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できそこないの勇者 『ツイノモノガタリ』  作者: KZ
 火神 優(かがみ ゆう)
60/337

 二人 2

「やることは決まったな。良かった良かった! カガミ、お前が腕を掴まねば……お前を殺すところだった」


 引っ張り上げられ起き上がった俺に、サラサはそんなことを言う。


「──なっ。やっぱり、お前……」


「別に冗談ではないぞ? それより傷を塞がねばな」


 どうしたものかと考えているようだ。


「時間は大丈夫なのか? こうしてる今も外では戦いが続いてるんだろ?」


「心配はない。零とまではいかないが、限りなくそれに近い時間しか経過していないはずだ。 ……それより回復手段だ。妾はそんな魔法使えないからな……」


 ──アレ?

 それじゃ、どうやっても駄目なんじゃないのか。


「先ほどはよくもやってくれましたね!」


 聞き覚えのある声。

 その声のした方向を向くと、更紗(さらさ)がこちらに走ってくる。


 本当にまた現れた……。

 二人も同じ名前なのはどうにかならないのか? 呼びづらい。


「また来たのか。面倒だな。いっそ術式ごと消してしまうか……」


 こっちのサラサは物騒なことを平然と言っているようだ。


 対照的だな、同じ顔なのに。

 いや、それしか同じじゃないのか?

 大して意味はないが、更紗とサラサ。と考えよう。


「術式……か。おい、カガミに掛かっている回復の魔法はなんだ?」


 突然の問いかけに更紗はたじろぐ。

 それでもちゃんと答えるあたりは流石だ。


「あくまで肉体由来の回復力を増幅させるものです。私は治癒の魔法は使えないので……」


 二人して同じことを言う。


「実はポンコツなんじゃ……」


「出来損ないのお前に言われたくない。回復の魔法は扱える奴のほうが少ないんだ。水の魔法だしな」


「──そんなことより! 火神(かがみ)さんはどうして彼女と親しげなんですか?」


 答えに困る。なんと言ったものか……。


「お前のいない間に深い仲になった。それだけだ」


「──なっ、嘘ですよね?!」


「嘘ではない。現にカガミは否定しないだろう?」


 更紗は何を想像したのか、あわあわと慌てている。


 ……本当になんだこれ? シリアスな展開が台無しだな。


「肉体の再生力か……。賭ける価値はあるな」


「何の話。というか、あなたは何をしようというのですか?」


「カガミの傷を塞ぐ。そうすればお前の出番も無くなるだろ?」


 それはそうですが。と更紗は迷っているようだ。


「いいんですか? ……また、傷つくことになるかもしれないんですよ?」


「お前の望みでもあるだろう? カガミを勝たすことは……」


「──なんでそれを! あなた私の記憶を見たの?」


 見たというか盗んだ。

 もう隠し事は意味がない、とサラサ。


 こうして見ていると姉妹のように思える。

 争ってる様は、微笑ましくは見えないけど……。


「安心しろ。余計なことは話してない」


「──その発言がもう余計だから!」


 ぎゃあぎゃあと、言い争う二人。

 見ていて飽きないな。


 ……ぐっ……なんだ、これ。

 立ってられない。それに痛みがあるのか?


 俺は前触れもなく、その場に倒れこんでしまう。


「長くはもたないな。行動に移す。お前も手を貸せ」


「私になにをやらせるつもりなの?」


「肉体の再生を限界まで加速させろ。カガミの魔力量は絶大だ。それだけで時間を短縮できる。妾は表から傷を塞ぐ」


 ……表から?


「少し体を借りるぞ? 手荒になるが焼いて傷を塞ぐ。痛みは妾が受け持とう。お前はここにいろ」


「……駄目。私たちが二人ともいなくなったら……」


「構わないだろう。どの道それも乗り越えなければならない」


 何が起きるのだろう。この何もない場所で。


「妾はどちらでも構わぬが、できるなら残れよ? ではな……」


 サラサはそれだけ言い残し消える。


「もう! 勝手なことだけ言って。あなたは自分とも向き合わなければならない。ずっと見ないようにしてきたソレと。……私には何もしてあげられない。だから信じます。(ゆう)くんを」


 更紗。彼女もそう言って消えてしまう。


 マナさんの前にも、俺をそう呼ぶ誰かがいた気がする。あれは……誰だった?

 そして、いつのことだった。


 霞がかかったように自分の記憶を引き出すことができない。


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