七話目
鎖が解けるとそこには子犬が一匹眠っていた。
(これはこの子犬?が封印されていたって事でいいんだよな)
注意深く触れないようにしながら慎重に子犬をよく見てみる。
体は柴犬みたいで体毛も茶色で毛は長くない方だろう、尻尾も豆しばみたいな感じだ、そして顔はどちらかといえば狼っぽいかな細長い顔をしている。顔の毛は額から口の部分が白くて他は茶色だ。
本当に寝ているみたいで顔を近づけると寝息が聞こえた、体もわずかに上下しているから生きてはいるみたいだ。
「しかし、これはどうすればいいんだ?」
予想していなかったものが出てきたのもあるが単純にどうすればいいのかが分からない。
「とはいえこのまま放っておくというのもダメな気がするんだよなぁ」
そもそもこれは起こして良かったのかというのもある。
そうして何分か見ていると子犬の目がゆっくりとだが開き始めた、半目になったあたりでまた目を閉じてしまった。
そして眼を開けて閉じてを繰り返しているので起きようとしているのかもしれない。
もしこの場から離れるなら今しかないだろう、でもこの子犬からは怖い印象を受けないのでもう少し待つ事にしよう。
そうしていると子犬が大きくあくびをして何度か瞬きをしたら起きたようだ。
子犬は起きたら周囲を見て確認すると俺をじっくりと見て来た。
どうやらもう完全に目が覚めたようではっきりと俺を見てくる。
(しかし、こんなところに封印されていた犬が普通の犬なわけがないよね、うわぁー一体目の前のこれは何なんだ?)
見た目は完全に子犬だ、だが何かが子犬の姿をしていると考えるのがいいだろう。
(うーん、という事は犬というより狼系で考えた方が良いだろう・・・・・・まさかフェンリルか?)
狼系の神獣でも有名な神喰いの名前が出てきたがこの世界の神話体系は多分だが元の世界とは違う気がする。
元の世界とは違うんだから恐らくは俺の知らない神獣とかなんだろう。
そうしてお互いに相手を見ていると。
「・・・・・・私の封印を解いたのは君だな」
「多分だけどそうだと思います」
目の前の子犬が聞いてきたのでどういう相手なのか分からないので丁寧な言葉で返す。
しかしやっぱり目の前のは唯の子犬ではないのが分かった、喋れるという事は知性があるという事だ。
「ふむ、どうやら浄化が終わったから私は解放されたようだな」
「すいませんがこちらの情報を話しますのでそちらも何か説明してもらっていいですか」
「ふむ、それがいいだろうな、お互いに知っていることを話すとしようか」
「まずは俺ですが名前は信道純也といいます、信道が名字で純也が名前です」
「私はそうだな、神龍獣という風に呼ばれていた」
「え、神龍獣ですか、それって種族名とかですか」
「そうだ、私にはそれ以外の名は今は無い」
(これって神と龍と獣って事だよな、つまり神格級の存在って事か!)
どうやら目の前にいるのはとんでも無さそうな存在らしい。
「しかし君はよく私の言葉が分かったな、私が封印されていた期間を考えると相当古い言葉のはずなのだが」
「そうなんですか、それについてはこれから説明します」
ちなみに今俺達が使っている言語は古代に使われていたという物だ、神様から教わったいくつかの特殊言語のひとつだ。
確か今から五千年前にはもう使われなくなったらしいのでもしかしたらそれ程の間この神龍獣というのは封印されていたのかもしれない。
それに話を聞いて気になることがあった。
「封印されている期間といいましたが封印されている時も意識はあったという事ですか」
「常にという訳ではないが夢を見るような感じでたまにこの世界の事を見ていたのだよ、だから大よそではあるがある程度の時間の流れは分かる」
「そうですか、分かりました」
これは大体になるだろうが今のこの世界について聞く事が出来るんだろう。
「それでどちらから話す事にしようか」
「俺の方が話す事は少ないと思いますから俺からでいいですか」
そうして俺は自分が異世界から来た事、神様から頼まれたなどなぜここにいるのかなどを話した。
そして神龍獣の封印を開放したとこまでを話した、つまり俺の知る事の殆んどを話した。
「ふむ、君の言った事は分かった、それならば色々と納得も出来る」
「あれ俺の言った事を全部信じてくれるんですか?」
「恐らく君の言う神様とはこの世界の創造神にして最高神だろうそれならば君がここにいるのも理解できる」
「そんなに凄い存在だったんですね」
「この世界の最上位の存在だからな凄いに決まっている、しかしそうか最高神が消えて邪神が復活するのか・・・・・・」
「それじゃあ今度は俺に説明してもらっていいですか」
「そうだな、次は私が説明する番だな」
「お願いします」
「まずは私の事についてからだな、これはなぜ私がここに封印されていたのかとも関係がある、先ほど私は神龍獣だと言っただろう」
「それは聞きました、ではあなたは神龍と神獣の両方の力を持っているという事ですか?」
「正確には持てるだがその認識で間違いは無い、私は遥か昔に居た神龍と神獣によって生み出された存在だ」
「そうなんですね、昔ってどれくらいですか?」
「大体一万年程前になるな、そして邪神が封印されたのも同じ時期になる」
「それはあなたが生みだされたのは邪神が関係があるって事ですか?」
「そうだな無関係とは言えない程度にはある、邪神を封印する時に神々は総力を挙げて戦った、そしてその時にもちろん神龍と神獣も邪神と戦った、戦いには最高神も居たが封印をより完全な物にするため戦いには加わらず最高神の力を温存していたらしい」
「それは最高神の力以外で邪神を弱らせたという事なんですか?」
「そうだ、最高神以外で邪神を封印できるほどに弱らせる必要があったからな、戦いはとても酷かったという相手は最高神に匹敵するほどの力を持つのにこちらは最高神の力を使う訳にはいかなかったからな」
「それは良く勝てましたね、聞いた限りではかなり強かったみたいですが」
「とても強かったんだろう、最高神以外の神の殆んどがその戦いで消えてしまったのだからな」
「そんなに強いんですか!邪神って」
「強いまず間違いなく世界最強の存在だ、しかも今は前の戦いと違って神々も居ない正直に言ってまず勝ち目は無い」
「ですよねーそんなの無理ですよねー」
(チクショウ思ってたより全然つえーじゃないか、これは本格的に厳しい感じだな)
俺は今の話を聞いて落ち込んだ、分かってはいたがかなり無理がありそうな相手だ。
「それで神龍と神獣は邪神と戦かった、だが邪神を封印できる位にまで弱らせた時に神龍と神獣は邪神の反撃をくらい相打ちになってしまった」
「成る程それではその二体も既にもういないという事ですね」
「あぁ神龍も神獣も邪神を封印した後に消えてしまったよ、しかしこの二体は他の神々と違ってこの世界の属性を司っていてね、消えたらこの世界からもその属性が失われてしまう」
「それは出来るだけ避けなきゃいけないんじゃ」
「もちろんそんな事になったらこの世界は維持できなくなってしまう、けど邪神と相打ちになった二体には自分の代わりとなる物を生み出すまでの時間と肉体が足りなかった、そこで神龍と神獣は残った力を合わせて両方の力を持った存在を一体生み出した、それが私だ」
「なるほどそう言う理由であなたが生まれたんですね、でもなんで封印されていたんですか?」
「神龍と神獣が邪神と相打ちになった時に邪神からの攻撃で大量の邪気に侵されてしまったらしい、そして生まれたばかりの私もまた大量の邪気を体内に残してしまったらしい」
「邪気ってどんな影響があるんですか?」
「理性を失い死ぬまで暴れまわるようになる、凶暴になっているからな強さも跳ね上がる、しかも私は邪神からの邪気を持って生まれてしまった、このまま成長をして力を付ければ私は大きな脅威になってしまう」
「でも見た感じではそんなに影響は無さそうですよ」
「もう私に残っていた邪気はすべて浄化済みだからな、それで最高神は私の中に残ってしまった邪気を浄化するためにこの施設を作り邪気が完全に無くなるまで私はここに封印されたという訳だ」
「成る程そんな事があったんですね、でもなんで俺に封印が解除できたんですかね?」
「さあな、それは私にも分からないでも君が成長すればいずれは分かりそうだ」
「そうだといいですね」
「それでお互いに自分の事を話し終わったわけだがこれからどうする?」
「俺としては今はまずこの肉体の違和感を何とかしないとですね、まずはそれが最優先です」
「経験の殆んどを思い出せないと言っていたな、それは多分限界まで経験などを封じられたからだろうな」
「でしょうね、ぼんやりとですが全然何かが足りないと精神が感じています」
「増えた魂有素がいきなり強くなる前までの状態まで封印されたんだからな魂が前の状態を覚えているんだろう、だから違和感があるんだ」
「思い通りとまでは言いませんがせめて体を動かす事に違和感は感じないようになるまでは何処かで訓練したいですね」
「それならばこの建物でしばらくは生活するといい、それなりに設備も整っているそれにここいらに生息している生物は強くは無いが希少な物ばかりだ」
「それは確かにいい条件がそろっていますね」
(まずはこの世界について色々と知って慣れる必要がある、ある程度の強さを手に入れるまではここで過ごしてみようかな)
本当にこの建物が生活出来る様ならばここで生活してみる事にしよう。
「分かりました俺でも問題無く生きていけるようならしばらくはここで生活してみようと思います」
「ふむ確かにここを見てから判断した方が良いな」
「それで神龍獣さんはこれからどうするんですか?」
「それなんだが一つ試したいことがある、手の平をこちらに向けて出してくれ」
俺は言われた通りに右手を立てて前に突き出す。
すると神龍獣も右前脚を上げて俺の手の平に当てた。
「私が言った言葉を繰り返せ、間違えるなよ」
「はい?」
「いくぞ、我求めるは魂の繋がり」
「我求めるは魂の繋がり」
「我願うは強さと力」
「我願うは強さと力」
そう俺が言うと俺と神龍獣の足元に何か魔法陣のような物が出現した。
「ちょっとなんですかこれ!」
「いいからつづけるんだ、我は汝と共に戦う事をここに誓う」
「えぇぃ、我は汝と共に戦う事をここに誓う!」
すると魔法陣の光が強くなり思わず目を閉じてしまう。




