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 ムサシの国。その後。 3

♢3♢


「俺とマナは夕方にはここを発つ。魔物の掃討まで手を貸したかったが、ムツの国の件は無視できない。一足先に本部のあるイワキへ戻る」


 お土産の話の後、俺たちは会長に呼び出された。

 しかし、不機嫌なスタークはいないし。さっき叱られたばかりのマナさんは無言。

 俺とカレンには何ともいい難い雰囲気だ。


「応援を手配したから到着するまでは待て。一日あれば到着するはずだ。そいつらが俺たちの代わりだ。それと、掃討作戦は砦の騎士も参加することになった。作戦は伝えてあるから揉めることはないと思うが、後は何かあればジジイたちに頼れ」


「私たちは作戦が終わったら、イワキへ向かえばいいんですか?」


 商会の本部がある場所。福島県だな。海沿いの街らしいな本部があるのは。


「スタークが案内する。ムサシを出たらシモツケ、シモウサ。この二つの国を避けてイワキまで来い」


「どうして避ける国が二つもあるんだ?」


「貴族のいる国だからと、ヒタチを攻める直前まで刺激したくないからだ。他にも避ける理由はあるが詳しい話は、全員イワキまで来たら話す」


 ヒタチっていうのは、茨城県。火神(かがみ)の本家のある場所だ。


「……火神と関係あるのか?」


 質問したわけだが、だいたい予想はついている。


「無くはない。鹿島神宮という場所を知ってるか?」


 ああ、やっぱり。そんな名前が出るんじゃないかと思った。


「知ってる……」


 ふつみたまのつるぎ。それのある場所だ。


「表では神宮。裏では遺跡。どちらも祀ってるのは火だ。ここを落とすのが目的だ」


 異世界に来てまで火神と関係ある場所に行くのか……俺は。切っても切れないもので繋がってるのだろうか。


「……(ゆう)?」「ユウくん?」


 女性陣二人に心配させたようだ。


「ムサシの上、コウズケは支配者のいない土地になる。無法地帯と言っていい。商会の支部のある村はあるが、治安も良くはない。盗賊たちの使うルートだ。貴族よりはマシだが気をつけろ」


 俺たちはそのルートを通り、目的地であるイワキの国を目指すことになった。


 ♢


 やっぱり会長は知りすぎてる。

 ……きっと、アレのことだって知ってるはずだ。


 俺は貴族と戦った時、無意識にアレを思い浮かべた。だから、刀は大太刀に姿が変わったんだ。

 炎を纏う大太刀。炎の記憶の果てにあるもの。


 心の中でアイツを斬り捨てた一撃。灼き斬る斬撃。そのイメージは現実のものになった。

 カレンの魔法はそれを可能にする。そして俺は扱えていた。その魔法を。


 魔法だから? 術者がカレンだから? そこまでは分からない。けど、アレと同じくらいの力があるのは間違いない。


 使うのなら覚悟が必要だ。燃やす炎に呑み込まれないだけの覚悟と意思が。


 異世界であっても、ここは日本か……。

 嫌だとは言えない。逃げる選択肢もない。


 ただ、進むだけだ。


 ♢


 こうしてムサシの国を出た俺たちは、予定通りのルートを進んでいる。

 遠回りの道のりだけど、数日あればイワキまで到達できるとのことだ。


 あと、実は煙草を買ってきていた会長は、それをスタークに置いていった。

 煙草があったからか機嫌がいい運転手は、さっそく煙草をふかしながら手綱を握っている。その馬車の荷台に俺とカレン。


 しかし、過ぎていく風景をただ見てるのにも飽きてきた……。


「生き物じゃないのに、生き物みたいだよな」


「馬か。そうだな……本物と大差無い。疲れない分こっちのが優秀か?」


「私が動かしてるんだから、私は疲れるんだけど……」


 馬車を引く馬の動力も魔力。

 俺とカレンで交代して魔力を注いでいくことになった。馬車には魔物避けが内蔵されているので、乗っている限りは魔物とは遭遇しないと思う。


 ここら辺に慣れているスタークも一緒だし、安全な道を進んでいっているはず。


「──待って。誰かいる」


 ……俺のせいだろうか?

 実を言うと運がいい方ではない。不運、とは違うか。タイミングが悪い? とでもいうべきものか? があるような気がしている。


 ここは、だだっ広い草原だし見通しはきく。プラス、カレンは自分の魔法で周囲の警戒も担っている。


「無視だ。無視! 関わらず通り過ぎるぞ」


 いや、無視するかは確認してからでも……。


「──スターク、もう少し近寄って!」


「嫌だって言ってんだろ」


「──いいから! 早く!」


 やれやれと言いたげな様子ではあったが、馬車はカレンの言った方向に進路を変える。


「……ったく、近寄るだけだからな? 俺は馬車を降りる気はない」


 いや、もうちょっとはやる気だそうよ?


「誰かが襲われてる! 一人に対して相手が十人くらい!」


「もういいよな? 確認したし、元の道に戻って先に進むぜ」


「駄目だろ。なに言ってんだ?」


 そんなの見過ごして進めるわけないだろう。


「生きた馬に、武装……」


 カレンの口にした襲ってる奴らの身なりに、やる気のない運転手の反応が急変する。


「──なんだと? 馬に武装……。こないだの盗賊共か。ぶっころす!」


 馬車が速度を上げ走り出す。


 ──ど、どうしたんだ。スタークは?


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