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できそこないの勇者 『ツイノモノガタリ』  作者: KZ
 火神 優(かがみ ゆう)
54/337

 貴族 3

♢35♢


 荒い息を整え、再び貴族へと立ち向かう。

 もう止まることはできない。諦めることもだ。


 死んでいった仲間たちに申し訳がたたないし、何より我々が諦めればこの世界に先は無い。


「だいぶ数が減ったな? まだ心が折れないのは感心するが、いつまで、あと何人死ぬまでそれが続くか……」


 この怪物は遊んでいる。

 その気ならとうに全滅しているはずだ。

 それが半数以上が生き残っているのは、手を抜かれているからに他ならない。


 ……屈辱だが、そこに勝機を見出していくしかない。


「──何故、私を殺さない? 一番目障りではないのか」


「思ったよりも強かったのでな。それに、一人一人順番に相手をしてやっているのだ。殺す順番はオレが決める」


 そうなのだ。この怪物は言葉の通り、一人一人を順に殺している。

 何人一斉に襲いかかろうと、狙った者以外は見向きもしない。


 その狙われた者は確実に死に、その間攻撃を加えたところで傷一つ付けられない……。


 やはり防御を破れない。

 二重に掛かる、魔力の層を突破できない。

 単純に火力が足りない。

 分かってはいたが、これほどまでとは……。


「魔法で活路を見出すしかない。通常の武装では歯がたたない……」


 隣に立つ部下に指示を出す。

 残された手は強化の魔法を複数重ねるしかあるまい。


 だが、あれは体への負担が大きい。長時間は不可能。

 そして、それで失敗すれば待っているのは敗北だ。


「決死の特攻と言ったところか? その前にオマエに話がある。 ……どうだ、オレの下につく気はないか?」


「──何?」


 思いもよらない、想像すらしなかった貴族の言葉。


 今こいつは……なんと言った?

 下につけと。部下になれとそう言ったのか?


「ちょうど部下……いや、管理をする人間がいなくなった。代わりが必要だと思っていたのだ」


「それは領主のことか? 奴等は、お前の命令で出払っているのではないのか?」


「アレはどうせ失敗する。オレに力を借りようとした時点で見切りをつけた。奴等がここに戻ることはないだろう」


 どういう意味だ……戻ることはないとは?

 失敗するとこいつは言った。

 まさか、それを分かっていて村を滅ぼせと命令したのか?


「お前は何を考えている?」


「……知っているか? 星が墜ちたのだ。その星は、あり得ないほどの魔力を有している。アレは人間だ。それも恐ろしく強いな。我らとさして変わらぬだろう」


「そんな馬鹿な……」


 そんな人間が今のこの世界にいる筈がない。


「それにだ。たとえ戻ってきたとしても、領主と呼ばれる人間は一人も居なくなる。それは決定事項だ。なら、代わりを求めるのは当然だろう?」


「それを、私にやれと……」


「そうだ。やると言うなら助けよう。オレは強さこそを評価する。他の何でもなく強さを。 ……オマエはそれを満たしている」


 躊躇いなく答えられる。


「断る。私は騎士だ。この剣は貴様のような者を斬るためにあり、この盾は民衆を護るためにあるのだから」


 そのために己を磨いてきたのだから。

 憧れた英雄はすでに亡く。継ぐ者もいない。


 だからこそ私は道を示したい……。

 かつての英雄がそうしたように。


「嫌われたものだな。しかし、それでこそ人間だ。決めたぞ……オマエは最後に殺す。最後の一人になった時、もう一度同じことを聞いてやる。その時、同じ台詞を言えるか?」


「何度尋ねようと答えは同じだ。私は英雄たちのように、貴様等を討ち亡ぼす!」


「……英雄か。所詮は我らの王に敗れた者たちだろう? もはや人間達ですら、その名を口にしないというのにな」


 その言葉に私は何も返すことができない。

 それはまぎれもない事実だから……。


 多くの人は諦めてしまった。

 仕方がないのだろう。勇者は敗れたのだ。


 ※


 ふむ、この国の騎士とは存外やるものだな。

 こんな環境でも志を持つ人間は存在するものなのだな。


 しかし、これでは勝負にならんな。

 魔法も剣も銃すら通らない。

 人ならざる者の障壁とは本当に面倒だ。


 魔法使いのそれとは違うのだから、対策も変わるのだがな……。

 まぁ、手を出すこともできんし仕方ないと諦めようではないか。


 カガミとやらはまだ来ないのか?

 急がないと本当に全滅してしまうぞ。


 ……おや、特攻か。それは悪くない。

 犠牲は免れないが見返りもあろう。


 一枚でも障壁を破れれば僅かならが勝機も見えるか。ただ本気にさせるだけかもしれんがな。


 本人たちは気づいていないようだが、お前たちの剣も銃も魔法も、当たればソレを殺せるのだ。

 制限された魔力という条件さえ無ければ、貴族などとソレをのさばらせておくこともなかったろうに。


 今のままで対抗するには、同じだけの魔力を持つ人間が必要なのだ。

 同じだけの力をぶつければ壁はひび割れ、やがて砕け散る。


 そして、条件が同じなら数の多い方が勝つ。

 当然の道理だ。目指すのは制限の解除が先決だな。

 そうすれば自分たちの力で勝てると、あいつは言っていたしな。


 ──おぉ、特攻は上手くいったな。

 自爆とは妾も恐れ入った。

 弱者を侮るからそうなるのだ。


 しかし、これでも自らの驕りを改めないとは……。

 ちょうどいい手加減とでも思っているのか。


 ならば、そのまま人を侮っていろ?

 その分だけやりやすくなる。


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