二人 2
「やることは決まったな。良かった良かった! カガミ、お前が腕を掴まねば……お前を殺すところだった」
引っ張り上げられ起き上がった俺に、サラサはそんなことを言う。
「──なっ。やっぱり、お前……」
「別に冗談ではないぞ? それより傷を塞がねばな」
どうしたものかと考えているようだ。
「時間は大丈夫なのか? こうしてる今も外では戦いが続いてるんだろ?」
「心配はない。零とまではいかないが、限りなくそれに近い時間しか経過していないはずだ。 ……それより回復手段だ。妾はそんな魔法使えないからな……」
──アレ?
それじゃ、どうやっても駄目なんじゃないのか。
「先ほどはよくもやってくれましたね!」
聞き覚えのある声。
その声のした方向を向くと、更紗がこちらに走ってくる。
本当にまた現れた……。
二人も同じ名前なのはどうにかならないのか? 呼びづらい。
「また来たのか。面倒だな。いっそ術式ごと消してしまうか……」
こっちのサラサは物騒なことを平然と言っているようだ。
対照的だな、同じ顔なのに。
いや、それしか同じじゃないのか?
大して意味はないが、更紗とサラサ。と考えよう。
「術式……か。おい、カガミに掛かっている回復の魔法はなんだ?」
突然の問いかけに更紗はたじろぐ。
それでもちゃんと答えるあたりは流石だ。
「あくまで肉体由来の回復力を増幅させるものです。私は治癒の魔法は使えないので……」
二人して同じことを言う。
「実はポンコツなんじゃ……」
「出来損ないのお前に言われたくない。回復の魔法は扱える奴のほうが少ないんだ。水の魔法だしな」
「──そんなことより! 火神さんはどうして彼女と親しげなんですか?」
答えに困る。なんと言ったものか……。
「お前のいない間に深い仲になった。それだけだ」
「──なっ、嘘ですよね?!」
「嘘ではない。現にカガミは否定しないだろう?」
更紗は何を想像したのか、あわあわと慌てている。
……本当になんだこれ? シリアスな展開が台無しだな。
「肉体の再生力か……。賭ける価値はあるな」
「何の話。というか、あなたは何をしようというのですか?」
「カガミの傷を塞ぐ。そうすればお前の出番も無くなるだろ?」
それはそうですが。と更紗は迷っているようだ。
「いいんですか? ……また、傷つくことになるかもしれないんですよ?」
「お前の望みでもあるだろう? カガミを勝たすことは……」
「──なんでそれを! あなた私の記憶を見たの?」
見たというか盗んだ。
もう隠し事は意味がない、とサラサ。
こうして見ていると姉妹のように思える。
争ってる様は、微笑ましくは見えないけど……。
「安心しろ。余計なことは話してない」
「──その発言がもう余計だから!」
ぎゃあぎゃあと、言い争う二人。
見ていて飽きないな。
……ぐっ……なんだ、これ。
立ってられない。それに痛みがあるのか?
俺は前触れもなく、その場に倒れこんでしまう。
「長くはもたないな。行動に移す。お前も手を貸せ」
「私になにをやらせるつもりなの?」
「肉体の再生を限界まで加速させろ。カガミの魔力量は絶大だ。それだけで時間を短縮できる。妾は表から傷を塞ぐ」
……表から?
「少し体を借りるぞ? 手荒になるが焼いて傷を塞ぐ。痛みは妾が受け持とう。お前はここにいろ」
「……駄目。私たちが二人ともいなくなったら……」
「構わないだろう。どの道それも乗り越えなければならない」
何が起きるのだろう。この何もない場所で。
「妾はどちらでも構わぬが、できるなら残れよ? ではな……」
サラサはそれだけ言い残し消える。
「もう! 勝手なことだけ言って。あなたは自分とも向き合わなければならない。ずっと見ないようにしてきたソレと。……私には何もしてあげられない。だから信じます。優くんを」
更紗。彼女もそう言って消えてしまう。
マナさんの前にも、俺をそう呼ぶ誰かがいた気がする。あれは……誰だった?
そして、いつのことだった。
霞がかかったように自分の記憶を引き出すことができない。




