表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
147/337

 盗賊 10

♢11♢


 村に接近する盗賊を捉えた。二隊。二十人。

 火神(かがみ)たちは商会の支部のある村。

 最後に殺す貴族のいる村に戻った。

 狼に確認させたから間違いはない。


 夕暮れか……。


 スカーレットを思い出す。

 彼女と出会ったのもこんな時間だった。


 盗賊たちを迎え撃つために村を出ようと、村の真ん中の道を歩いていく。

 すると前方から、見覚えのある髪の色の彼女が、同じように歩いてくる。見間違いでも幻でもない。


「──スカーレット」


 そう声をかけていた。

 自分で理解できないくらい自然に。


「アスカ、やっぱりこの国にいたんだ」


 再会は数日ぶり。

 もっと長い間がかかるであろう再会は、簡単に訪れた。


(きみ)、どうしたんだ。僕に来いって言ってたじゃないか……」


「お使いのついでよ。ついで」


 お使いのついで……。

 ムツの国での最後のあれは、そのくらいのものだったのか?


「ムサシまで来たから、ついでにムツに行くつもりだったんだけど、この国に出た。きっとムサシの彼に引かれたんだ」


 ムサシの彼。それは──


「火神のことか。ムサシの彼ってどういうことなんだ?」


「火神……確かそんな名前だったわね。会ったの? 彼も貴族を倒してる。聞かなかったの?」


 つまり、火神も貴族を殺した。

 それならこの世界の一端には触れたはずなのに、盗賊を見逃し、その上ただ倒せばいいと思ってるのか。あいつは……。


 甘いヤツだ。

 それで世界が救えると考えているのなら。

 やっぱり、一人でやる選択は間違いじゃなかった。


黒崎(くろさき)、あなたも一緒に来たら?』


 盗賊を探索した折に、カレンにそう言われた。


『スタークは一緒に行ってくれるやつを探せ。そう言ったけど、私たちと一緒に行かない?』


 それを断った。


 でも、一瞬でも迷ったのは間違いない。

 誰かが隣にいてくれたら、そう思うことはあったから。


「スカーレット。僕は今から盗賊を狩りに行く。君はこの村にいてくれ」


「そのくらい手伝うわよ?」


「一人でいいよ」


「なら、勝手にやるわ。どっちから来るの?」


「話を聞いてたのか……」


「聞いてるじゃない。私だって、これから襲われます。って分かってるんだったら手伝うわよ」


 一人でいいと言ってるのに。

 彼女のこの強引さは自分には無いものだ。少しだけ羨ましくなるな。


「好きにしてくれ。僕も勝手にやるから」


「じゃあ、アスカそっち側ね。どっちが多く倒せるか勝負しましょうよ」


「いいよ。ただ、手は抜かないからね」


 村から出て、誰にも気づかれることなく終わらせようと思っていたのに……。

 スカーレットといると調子が狂う。


 それでも手は抜かないけど。


 影から狼が現れる。

 瞬く間に盗賊の数の倍以上に増える。


「──ちょっと、それズルくない? アル様に聞いてたより大きいし強そう。そんなの対等じゃないわよ!」


「魔法は自分の力なんだからズルくはない。これでも少ない方だ」


 スカーレットが三人倒す内に残りの盗賊を狩り尽くした。


 これで残りは半分。


 ♢


 スカーレットが倒した三人は息がある。

 彼女も無駄な殺生はしないらしい。

 なら、予定を変えてこいつらを使おう。

 馬を尾けるのはやめて、こいつらに案内してもらおう。


 もう少しだけ生かしておいてやる。

 盗品を持ち帰る場所まで、連れて行ってくれ。


 狼に追跡を頼んで場所が分かり次第、消しにいこう。この国の悪を。そのあとは貴族と、それに従うやつを。


 だから、今の内に休んでおこう。少し気を張りすぎた。


「──なに、野宿なの?」


「スカーレット。お使いはいいのか? 帰った方がいいんじゃないか。心配するぞ、あの人」


「一日二日、帰らなくても心配しないわよ。それよりあなたでしょう。せっかく感謝されて、泊まっていってくれって言われたのに。それを断って野宿するのね……」


 村を襲おうとしていた盗賊と戦うのを見られていた。終わったあと村まで連れて行かれ感謝された。


 感謝されるとは思わなかった。

 自分勝手にやってることなのに。

 助けた女性に頼まれなくてもやったことなのに。


「いいんだよ。テントも必要な道具も揃ってる。君だけ泊めてもらいなよ」


「その道具もスゴイわよね。中どうなってるの?」


「……やっぱり聞いてないよな」


「テント一個しかないの? しょうがないわね……」


 何がしょうがないんだろう?


「なにキョトンとしてるの。私も寝るわよ」


「……どこで?」


 スカーレットはバンバンとテントを叩く。

 嘘だろ。いくら彼女でもそんな真似は。


「早く寝るわよ。休める時に休む!」


 冗談じゃないのか。

 それで僕が休めると、本当に思っているのだろうか。


「見張りはいるんだから、自分は見張りをするは通じないからね」


 言い訳もできないらしい。

 諦めよう。この強引さには敵わない。


 朝方、狼が戻ってきた。

 盗賊の潜伏場所を見つけたのだ。


 お前たちの盗賊稼業は、今日でお終いだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ