表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
できそこないの勇者 『ツイノモノガタリ』  作者: KZ
 火神 優(かがみ ゆう)
48/337

 戦い 2

♢32♢


 大量の猪を引き連れてきた、俺とスタークはマナさんに回収された。今は地に足がついていない。


 走っていたはずが、一瞬で空中にいるんだもんな……。

 

「ごくろうさまでした。それにしても、ずいぶんと連れてきましたね?」


「「お前の(あんたの)せいだけどな?」」


 スタークとハモった。でも言っておかねばならない。

 本当にマナさんの作るものはスタークの言った通りだ。必ず何かしらの問題がある。


「あまり時間もないので無視しますね?」


 無視するんだ……。

 それにしても、空中にいるっていうのは落ち着かない。


 マナさんと違って浮いてるわけではないのだろうし。


「──ちょっとユウくん?! 動くな! 落ちても拾わないですからね」


「俺まで巻き添えくらうだろうが。大人しくしてろよ」


 ──不安なんだよ! どうやって空中にいるのか、分かってないんだから……。


「もう、しょうがないですね……」


 足元に魔法陣が浮かぶ。

 現れた……たぶん違うな。ずっとこの上にいたんだ。


 この上にいれば安全なんだろう。

 様子の落ち着いた俺を見て、スタークがこの後のことを聞いた。


「で、俺らはどうすりゃいいんだ? 状況を見て判断するって話だったが……」


「下は大丈夫です。人形は片付きましたし、会長が後は上手くやってくれるでしょう」


「──マジかよ? どんな手品使ったんだ?」


「手品というか……カレンちゃんがですね……」


 それは俺のせいだろうか?

 まぁ、言わなければバレないよな。じっとしては、いられなかったんだろう。


「ユウくん、何笑ってるんですか? ……もしかして、カレンちゃんに何か言いましたか?」


「いってないですよ? なにも」


「言ったのか……。まあ、後で会長の小言を聞くんだな」


 もちろん一緒に怒られますよ。

 立場が逆なら、俺だって同じことをしただろうからな。


「じゃあ予定通りにいくんですね?」


 俺の一言に空気が変わる。


「はい。そうなりますね」


「街まで転移で飛ばしてくれるんだろ?」


 でも、それは一瞬だった。


「そのつもりだったんですけど。向こうの魔導師さんがしつこくて……ね。思ったより消耗してしまって、このままだと魔力が持ちそうにないので代案を考えておきました!」


 ……代案?


「──やめろ! 本当にやめてくれ。絶対にろくな案じゃねぇだろ、それ?」


 えっ? ……また、なのか?


「そんなことないですよ。それにですねー、どうせ空中じゃ逃げられないですよ?」


 二人して後ろにあとずさる。しかし、逃げ場などない。

 いっそ飛び降りたほうが楽なんじゃないだろうか?


「ほらほら、それ以上下がると落ちますよ?」


 何で、この人は楽しそうなんだろうか……。


 そして予感は確信に変わる。

 俺たちの背後には巨大な水で出来た腕。

 それにガッチリ掴まれる。


「まさか……このまま投げるとかじゃないですよね! マナさん?」


「おっ、分かってきましたね。その方が簡単かな? って思って」


「──ふざけんな! どんだけ距離あると思ってんだ!」


 彼女は、大丈夫。大丈夫。と繰り返す。

 スタークのように暴れれば脱出はできるだろうが、すでに足場は消え、なにもない。


「二人分の強化魔法はしっかりかけますから」


「生身でやられたら普通に死ぬからな!」


 強化魔法。話だけは事前に聞いた。

 分かりやすく言うと、ゲームとかのバフだ。


「スタークくん。うるさいですよ。あまり時間を使えないので始めますよ」


 マナさんは腰掛けていた杖から降り、先ほどのような魔法陣の足場に着地する。


「水は癒し。それと護り。その癒しはあらゆる傷を治し、その護りはあらゆる害あるものを弾く衣となる。慈しみ。それを分け与える」


 言葉は必要ないんじゃなかったのか?

 だけど……感じるこれは何だ?

 これが強化されたってことなんだろうか?


「さて、この先私には何もしてあげられません。二人が勝つと信じることしかできない……。だから、その思いを裏切らないでくださいね?」


 俺は何も言わなかった。


「──じゃあ、いってらっしゃい!」


 そう笑って彼女は俺たちをぶん投げた。


 ※


 さてと。仕込みはこれで終わり。

 あとは会長待ちですかね。


 二人には、魔力が保たないと嘘をついてしまいました。本当は保険をかけておきたかったんですよ。


 これで一回なら街まで転移が可能なはず。

 できれば使わせないでくださいね。二人とも。


「それにしても頑張りますねー。あっ、轢かれた。頑丈そうな鎧ですし、死んではいないでしょう」


 下はだいぶ混乱してますね。

 二部隊。およそ二百人ほどを見捨てて、自分たちは前進ですか。

 彼等を犠牲にしても前に進むとは思いませんでした。


 かろうじて持ちこたえてますが、崩れればあっという間に自分たちに向かってくるでしょうに……。


 全員で眷属を倒してから進むべきでしたね。

 それでは会長の筋書き通り。


 分断され戦力と思っている人形もすでに全滅。

 おまけに、領主も一つの馬車にまとめるとは。

 これで条件は満たしました。


 後は……。


 ※


 仕込みは上々。残るは仕上げだな。

 ユウとスタークは、もう街に入ったころか?


 視界は晴れ、もう確認できる距離まで領主一行様は迫ってきている。

 まさか空を駆けてやってくるとは思わなかったな。空の道と言ったところか。


 だが、人数が大分減ってる。

 猪に戦力を割いてくれるとは思わなかったな。


「カレン、用意はいいな? 奴等は射程距離まで入れば雨あられのように魔法を撃ってくる。盾で防ぐのではなく、あえて全て撃ち落とせ。誘爆はするだろうがもしもってこともありえる。ジジイたちはいつでも退がれるように言っておけ」


 そう氷の城壁の上にいる少女に伝える。


 難しいことではないはずだ。

 ……心配は魔力量だな。傍目からは分からない。

 まして、魔法を使えないやつには余計にな。


「ねぇ……二人は本当に勝てるんだよね?」


 その言葉に何と答えるべきか迷ってしまう。教えられることは教えた。


「勝つさ、信じろよ。あいつは逃げ出さなかった。ずっと逃げ続けてきたやつがだ。同じ失敗はしない」


 そして、俺やスタークとは違う。

 俺たちとは違う道を歩むんだろう。

 あとは、その優しさが甘さが、裏目にでないことを祈るばかりだ。


「そろそろ時間だ」


 腰の剣を引き抜く。

 黒い刀身は、暗く重い輝きを放つ。


 ……戦場の空気とはこんなものだったか?


 昔は多勢など相手にするのは珍しくなかった。

 違うのは、隣に立つやつも背中を任せるやつもいないということか……。


 通信を切り、一人呟く。


「……求めるものは今にはなく過去。俺の存在意義はそこにしかない。その為ならば、いくらでもこの手を血で染めよう。数多の犠牲が必要だと言うのなら、その山を築こう」


 やっと指がかかったんだ。邪魔するなよ道化共。


 ……もう十分だろう?


 お前たちは満たされない。際限なく欲する。

 何を踏み台に、何を犠牲にしても。


 この先。変わる世界にお前たちの居場所はない。

 自らがしてきた報いは必ず受ける。

 なら、せめて俺の役に立って消えろ。


 その軍隊は俺が貰う。

 一から作っていては間に合わないからな。


 そしてお前たちは、道化は道化らしく舞台から降りろ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ