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できそこないの勇者 『ツイノモノガタリ』  作者: KZ
 火神 優(かがみ ゆう)
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 戦い 7

 ……仕方がない。できれば控えたかった。

 周りに影響がどのくらいでるのか想像できないからな。


 ユウの一撃をこれで防ごうかとも思った。

 あいつがあのまま魔力を暴走させても、俺には一つだけ手があった。


 サラサが邪魔したわけだが……。

 もう二つは魔法を貰っておくんだったな。


 見渡す限り囲まれたところで、恐怖はなく逆に哀れに思える。


 領主の首だけで済ますつもりだったんだがな……残念だ。

 せっかくの戦力を自ら減らすことになるとは。欲張りすぎたか。


 何事も、多くを欲しても上手くはいかないな……。

 死にたいと言うのなら、死なせてやろう。

 先の見えない奴等を生かしておく必要もないだろう。


 この国にはサラサの結界がある。

 中で何が起きても、この国の中でしか感知できないらしいからな。口止めは事が済んでからでいいだろう。


 さっさと片付けてユウたちを助けにいかないとな。

 死んじゃいないだろう?

 まだ、お前たちは死ぬべきじゃないからな。


「ごみ掃除だな。照らす者を認めないと言うのなら、排除するだけだ。それが影であることを決めた俺の役割りだからな……」


 舞台で主役が輝くには裏方が必要なんだ。

 光を輝かせるには闇が。

 どちらか一つでは成り立たない。


 此度は裏にまわる。

 一度、失敗した俺が表に出ても結果は見えているからな。


 ※


「──死ぬ覚悟は決まったか? 下っ端!」


 魔導師が吠え魔法を放つ。

 全てを焼き尽くすだろう火球が襲いかかる。


 既存の魔法ばかりだな……。


 魔法とは独自性だと思う。

 先人の知恵である、既存の魔法は確かに実用的だ。

 無駄がなく昇華された技術と言っていい。覚えて損はない。


 だが、そんな魔法はもう見飽きたよ。


 剣を振るい、その魔法の全てを斬り捨てる。

 魔法を斬られるとは思わなかったのだろう。


「──はぁ?」


 そう情けない声を出す。

 残りの二人の魔導師も同種の魔法。

 しかも狙いが甘い。火球は当たると思っていたらしい。


 後ろの奴等は手を出してこないか。

 まあ、強い者に従う奴等だからな。


「何だ。吠えるわりにそんな魔法しか使えないのか?」


「手加減してやったんだよ。可哀想だからな……」


「殺すと息巻いてたのにか。冗談だろ?」


 この火の魔導師は頭に血が登りやすい。

 こういう奴は扱いが楽だ。

 煽ってやれば、勝手に怒りで魔法が雑になるからな。


 後の二人は思ったよりも厄介だな。

 特に風の魔導師。あれだけマナに削られたのに、平然としてるあたりこいつが頭か。


 どうするかな……。ギリギリまで粘りたいが。


「──何だ? 上だ!」


 何かに気づいた魔導師の一人が声を上げる。

 赤い槍が降ってくる。俺と魔導師を分断するように。


 誰だ? そして、こんな魔法があるのか?


 突き刺さった槍は赤く燃えていた。

 その槍が炎で出来ていることは明白だろう。

 しかも消えない。魔法を持続させるには多量の魔力がいる。


 それを、これだけの数か……。


 魔法を放った人物はすぐに降りてきた。


「大丈夫ですか? なんだ、思ったよりも平気そう」


「カレン、何をやっている? お前、誰の指示でここにいるんだ。お前の役目は村を守ることじゃなかったか?」


「あー、いいじゃないですか! 助かったんだから」


 こいつはアレだな。指示とか聞けない奴だ。

 ……扱いにくい。


「ユウたちことは見たか?」


「見ました……」


 声のトーンが落ち、辛そうな表情を浮かべる。

 どうせ大人しくしていろと言っても、大人しく聞きやしないだろう。それなら……。


「カレン、お前が行け。俺じゃ力にはなれないだろうからな」


 予想外の反応だったのだろう。

 意外そうな顔をしてるな。


「いいんですか? マナさんに頼もうと思ってたのに……」


「そんなことだと思った。だが行く前に一つ」


 言わんとすることは分かっていたのだろう。

 先のように、赤く燃える魔力が体を覆う。


「可能な限りの強化を施しました。これなら大丈夫ですか?」


「ああ、助かる。それに相手は随分減りそうだ」


 囲いの外から声が聞こえる。


「──お前らそこを通せ。あの声の人はそこにいるんだろ? 俺たちは戦う! そう決めた!」


 その声を皮切りに、賛同の声があちこちにから上がる。


「これなら、心配はいらなそうですね」


「さっさと行け。時間は少ないぞ」


 後の言葉は無く、少女は炎の翼を生やし飛び去る。


 見事なもんだ……。

 あれだけの魔法を使えるとはな。


 さて、これで俺は楽が出来る。

 余計なリスクも負わずにな。


 ※


「準備できましたよ。カレンちゃん」


 これで魔法は打ち止めだ。

 後は発動している魔法を維持するので精一杯。


「ありがとうございます」


「座標は印の付いてるスタークくん。転移は一瞬です。魔法の用意は大丈夫ですか?」


 自分を二人のところに送って欲しいとは……。


「──いけます!」


「頼みますよ」


 カレンちゃんが最後の希望です。

 会長が言ったのなら間違いはないでしょう。

 もう、弱気にはなりません。最後まで見届けます。


「大丈夫です。まだ、上手くいっています」


「はい。まだまだこれからです」


 カレンちゃんは陣に足を乗せる。

 もう何秒もありませんね。


「心配させやがってー、と二人をからかいたいので、ちゃんとみんな揃って帰ってきてくださいね?」


 最後まで聞こえただろうか?

 これで本当にできることは全部やった。自分の力の無さが恨めしい。


 本来なら私たちがやるべきことのはずなのに……。

 でも、こうするしかないのだ。これしか道がないのなら。


 あの人は全部を自分で抱え込もうとする。

 一人で解決しようと、そうしなければならないと。

 自らのことなど顧みずに……。


 強い人だ。それは可能なんだろう。

 だけど、いつか限界は訪れる。


 いや……すでに訪れているのかもしれない。


 時折、ずっと遠くにいるような錯覚に襲われる。

 その眼には、私は写っていないんじゃないかと思う時があるのだ。私はそれがとても怖い。


 私だけを見て欲しいわけではないけど、頼ってほしい。

 今だって頼られてはいる。だけど……それはあくまでも魔法使いとしてでしかない。


 私は弱さを見せてほしいのだ。

 人とは弱さを持っているはずなのに、それを感じたことがない。


 だから、ユウくんを頼っているのが羨ましい。

 そう見えるだけかもしれないけど。

 それでも私もと願ってしまう。


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