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 盗賊 6

♢9♢


 商会の支部を後にした俺たちは、次に狙われるであろう村を目指している。商会で必要な情報は手に入った。


 盗賊は複数のグループに分かれて行動している。

 昨日、遭遇したのはその一団だった。十人編成だとしても複数グループが存在するなら、人数は膨れ上がる。被害だって大きくなるはずだ。


 手足を潰してから頭を潰す。

 盗賊を倒してから貴族を。そういう話になった。


 聞きたい事は他にもあったのだが、また機会はあるだろうし、今は一刻も早くあの盗賊たちを倒さなくてはと思った。


 だから、あの後すぐさま村を出た。

 商会の建物を出るとき一つ重要なことを言われた。


「最後になっちまったが、夜中に訪ねてきたヤツがいてね。あの子も、あんたと同じマヨイビトだと思う。女を一人匿ってほしいと連れて来たんだ。盗賊に攫われた女だった。その子は──」


 俺たちと同じようなことをしているマヨイビト。それは、五人の中の一人なんじゃないのか?


「クロサキと名乗った。歳もあんたと同じくらいだね」


 クロサキ。そいつもこの国にいる。


 ♢


 目的の村に行くには、左右を木に覆われた森の中の道を通る必要があった。そこは明るくても薄暗い場所だった。


「アオバさん。あそこに残ってくれて良かった。男の人を見ててくれるみたいだし」


「あれは趣味みたいなものだから」


「人助けが趣味とか、いい人だな」


「違う。治療が趣味の変な人だよ……」


 カレンのその言い方をされると変な人になってしまう。流浪の医者か。あの人のことは何も聞けなかったな。


「──ユウ、森の中になんかいる!」


 リックがそう声を上げる。


「嘘。だって何の反応もないよ?」


 カレンの魔法に反応がないのに、リックは何かいるという。


「血の匂いがする。それも人間の血だ。ユウ、行くよ!」


 スタークは運転手だし、カレンは魔法使い。出張るなら俺とリック。


「カレン、援護頼む!」


 それだけ言い残して馬車を飛び降りた。


「どこにいるんだ?」


 馬車は停止せずに移動を続けている。早くここを抜けた方がいいからだろう。

 視界も良くないし、木に覆われてるから何がどこにいても分からない。


 だから、カレンは索敵を続けていた。


「わかんない。匂いはあるのに姿はない」


 カレンの魔法は機能してる。リックのこれは獣人の嗅覚というやつか。


 ウゥ──


 今、微かだけど唸り声が聞こえた。

 何かいるのは間違いない。けど、どこだ?


 木々の間、それとも上か?

 前後左右どっちからなのかも分からない。


「──ダメだ! 今の声、馬車の方からしたよ!」


 後ろを振り返ると、何か黒いモノが地面から這い出るところだった。


 狙いはあっちか!


「カレンは気づいてない。リックは弓で狙ってくれ。俺が前に出るから」


「わかった。 ──ユウ、速! 弓より早いとか……」


 黒く大きな生き物が地面から現れた。ソイツは俺の速度が乗っている、背後からの一撃を簡単に躱す。


 コイツ、犬か?

 それにしてはデカい。人間とサイズが変わらない。


 嚙みつこうとしたソイツが見せた鋭い牙。それを見た瞬間に犬とは違うと分かる。

 それと同時に、もしかしてと思う生き物を思いついた。


 もしかして……狼なのか? コイツは。これも魔物なのか?


 あくまでも狙いは馬車のようで狼は、俺を早々に無視して馬車に向かっていく。リックの矢も難なく躱される。


「素早いね。矢が当たんない……」


「それより馬車だ。何であっちを狙うんだ」


 狼とは別に、キラリと光るものが馬車に向かっているのに気づいた。それは白い光線のようにこの位置からだと見える。

 カレンも接近に気がつき、応戦するために魔法を使おうとした。狼に向かって。

 

 光線にカレンは気づいてない? それに狼もカレンを狙ってるのか? やらせるかよ……。


「──カレン!」


 木を蹴って飛び上がり、迫る光を剣で弾く。そのまま狼も斬り捨てようと剣を振るう。

 直上からの攻撃を避けられない判断したのか、狼はその爪で剣を受けた。


 ……重っ。


 斬るどころか剣は受け止められ、その上押し負ける。力負けではなくコイツが重すぎる。

 それもそのはずだ。狼が脚を地面に着けた場所がヘコむ。俺は剣を振り切れない。


 あの動きで、こんな重量なのかコイツ?


「──リック! そのまま馬車に戻ってカレンと二人で援護してくれ。コイツは俺がやる」


「了解」


 新たに二つ、白と黒の光がカレンに向かっていく。


 どうあってもカレンを狙うのか……。


 今度も同じように弾くつもりだったのに、剣は空を切る。直前で光の軌道が変わったのだ。


 なんなんだ……。この狼も光も。


 光は逸れた軌道のまま一周し、再びカレンに向かうんだろう。


 カレンが言ってたよな。森の中には何もいないって。なら、誰も巻き込まない。


 だったら──


 剣の黒い刀身が輝きを放つ。

 盗賊の折の量ではない魔力を剣に与える。


 ──これならどうだ!


 森の木々を全て斬り裂いた。背後の馬車のいる方向以外を全部。

 斬撃に光はかき消え、狼は地面に潜った。


 ♢


 足場だった木々が一撃で全て斬られる。

 それどころか一キロくらいは広がっていたはずの森が無くなる。


 狼の一撃も難なく受けた。

 あんなヤツが盗賊にいるのか?


 軌道を操った弾ごと対処するためか。

 相手の人数は四人。


 ……どうしようかな?


 斬撃をまともに受けた少年は、ひび割れた障壁を見てそう思った。


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