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できそこないの勇者 『ツイノモノガタリ』  作者: KZ
 火神 優(かがみ ゆう)
51/337

 戦い 5

♢34♢


 魔法を使いながら、さっきのおかしな現象のことを考える。


 あれはなんだったのか?

 あの人の魔力ではなかった……。

 マナさんのとも違う、異質な力だった。


 その魔法はわずかな間しか発動しなかった。


 十秒ほどだったか?

 一息でありえない距離を詰め、瞬く間に敵が三人も減った。あれは人間の動きではなかった……。


 強化といえば説明はつくが、上昇値が異常だ。

 雷のような光も確認できたし。


 ──気になる。


 違和感というか、不信感だろうか?

 それを意識してしまうと嫌な胸騒ぎがする。


「──ちゃん?! カレンちゃん?」


「なんですか?」


「もう魔法はいいですよ? 会長は予定通りですし、どういうわけか皆さん魔法を撃つ気がなくなったみたいですし」


 言われてやっと気づく。

 相手側から魔法が飛んでこない。


 私は、最初こそ怒りのままに魔法を使っていた。

 だって、本当に何の通達も無しに撃ってくるとは思わなかった。

 あれでは事前に知らなければ、どうしようもないではないか……。


 降伏を促すわけでもなく、ただ攻め入る。


 そして、そこには誰もいなかったように何もかも壊してしまう。

 それを良しとしていると考えてたら、冷静ではいられなかった。


 彼等にだって家族や友人がいるはずなのに……どうして、こんな真似ができるのだろう。


「もう村は大丈夫です。後は任せてください。カレンちゃんは後ろの猪さんをお願いします」


「分かりました。本当に止められるなんて……」


「何言ってるんですか? あなたが自分で守ったんですよ? 宣言通り一人の犠牲も出さずに」


 例え非道な相手だったとして、同じ人間なのだ。

 私にはその命を絶つなんてできない。

 ユウも同じだった。


 でも、彼は少なくも一人命を奪わなければならない。人では無いと割り切れるだろうか?

 わずかでも優しさが顔を出せば、上手くはいかないかもしれない……。


 私は自分で思っていたより平気そうだ。

 代われるなら、代わるべきなのではないか?

 そう思ってしまう。


「マナさん。私──」


「ダメですよ。それは彼の役目です。優しいだけでは彼は進めません。あなたたちの理想は素晴らしい。でも、それだけでは駄目なんですよ?」


 彼は優しく在ろうとしている。それは感じていた。


「カレンちゃんは自らの目的を果たしたじゃないですか?」


「まだ、解決してはないですよね?」


「もう詰みです。会長が馬車に乗った時点でね」


 何がおきようと勝ちだと。そう彼女は言った。

 私にはそうは思えないのだ……どうしても。


「納得はいかないですけど、今は言われた通りにします。だけど、もしもの時は……」


「はいはい、分かりました。考えておきますから。だから勝手に動いては駄目ですよ? 今は救援急いでください」


 呆れ半分といった様子で見送られる。

 渋々、移動を開始しようとした矢先……。


「カレンちゃん。集中しないと落っこちますよ? 少し教えただけで飛べるのは流石ですけど、油断してたり余計なこと考えてると。あっ、もう……そっちのほうが心配です!」


 上手くはいかない。バランスが難しいのだ。

 ふらふらしている私に対して、マナさんはずっと同じ位置に浮いている。技術的には遠く及ばない。


「行ってきます」


 そう言い残し、私はその場を離れる。

 どうせお叱りはうけるのだから、もう一度勝手しても構うまい。


 まずは、急ぎ眷属を片付けよう。

 そして彼のいる場所に向かおう。

 私は後悔しない選択肢を選ぶ。


 ※


「まさか、仲間を連れてくるとはな……」


「連れてきたわけでは……彼女が勝手に」


 ラットは時間内に戻ってきた。

 魔導師を連れてきたのは正しいが、私はどうなる?

 いつ剣が首をはねるのか気が気でない。


「まあいい、座れ。魔導師様。お仲間三人はいいのか?」


「手当はしてきたわ。ずいぶん余裕ね? 彼等が目覚めたらアナタが不利になると思うけど?」


「煽るな! 私の首筋が見えないのか? だいたい貴様らが無能だから、こんなことになっているんだぞ? 分かっているのか!」


 何故、挑発するようなことを言うのか……。


「まずは事の起こりから聞こうか?」


 やりとりには興味がないと言わんばかりに、男は話を進める。


 この男は何様のつもりなんだ……。

 先ほどは聞きそびれたが、それを明らかにしなければなるまい。


「待て。まずは、お前が先に名乗るのが筋ではないのか?」


「そうか。なら……」


「待ってください! それを……いえ、私が話しますので……」


 代わりに口を開くと言わんばかりに、ラットが声を荒げる。


 誰なのだ? この男は……。


「俺はあまり表舞台には出ないんだが、どこで会った? 悪いが全く覚えがなくてな」


「何年か前。とあるパーティ会場でお見かけしました。アナタはあの方の……」


「ああ、あの時か。アレの我がままにも意味があったわけか。振り回されるのは日常茶飯事だが、付き合わされるこっちの身にもなってほしいものだな……。ラットと言ったな? お前が説明しろ。何をどうしたら、こんな真似をしなければならなくなったのかを」


 ラットの普段との違いに、私も魔導師も口を挟むのを躊躇ってしまう。

 そしてラットは語り始めた。ここまでの全てを。


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