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 盗賊 8

♢10♢


 森での戦いの後。お互いの誤解も解け、この国での目的も同じだと分かった。


 黒崎(くろさき)も盗賊を追っている。それならばと情報交換することになった。


 場所は目的地だった村。商会の支部から南西の村だ。


「背後にいるのは貴族なのか……」


「赤い目の若い男。そいつが黒幕らしい」


 そいつが盗賊を使い、村を襲い、女の人を攫ってムツの国を目指している。

 俺がこの話をしている間、黒崎は表情を変えなかった。


「盗賊から背後にいる奴の話は出たけど、誰なのかまでは知らないみたいだったから助かったよ。ありがとう」


「俺だって、他に盗賊を追ってるやつがいて助かる。相手は人数が多いみたいだからな」


「一隊十人程度。それが十隊あるみたいだよ。三つ潰したから後七つ」


 黒崎は一人だ。それなのに、もうそれほどの数を倒している。


「……詳しいな。黒崎、お前さんずっと一人か?」


 あまり口を挟むことのなかったスタークが、黒崎に訪ねる。


「一人といえば一人だけど、手伝ってくれた人たちはいましたよ?」


「力もある。それなら問題ないんだろうが、誰か一緒に行ってくれるやつを探せ。一人ってのは、やめといた方がいい。いろんな意味でな」


「……そうですね」


 黒崎はそれ以上はスタークの話に答えなかった。


 そして、ずっと話しかけたかったらしいカレンが手を挙げる。スタークが話していたから我慢していたようだ。


「私も聞きたいことがあるんだけど、いいかな?」


 カレンの聞きたいこと……きっとあれだろう。

 だんだん分かってきた。カレンは見たことないもの、知らないことへの関心が強い。


 外の世界が見たい。これが最たるものだ。

 全部を含んでいる。未知への好奇心とでも言うべきだな。


「──あの魔法はなに? どうなってるの? それに、その銃もどういう仕組み? ムツの国ってどんなところだったの? ……とりあえずこのくらいで」


 そんなに聞いても、一度には答えられないだろ……。


(きみ)にはすまない事をした。だから、僕に答えられることなら答えるよ」


 カレンに悪いことをしたと思っている黒崎は、カレンの質問責めに付き合うようだ。

 なかなかハードなんだよな……。


 黒崎が俺たちを盗賊だと誤解していたのは、盗賊たちと遭遇した際の残り香。それが原因だった。

 あの時、カレンは馬車で盗賊たちを轢いた。煙幕で見えなかったから、俺は気がつかなかったがカレンは盗賊と接触があったらしい。


 その際に服に匂いがついた。

 狼はその匂いを発見し、黒崎は森に先回りしていたんだ。


「カレンは冒険家とか向いてそうだよね。世界一周とかしたそうだし」


「リックの旅も変わらないんじゃないのか?」


「カレンほどの探究心はないよ。学者とかも向いてるかもね」


 冒険家はありそうだ。世界を見て回りたい目的とも一致するし。

 黒崎に質問して答えを回収する姿は、学者にも見える。知識欲が旺盛な面もあるな。


 ♢


「あの魔法はなんなの。生き物を作る魔法?」


「支配者の魔法というらしい。貴族の使う、眷属を作る魔法と同じだよ」


「……でも、黒の魔法じゃないよね?」


「カレン。(きみ)、そんなことも知ってるんだ」


「なんの魔法なの? 名前とかあるの?」


「夜ノ魔法。そう名付けられた」


「夜。なにを掛け合わせたの?」


「黒と白を」


「あなたが黒。それとも白?」


 彼女の質問は続く。


 ♢


 黒崎が盗賊の討伐に加わったから、ここから先の展開が変わった。

 俺たちは待ち伏せるつもりだったんだけど、黒崎が提案してきた。


「五人いるんだ。分かれて盗賊を探さないか? この村に姿を見せるまで待ってることもないだろう」


 俺と黒崎は一人でも盗賊くらいに遅れはとらない。


「振り分けは任せるよ」


「黒崎がカレン。優がリック。それぞれ連れて南北を探せ」


 指揮は慣れてるスターク。

 日頃から指示を出す立場なやつがいてよかった。

 会長がいる時は全然分からなかったけどな。


「スタークは?」


「ここに誰もいなくなるのは避けるべきだ」


「僕はそれで構わないよ」


 俺も構わないけど……。


「魔物避けは? 無いと、俺めんどいんだけど」


「──ボクが使えるよ! 一人旅には必要だからね」


 リックは魔法も使えるのか。黒崎も使えるし……。

 俺とスタークだけか、使えないの。


火神(かがみ)。君は力のコントロールが下手みたいだね」


「これでも少しはマシになったんだぜ? 俺が教えても理解しやしねー」


 あの教え方で言われてもな。スタークは教えるのには向いてない。


「探索には鼻が聞くこいつを連れて行ってくれ。どちらかに反応があれば案内するから」


 黒崎の背後。その影から狼が二体現れる。


 影に潜れるのか、あの狼。

 今のを見れば、森の中でもそうだったのだと分かる。


「発見したら判断は任せる。俺からの指示ない。ただ、一つだけ……」


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