7話 西エリア第一ボス
次の日。
俺は西エリアボスに挑戦する為に、街でクエストを探し歩いていた。
「うーん、なかなか見つからないなぁ。そもそも、どういうクエストなんだ?」
西エリアボスなんだから、西エリアに関するクエストだと思うんだが。
西エリアの特徴って言ったら、あのモンスターの数だよな。
モンスターを一定数以上倒せ、とか?
にしたって、どこでクエストを受ければいいんだか。
肩を落としながら歩いていると、いつの間にか冒険者ギルドの前に来ていた。
そう言えば、と思い出す。
「冒険者ギルドって、換金以外にもクエストの確認が出来るんだっけ。俺が受けられるクエストに何か増えてないかな」
俺は殆ど期待せずにギルドに入り、受付でクエストの確認を頼む。
少し待っていると、さっきの受付のお兄さんが紙を持って戻って来た。
「はい、これが貴方のクエスト一覧です。どうぞ、ご覧ください」
「ありがとうございます」
この紙は返さなければいけないらしいので、その場で急いで読む。
すると、一番下に探していたものがあった。
ボスクエスト<西の草原>
思わず目を見開いてしまった。
受付のお兄さんが驚いているが、それどころでは無い。
探していたクエストがこんな簡単に見つかったのだ。
こんな簡単に見つかるんだったら、早く来れば良かった………。
「メニューでクエストを確認出来れば、こんな事も起こらなかったのに………」
「ありますよ?メニューでクエストを確認出来る様にする方法」
「え?マジで?」
この受付のお兄さんが衝撃の告白!
え?ほんとの本当にできんの?
「ギルドで配布されている、この水晶を使えば、メニューにクエストの欄が追加されますよ」
「早く下さい今すぐに!」
「は、はい。ではこちらをどうぞ」
これを使えばいいのか。
「ありがとな、お兄さん!じゃあな」
「またのお越しをお待ちしております」
俺は噴水広場まで行き、昨日と同じ様にベンチに座った。
例のアイテムを取り出して使ってみる。
アイテムが砕けたので、メニューを確認してみると、一番下に確かに追加されていた。
「ふぅー、これで安心だな。クエストは一体どんな内容なんだ?」
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ボスクエスト<西の草原>
詳細:西のエリアボスを倒す為には、扉を開け なければならない。その扉を開けるには[西の草原]にいるモンスターを100匹倒さなければならな
い。[カウント 99/100]
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俺は思わず顎を外しそうになった。
「な、あ、後一匹倒すだけでよかったのか。俺の苦労は一体………」
しかし、ずっと落ち込んでいる訳にもいかない。
「よし!行くか!」
俺は立ち上がり、西エリアに向かって歩き出した。
数分で門に着く。
門から街の外に出ると、そこかしこでプレイヤーが戦っていた。
その間を縫う様に歩いて行く。
そうやって進んでいくと、プレイヤー達から大分離れたところまで来れた。
「じゃあ、俺もやるとするかな」
俺は緋炎の紅爪を装備してから、更に奥に進んで、モンスターを探しながら歩く。
けれど、以前の様にモンスターが現れなかった。
恐らく、門のところのプレイヤーのところに、西エリアのモンスターが殆どつぎ込まれているのだろう。
それでも、進んでいくと、なんとか1匹見つける事が出来た。
しかし、そのモンスター、何か様子がおかしい。
「鑑定してみるか」
そうして鑑定したのがコレ。
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【バーサークボア】Lv1
詳細:獣系モンスター。怒り狂って周囲を破壊しまくる。
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と、この様に、第一エリアのモンスターとしてはかなりの強さを誇るモンスターだが……。
「邪魔」
俺は一気に近づき、首を下から切り飛ばした。
そして、そのままボスの扉の前のセーフティーエリアまで走る。
走りに走って、なんとかセーフティエリアに着く。
「ふぅ。なんとかダメージを負わずにここまで来れたな。ステータスの確認は……別にいっか。どうせ変わって無いだろうし」
俺は息を整えると、直ぐにボスの扉の前に行く。
俺は深呼吸をしてから扉に触れた。
『プレイヤー【キョウ】の西エリア第一ボス【キラークラッシャー】への挑戦を確認。条件の達成を確認。挑戦が受理されました。ボスの扉が開かれます。扉の中へお進み下さい』
「よし……。行くぞ!!」
俺は気合いを入れて扉の中へと一歩踏み込んだ。
『ボスエリアへの転送を開始します。………
…………………成功しました』
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あれ?ここは……、草原か。
やはりボス戦も草原なのか。
武器を構え気を引き締める。
目の前に半径10m程の魔法陣が現れる。
赤く輝くそれは突然、大きな光を周囲に撒き散らした。
光が収まり、目を開くと、魔法陣があった場所に大きなモンスターが現れていた。
モンスターを睨み、観察する。
モンスターは大まかに言えば、牛だ。
バカデカイ牛がそこに居る。
赤い体毛を震わせ、その異常な大きさの角をこちらに向けている………って、やば!!
「おわぁ!?くそ、なにしやがんだこのでかいだけの牛野郎がぁぁぁぁぁ!!!」
「ブモォ!?!!」
牛の突進を何とか避けた俺は、直ぐ様牛に全力で駆け寄る。
キラークラッシャーもこれには驚いたのか、身体を一瞬硬直させた。
俺はその隙を見逃さずに、上にジャンプしながら牛の身体を切り裂く。
そして、最後に蹴り飛ばしてその反動で着地した。
俺のステータスも俺の武器も、両方が本来あり得ない程のスペックなんだ。
いくらボスと言えど、効かない訳が無い。
その証拠に、蹴りで吹き飛ばされたキラークラッシャーは、身体の横から凄い量のダメージエフェクトを出している。
しかし、順調だったのはここまでだった。
このゲームはNPCだけではなく、ボスモンスターも高性能AIを搭載しているのだ。
俺の攻撃で痛手を負ったキラークラッシャーは、最初の一撃でここまでダメージを喰らった事にプライドを傷つけられたのか、瞳を赤く光らせ、顔を憤怒に染めている。
そして、俺でも認識するのがやっとの速さで突進してきた。
俺は避けきれずに、左腕に喰らう。
それだけで50mは吹き飛ばされ、HPが2割減る。
「なっ!?くっ…………!」
空中でなんとか体勢を整えて着地する。
視線をキラークラッシャーに戻すと、奴は既に突進体勢をとっていた。
(どうする……!!どうすれば……!?」
この時、ようやく俺は、ボス戦がボス戦である意味を知った。