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感染戦線  作者: ヘロおやじ
第 四 章  日 本 解 放  編
58/72

58.Pday 266日目  2016年06月13日

 今回は空戦回ですので、奇想兵器などなんちゃって兵器を少し活躍させる回です。

AM04:25 日本海 佐渡島 北西沖 約330km DDS「ながと」CIC内


「艦長、今回の任務は露助相手ですが、あの国は現在パンデミックのせいで工業力や食料調達でかなり厳しい状況にありますが、本当に日本にチョッカイを掛けてきますかねぇ?」


 CIC情報分析担当の 林葉 文昭 大尉が艦長の大磯大佐に聞いた。


「ふん、どうやらラスプーチン大統領が暗殺され、軍の強硬派が後先考えず弾けたんだろうな。


 日本海軍が半年前の海戦でかなりの損害を出したという、欺瞞情報をまるで疑わない迂闊者が政権を取ったのだろう。


 今あの国は食料自給率がまずい状況だから、余力がある内に日本の北海道を占領して、ゾンビの居ない環境と不凍港を確保しつつ、日本の備蓄を狙って居る可能性が高いからな」


「やはりパンデミック前のU国紛争で、あの国を敵に回したのは不味かったんですかね、あの辺はR国の穀倉地帯だけれどパンデミックの所為で、A国やその他の国から穀物が入らなくなりましたから。


 U国とも仲違いをした所為で穀物の備蓄が減り、そのU国もゾンビの所為で麦やその他の穀物が壊滅状態ですから、U国に攻め入って盗賊行為をしても大した量を確保出来無いですから。


 その点日本は丁度C・K国との海戦で国力を落として居るから、狙い易いと思い今回政権を取った飢えたクマ公は、傷ついて弱った獲物だとばかりに襲おうとして居ると行った所ですか?」


「ああ、オメエの言う通りだと俺も思うぜ。


 しかしラスプーチンは日本の事を解っていたから、かなり警戒して手を出さないでいたしいざとなれば、死に体の北方領土を土産に援助を求めて来たろうな。


 しかし今回政権を取ったユーリ・ブガチチョフ将軍は、典型的なR熊タイプだから四の五の考えず、武力侵攻を企てて日本の備蓄と不凍港を手に入れようとして来たのだろう」


「やはり戦争になりますかね?」


「奴等には後がない状態だし空腹で身動きが取れなく成る前に、日本に侵攻して腹を満たす積もりだから必ず来るだろうな。


 其の辺は提督の読み通り奴等は襲って来るが、現在の食料・物資の備蓄量だと一回の会戦が限界だし、あいつ等は焦っているから計画自体もかなり杜撰なものだろうとの読みだ、まあその通りだと思うな。


 それに於いて一番不利なのは奴等の切り札“核”が封印されて居る事と、我が方にXF-3先行試作型が配備されて居り、俺達「ながと」級DDSと「かぜ」級DDR新型艦があるのを、敵は知らないと言うことだ。


 ついでに「おやしお」級潜水艦が改装されて、原潜以上の難敵に成って居る事も知らんから、迂闊に日本海へ乗り出したらフルボッコにされてC国海軍の二の前だし、更に日本海軍が無傷である事を知らんからな」


「やはり情報戦での優位はでかいですね、それにASM-3もかなりの数備蓄が戻りましたし、空対空ミサイルの99式も誘導頭脳をAI装備に改良して、頭が良い11式に成って居ますから一方的な戦闘になるでしょうね」


「まあ露助は陸戦は無類に強いが海戦や空戦は、装備の差がそのまま結果に出るから、奴等にチャンスは無かろうよ。


 後はペナルティとして日本は北方領土を取り返し、サハリンも保障占領をして日本海を事実上内海化し、R国の東進の砦とする予定だからな。


 最も北方領土もサハリンもゾンビにやられて、事実上死の島に成って居るから占領時の戦闘はゾンビの駆除になりそうだと、松浦大将はいっておったがね」


「確かゾンビって冬季間は冬眠の様な状態に成るそうですが、サハリンや北方領土では冬に成る前にゾンビウィルスで壊滅したんですか?」


「うん? 奴らは気温が9℃以下に成ると活動が鈍り出し、2℃以下に成ると冬眠状態に成るのだが、逆に2℃以上の温度であれば活動するという事だ。


 サハリンや北方領土ではアパートなどは、セントラルヒーティングをして居たからそれが原因で、冬季間でもゾンビが活動してしまい、あっと言う間にゾンビに殺られたらしい。


 あの地方で暖房を止めたら自殺行為だし、日本の様に個別暖房では無くセントラルヒーティングを採用して居た為、それが仇に成ってゾンビが冬季間も活動する環境を作ったのだろう」


「そう言えば日本ではセントラルヒーティング設備は、ホテルや公共施設以外は見かけませんね」


「あの国はソ連時代、国に逆らって建物に籠城した場合外から狙える場所に暖房設備を設置しておけば、冬季に政府軍が制圧するのに都合が良いから集中暖房方式にしたと噂があるが、まあ当たらずといえど遠からずだろうな。


 しかし俺が思うに、ソ連時代は民生品を製造するノウハウがないから、集中配管方式にしたと言う説の方が合って居るんじゃないか?


 国の性格上重厚長大の設備を作るのは長けていたが、きめ細かいサービス体制とある程度の量産技術がいる、個人や家庭向けの暖房機やその燃料を配達するシステムは、共産国家では実現不可能だったろうからな」


「じゃあ結局戦力と言うより社会制度と言うか、過去の共産主義の正に負の残滓のせいであの辺は壊滅したのですか。


 何か激しく納得行かないと言うか、逆にらしいと言うかそんな原因でゾンビに飲まれたのか・・・・・・。


 あれ、そう言えばヨーロッパ方面はセントラルヒーティングのアパートが多いですよね? そうすると今回の冬でかなりの地方でセントラルヒーティングをして居た住居は殺られたんじゃぁ・・・」


「・・・・だろうな、R国内もまだソ連時代の住居が多いし、社会制度事態がそのシステムに慣れているから、新しい建物も個別暖房より集中暖房を取るだろうから、本国も同じくだいぶ人口が減っただろう」


「何が幸いして何が破滅の原因に成るか解らないものですね。


 日本は寒冷地には戸建が多い環境ですから、個別空調のシステムが多く採用され社会もそれに慣れていたし、共同住宅も戦後40年位まではあまり地方には無かったな。


 何より無資源国で省エネが社会の課題でしたし、エネルギー効率の良い家庭用の暖房器具が、物作りの得意な我が国は戦後安く大量に作って出回り、スタンドで扱う灯油が安かったからですね」


「まあそんな訳で人口が思ったより減少したR国は、思わぬ所で食料やエネルギーを消費する人が減った為、多少備蓄に余裕が出来た所へラスプーチンの暗殺で、主戦派の馬鹿大将が政権を取ったからな。


 今なら日本に攻め入って北海道を占領するか、越後に侵攻して新潟地方を占領して日本の備蓄と不凍港を入手出来ると思ったし、日本軍もC・K国海戦で弱って居るとみたのだろう。


 まさか横山提督も暖房機の方式に因る社会システムと、ラスプーチン大統領の暗殺と言う変数で、R国が侵攻するとは読めなかったのも無理も無いぜ!


 こんなのを読めたらもう人では無く神の領域か、預言者レベルの異能者だからな」


「本当にこんな馬鹿な事が原因でR国が攻めて来るなんて、正に蝶の羽搏きが南米の森であると日本に嵐が発生する、バタフライ理論の実演見たいな現象ですからね。


 これは後知恵だから言える事ですが、読めたら正に預言者の『緊急』よう・・・・・!


 どうした松島? 敵に動きが有ったか!」


 レーダー、監視衛星、無人早期警戒・監視・スティルス機ブッタアイでR国のU市にある軍港を監視していた松島中尉が、行き成り右手と声を上げてこちらに注意を促した。


「ブッタアイからの情報で対潜哨戒機と、各種艦艇が発進したとのAWACSからの情報です。


 こちらのレーダーも航空機の反応を、敵空軍基地近辺に確認しました!」


『緊急警報発令! こちら艦長である。 R国軍の作戦が始まった模様だ。


 これは演習では無い、しかし慌てるな、当艦は敵航空機の100や200を相手にするのは余裕である。


 余裕であるが油断はするな、何時もの訓練通り粛々と行動せよ! 以上!』


「艦長いよいよ始まりますね、まあ待ち時間より始まった方が落ち着きますから良いですがね」


 林葉大尉も数度実戦の洗礼を受けた為か、緊張の中にも何やら余裕が感じられ頼もしい限りだ。


 そう思うが自身も実戦は林葉大尉、いやこの艦に乗っているクルーと同じ、戦後初めて戦火を潜った仲間である事を思い出し、思わず口元を綻ばしたのを見て林葉が言った。


「おや艦長、何か悪そうな笑顔で何か企んでいるんですか?」


 混ぜ回した林葉の言葉を聞いて思わず感心したのだ。


 良い悪いは別にしてやはり実戦をくぐり抜けると、戦人いくさびととして一周りも二周りも成長する物なのだと。


 実戦前は無駄口を叩いても何処か無理をして居る、若い奴にしか感じられなかったが、今は無駄口にも余裕と気配りが感じられる様になった部下に、更に口元がニヤケそうに成るのを抑えて。


「林葉大尉、作戦中だぞ無駄口を叩いて居る暇があったら、さっさと仕事をせんか!」


 目線で物を言いながら口では別の事を言う、これ位はもうコイツも読めて居るのだろう。


「アイアイサー・キャプテン!」


 と言い、ビシっと敬礼を決めると持ち場に帰っていった。


 いい部下だな、うん、いい部下だ! 後俺はコイツ等を出来るだけ少ない損害で、家に帰してやる事に専念するだけだ、と思いながら・・・・。







Pday 266日目  2016年06月13日

AM05:18 日本海 R国 U港沖 約15km 潜水艦「いそしお」発令所


 日本海軍所属「おやしお」型元ディーゼル艦「いそしお」は海上自衛隊時代の、2002年に就航した艦齢15年超のベテラン艦だ。


 しかしつい一月程前に改装が終わり現在は、PRTGS(クラスター化雷鳴気プラズマリアクターシステム)潜水艦として生まれ変わり従来の艦を海の忍者や暗殺者とするなら、現在は海の魔物と呼称すべきだろう。


 なぜなら新たな原子力発電に代わる動力炉たる、PRTGシステムにディーゼル機関から換装し事実上潜行時間が無限大になり、外装の吸音材も一新されて正にサイレントモンスターに変身したのだ。


 スクリュー推進は静音航行時や磁気探知阻害時に使用し、ここ一番でのダッシュには磁気推進を使い、水中を60ktで遁走するので並の魚雷は振り切って仕舞うのだ。


 更にソナーは従来のビンカータイプでは無く、ナチュラルトーンを使ったナチュラルノイズタイプなので、聴音センサーにもナチュラルノイズとして処理され、探知は現状同システムを保持していないと不可能なのだ。


 魚雷も従来の89式から電磁推進・高ステルスタイプの11式長魚雷に変わり、ビンガーもナチュラルトーンを使う為敵は気づいた時には至近に魚雷が接近し、回避措置が間に合わない内に雷撃を受けるのである。


 又、ソナーでの探知情報はヘルメット型のデータディスプレイと液晶大画面ディスプレイに、映像として表示され操舵手や聴音手・攻撃手・士官もその映像を見ながら、戦えるので航空機に搭乗して戦う感覚で戦闘や偵察を行える。


 更に有線魚雷自体のナチュラルノイズソナーが、遠隔ソナーとしても機能するので海水の変温層が有っても、そこへ魚雷が侵入する事によりシャドーゾーン内を探知出来るので、対潜水艦戦でも絶大な効果を発揮するのだ。


 その様な優れた環境を手に入れた司令室兼CIC室である艦橋で、今「いそしお」2代目艦長である 萬羽 芳一 中佐は大型LEDモニターに映る、ソナー情報を見ながら副長である磯谷 達也 少佐と話合っていた。


「さーてと、いよいよ敵さんが港から出航したが防備の方はどうだろうな」


「現在の所水中に関しては従来の物と変わった様子は有りませんねぇ。


 敵のハンターキラーも従来型の音が大きなタイプですし、艦もビンガータイプのソナーを使って居ますが、それに被せてナチュラルトーンの波を発信して居る様子は有りません」


「これで9割9分敵はこちらと同じ装備は無いと見て良いだろう。


 後は十分注意して作戦を遂行すればまず失敗は無さそうだな、先週「くろしお」と「せとしお」・「たかしお」が撒いた、キャプチャー機雷はバレて居ないし上手く作戦が嵌ると良いな」


「しかし今回一緒に撒いた「しゃち」型ロボット攻撃機は、何か本物見たいで少々気味が悪いですね。


 あれで短魚雷3本と自身で特攻が出来るので、1万トン以下の艦戦なら船底で爆発させれば1発だし、大型空母なら2隻は喰えるのだから凄いですね」


「まあロボット本体は余程の緊急事態でない限りは、自爆しないそうらしいから実質はスクリューと舵を破壊して、船足を止めるそうだしあの短魚雷は大きさはアスロック並だが、破壊力は通常魚雷並だそうだから後部船底を狙われたらアウトだろうな」


「どこで魚雷を補給するのですか? 補給艦などこの辺りにはいませんがね」


「何でも「たかしお」が操作して曳航して来た、無人母船が近くに有って補給や整備はロボットがするそうだ。


 まったくSF見たいな装備だが人を使わないから、便利は便利だが戦争にしては少し味気ないよな。


 さてそろそろ仕事の時間だな、船内に合図をしろ」


 司令室の捜査員が規定の操作をすると、赤のLEDライトが一定感覚でリズムを取りながら明滅し、作戦開始をつげるのだった。


「各部署合図確認」


 応答シグナルをモニターして居る要員がボソッと骨伝導マイクに向かい喋ると、艦橋員が付けて居る骨伝導スピーカーを通して通信が響いた。


 潜水艦では外部に音が漏れるのは致命的な事態になる為、全員乗員は骨伝導通信システムを身につけて居る規則に成っており、小さな声でも戦闘中でも全員にきれいに聞こえる。


 更に各部署は警報受領の確認の為のスイッチがあり、各部署の責任者が警報を部署全てが確認すると、スイッチを押して確認済みの合図を送るシステムに成って居る。


「全部署確認・オールグリーン」


「さて後俺達は送り狼に成って奴等の退路を断ち、露助に日本海軍の怖さを再認識させてやるか。


 聴音手、曳航ソナーから時限浮上ブイを10分後に浮上設定し、現在までの情報を指令部まで衛星を使い圧縮通信せよ」


「アイ・アイサー」


「僚艦に秘匿通信、内容『作戦開始』以上」


「アイ・アイサー、秘匿通信にて通信完了」


「離床、速力20 敵艦隊現在の間隔で追尾」


「アイ・アイサー、敵艦隊現状にて追尾」


 4匹の海魔が敵を喰わんと今わだつみに解き放たれた。






Pday 266日目  2016年06月13日

AM05:30 北海道 千歳空港 滑走路 待機所 XF-3 先行試作機隊


『こちら千歳基地管制塔、[ベアズ・エネミー]隊へ間もなく作戦開始。 再度繰り返す、間もなく作戦開始。


 進路クリアー、離陸は何時でも可能。


[ベアズ・エネミー]1、隊番順より順次2機ずつ離陸して下さい』


『こちら[ベアズ・エネミー]1、了解ラジャー


『離陸後予定通り作戦空域へ侵攻、作戦終了後給油ポイントは今の所変更なし、変更する場合は改めて指示する、以上オーバー!』


了解ラジャー、間もなく離陸する、発進は1番から2機ずつ。


 [ベアズ・エネミー]1・2、離陸テイク・オフ!』


『[ベアズ・エネミー]2、了解ラジャー


 エンジン出力をMAXに上げXF-3(仮称神心)隊は、生まれて2度目の実戦へ飛び立った。




 新鋭機であるが、今だ試作機のXが取れないXF-3だが試作実証機であるATD-X[神心]は有名に成っており、我々の次元とは違いこちらの世界では、既に先行量産機が完成していたのだ。


 どうやら前民主党政権は対米姿勢を明確にする為、自民党政権奪取と共にATD-X開発にかなりの予算を掛けて居たが、自衛隊幹部と企業体は前政権を信用せずに開発状況をわざと遅らせて報告して居た。


 その結果、実際にここまで現物が出来上がって居る事に気づかなかった様だが、その裏では甘利丈太郎率いる旭グループと、横山提督率いる戦略研究会が新型機開発に力を注いでいたのだ。


 売国政権と定評のある前政権で正直に報告すれば、技術情報は全てC国やK国に渡され、敵を利する結果に成ったろうから、開発秘話を知った現総理の安部首相は苦笑して了解しただけだった。


 本当は丈太郎経由で情報は上がっていたのだが、安部総理自身も売国政府に教えて日本の宝とも言える、次期主力戦闘機の技術情報を敵国に無償で渡す気はまるで無かったのだが。




 今回のミッションで試製[神心]16機は武装に中距離対空ミサイル11型は積まず、全機ASM-3対艦ミサイルをウエポン・ベイに4発積んだ対艦仕様での出撃だ。


 作戦は、先制でまず主要艦艇を潰し混乱した敵航空団に対して、スティルスの隠密性とパドル偏向ノズルに依る高機動特性を生かして、短距離ミサイルと機銃でドックファイトに持ち込み更に混乱させる。


 その隙を付いて30機の11型中距離対空ミサイルを4発積んだF-15Jと、30機のASM-3対艦ミサイル4発を積んだF-2が敵に襲いかかる作戦だ。


 別作戦として本土の基地からF-1・F-2の混成隊40機が、全機11型中距離対空ミサイルを抱いて、R空軍の戦爆混成隊に対しての飽和攻撃を行う。


更に支援として送り込まれた海軍、DDR「はまかぜ」「しおかぜ」「やまかぜ」の3隻に因る、ピケットラインに追い込んでレーザー狙撃と、中距離対空ミサイル11型で殲滅戦に挑む事に成って居る。


 最終的に海上戦力11隻のDDS・DDR・SSH・DDMで実質上敵U港を壊滅し封鎖する6段構えの戦術で、二度と日本に侵攻する気を挫く事を目的とした作戦で作戦名を「北海」と命名した。


そして「北海」作戦終了後に奪われて居た北方領土を奪還し、更に現在ほぼ無人地帯となったS島に侵攻し、最終的に日本海沿岸を日本の領土か友好国にして、日本海を内海化する大戦略を立てた。


 この戦略が成功するとアラビア海から日本海沿岸に達する、一大海洋通商国家連盟と安全な海路が出来、その域内にある海洋資源や陸上資源を使い、アジアの巨大な市場が生まれる事に成るのだ。


 更に内海化する事によりソマリアの海賊なども、通商国家連盟のPKFが国境を超えて取締り、海上交通路の安全を担保する為に、域内の経済は活性化して経済発展の起爆力になる。


 何れ太平洋・インド洋・南極海の海上には漂流型メガフロート島群が遊弋し、環太平洋通商国家連盟が作られ海洋交通路の安全と安定を維持し、一大通商圏を築く大構想を推進する。


 そこで得られた富で宇宙開発を行い、太陽系内の一大文明を築き将来は超光速機関を開発し、銀河の海へ乗り出し人類の版図を広げ、星間文明を築き人類生存圏拡大を図る大構想なのである。




 今回の作戦は時期が早まったが何れ通る道筋であるが、まさか暖房設備の所為で作戦が早まるとは、流石の横山提督にも読みきれなかった事態だと提督自身が苦笑いをしていたのだが。






Pday 266日目  2016年06月13日

AM05:50 日本海 奥尻島 西方沖 約230km XF-3 [ベアズ・エネミー]隊


 俺は大林 真人大尉、新型試作機XF-3[神心]の試作量産機を運用する為昨年新設された、第701特別飛行隊を指揮する実戦部隊の隊長だ。


 今回で2回目の実戦だが一度実戦を潜るとある程度慣れと言うか、度胸が座って仕舞い昨年の対C国海戦の時の様に、上ずる事は少しは無くなった様に思える。


 訓練の時から思うがこの機はいい出来の戦闘機だと思う。


 アウト・レンジからの攻撃も、スティルスのお陰か非常に楽に攻撃出来るし、まだ実戦では使った事の無い偏向ノズルであるパドルのお陰で、小回りも効くが油断するとGの所為でブラックアウトはし易いが。


 ともかくドックファイトになれば無類の強さを見せるだろう、露助の大味な操縦性の機とは二味は違う所を見せられるだろう事は確実なので、怖くはあるが非常に楽しみでもあるのが本音だ。


 しかしアフターバーナーを使わないスーパーソニック航行が出来る[神心]では、日本海は少し狭く感じられる。


 アフターバーナーを使わないでも超音速飛行が可能なので、従来のF-15と比べると通常航行時の負担も遥かに少なく、うっかりすると忽ちR国の国境を超えて仕舞うからな。


 今後の偵察任務ではうっかり領空侵犯をして、スクランブルをくらうかも知れないから注意が必要なのだが、まあ果たしてR国軍のレーダーで捉えられればの話だが。


 今回の任務は前回の対C国軍同様、日本に攻め入ろうとするR国軍艦艇を攻撃後、スティルス性を活かし艦艇護衛の戦闘機隊に殴り込みを掛け、サイドワインダーと機銃で出来る限り数を削る事だ。


 奴等を襲って慌てさせている間にイーグルとF-2ファルコン60機が、中距離対空ミサイル11型120発と、ASM-3対艦ミサイルを120発叩き込んだ後、残った艦を潜水艦隊が止めを刺す作戦だ。


 俺達は三沢に帰投後2時間程休んで再度二手に分かれて、艦隊と特殊支援攻撃機の護衛任務があるが、皆若く精強なチームなので多少の無理は何の問題も無い。


 我々は既にAWACSと無人偵察攻撃機の[ブッタアイ]からの偵察データにより、既に攻撃対象の情報は貰って居るので敵艦の割り振りは終わって居り、後は所定の距離になれば発射するだけだ。


 このASM-3は前回のC国相手の魚釣島沖海戦でプルーフされ、更にソフトや不具合箇所を改良された型が積まれて居るので、更に命中率は上がっているだろう。


 何せこのミサイルはAIを装備してかなり頭の良い兵器に成っており、インテグラル・ロケット・ラムジェット(IRR)を装備して居る為、マッハ3以上の速度で(軍機に依り正確な数字は不明)敵に喰らい付くのだ。


 更に優秀なECM機能を持ちつつAIを装備したお陰で、敵AMMや対空砲のレーダーを撹乱しつながら、敵艦に向けて喰らいつくので9割以上は敵に損害を与えるだろう。


 まず第一目標は、敵大型空母3隻とそれを守る劣化版イージス機能を持つ対空護衛艦の無力化を狙い、次に上陸指揮艦と兵器運搬船を狙う優先順位を割り振ってある。


 ピー、ピー、ピー!


 予定時間1分前のアラームが鳴り、ヘルメットのゴーグルに映されたHUTに敵位置と発射の残り時間が表示されて居り、時間が来ると自動でミサイルが随時発射される事に成っている。


 発射前に敵に補足されたり予想外の事態に成ると、自動的にプログラムが解除されマニュアルでの攻撃モードになるため、パイロットの負担が軽減されて居る、


 ピ、ピ!


 警報音と同時に機体下部のウエポン・ベイが開きASM-3が4発、次々と発射されて敵艦に向かい加速して行く。


 発射終了と同時に我々は海面上10mに位置し、更にレーダーから探知されづらい位置に移動し、敵防空隊の下腹を突く様に敵編隊に突っ込む予定だ。


 敵編隊に飛び込む定位置に移動する間ミサイルの戦果を確認して居ると、64発中63発のASM-3が命中し1発のみ位置的に見て、どうやら速射砲で偶然撃墜されたらしい。


 ミサイルの結果が判明した20秒後、敵編隊の下腹を突く位置に到着したので、すかさず減速と同時にパドルを利用した急上昇で、根性でブラックアウトをねじ伏せつつ、敵フランカーの後方下方位置から攻撃を開始した。


 さすがに敵機もこの近距離とロックオンレーダーの照射で気付き、慌てて回避しようとフレアーを発射し、ECMを発動しながら回避運動をたがもう遅い。


 敵も偏向ノズル機だがこちらは更に自由度の高いパドルのお陰で、より鋭く変則的な挙動でロックオンし、敵にサイドワインダーを打ち込み撃破したのだ。


 別の敵機が我々バディが攻撃して居る間に回り込もうとハイヨーヨー機動をして来たが、咄嗟に旋回で落ちた速度と下方に向いた機首の位置を利用して、逆ループと言うよりほぼ前転宙返りを行う。


 結果極端に速度が落ちて敵はロックしきれず、オーバーシュートした隙を付き右シャンデル気味に捻り込み、ロックしたのは機銃の絶好の位置と間隔ですかさず1連射0.5秒。


 敵機は旋回中の応力が掛った左主翼付け根とエンジンに、数十発の25mm砲弾を喰らい主翼が引き裂けながら墜落。


 ドックファイトとは、正に敵機とGとの戦いで敵弾を喰らうか、ブラックアウトかホワイトアウトで意識を飛ばし、墜落するかの刃渡り稜線で死中に活を求める戦いだ。


 ほんの一瞬の気の緩みと気力・体力が失せた時に、死の顎が己を喰らう正に一瞬の勝負の連続! 迸る汗と気力・漲る闘争本能と体力、広い視野と敵を倒す集中力のせめぎ合い。


 更に機体の優劣が絡む正に生存競争の場である。


 数秒・数分? 数十分だろうか? そこへ乱入する中距離ミサイル11型の群れ。


 敵、次々に食われる。 いや、喰われて逝く!


 これぞ正に戦。 冷酷な現実であり、炎の華が開くたびに失われる命達。


 ある意味殺人であり、別の見方で英雄譚なのだ。


 正に表裏一体の境地であり、残酷な現実の体現。


 勝敗を決めたのは気力・体力・技量の他に、技術・戦略・情報だったのであろう。


 F-15Jが参戦した結果機体差と技量で勝っていた日本空軍に、数で対抗して居たR空軍だったが、数の優位が覆され奇襲で横腹にミサイルと言う、朱槍を突き立てられさしもの大熊も大地に落ちたのだった。




 海上でも[神心]を撃墜せんとロックしない対空レーダーを何とか操り、対空ミサイルと各砲を発射しようと苦慮して居た、生き残りの対空攻撃艦や輸送艦に120発のASM-3が襲い掛った。


 1発でも装甲の厚い大型空母の舷側を食い破る、超音速ミサイルが機銃以上の速度で大質量が喰らい付き、次々と薄い装甲を食い破られ適正に調整された信管が機能し、次々と艦の核心部分で炸裂したからたまらない。


 対空防護艦が不足して居た無防備な船団に、超音速の死に神が容赦の無い断罪の鎌を振り下ろし、次々と轟沈する艦が続出しわずかな生き残りの輸送船を残して、日本海の漁礁になり果てて逝ったのだ。




 長い様で短い海戦が終わり洋上には沈みつつある敵艦の黒煙が幾筋も棚引く様は、ある意味壮観であり悲惨でもある。


 俺は思わず散っていった敵航空兵と奮戦したであろう敵艦隊に、哀悼の意を表し敬礼を行い海戦の現場を立ち去るのだった。






Pday 266日目  2016年06月13日

AM09:40 日本海 佐渡島 北西方沖 約400km XF-3 [ベアズ・エネミー]隊


 我々は早朝の日本海佐渡沖海戦に完勝して後、現在間借りして居る千歳の第2航空団基地に戻り、2時間半の休憩後に再度P-1R特別攻撃機を4機で護衛しながら、現在の位置で周回飛行を行なって居る。


 P-1Rとは元海自のP-1対潜哨戒機を改造した、特殊攻撃機の事でこの機は機体後部下部に特殊な反射鏡を持ち、地上や艦戦から発射される高出力レーザーを反射する攻撃機だ。


 レーザーの特徴である直進性は、水平線の先は狙えないと言う欠点があるが、この反射鏡の御陰で水平線の彼方1000kmまで投射できるので、OH攻撃の際の有力な戦力になるのだ。


 「ながと」級の高出力レーザーの場合ピンポイントでなければ、焦点誤差30m位で1000kmの箇所を攻撃出来るので、対地上戦での艦砲射撃として十分利用出来るのだ。


 この高出力レーザービームがあれば地上に湖沼や川が有れば、水蒸気爆発を利用しての爆破攻撃も出来るし、ビル等の建物や地上基地や集積場の焼き討ち等に利用出来る。


 無論橋梁や発電所・レーダーサイト・滑走路や管制施設等の攻撃を行えるが、雲量が多い場合や砂塵・粉塵が多く舞う場所では、減衰が激しく攻撃は無理なのだが。


 今回はU港の軍事施設や空軍施設を破壊する為、朝靄が収まるか観測して居たのだが、どうやら攻撃可能なまで天候が回復した為、30分遅れで出撃が決まったのだ。


 もしレーザー攻撃が不可能だった場合、再度戦爆連合で出撃する前に我々が出撃して、敵対空ミサイル基地や空軍施設・レーダーサイトに対して、スティルス性を生かした奇襲攻撃を行う予定だった。


 しかし天候が回復した為我々4機はP-1Rの護衛任務に着いて、上空8000mの位置を周回し最大600km先の目標を破壊する予定である。


 先の海戦では味方機F-15Jが3機小破・F-2が2機中破の損害は出たが、幸い死傷者はキャノピーを破られたパイロット1名が、頬を破片で切った程度で済んだようだった。


 そしてR国は戦爆連合隊60機、Tu-160M20機とSu-3515機Su-2725機の編成で挑んだが、日本防空隊の射程距離と頭脳を入れ替えた11型中距離対空ミサイルの飽和攻撃を受けた。


 結果は完全にアウト・レンジで一方的に撃墜され、初期攻撃で見逃されたTu-160M11機も日本防空隊に誘導され、「ゆきかぜ」型DDRの対空レーザーと90mm電磁投射砲のピケットラインに捕捉された。


 地上攻撃の為対艦ミサイルを積んでおらず、一矢も報いる事が出来無い内にレーザー攻撃と電磁投射砲の攻撃の前に、脆くも日本海に屍を晒す結果に成ってしまったのだった。


 結局この日のR軍の損害は戦闘機Su-3560機・Su2575機・Su-160M20機の計155機と、パイロットや爆撃手多数を失ったにも関らず、日本側には損害皆無と言うワンサイドゲームに成った。


 艦船を30隻と輸送船団40隻にR陸軍25,000名は、駆逐艦5隻と輸送艦6隻の11隻を残し海の藻屑に成ってしまったのだった。


 しかし残りの艦船5隻と輸送艦11隻も、U港入港前5km沖で日本海軍のサイレントフリートに補足され、入港後わずかで全て日本海の漁礁に成ってしまった。


 更に助けに出た港内に残って居た艦船も、出航後数分で港内に仕掛けられたキャプチャー機雷により、全艦艇が撃沈されて港内は完全封鎖をされてしまったのだ。


 艦隊壊滅と航空戦力の殲滅・キャプチャー機雷に因る港湾封鎖で、未だに混乱して居るU港の軍港の施設や、空軍基地に向けて我々はまずレーザー艦砲射撃で敵レーダーサイトを破壊する。


 次に防空網に穴が空いた所を見計らい、艦対地用ASM-3で防空ミサイルや対空砲を無力化した後、戦爆連合により港湾施設と航空基地・補給用倉庫に燃料や発電施設を破壊する予定である


『こちら[ベアズ・エネミー]1、[アルテミス]へ間もなくレーザー照射が始まるので、予定通り1kmの間隔を開けて護衛する、以上オーバー


『[アルテミス]了解ラジャー、こちらにも予定変更の連絡なし、以上オーバー


 我々4機はレーザー照射の余波を避ける為に、P-1R[アルテミス]から各々1kmの間隔を開けた正4角型のフォーメーションで、護衛を続けながらレーザー照射を待った。


 1km離れた斜め後ろから[アルテミス]を見て居ると、機体後部の下がキラキラと光りを反射し出したので、折りたたまれた反射鏡が展開されて居るのだと確認出来た。


 レーザーはまず、照準用低出力レーザーが発射され、偵察用[ブッタアイ]が目標に着弾したのを確認後、すかさず高出力レーザーが発射されて目標を破壊する為に照準はかなり正確だ。


 しかしいくらコンピューター照準だと言っても、戦艦すら一撃で焼き切るレーザーが自身に照射されるのだから、[アルテミス]のクルーも大概肝っ玉が座って居るものだと感心する。


 彼等曰く、ミサイルや爆弾を抱えて敵機と空戦したり、対空射撃の中を爆弾抱えて突っ込む方が余程度胸が居るそうだ。


 何らかのトラブルでレーザーが逸れ自身を撃墜する確立より、対空砲火の下爆撃する方が余程撃墜される確立が高いそうだが、こちらは飛んで来るミサイルや砲を避けられるからいいが、あちらさんは自ら当てて貰うのだから覚悟が違うと思うのだがな・・・・。


 そんな事を思って居ると間もなく照射が始まる信号が来たので、俺はどうせ見えないのだろうが、[アルテミス]の後部を注視していたのだった。


 ・・・・っと[アルテミス]より照射中の合図が来たが、こちらからはまるで確認が出来無いが、下では阿鼻叫喚の地獄が出現して居るのだろうが、俺達に取っては余りに非現実的な攻撃だ。


 まるで攻撃して居るような気分が起きず、普通の護衛フライトの最中のようで、ミサイルを発射した時や機銃を打つ時と違い、まるで罪悪感も戦っている感覚もなく死に神の鎌が振るわれるのだ。


 これより「ながと」と「はりま」に因るレーザー攻撃が、十数分続けられるのだろうが俺に取っては、非現実感と不条理を感じる随分長い十数分に思えるのだろう。






Pday 266日目  2016年06月13日

AM10:25 日本海 U港沖 約30km DDS「ながと」CIC内


 俺は今、先程までおこなわれた「ながと」と「はりま」に因る人類史上初の、高出力レーザーによる艦砲射撃を反芻して居る所だ、


 何か変な非現実感が漂う攻撃だったとしか言い様が無い。


 そう、まるで刀と槍の戦いの最中行き成り自動小銃で参戦したと言うべきか、レーザー小銃で攻撃した様な罪の意識を感じて居るのだ。


 多分初めて誘導ミサイルでアウト・レンジから、敵艦対を攻撃した指揮官はこんな感覚を覚えたのでは無いかと、想像して居る所だと言えば解るかも知れないな。


「艦長、そろそろ電磁投射砲の射程内に入ります、射撃命令を出す頃合だと思いますが?」


「ああ、林葉大尉 後3分後に射撃開始と艦隊全艦に伝えてくれ。


 [ブッタアイ]からの射撃データは届いて居るのだろう? それに合わせて各艦に目標を指示して、割り振りが終わった時点で攻撃開始と連絡してくれや」


「了解、サー!」


「艦長どうしましたか? 珍しくぼーっとしていましたが」


「ああ、暮林副長 たいした事では無いのだがな、レーザー艦砲射撃を思い返していたら初めて対艦誘導ミサイルを、実戦で使った指揮官も今おれが感じた感覚に囚われたのだろうなと思ってな」


「・・・・・・成る程、艦長も同じ事を感じていたのですか、私も何と言うか理不尽と言うべきか、そんな感覚に襲われましたから。


 そうですか、・・・・・艦長も同じでしたか」


「まあな、この年に成るまで基本的な兵器体系は変わらなかったからだろうが、チャンバラの世界に行き成りレーザー小銃を持った、敵が現れて敵を殺しまくった様な感覚だよ。


 多分初めて対艦誘導ミサイルを海戦で使った指揮官は、この様な感覚に襲われたのでは無いかと、さっき考えて居たところなんだが若いのには解らん感覚だろうな・・・・」


「でしょうな、あいつ等に取っては自分達の想像に現実が漸く追いついたと言う感覚でしょうが、我々ロートルに取っては何かずるをして居る気分になりますからね」


「俺も30代か40代初めならこんな風に思わないだろうが、この年に成ると新しい兵器に馴染むのは、結構しんどい物があるんだよなあ。


 こう言う時につくづく歳は取りたく無いなと思うよな、全く」


「艦長! 統制射撃の割り振り終わりましたので、各艦にデータを送信しますが宜しいでしょうか?」


「ああ、データ送信が終わり次第各艦電磁投射砲と、対地ミサイルで目標を破壊せよ!


 まだ敵対艦ミサイルが生きて居る砲台も有るので、レーダーに注意しつつレーザーを対空パルスモードにて待機させろ」


「アイ・アイサー、キャプテン! 間もなく統制射撃を開始します。


 各艦対艦ミサイルに注意しつつ射撃開始!」


 「ながと」に装備された105mm電磁投射砲がまるで機関砲の様に、105mm砲弾をU港の目標に向けて発射し出した。


 対地モードでかなりの飛距離を出す為、弾速は初速マッハ4で発射する為に甲板上に人が出て居ると、ソニックムーブに因り衝撃波で即死してしまう為、射撃中は甲板への外出禁止に成る程だ。


 又、先端にレーザー反射鏡を付けた折りたたみ90mマストにより、水平線外の水面ギリギリを飛翔する、対艦ミサイルに攻撃を掛けられる伸展型90mマストもあるので、対ミサイル用に現在伸展している。


 U港側では先程のレーザー砲の攻撃に依り、対空砲の設備が98%破壊された為碌な迎撃体制も取れず、洋上30kmに敵艦隊が遊弋して居るのは気付いている。


 しかし攻撃手段が無いため一方的に叩かれ、貴重な施設や物資が次々と失われていくのを眺めているしか無い、一方的な展開を覆す事が出来ず、U港海軍指揮官は本国政府の無能振りに激怒していた。


「あのブガチチョフ豚野郎め、よくも私をだましたな。


 何が日本はC国と戦い弱って居るから大丈夫だ!


 自衛隊の頃より強力に成って居るじゃ無いか、こちらの戦力ではとてもじゃ無いが太刀打ち出来無いだろうが!」


 U軍港指令官であるミハイール・アンドレーエヴィチ中将は、自分達を凌駕した日本軍より見通しが甘い、本国のブガチチョフ大将により腹を立てていた。


 これから生き残る為に市民と兵が必要な、貴重な食料や武器弾薬を甘い見通しで焼かれて仕舞い、あまつさえ敗戦の責任を自分に擦り付け逃げを打つ自国政府に愛想を尽かしたのだ。


「ミヤローノフ中佐! U市長のモロゾフを呼んでくれ、大至急たのむ!」


 この中央とU市の反目が後の歴史に大きく影響するのだった。






Pday 266日目  2016年06月13日

PM13:15 福島県双葉郡浪江町請戸 大平山近辺 旭製薬福島工場

     管理棟 CEO室


「で、田中君今回の「北海」作戦の結果は集計できましたか?」


「はい、代表。


 今回の作戦も前回のC・K国軍迎撃作戦「回天」と同様、パーフェクトゲームでした。


 今回も前哨戦である情報戦で優った事と新兵器を秘匿して居た所為で、敵が従来の戦略で勝利出来ると過信した作戦を立てたおかげで、一方的な勝利がもたらされた様です」


「これがもしラスプーチン大統領が立てた作戦なら、ここまで楽に勝てなかったでしょうね。


 彼は良くも悪くも日本を研究して居た為政者ですから、Aと距離を置いた我が国と北方領土を手土産に、講和を選んだ可能性がかなり高かったですので、こちらとしても彼の暗殺は残念でした。


 でも彼の国の性格からすると何れは協力より支配を選び、最終的には対立したでしょうけど、まあ何れにせよ今後は当分大きな戦争は起きないでしょうから、国力を高める事に専念しますが」


「しかし他国の国民性を分析すればする程、日本人とは基本的な部分で差が有ると感じて仕舞いますね。


 何と言いますか民意のレベルと言うか、日本人には当り前の社会制度が他国の多くの民族では、奇跡的な考え方だとか言われますし、こう言う場合どうしてこう言う行動を取るかなとか思いますね。


 私達日本人に取って災害の時に助け合うのは当然だし、規律を守ればより早く社会が安定するので、変な我を張らずに協力し合う事は余りにも当然の行動ですから。


 他国の人も自身が信じて居る宗教にその事は謳って居ますし、何故か神を信じて居ると言う割に、その教えを実践していない民族が殆どで、でも彼等曰く日本人は真面目に神と向き合って居ないと言いますね」


「私が思うに彼等宗教の教えや神を声高に奉じる民族は、魂としての発達が非常に幼く言うなれば、小学生と大学生位のレベルの違いがあると思いますね。


 私達からすると彼等の言う事は解るが、でもその行動をすればどう言う結果に成るかも予想出来ますが、彼等からすると結果が予想出来る私達が不思議で成らないみたいですね。


 だから東日本大震災の時に日本人が取った当り前の行動を、彼等は奇跡の行動だと賞賛するのですが、私達日本人にすると彼等が何故そんなに賞賛するのか解らないのでしょうね。


 だってそれが一番物事を早く損害が少なく納められるのだから、その他の逆に被害が多く成る行動を取っても無駄以外の何者でもないし、第一貴方がたが奉ずる教義にも書いてあるでしょうと言いますからね」


「それなんですよ私が疑問に思うのは、A国人の友人に熱心なクリスチャンが居ますが、彼女が大震災で日本人が取った行動を絶賛するのですが、それまで彼女曰く日本人は神を蔑ろにして居ると良く言っていました。


 だから彼女に震災時の日本人の行動を絶賛して居た時聞いたのです。


『私達が取った行動は、全部貴女の信じる神の書である聖書に書いてあるじゃない、私達日本人の9割以上は聖書を読んで無いけど、実生活でそれと同じ精神を体現しているのよ。


 でもそれを絶賛する貴女方クリスチャンは、事が起きた時聖書に書かれて居る教えに沿って行動しないのは何故?


 私達日本人は別に特に宗教関係の本や教えを学んで居ないけれど、緊急時には誰に言われなくとも幼い子供ですら、列にならぶし動けないお年寄りや子供の為に、元気なハイティーンの若者は食料を調達するのにね。


 そう言えばハリケーンカトリーナが2005年に、貴女の国を襲った時に司法判事も略奪に加わったそうだけど、日本でそんな事をするのは外国人だけよ』


 そう言ったらそれ以来、日本人は神を蔑ろにすると言わなくなりましたが、どうもその原因を彼女追求して居るみたいでいい傾向ですが。


 事程左様に神を信じると言う民族は、いざ緊急事態に成ると神の言葉を実践して無い人達だなとおもいますわ」


「嘗てダグラス・マッカーサー元帥が日本に占領統治で来た時、初めは日本人は14才位の精神年齢だとうそぶいて居たが、占領統治後半に成るとそう言う事を一切言わなく成ったそうだ。


 数年日本人と本気で付き合ってどちらの精神年齢が上だか、判ってしまったのでどうやら恥ずかしく思って居り、彼に取っての黒歴史だったみたいだね。


 彼が書いた大戦回顧碌を読むとハッキリとは書かれて居ないが、書簡から彼の後悔と言うか言わなきゃ良かったと言う、思いが伝わって来る様で非常に面白いのだがね。


 まあ、ある意味日本人に取って特別な宗教を勉強しないでも、生活自体に自然と神の教えが当り前に入って居るから、別に今更特別に基本的な物事をわざわざ勉強する気には成らないのだろうね。


 だって誰しも読み書きの基本や加減乗除を何故改めて勉強する?


 日本人に取っては血肉に染み着いた常識を、なぜ屁こ難しい表現を使った教えから再度学ぶ必要が有るのか解らないし、余程道に迷った時以外には特に勉強する必要も無い、当然の事しか書かれてないですから。


 しかしこれで漸く本腰を入れて、国内からゾンビを駆逐する事に専念出来る体勢に成ったのはいい事だ、早く内政に専念してゾンビをこれ以上増やしたく無いからね」


「そうですわねこの平穏が少しでも長く続けば、国内やアジア域内の安定が増して復興が早まりますからね」

 今回は空軍が主体の作戦でしたので、サイレントフリートの活躍の場が少なかったのは残念ですね。


 作者は古い所では「頭上の敵」が好きですし、最近の作品(?)では「沈黙の艦隊」や「紺碧の艦隊」、後はSFの「ソリトンの悪魔」等が好きな、潜水艦の戦いが好きな方なのでその内、サイレントフリートの活躍を挿入したいですね。

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