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できそこないの勇者 『ツイノモノガタリ』  作者: KZ
 火神 優(かがみ ゆう)
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 戦いの前 ②

♢22♢


 面倒な銃の組み立ての最中に呼び出された。

 半分くらいは組み上がっだが、まだ時間がかかるってのにだ。だが、会長だって時間が無いのは分かっているはず。それでも、わざわざ呼び出すくらいだから重要な要件があるんだと思って……急いで来てみればだ。


「さっさと繋げろ。ほとんど動かせないが、張りぼてでも付いてないよりはマシだ」


 そう言って、切断された義手が目の前に置かれる。

 義手はスパッと一直線に、驚くほど綺麗にぶった斬られているように見える。刀なんかで斬れるような代物じゃなかったはずなのにだ。


「本当に出るんすか? 前線は俺らに任せて、後ろで指揮でも取ってた方がいいんじゃないですかね。無謀ですよ」


 片腕じゃあ、どう考えても無謀だ。どっちの腕でも剣を使えるのは知ってるが、それを踏まえても無謀だと言うしかない。

 自分たちの負担が大きくなるのは明らかでも、無理だと言わなくちゃならない。言われたからと言って、素直に聞くかどうかは分からないけどな。


「それはジジイの仕事だ。一人だって多く戦える人間が必要なんだ。相手は土塊と雑魚ばかりだ。片腕でもなんとかなるさ」


 実際のところがどうかはさておき、余裕はあるように見える。普段と変わらない印象だ。

 どれ、もう一つカマをかけてみるか……。


「ツギハギでよけりゃあ、くっつけるのは構わないですが、これ大丈夫なんすか? ぶっ壊したなんて知れたら、大目玉じゃないっすかね。間違いなくキレますよ」


 やれと言われればやるしかないのだが、これで本音が分かるだろう。伊達に付き合いが長いわけじゃあないからな。


「それで済めばいいけどな。念のため貴族にやられたことにしようと思う。お前も、もし聞かれたらそう答えろよ。でなけりゃ、ユウのやつが殺されちまう」


 すでに後の事を心配してる。つまり、会長の中じゃあ、勝ちが見えてるってことか。

 いくら並みじゃなくたって人間一人が増えたくらいで、貴族がどうにかなるなんて、俺には考えられないけどな。


「はぁ……俺たちの勝算はどのくらいあるんですかね? いくら警備が手薄でも、簡単に殺せないでしょう。連中は……」


 もう、何を言っても無駄。

 どうせやらなきゃいけないんだ。

 それなら、さっさと作業を始めた方がいい。


 そう判断してツギハギ作業の道具を手に取りながら、貴族に勝つという根拠でも聞こうと思った。


「そうでもないさ。貴族は確かに強い。おまけに、人間には無い傷の再生能力もあるしな。だが、弱点もある。考えてもみろ。昔はアレと戦争してたんだぞ?」


 思わず手が止まった。

 弱点なんていうものがあるとは知らなかったから。もし、そんなものがあるのなら──


「──なら何で。どうして今まで連中をのさばらせておいたんだ! ……アンタなら殺せたんじゃないのか……」


「手を止めるな。何度も言うが、俺たちには無理なんだ。やつらの纏う多重多層の防壁を破れない。制限された力では、昔のままの奴等には勝てない」


 防壁。魔法使いたちの防御手段。

 自己の周囲に魔力の壁を作り、物理、魔法、どちらともを防ぐ防御術。その強度はその術者の力に等しい。


 このいく倍も凶悪になっているのが貴族の防壁。

 一枚二枚ではなくもっと多重に重なる、人間とは異なる防御の魔法。貴族という生き物全部が持つ、基本的な性能だ。


「アンタの腕で無理なら、ユウのやつには荷が重いんじゃないですかね。剣の腕で、アンタ以上の人間なんて見たことないですけどね」


「この義手の強度は貴族の防壁と同じか、それ以上だと、作った奴が言ってたぞ?」


 そう言ったなら、それは間違いない。半端な物なんて作るわけがないし、そんな物を認めるような人じゃない。


「……なら、今回の俺の役目ってのは何なんですか? 俺なんかじゃあ、貴族とやり合うのに戦力にゃならないと思いますよ」


「ユウが一撃で仕留められるように補佐しろ。本当は俺がやるべきなんだろうが、この状態じゃあな。なら、俺の代わりはお前しかいないだろ」


「代わりすか」


 この人の代わりが務まるのか? 所詮はこの人の背中を追いかけてきただけの自分に……。

 そう思う一方で、代わりとさえ言われたことに、認められたと喜ぶ自分もいる。出来て当たり前。褒められるなんてのは珍しいからだろうか。


「出来るだろ? 事前に教えられることは全部教えてやる。後はお前次第だが……」


「──会長。少しよろしいでしょうか?」


 そんな台詞とともに、自分と同じ色のローブを着た男が、ツギハギ作業中のテントに入ってきた。

 まず最初に思いついたのは、何かしらの問題が発生したのか? ということだ。


「どうした。何か問題か?」


「そうではなく、滞りなく終了しましたので報告に。それと、前線に出られると聞いたのですが……」


 悪い報告でなかったことに安堵したのも束の間で、ツギハギでつけられている義手に視線が注がれていることに気付いた。やはり、誰もが同じことを思うようだ。


「スタークにも言ったが出るぞ。戦えないなんてのは、戦わない理由にならない。俺より役に立たなそうな奴等を、みすみす死なせる訳にはいかないからな」


「だそうだ。言い出したら、俺たちの言うことなんて聞きゃあしないからな。諦めようぜ」


 いつだってそうだ。無理を平気で言うくせに、こっちの言い分はろくに聞かない。

 毎度毎度、それに付き合わされる身にもなってほしいぜ。


「しかし、あまりに無謀かと」


「それはお前たちの働きによるな。ああ、それと言い忘れていたが、人形についてだ。戦力の出し惜しみはするな。全武装の使用を許可する。一体も村に入れるな。中継役のマナ。魔法使いの二人。スターク以外の全員で叩く」


「えっ」「──はぁ?!」


 冗談としか思えない台詞。聞き間違いでなければ、魔法使いが頭数に入っていなかった。

 戦闘において必須である支援魔法無しで、魔法使いも無しで一戦やろうって言うのか……。


 これでは無謀どころではない。魔法使いが一人負傷しているのは自分の落ち度にしても無理がすぎる。

 本当にそんなんで戦えると考えてるのか?


「何の支援も無しにやるんですか? 我々だけで?」


「それは無茶だろう。いくらなんでもよ。せめて一人は魔法使いを前線に──」


 まとも事を言ったはずなのに、『──駄目だ!』と一喝され、続きは言わせてさえもらえない。そして、その声は本気だと語っている。


「非戦闘員の無事が最優先だ。やるからには一人の犠牲も許さん。それに、お前たちは自分を過小評価しすぎだ。必ずやれる」


 無理を言われた二人。互いに顔を見合わせ、ため息をつく。自分たちが何言っても無駄だと悟った。


「……分かりました。残りの隊員には、急ぎ私から伝えますので。失礼します」


「ああ、これが済んだら俺もそっちに合流する。それまでに準備は万端にしておけ」


 一礼し、テントを後にする背中。言いたい事もあったろうに、何も言わずに去っていく。

 分かるぜ。本当に何考えてんだかな会長は。


「スターク。俺は出来ないと思う奴に、やれなんて言ったことは一度としてないぞ? 無茶と無理は違うんだ」


「そんなもんですかね。どっちも同じだと思うんすけど」


 これはツギハギに時間をかけてはいられない。

 とっとと終わらせて、俺も手を打とう。

 そう会長には教わってるしな。


 一人、魔法使いがこの村にはいるじゃないか。

 会長は巻き込むつもりが無いみたいだが、そんなことを言ってられない。頼めば必ず協力してくれる。感じた印象に間違いはないはずだ。


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