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 盗賊 4

「ボクはどっちにしようか決めるために、旅をしてるんだ。俗にいう自分探しの旅ってやつかな?」


 服を着たリックは自らの旅の目的を俺たちに話した。だけどな、絶対違う……。自分探しってそんな意味じゃない。


 リックの男の子なのか女の子なのか問題は、最悪の展開になってしまった。どちらでもないという結果に。それを見てしまったから信じるしかない。俺もカレンも。


「その尻尾は関係あるのか?」


 盗賊は獣の混ざりものと言っていた。リックと俺との違いは、尻尾の有無くらいだろう。


「そうだよ。普通の人には絶対にありえないことだからね。獣人の一部に現れる現象だね」


 獣人。それが混ざりもの。


「人の部分が男で、獣の部分が女だった場合とかにね。逆もあるよ。獣人は獣との間に生まれた子じゃない。普通に生まれた子に混ざってる。最初からね」


 生まれるまで分からず、生まれた瞬間に人とは呼ばれなくなる。そう聞いた。


「神って呼ばれたりもするね。珍しいからだと思うけどね」


 性別を選べるからだろうか?


「人寄りか獣寄りかでも違うらしいよ。ボクは人寄り。獣の部分が尻尾しかないからね」


 中には獣寄りの人も存在する。その人は限りなく獣に近い姿をとれる。一線を踏み越えなければ、いつでも姿を変えられる。そんな話も聞いた。


「ボクは人間的には女の子。獣的には男の子。どう、分かった?」


 俺たちはうなづくしかなかった。

 ここで分からないと言ったりしたら、また脱ぎ出す可能性が多分にあったから。


「よし! じゃあ寝ようか。 ……ところでカレン。ボクの格好を注意したけどさ、自分もほとんど下着姿だよね……」


 カレンは上しか着てない。寝る時の格好なんて、人それぞれと思って誤魔化すしかない。

 カレンが慌てて秘密基地に戻っていったのは言うまでもない。


「本当に寝るよ。ユウ、そっちね?」


 リックは、テントにいく気も寝袋を使うつもりもないらしい……。意識しないようにして寝るしかない。


 これが毎日続いたりはしないよな?


 ♢


 次の日。俺たちは商会の支部のある村まで到着していた。日が昇ったらすぐさま移動してきた。

 盗賊の情報を早く得て、その行いを辞めさせなくては。そう思ったら居ても立っても居られなかった。


「馬車は村の中までは入れない。(ゆう)に魔物避けを掛けてくれ」


 そうスタークが言ったので、馬車は村の近くに隠した。ポシェットは使わなくても大丈夫だろうとなった。


 この国で一番安全だろう場所まで来た。


「リックとはここまでだな……」


「何言ってるのさ。ボクも付き合うよ? 盗賊退治!」


「手伝ってくれるのはありがたいけど……いいのか?」


「借りもあるし、人助けにもなるからね」


 盗賊退治。あくまでも殺すつもりはない。

 やったことは許せないし、許されない。でも、俺に裁く権利などない。


「あまっちょろいけど、いいんじゃない? それはユウの信念なんだろう? なら貫ぬかなきゃ!」


 信念というほどのものじゃない。

 殺したくないし、死なせたくない。それだけだ。


「わかった。手を貸してくれ」


「嫌だと言われても付いていったけどね?」


 この村で、一つの事件と出会いがある。



♢6.5♢


 夜とは、少年の使う生き物の最も輝く時間。彼らはそこから生まれたのだから。


「盗賊の潜伏場所を探してくれ」


 影から現れた狼にそう告げる。一匹のように見えていた狼は数えきれないほど増え、盗賊の匂いを覚え散っていく。


「貴女はどうする? 必要なら助けてくれる人のところまで……」


「──あいつらを殺して! ……わたしは全部奪われた。あの盗賊たちが憎い……」


 村から連れ去られ、自分だけ命をやっと繋いだ女の言葉。女には恨みと憎しみしか存在しない。


 しかし、自分ではなにもすることはできないだろう。同じかそれ以上のめに合わされてしまうから。

 口で憎いと言うばかりの女の願いを、少年は聞き入れる。


「だったら、この国にいた方がいい。すぐに盗賊たちはいなくなる。裏にいるやつ共々ね」


 少年は女をこの国に残した。

 自分が守ればいいし、何より……見せたかった。綺麗になった、この国を。


「地図によると商会の支部のある村がある。そこまで送ろう。僕は顔がきくらしいから、少しそこにいてください」


 この東の村から移動する際に魔物と出くわすが、それも関係ない。どうせ少年は触れられもしないのだ。


「魔物に怯え朝を待つ必要も無い。このまま移動しよう。魔物を近寄らせないくらいの余剰戦力もあるから大丈夫ですよ?」


 暗いうちに少年は、商会の支部のある村への移動と、見つかってしまった哀れな盗賊たちを片付けた。

 日が昇り、さらに盗賊たちへの被害は増す。一人もいなくなるまで……。


 ♢


 出会いは必然。誰かの道は、別の誰かに繋がっている。無意味なことなど存在しない。


 緋色の彼女が届けた荷物。あれを少年は持って来た。

 繋がりが出来たのだ。本人たちは知らずに。


 だから、出会ってしまう。


 ♢


 変なところに出た。

 私の魔法には印をつけたところに飛ぶ種類もある。てっきり、アスカのところに出ると思ってたのに……。


 お使いも終わったし、アスカのところに行って拾っていこうと思ってたのに。転移した先が、そもそもムツの国じゃない。


 その辺に誰かしらいるだろう。まずは、ここがどこなのか確かめないと。


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