青年Kは考える
青年は何故死んだはずの自分がこんなところに居座り続けているのか、ここに来てからずっと思慮に思慮を重ねてきた。死んだはずの自分の意識が何故こうやって存在できているのかずっと疑問に思っていた。ここが死後の世界でないことは知っていた。そんな簡単に結論が出せる場所でないことぐらい最初から分かっていた。だから尚更わからなかった、始めは自分だけこんなところに呼び出され何をさせられるのだろうかとも思った。でも何も起きなかった。そう思っているところに彼女が現れた。
最初のうちは彼女も死んだ身だろうと青年は思っていた。しかし彼女は死んでいなかった。彼女の手は暖かく、僕みたいな直された体温ではなくて、人間の持っている本来の温もりを持っていた。彼女の心は温かかった。彼女は今を生きていて、未来に可能性を残していた。だから青年はまた悩んだ。
彼女曰く、車が偶然この家の前で力尽きたらしい。
彼女の言葉は疑わなかった。そして当たり前だが青年にはこのことが偶然とは思えなかった。
少し前に死人は仮説を立てていた。自らの頭が熱く、痛実が走るようになるまで状況を考察しある結論を捻り出していた。
絵空事のような死人の拙い仮説は、あの夜のキスで青年の中に彼女を幸せにしたいと思う気持ちが生まれ、よりいっそう信憑性が増していった。
青年の仮設、彼女が現実で幸せを掴むため・現実へと送り返すために僕はここに呼ばれたのではないだろうか。