


「人ってのは後悔する生き物だ。だけど、その後悔を次に繋げることのできる生き物だ。俺たちは同じく後悔して、それぞれ違うものを掴もうとしてる。どっちが正しかったのは選んだ後にしか分からない……」


 終わったあとにしか分からないんだ。


「正しいと思うならブレるな。貫き通せ!」


「……お前は……」


 こいつ本当は、なり代わろうなんて思ってないんじゃないのか?

 さっきから俺に話さなくたっていいことを言ってる。


「ちっ、ダメだな俺は……。余計なことが口にでる。こればかりはどうしようもない」


 似た者同士。自分なんだから当たり前か。

 なら、こいつだって分かってくれるはずだ。


「……やめないか。俺はお前が消える決着を望まない。今は無理でも、互いに納得できる落とし所は見つけられるはずだ。今はあの貴族を倒すのが優先だろ?」


「……そうだな。オマエの言う通りだ。こんなことをしてる場合じゃないよな」


 解ってくれた。

 俺は刀を捨て歩み寄ってくる。

 そして手が届く距離で立ち止まる。


「でもな──」


 自分の内から大きく何かが削れる。

 これまでとは比較にならない消失感。

 貴族に受けた傷。腹部のそこが抉れていた……。


「落としどころなんて見つからない。真逆のことを言ってる奴等に、そんなものがあると思うか? あまい、本当に。俺が消えるのを望まないと言うのなら、オマエが消えろ」


 さらに消失感は強くなる。

 このままじゃ本当に消える。


「……なんで……だ」


 抵抗し刀を振るうが受け止められ、そのまま奪われる。


「俺が上手くやる。俺たちについた差は、もう縮まらない。同じであるがゆえに不可能だ。 ……じゃあな」


 景色は変わり背景は炎に包まれる。

 舞っているのが桜の花びらなのか、火の粉なのか……。


 この光景は忘れられないものだ。幻想的にさえ見える。

 だけど……やがて炎は全てを燃やすだろう。


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