六話目
遂に何とか異世界に来ました。
サワサワと俺の顔に風が当たる、どうやら俺は何処かに寝転がっているようだ。
俺はゆっくりと目を開けて見る、俺の視界に青い空と葉を付けた木が見えた。
「どこだここは・・・・・・」
そのまま横になった状態で思い出そうとしてみる。
「あぁー!そうだここ異世界じゃん」
ここがどこかを思い出した俺は勢いよく体を起こす。
(そうか俺いよいよ異世界に来たんだ、忘れて無くてよかった)
まだ少し頭が鈍いが色々と思い出してきた。
「確か俺は神様に異世界を救うために邪神を倒すのが目的で異世界に転移した」
口に出して再確認する、前の世界の事も思い出せるので記憶喪失とかは無いみたいだ。
「よいしょっと」
まずは今俺がどんな場所に居るかを確認しないといけない、俺は立ち上がり周囲をぐるっと見渡した。
前と左右には木が沢山生えている、どう見ても森にしか見えない。
そして後ろを見てみると建物があった、それはかなり大きく学校の校舎位はありそうな感じがする。
(これって神殿ってやつか?)
そう今の俺の前にある建物は俺が今まで見た事が無い様式の建物だった、しかし神聖な雰囲気を感じるだから神殿みたいに思えた。
「何だこの建物はどういう場所なんだ」
しかし見ているとあの神様のような神々しさみたいなものをどことなく感じている、そういえば吸っている空気もとても爽やかなものだ。
「ここに飛ばしたって事は多分だけどあそこに行けって事だよな」
あの神様は俺に必要な物を渡すためにここにしたんじゃないだろうか、あの場所からは悪い印象も受けないし行く事は決定だ。
眩しかったのでふと上を見てみると俺の視界に赤い太陽がチラッと見えた、だが少し横に視線をずらすとその横に二回り程小さい太陽が見えた。
(しかし俺は本当に異世界に来たんだな、分かってはいたけど不安だな)
俺は少し気持ちが沈んで顔を下に向ける、そうすると俺の足の横に見覚えのある剣が落ちていた。
俺はすぐに拾い上げる、それはとても見覚えのある鉄の剣だった。
「おぉ!、これは俺が修行中に使っていた剣だ、これは本当に助かるな」
鍔にある装飾や握った感触が間違いない事を伝えてくる。
(何だこれは、違和感?同じ剣のはずなのになんか違う所がある)
持った時にも感じたが握ると小さくない違和感を感じる。
どことなく嫌な予感を覚えて鞘から抜かずに剣を横に軽くいつも通りに振るってみる。
ブンッ
ズルッ
俺は最後まで剣を振る事が出来ずにおもいっきり滑って転んでしまう、剣を振った勢いを制御できなかった。
俺は本格的に違和感が強くなってきたので一歩でどこまで跳べるか確かめてみる事にした。
脚に力を込めて前に向かって全力で跳ぶ。
ダッ
ベシャッ
そして俺は跳んだ瞬間にバランスを崩して前に転んでしまう、俺は転んだ状態で顔だけを上げる。
「だぁーーーー体が思い通りに動かない!」
体が俺の考えているように動かない、かなり加減しているつもりなのにそれでもうまく動かせない。
その後も色々と試してみる、歩くことや軽く走る程度つまり日常生活程度であれば問題は無いみたいだ。
だがそれを超える動き戦闘をするための剣を振るう事が出来ない、うまく制御できなくて違和感が消えない。
その所為でもちろん俺が生み出した剣技も使えなくなっていた。
技名を言いながら剣を振るってみるが全然発動しない、だが一つだけ使えた技が有った。
「斬水流 一雨」
俺がそう言いながら剣技を使ってみるとかなり速度が遅かったが俺の思った通りに剣を振るう事が出来た。
(そうか今の俺で斬水流は最初の技しか使えないのか、これはきついな)
俺が生み出した剣技その名は斬水流という物だ、俺はこれだけで神様に勝った。
生み出したころは技名を声に出す事で何とか使えるというものだったが使いこなせるようになると魂有素を剣に込めて振るうだけで発動できた。
水の様に変化しどんな状況でどんな相手でも戦えるようにと俺が考え出したものだ。
斬水流 一雨
この技は俺が初めて作り出した斬水流の技だ、この技から斬水流は始まった。
この技は魂有素を剣に込める事で自分の思い通りに剣を振るえるというだけの技だ、だからこそとても便利だ。
たとえそれが無理の有る動きでもこの技を使う事でそれが出来る、俺が体制を崩した時などにその隙を無くすために使ったりもした。
だがそれでも他の技に比べて威力は無いし特別な効果も無い、斬水流を完全に物にしていた時の俺は常に剣を振るったら一雨が発動していた。
「しかし斬水流を使うと今の俺だとやっぱり体力をそれなりに消費するな」
短い距離を走った程度だが俺は一雨を使う事で体力を消費していた、連続して使えば三回で限界だが3分ほど間を空ければまた使える程度だ。
「それなりに動いてみたけど違和感は消えないな、これは肉体が強くならないと思い通りに動かせないな」
今の俺の状態だと長時間の戦闘は危険だ、今の俺は一雨を使わないとまともに戦う事すらできないからだ。
今の俺だと思い通りに剣を振るえるのは連続で二回までしかも一度使えば少しの間は剣は振るえない。
そうなるとある程度の強さを手に入れるまでは一撃で倒せる強さだけを相手にしたいところだ。
「まぁ使い慣れた剣があったのと斬水流が一雨だけとはいえ使えた事に感謝しておくか」
ある程度は今の俺の身体能力を確かめた所で今の俺の服装なんだが・・・・・・。
「・・・・・・まさか寝間着だったとは」
そう今の俺は寝た時の服装と全く同じだった、これは防御力に関しては全くないという事だ。
因みにあちらでも掛けていた黒縁の眼鏡だが起きた時から装着していた。
「これで本当に大丈夫なのかなぁ」
何もないわけでは無いが恵まれているのだろうか、よく分からない状況だ。
(うーんでも最初の場所は森か、生息している生物に注意して行けばある程度は生活していけるか?)
それを確かめるためにもまずはあの建物に行って中を確認した方が良いだろう。
俺は剣だけを持って神殿の様な建物に近づいた、入り口に着くと重厚な感じの教会とかで見る両開きのデカい木の扉だった。
軽く3メートルは超えているであろう扉に触れてみる、触った感じは普通の木の感触だ。
力を込めて押してみると俺が入れるくらいには扉は開いた、俺は扉の空いた隙間を通り抜ける。
中は絨毯が敷かれていてどこかの屋敷のような大きな通路になっていた、そうして見ていると一定間隔で壁に設置された燭台に火が灯っていく。
手前から奥に向かって明るくなっていく、どうやらこの通路はかなり長いみたいだ学校の校舎の端から端くらいまであるんじゃないだろうか。
突き当りには先ほどの入り口よりも少し小さい木の扉があってそこに行くまでに等間隔で2メートルほどの高さの扉がいくつかあった。
どうやって明るくなったのか気になったので一番近くの燭台を覗いてみる、すると燭台には本来は蝋燭が刺さっている部分に何か宝石の様なものが嵌っていた。
どうやらこの宝石が炎を出して辺りを明るくしているみたいだ、この世界特有の技術だろう。
俺はまず通路の付き辺りまで移動してみる、こちらも両開きだが普通の木の扉だ。
開けて中に入ってみる、すると室内のはずなのに空気の流れを感じた。
俺が進んだ先は部屋というよりも中庭になっていた、地面には芝生の様な丈の短い草が隙間なく生えていた。
そして中庭の中央には二メートルほどの樹が一本だけ生えていた、すぐ近くまで移動する。
見た感じはごく普通の樹なのになぜかとても存在感があり神々しさを感じる、思わず左手で樹に触れてみる。
ドクンッ
脈動を左手で感じたら何かが左手から流れ込んでくる。
「ガッ、な、んだ、これは」
樹から手を離す事が出来ずに俺の全身を満たすように何かが入ってくる、俺はそれを左腕を右手で握って耐える。
目を閉じてしばらくの間耐えていたら流れ込んでくるのが止まった、左手が自由になったのでその場に座り込んでしまう。
(いったい今のは何だったんだ)
地面に座って息を整える、そして眼を開けてみると先ほどまであった神々しかった樹が消えていた。
先ほどまで凄まじい流れを感じた左腕を服の裾をめくって見てみる。
すると手首の部分にバネの様に螺旋になった樹の枝の様なものが密着して巻き付いていた。
外せるかどうか試してみたが完全に俺の腕と同化しているみたいで全く動かない。
「これってさっきまであそこにあった樹だよな」
多分だが生えていた状態から俺の腕に巻き付いたんだろう。
しかし体は樹が巻き付く前と何も変わった感じがしない、座ったまま体を動かしてみるが前と変わったような所は無い。
「これは寄生されたって事なのか?でも何か体に変化は感じないんだよな」
これは怖いが今の所は大丈夫という事なんだろうか、なるべく早く先ほどの樹について調べたいところだ。
まずはこの中庭に他に何かないか調べるとしよう、もしかしたら先ほどの樹について何か情報があるかもしれない。
樹が生えていた所から右に移動してみる、すると石柱のような物があった。
その石柱は長方形で俺の胸ほどの高さがあった、そして上の部分が窪んでいて白くて丸い水晶のようなものが嵌っていた。
先ほどの事があるので触れないように気を付けながら情報になりそうなものが無いか眺めていく、柱には幾何学的な文様があるだけで文字として読み取れるものは無かった。
(俺が学んだ知識でこんな文字は無かった、だとすればこれは文字ではないという事か?)
だがそう決めつけるのもよくないので今はこれについては放置する事にしよう。
他にも何かないか見て回る事にしよう、俺は反対側の樹が有った場所から左の方に行ってみる。
そうすると先ほどの石柱と同じものが有った、違いがあるとすれば載っている水晶が先ほどのは白でこっちのは黒という事だ。
他は先ほどと同じに見えるのでこれも今の所は放置でいいだろう。
「そうすると後は奥だけか」
残っているのは樹が有った場所からさらに先に進んだところだけだ、俺は樹が有った場所に戻ると奥に進んだ。
そうして先に進むと厚みの有る石の板が床に置いてあってその上に鎖で縛られた何かが有った。
(これは何かは分からないが何かしらが封じられているという事でいいんだよな)
もう少し詳しく知るために鎖に顔を近づける、どうやら鎖は何本かあるみたいで端の方は石の板に固定されていた。
そして鎖の隙間から布が見える、布に包まれたものをさらに鎖で縛りつけて封じているといった感じだ。
俺は何か封じられているモノの前に座り込む、石の板には何も書かれていない。
(神様は信用できる、だが何かしらの間違いでここに飛ばされたという可能性もある、さてこれからどうするか)
この中庭には神々しい樹が一本が有って今は俺の左手に装着?されている、そして左右には石柱が存在していて右には白い球がそして左には黒い球が嵌っていた。
そして今俺の前には何かが鎖に縛られている、こんな場所については俺は神様に聞いていない。
あまりにも情報が無いので判断がしづらい、これらは危険は無いんだろうか。
あの神様は最初から命に危険があるような場所には送らないと思う、これでもそれなりに長い間一緒に居たので神様の事については多少は分かっているつもりだ。
そうすると俺がここに来たのは邪神を倒すためにここに来た方が良いからと考える。
もちろんこれはあの神様を信じたうえで出た考えだ、疑って無いわけでは無いがそう考えた方が楽な気がする。
しかしこれ以上は考えているだけでは事態は変わらないだろう、覚悟を決めてこれに触る事にしよう。
「えぇーいよし・・・・・・うりゃあ」
俺は気合を入れて鎖の中心部分に右手で触れる、それから一分ほどは何も起きなかった。
「そりゃあ触っただけで封印が解けるなんてことは無いよな」
そうして何も起きないので俺が手を離そうとしたら。
{封印者の魂有素を確認、解放条件の達成を全て確認、封印を解除、解放します}
そういう言葉が頭の中に浮かぶと鎖が自働で動き出した、そして鎖がすべて解けて中に封じていたものが見えた。
布に包まれていたので慎重にゆっくりと開けていく、どうやら鎖の部分が大きく見せていたようで中の物はそこまで大きく無いようだ。
そして鎖に封じられて布に包まれていたのは。
「いぬ?」
そう布の上には一匹の子犬が寝ていた。
主人公は微妙な状態で異世界スタートですね。




