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感染戦線  作者: ヘロおやじ
第 一 章 調 布 編
24/72

24.Pday 7日目

今回は少々難産に成り、予定より2日程オーバーしてしまいました。

5千語位なら2日平均に成りそうですが、少々増えて16000語以上に成ってしまいました。

皆さんにお詫びと、いつも読んでくれて感謝を。

AM07:20 調布飛行場側 調布[ひよく寮] リビング


 翌朝、日課と朝食を終えてリビングに集まり、病院の侵攻に関して昨日の鬼山、田所組の院内偵察により変更した作戦を詰める事にした。


「昨日鬼山君と田所君が長谷病院へ、院内の見取り図を確保した時に解った事だが、ゾンビの決壊が起きた所為で周りの住人がそれを恐れて疎開してしまった様だ」


「と言う事は周り中ゾンビだらけと言う事ですか?」


「逆だよ、ゾンビはキャリアである生きた人間を求める傾向が有るのは知って居ると思う。


 あの地域はゾンビが溢れた為に、人口密度が短時間に激減した結果、溢れたゾンビも生者を追って人口密集地に大半が移動し、空白地帯に成ってしまったのだ。


 そしてゾンビ達は移動に都合良く、人口の密集している南南東方面に移動したと思われるんだ。


 北北西の道は、この部分で事故車両が道を塞いだ為、通行が極めて困難に成った所為で、東八道や人見街道に流れなかった様だ」


 俺はタブレットの衛星画像をTVに映して説明をした。


「ああ、確かあの辺は北北西方向には道が少ないのですね。


 東北側は崖で道が無いし、南西側は川があって進路を邪魔しているし、その部分が事故で交通不可能になったら行き場がないですね。


 対して、南南東方面は道が開ける地形に成っているのですね」


「この地形のお陰でゾンビの空白地帯が出来たのだと思う。


 それに、この地形は守るのに容易(たやす)く攻めるのに難しい地形なので、要所さえ塞げば簡単に守れる場所なんだ。


 だからこの辺を占拠して、町会に何か有った時の為の避難場所として確保してしまおうかと思っているのさ。」


 俺はTVに映った地図にレーザーポインタで、塞ぐ場所を示しながら皆に説明した。


「殆んどアパートや寮の有る場所見たいですけれど、住人が残っていた場合はどうするのでしょう?」


「その場合は話し合いで此方に取り込もうと思います。


 只、どの様な性格の住人が残って居るのか解らない為、此方の町会がゾンビを撃退する実力が有ると言う事を、示す必要が有ると思います。


 守って貰うメリットが無ければ、此方に協力してはくれませんからね」


「それはそうですよね、利用だけされて何の利も無ければ、快く協力などしないでしょうし」


「ええ、だから武力の裏付けと食料とエネルギーの配給で協力を得て、あの辺の管理に協力をして貰うのです。


 その為に今回の制圧作戦には、少々派手な手法でゾンビを殲滅しようと思います。


 始めは空爆をしようと思いましたが、余計な連中の目まで集める可能性があるので止めました。


 代わりに機銃掃射による空襲をしようと思います」


「空襲と言うとこの間偵察に使った小型ヘリを使ってですか?」


「ええ、あれに視線照準のターレットを付けた、[バイパー]2丁を付けて上空から音で集めた、ゾンビを弾の雨で殲滅しようと思います。


 その他に、ウニモグのセントリーガンシステムで[アナコンダ]による掃射を行えば、我々が充分な武力を持って居る頼れる存在だと解るでしょう。


 しかし余り遣りすぎると脅しになるので注意が必要ですがね」


「多少派手にした方が、今の御時世では変な連中と交尾まれるより良いのでは?」


「其の辺を考えて、ゾンビには容赦無く当たり、交渉は慇懃にすれば威圧にはなりますので」

 

「じゃあ代表、作戦はまず道路封鎖から始めますか?」


「そうだな、範囲は長谷病院とT大職員寮に、三鷹公団アパートの範囲をまず[とおりゃんせ]20張りで封鎖。


 病院駐車場の車両を脇に撤去して場所を開け、中央部に車を1台置いてそこへSDプレイヤーをセットし、病院のドアを解放の後大音量で音楽を掛けて、ゾンビを誘引する。


 ある程度集まった所をまず個人ヘリ[GEN H-4]改で機銃掃射し、残ったゾンビをウニモグ改のセントリーガンで始末をする、以上が第1段階だ」


「範囲が広いので、注意しないと取り零しが出て危ないですね」


「それが一番の懸念事項だ、外に居る場合ウニモグとパジェロ改の車中以外で気を抜かない様に、2マンセルを堅持してお互いをフォローし合う事を忘れない様に注意して下さい」


「もし避難民に会い保護を要請されたらどうしますか?」


「基本立て篭っている部屋に居て貰い、掃討後に話し合いをすると言う事を徹底して下さい。


 作戦第2段階は病院内の掃討です、方法は1階待合室にていつもの様に、ゾンビ集収用の罠をバリケードで作り、SDプレイヤーでゾンビを誘引し掃討した後、2マンセルで各組が取り零しを掃討して行きます。


 次に階段部分の防火ドアか、シャッターを閉鎖後地下1階部分にて同様の処置を行い、地下部分と1階部分を確保します。


 この段階で一次休憩を入れて再度ゾンビの状況を再確認の後、次の段階つまり2階、3階のゾンビの制圧に入り、本日中に病院の制圧を終われせます」


「もし想定以上にゾンビが、院内に居た場合はどうしますか」


「その場合、地階と1階を制圧後の会議で制圧を一旦諦らめ、薬と医療器具の確保で終わらせるか、明後日に制圧を持ち越すかを決めようと思います。


 逆に想定よりゾンビが少なかった場合、閉鎖した土地内のゾンビを順滅します。


 後他に疑問点は有りますか? 無ければ集合時間の0800時はもう直ぐなので、車両にて公民館前に移動しましょう」


 俺達は移動する為に席を立った。



Pday 7日目

AM08:10 調布飛行場側 水原町公民館 前


 俺達は公民館前に行き、ウニモグ改に積んだ[とおりゃんせ]20セットと、公民館の資材置き場に置いてある足場用鉄パイプを、中型ユンボを積んだ4tトラックに40本程積み、病院へ移動を開始した。


 道順は、航宙センター前のY字路の事故車をユンボで退かし、4tトラックが通れる道を辿って、最初の阻害柵を設置する通りについた。


「思った通りゾンビはこの付近には殆んど居ないな。


 良しこの崖の側から鉄パイプを立て初めて、10mおきにどんどん立ててしまおう」


 ユンボをトラックから下し、穴堀用のドリルユニットを取付け、鉄パイプを設置する組とパイプに超速乾セメントを流し込む組、そして[とおりゃんせ]を設置する組に警備する組に別れて作業をした。


 1時間半もすると封鎖地区は[とおりゃんせ]により、全て封鎖が終わった。


 作業中出て来たゾンビは僅か5体程で、姿を見せた住民は皆無だった。


「やはりゾンビが生存者を追って、移動したとしか考えられないな。


 通常ユンボが稼働し出せば、20体位のゾンビが群がると思いユンボに装甲や、金網を張ってゾンビ対策をしたのだがね」


「まあ予想が良い方に傾いたのですから、ラッキーでしたね


 生存者も予想通り少ないようで、世話が掛らなくて良いですし」


「それではこれから、ユンボを置きに行って代わりに空から空襲を行うので、用意をしておいて下さい。


 運転手は帰りにジムニーで看護師二人と此方に戻って貰います。


 私は用意が出来たらヘリでこの上空へ来ますので、無線で合図をくれれば空襲を始めますので、宜しく指揮を取って下さい」


 俺は鬼山君に頼むとユンボを積んだトラックで町会に戻った。



Pday 7日目

AM09:50 調布飛行場側 水原町公民館 前駐車場


 先程看護師の、咲山・大川を乗せたジムニー改が病院へ向けて移動し、もう現場に到着した頃だろう。


 俺は個人ヘリ[GEN H-4]へ、HAD連動のガンターレットを装備した機体に乗り、攻撃スタンバイ中で待機していた所だ。


 このシステムは[バイパー]に特製1000発入弾倉を装備し、左右のヘリ支柱へ一つずつの視線誘導ガンターレットを、2機装備した攻撃ヘリ仕様に成っている。


 無論電源は機体から、直接給電されて運用するタイプだ。


 その他に乗員や動力・制御部を防護する為、5mm厚のSライン樹脂で防護されて居る為、12.7mm位はものともしない装甲を持っている。


 その時鬼山君から無線で連絡が有った。


『此方B-1、A-1へステージの用意は整った、


 何時でもすテージへどうぞ、オーバー』


『こちらA-1、了解


 これより壇上に上がるので、招待客の半分を私は受け持つ。


 残りはB-1へ任せるので宜しく、オーバー』


『此方B-1任されました、ではご登場願う、オーバー』


 俺はセルのスイッチを入れ、エンジンを起動して2重反転ローターが正常に作動するか確認後、回転数を上げて離陸をした。


 上空50mに上昇すると南南東に進路を取り、すぐ近くに見える病院前駐車場に向かった。


 距離は直線距離でほんの200m位なので15秒位で上空に着き、現場を旋回し目標を確認した。


 SDプレイヤーの音に群がっているのは病院と、近くに潜んでいたゾンビが35体程で、開け放たれた病院の正面ドアからは、偶に1~2体が出て来る程で、殆んど出尽くした感がある。


 ゾンビの衣装も殆んどがパジャマ等の、入院着でそこに白衣の病院関係者が5%位混ざっている感じである。


 ここの病床数は500床あり、スタッフを含めると600~650人が居たと思われる。


 パンデミック発生時に、7割がゾンビ化したとして450人位がゾンビ化して居るはずなので、明らかにゾンビの数が少ない。


 少なくともゾンビが病院より移動して無ければ60体以上は居るはずだが、予想より半分と言う事はやはりゾンビは生存者を追って、南南東側の街に移動したのだろう。


 俺はゾンビが密集して居る1BOX車の周りにHADの照準システムを起動し、照準クロスでロックして次々とゾンビの頭を穴だらけにしていった。


 数分後、半数を始末して後は地上のウニモグ改に任せて辺の偵察へ上空を移動した。


 T大職員寮を各階ざっと偵察しても、生存者は認められずゾンビ化した住人も2棟で確認出来なかった。


 アパートの方へ確認に行くと、右隅の最上階に1部屋だけ生存者を確認出来たが、その他の階部屋は9部屋にゾンビ化した住民が確認出来たが、他は確認出来なかった。


 その旨を鬼山君に伝え俺は、掃討が終わった駐車場に着陸した。


「どうだい鬼山君、奴らの気配は院内にかなりいそうかな?」


「先程正面玄関を開放しに行きましたが、やはり気配は希薄ですね。


 まあ突入して確認をしないと、ハッキリした事は言えませんが」


「こちらも先程上空から寮やアパートを偵察したが、無線で言った様に1箇所の部屋からしか、人の居る気配が無かったからね」


「やはり予想通り病院が決壊した為に、周りの住民が脱出して周りの街にゾンビが拡散した、と言う所でしょうか」


「それが最も無理が無い予想だね、ではご苦労だが2小隊に別れて、院内の掃討作戦に入ってくれ。


 地階や上方階に行く場合、無線用の有線中継機を忘れず設置してな」


「了解、では小隊に別れてまず共同で1階を確保したら、B小隊は地階を、C小隊は2階をそれぞれ殲滅確保します」


 病院は逆コの字型の本館と左に職員用の3階建て管理棟、右側に入院患者用の7階建て入院棟の3棟からなり、個人病院ではかなりの大きさがある病院だ。


 場合に因っては2日掛けての攻略になる可能性が高い建坪がある。


 やはり病院内のゾンビ残存数で攻略の手間が変わると思うが、予想では残りのゾンビ数はかなり少ないだろうと、予測しているが実数は変動する可能性が高いからな。


 院内攻略組から無線があった。


『こちらB-1、やはり1階のゾンビは誘引されたのも有るが10体を処理して御終いです。


 これより入院棟と管理棟の防火扉を閉鎖後、B班は地階・C班は2階の攻略に当たります、オーバー』


「こちらA-1了解、では引き続き地階と2階の攻略を続けてくれ、オーバー」


『了解』


 今回は院内のゾンビ残存数が少ない様なので、俺は駐車場に隣接した幼稚園らしき平屋建ての建物を、調査し出来れば攻略の拠点にしようと思った。


 手の空いている水原町の住民で、大学生の佐竹 慎也(21才)君を連れて保育施設を目指した。


「佐竹君そんなに緊張していると、いざと言う場合咄嗟に動けないぞ、そう言う時は深呼吸を心がけて息をする。


 そうすると不思議に落ち着くものだよ」


「ハイ、スウ~~~ハア~~~・スウ~~~ハア~~~・・・


 少し落ち着きました」


「これから調査する場所は平屋の真四角な建物だ、そんなに隠れる場所は少ないから、ゾンビが居ても発見し易いよ。


 只場所が保育施設だから、最悪幼児のゾンビが居る可能性が高い、


 その時は私が始末するから、見つけたら呼んでくれ」


「幼児のゾンビですか・・・、ハア~~気分が落ち込みますね?」


「そうだね・・・だが誰かが引導を渡して遣らないと、何時までも彷徨う事になるからね。


 さあ、入るよ!」


 俺はソット扉を開けて中を確認した。


 低い箱状の棚でパーテーションを切った室内に、3体程のゾンビが彷徨っていた。


 一体は多分保母さんだろう20代位の女性のゾンビに、残りは男女4才位の幼児ゾンビが2体居た。


 俺は身振りで佐竹君を室外に出し、扉を開けたまま後退して、PS弾を起動してゾンビを室外へ誘導した。


 そして3体がPS弾の側へ集まったと同時に、頭を打ち抜きソット彼らに呟いた。


「お休み」


 と・・・・・。


 佐竹君は思わずそれを見てエズイた。


 俺は彼の背中をさすりながら言った。


「耐えろとは言わない、だが彼らを放置しては可哀そうだろ?


 せめて端へ避けて上げよう」


「ス・・・済ません、オエ・・・こう言う事は初めてなんで・・・。


 甘莉さんは大丈夫なんですか?」


「ああ・・・私は陰陽師でも有るのでね、・・・・場合に因ってはもっと凄惨な現場を、映像・記憶等で無理やり追体験させられる事は侭あるのですよ。


 そんな事ばかりをしていると、慣れと言いますか、耐性が出来てしまうのです」


「もっと酷い現場の追体験って・・・・殺人とかのですか?」


「古い霊も居ますから、殺人、戦争、疫病、リンチ、人柱、自殺、事故、強姦殺人等、ありとあらゆる死を見ざるを得ない立場ですからね・・・・、場合に因っては、霊を消滅させざるを得ない場合もありますから、動く死体を送るのもある意味私の仕事の、一部だと思います」


「それは・・・・私には想像も付かない事ですね~」


「本来一般の方は一生経験しなくて良い事ですが、この様な事態に成れば、自身の大事な方を守る為に慣れる必要が有ります。


 只言える事は、この事に飲まれるなと言う事です。


 飲まれて殺しを楽しむ人間に成った場合、生きながら悪霊化して御霊自体が光らなくなり、病死・事故死をすれば良いでしょうが、最悪地獄霊・即ち悪魔と呼ばれる者達に生きながら利用される存在に成り果てて、天界の監視者に見つかった時点で魂毎、消滅される事は珍しくは無いのです」


「魂事消滅ですか? そうすると生まれ代わり、転生・輪廻の道から外れて黄泉帰りも、無くなってしまう事でしょうか?」


「ええ、今流で言えば貴方と言うプログラムが描かれた基本ファイル自体消去されて、2度と復活しない処置を取られるのです。


 放置しておけばマイナスエネルギーを精製する、製造マシンとして利用されて、魔的存在を活性化するエネルギーユニットとして利用されるので、癌化した細胞を除去するのと同じ手法で、除去されると考えた方が分かり易いでしょう」


「そうなると最早復活する事は不可能なのですか?」


「魂の力が強い者なら、魔物化しても場合に因ってはプラスエネルギーに立ち返る事は有りますが、御霊が弱い存在は一度魔化すると簡単に戻れないですし、時間が掛かり過ぎて数千万年・数億年掛る場合も珍しく無いそうです。


 一度そうなれば、ほぼ永遠に近い時間マイナスエネルギーとして存在する為、大概は無の属性エネルギーに還元され、新たな星の原材料として再利用されるのが一般的ですね」


「要はコンピューターウィルスに汚染された、プログラムを初期化して空きメモリーとして、再利用する感じに似ていますね」


「ああ、それは良い例えですね、その様な処置を取られると思って間違い無いですね」


「負の念に飲まれない様に注意しますよ、しかし一方でこの様な事もしなくては成らないですよね」


 佐竹君は事切れた保母と園児の遺体を見てタメ息を付いた。


 俺達は使い捨てのビニール手袋を嵌め、遺体を隅の植え込みに片付けた。


 そして再度園内を捜索して、ゾンビが居ない事を確認した後、Sライン製のフィルムを窓サッシのガラス部分に貼り、防弾窓と同じ強度にして防備を強化し、そこを皆の待機所にした。


 まずナース達が、もしもの為の救護スペースを作り、その他兵達の休憩スペースと無線の設備等を作り上げた。


 そして予備兵力の我々は園を中心に兵力を展開し直した。


 鬼山君より連絡があり、本館地階は制圧が終わり、2階のC班と合流し掃討に入った。


 やはり本館内に居るゾンビの数はそう多く無く、全体で20体位しか徘徊していなかった様だ。


 もしゾンビが移動していなければ、本館だけでも100体以上居なければ数が合わないし、病院関係者のゾンビ数も少な過ぎるのだ。


 結局本館には駐車場で処置したゾンビを合わせて、55体を確認しただけで終わってしまい、鬼山・逆髪両小隊から引き続き、入院棟の掃討も終わらせる旨、連絡が有ったので許可をした。



Pday 7日目

AM11:50 調布長谷病院前 駐車場 側 みずどり保育所内


 一時間後入院棟の5階までの掃討が終わり、残り6・7階と地階が残るだけと成ったが、そこまでの掃討数は今の所43体で、予想では後20体位だと食事休憩に入った時、両小隊長が予想を立てた。


「最低予想数に近い数だね、やはり街の方へ獲物を求めて移動したと見て間違い無いな」


「そうですね、この儘行けば1400時迄に全ての、病院施設の掃討が済みますね」


「では食後、私は3名を引き連れてT大寮と、アパートの偵察に行きますので」


「じゃあ私の方から蒔田君をそちらに出向させるので、代わりに吉田君を狙撃手として貰えませんか?」


「吉田君どうする? 逆髪隊長と院内掃討に行って見るかい?」


「是非お願いします! そろそろ俺も戦ってみたいですので」


「じゃ俺の方は的撃ちの成績の良かった、佐竹君を狙撃手として貰う代わりに吉岡君を代表の方へ付けます」


「佐竹君も、鬼山隊長の班で戦闘経験を積んだ方が、これからの為になるがどうする?」


「・・・ええ! 私も鬼山隊長の班で、戦闘経験を積んで来ます」


 佐竹君も先程の園児や保母さんの件で、思う所があったのだろう、戦う事を選択した。


 おれは残った小隊員の中で、腹の座った宅配便配送員の斑鳩 誠治君(23才)を通信手として残し、何か事が有ったら防衛体制を取りつつ、各隊長に連絡を入れる様要請しておいた。


 又、看護師はみずどり保育園から出ない様徹底しておいた。



Pday 7日目

PM12:50 調布長谷病院 側 T大職員宿舎 2号館前


 俺達A小隊別動隊は、T大職員寮の前に居た。


 この建物は嘗ての都営住宅と同じ作りで、5階建てで1階に付き5部屋の間取りで、1棟25室・エレベーター無し風呂付きの老朽化の目立つ建物だ。


 俺はプロ用万能シリンダー開錠機を、[ひよく寮]の装備から持参して来たので開錠には困らないが、いざと成れば魔法のアンロックを使えば大抵の扉は、チェーロックをしていても開錠はできるので楽である。


 気配察知を使えば扉の向こうに何が居るか、大体解るので無駄な事はしなくても良いし、全員俺が陰陽師と知って居るので、ゾンビや生者の有無を言い当てても疑わないのは便利だ。


「じゃあ二人共一度最上階まで上り、上から順に生存者やゾンビの有無を確認しながら降りて行こう」


「「了解!」」


 俺達は注意しながら5階まで上り、左の部屋から順に開錠していった。


 俺は5階に上がった時点で全ての部屋を探知したので、この階は無人なのを知って居たので無造作に、開錠していった。


 最も、この職員宿舎は人気の無い物件なのだろう、下の郵便受けには1/3しか名札は入っておらず、階段を上がっている途中にも、各階にゾンビすら居ない不人気ぶりだった。


 開錠しているのは今後この宿舎を利用する時に、開錠する手間を省くためにカギを開けているのに過ぎないからだ。


 開錠の作業中に二人にもその旨話してあり、何だか管理人の開錠サービスみたいだと、苦笑を漏らしていたのが印象的な事だった。


「あ~あ、2号棟は外れでしたね~、いや面倒なのが居なかったから当たりかな」


「先程ヘリから気配を探知していたが、この宿舎2棟からは生者もゾンビも気配が無かったからね。


 大体この老朽化した宿舎自体に、人気が無い見たいだから、入居者も殆んど居ないのだろうね」


「昭和の香りがウザイ程する建物ですから、無理ないでしょうね。


 雨漏りも彼方此方からするみたいで、外から見ると充填剤の跡だらけですよ」


「外カギも後で田嶋工務店の皆に外カギの、南京錠を付けて貰えれば良いか」


「電気と水道だけ何とかすれば、住めなくは無いですからね」


「まあ独身用の避難所と割り切った方が良いでしょう」


 俺達は1号棟の方も開錠と万一の為、確認の意味も込めて開錠して行った。


「結局30分掛けてゾンビ1体居ませんでしたね」


「やはりメインイベントはアパートの方ですか?


 あちらで[とおりゃんせ]の工事中に、なにか気配をアパートの上から感じたんですけれど、生存者みたいだったな。


 管轄の工場等で不審者が居ると感じる、気配を感じましたから」


「何処から感じたのかね?」


「工事を始めて直ぐでしたから、向かって右の最上階ですね。


 後生者では無い気配は左奥の1階部分で感じました」


「ふ~ん、蒔田君はやはり感じる方か、見える時はある?」


「いえ、でも強い人と居ると吊られて見える事が有ります。


 昔付き合って居た娘が見える系だった所為で、結講怖い思いをしましたよ。


 今回代表といると見えました。


 先程の宿舎でも古いせいか、あんまり害のある奴は居なかったけど2号館の3階の突き当たりに男が居たし、1号館の2階中央の部屋に20代の1980年代位の格好をした、女性が台所に居ましたね」


「本当は、かなり質の悪い奴が2棟に跨って居たけど、先程ヘリで偵察中に“散らした″から残ったのは、単なる無害な残留思念だけだよ」


「え、じゃああの宿舎に住民が居なかったのは、その質の悪い奴のせいですか?


 工事中にあの場所の近くで嫌な感じがいていたのはソレのせい?」


「蒔田君に後でお守りを上げるので、身に付けていた方が良いですね。


 変な奴を着けると体調不良とか、余計なモノが寄って来ますので」


「宜しくお願いします、代表謹製のお守りなら下手な神社の物より確かですから、宜しくお願いします」


「しかしその体質で、警備会社は結講シンドい現場も多かったのでは無いですか?


 上司が解る人なら、その手の現場から外してくれるでしょうが、鈍感な人だと無茶を言いますから大変だ。


 だからこの間、文句を言っていたのだね?」


「ええ、9月に移動が有ったのですが、それまでの上司は“解る”人だったんですが、今回の人はまるで鈍感なので、どうしても外して欲しい現場の事を説明しても、まるで取り合ってくれなかったのですよ。


 だからこの間も、とうとう無断欠勤をしてしまったのですが、その前に何篇説明したか解りません」


「君の会社の、伊藤社長にも言って置いたのだけれど、あの人も解らない方だから。


 自身の問題には大騒ぎするが、社員も感じるひとが居て、その手の人を行かせてはいけない現場があり、下手をすれば命に関わる事になるので注意する様言っておいたのですがね」


「まるで考えて居ない様ですね! 


 神奈川県のM市にある、駅前のKと言うビルの夜間警備に回されたのですが、最早冗談では済まない“警告”を受けて、場所を変えてくれる様頼んだのですが、根性がどうたらとか気合でどうとか言い出したので、命には変えられないので無断欠勤をしたらパンデミックに遭遇しましたよ」


「・・・・・え!? 君見たいな体質の人をあそこに配置したの?


 其れはお気の毒としか言えないね。


 あそこは土地絡み、それも古墳が関与しているし、方位も関係無しに古井戸の上に建てて、霊道まで架かるカオスの様な場所だよ。


 その場所に、君の体質じゃあ死にに逝く様なものだ、良く無断欠勤をする決意をしたね。


 もし警告を無視して行って居たら今頃、死霊の仲間入りだったろうね」


「ええ、これは只事では無いと思い、クビを覚悟で欠勤しました」


「そうか、だったらこのゴタゴタが終わったらウチで働かないか?


 [ライジングサン]は私がこの様な体質なので、そちらに体質がある人は危ない現場に遣らない様にしているからね。


 逆に君の様な体質は、生者の気配も感じ易いので、その方面の警備に廻って貰うから、ウチは不審者の検挙率が高いのさ」


「え、本当ですか? 嬉しいです!


 警備関係は天職だと思って居ましたので、入社したかった[ライジングサン]に入社出来るなら本望です。


 警察は肌が合わなくて、民間の警備会社を受けた時、時期が合わなくて[ライジングサン]の募集に間に合わなかったので、今の会社に入ったのです。


 でも私の体質を解ってくれる上司に恵まれた時は良いのですが、外れると本当に地獄行きになるので、悩んでいたんです」


「後で、うちの田中君に言って置きますので、仮契約と言う形で今回は採用します。


 その気が有れば田辺君にも声を掛けて置いて下さい、一緒に採用しますので」


「其れは、あいつも喜びますよ、彼は私とは能力が違い霊の臭いが解るそうです」


「霊の匂いですか?」


「ええ、只その力の所為で、女性の霊を祓う力は凄いです」


「へえ霊を祓えるのですか? 凄い才能ですね。


 しかし、霊臭が分かると女性霊が祓えるって? どう遣るのだろう??」


「クククク・・・、ソウなんですよね、初めに俺は霊を祓えると豪語した時は、良く居る勘違いヤローだと思いましたが、アッハハハ。


 実際あれをされたら、女性関係の霊は100%の確立で彼の前に現れ無いデスヨ! クフフフ」


「???! 匂いが解って100%女性霊が祓える力って・・・?」


「今は辞めてしまった同僚で、警備に付いたビルで変な物に取り憑かれたので見てくれないか、と頼まれた事が有るのです。


 そんな事を言われても、俺は祓え無いよと言ったんですが、そいつもそれまで霊の存在を否定していた奴で、初めて経験してその事が自分の勘違いではないと、確証を欲しがったんだと思います」


「そう言う人は居ますね」


「その手の奴なのです。


 どうしてもと言われ、俺と田辺を強引に誘ってそいつのアパートへ連れて行かれて、酒を飲まされ車で帰れなくされて、仕様が無く泊まったんです」


「居るいる、そう言う奴は居ますね! 本人は真剣なのでしょうが、とても傍迷惑な奴が」


「そいつもその手の傍迷惑ヤローでした。


 その夜、この所毎晩出ると言われたソイツの寝室で、夏だったので雑魚寝をする羽目になったんですが、やはり出ました。


 状況は、奴が窓側に寝ていて田辺が真ん中、俺が隣の部屋への衾側に寝ていたのです。


 夜中の3時頃だと思いますが、窓側から気配を感じた途端金縛りに会いました。


 かなり強烈なやつで、耳鳴りがしたと思ったらピクリとも体が動かなくなりましたね。


 でも目は閉じていても見えるのですよね、窓から真っ黒な影がこちらを見ているのがわかるんです。


 気が付くと、ソイツが部屋の中に入っていて、奴の腹の上に伸し掛ってじっとみつめているんです。


 奴は苦しそうに呻き出すし、気味が悪いし此方に来たらどうしようと俺は焦っていました。


 すると奴は迷惑ヤローの体から降りると、隣の田辺の方へ移ろうと彼の方へ移動し始めた時、いきなり田辺がガバっと起き上がって言いました。


『ん? 霊の臭いがする、先輩起きているでしょう?


 霊が来ている見たいです!』


 と真正面に霊がいるのにも拘らず、いきなり言い出したんです。


 そして霊の方へ顔を向けるといきなり鼻をクンクンして言いました。


『う~ん、女かな? でもこの辺は3日経った真夏の生ゴミの臭いがする。』


 田辺の奴は霊の胸元辺りの匂いを嗅ぎ、言い切りやがりました。


 その時霊の肩がピクリと動くのを確かに見たんです。


 更に奴は鼻をクンカ、クンカさせて霊の顔の辺りの臭いを嗅ぎ言いました。


『わ~、ヒッデ~臭い! ザリガニの臭だ、それも死んで腐った3日目のザリガニを焼いた臭いがするぞ! 


 ひっでー、なんちゅう臭だ! 鼻が曲がるぞこの女!』


 その時俺は、その霊の状況が漸く解る様になりました、どうも焼死した様で顔が焼け爛れて、真っ黒になった女の霊でした。


 その女の霊の口の辺りに鼻を寄せた田辺が、鼻にシワを寄せて心底嫌そうに感想を言って居る、シュールな光景を。


 すると、彼女の肩がワナワナ震えた次の瞬間、パア~ンと乾いた破裂音がしたと同時に、彼女の姿は消えていたんです。


 その後2度と彼女は、奴の部屋や周りに現れなく成ったそうです。


 俺は始めて悪霊に同情しましたよ・・・・・」


 その話しを聞き終わり、俺や吉岡君は肩をブルブル震わせ、とうとう大爆笑した。


「いや~、これは作りでも何でもない実際経験した実話ですよ!


 その時は怖いやら、気の毒やら、可笑しいやら、祟るんじゃないかとか心配しましたよ?


 でも2度と彼女は奴や田辺、俺の周りに来ませんでした。


 その他、田辺の本人は気付いてない武勇伝は尽きませんよ。


 不死身のオカマ霊を撃沈事件とか、生霊を再起不能にした事件や、蛇姫さま消滅事件にetcです」


 俺と吉岡君はその表題を聞いただけで、呼吸困難になり酸欠で死にそうに成った。


 恐るべし田辺の霊臭能力、女性霊に限ってはクリティカルヒット間違い無しの無敵っぷりだ。


 女子力の強いオカマの霊にも強力な武器になるだろう。


 是非我が[ライジングサン]特殊部門、霊対策課に欲しい人材だ。


 蒔田君とコンビを組ませると、相乗効果が有りそうだな、是非うちにヘットハンティングをしないと。


 俺は帰ったら、田中君に早速仮契約書を作り、霊対策課の新たなメンバーに二人を組み込む算段をはじながら、アパートへ向かった。



Pday 7日目

PM13:30 調布長谷病院 側 三鷹都営団地 25号館前


 都営三鷹アパートは大・小二つの建物から構成された団地だ。


 大きい建物は3階建て30部屋の建物で26号館。


 小さい建物は3階建て8部屋であり、1階部分は二間の大部屋で自治会の部屋に使われている25号館に分かれている。


 俺達はまず小さい方の25号館を調べた。


 建物の調査前に外から気配察知で、1階の片方にゾンビが2体いるだけなのは解って居たので、二人には3階と2階は開錠と確認だけであることは伝えておいた。


 上の全部屋は一応開錠して、3DKの部屋を一通り見ておいたが、やはり生存者もゾンビも居らず、3階の3部屋は空室だった。


 1階向かって右の部屋に、ゾンビの気配が3体していたので、開錠した後PS弾を使用して部屋から出た所を始末した。


「さていよいよ問題の26号館だな、此処には向かって最上階右端に人の気配がするし、その他同じく3階の2部屋からゾンビの気配がするな。


 2階は3部屋、1階は4部屋にゾンビがいるね」


「ではどう攻略しますか?」


「今回は居ない部屋は開錠だけで済まして、ゾンビのいる部屋を優先的に始末しよう。


 順番は1階左から行い、2階は右側、3階は左側から行い、最後に右端の部屋へ行く順番で行こう。


 後2階と3階の間の中央階段踊り場付近で、ゾンビが一体いるので2階に上がったら注意してくれ」


「「了解」」


 俺達は北北東を正面にして左から侵入し、1階攻略を始めた。


 26101号と102号は、開錠だけで済まし103号はPS弾で誘き出し、廊下で処理する事にした。


「この部屋は、2体のゾンビが居るので注意してくれ、では開けるたら廊下にPS弾を5秒後に鳴るよう、セットするので用意してくれ」


 俺は開錠すると持って来た、ストッパー用の石で扉を固定し、PS弾をセットし二人の後に回った。


 PS弾が作動し15秒ほどすると、1体目の中年女性が現れた所、二人に処理された。


 更に10秒程待つと、今度は5才位の女の子のゾンビが現れたのだが、二人が躊躇した為おれが始末をした。


 二人が驚いて俺を見ているので、二人にこう言った。


「私は陰陽師ですよ、引導を渡すのは大人の霊だけでは有りません、子供の霊の方がことわりが判らず、散らさなければ成らない場合が多いのですよ」


「因果な稼業ですね~」


「そうですね、しかし誰かがしないと成らない仕事ですから。


 まして放置すれば人死の被害が拡大しますので放置は出来ません」


「だからこの間鬼山さんが、代表は我々に近い人だと言っていたのですね。


 どうして会社の経営者が、傭兵出の鬼山さんや田所さんと近いのか、解らなかったのですが、陰陽師である代表は下手な傭兵より、人の生死と関わった行き方をしているからそう言っていたのですね」 


「下手な兵隊さんより確かにドロドロした生き死に関わって居ますからね、私達陰陽師は。


 ある意味裏オカルトうつしよを跨いだ存在なんでしょうね。


 さ、次も有りますから、サッサと済ませましょう」


 俺達は3階まで慎重且つスピーディーにゾンビを始末していった。


 結局この26号館で始末したゾンビは全部で22体になった。


 遺体は放置するのは、衛生上好ましくないので取り敢えず、廊下から下へ投棄し後で一箇所に集め、遺体分解用のバクテリアを振り掛けて処理する事に成っている。


 このバクテリアは、一般に使用するにはかなり高価な代物で、気軽に撒ける物ではないが、衛生面を考えるとそうも言って居られないので、今回試作段階の物を持って来ており、この在庫を使うと当面手に入らない為、あまり気軽に使えない。


 このバクテリアは、バイオ燃料を作る際に使われる、嫌気性の物を特殊な溶液で生存させているのだが、この溶液を作るのにコストが掛かりあまり気軽に使えない代物に成っている。


 何せ1L当たり5万円する溶液を、1体200cc以上使うので採算を合わせる為に、販売価格は1L当たり20万円は請求しないと、割が合わない物に成ってしまうので。


 バイオ燃料を製造する際は、無酸素状態のタンクで処理するため、一度作れば1体当たりのコストは数円程度に成るのだが、有酸素状態で使う為には使い捨てで使用する為、この値段になってしまう。


 しかしこれで処理するとほぼバクテリア以外無菌で分解する為、感染症の温床に成る心配は無い。


 そして最後に残すは最上階の右端、生存者と思われる反応があった部屋を残すだけとなった。


「しかし我々がゾンビを片付けて居る時も、無反応と言うのはどうしてでしょう?


 朝行った工事中も、視線わ感じたのですが、声一つかけないのは変ですね」


「う~ん、犯罪者とも考えられるが、人嫌いな引篭りと言う可能性も高いからね」


「ああ、引篭りも可能性が大きいですね! しかし顔くらい見せれば良いのに、調べるのが面倒だな全く」


「彼も逆にそう思っている可能性が高いよね、人が大人しく引き篭っているのに煩い連中だ、と思っているだろうね。


 あとは病気で動けないかどちらかだよ」


「ああ、病気という可能性も高いね、例えば脳卒中で生き残り動けない状態と言う可能性も亡きにしもあらずさ」


 そう言いながら俺達は26310号室に着いた。


 そして部屋のチャイムを鳴らした。


 ピンポーン・ピンポーン


 「・・・・・・・・・・・・・・」


 しかし2分程経ったが応答は無かった。


 更にチャイムを鳴らすが


 ピンポーン・ピンポーン・ピンポーン


「誰も居ないのですかね~? 取り敢えずカギを開けて見ますか?」


「気配はあるのだが一寸待ってくれ!」


 ドンドンドン・ドンドンドン


「吉岡さーん、いらっしゃいますか~? 私は川向こうにある水原町会の者で、甘莉と申す者ですが~」


 ドンドンドン・ドンドンドン


「ご返事が無ければ無人室として勝手に開錠しますが、良いですか~? ご返事が無い様なので、開錠して勝手に入ります。


 チェーンロックしていてもカッターが有るので切って侵入しますが宜しいですね? では逝きま~す」


 俺が取手をガチャガチャ鳴らすと中から慌てた男の声がした。


「おい勝手に開けるな! 俺の事は放っておいてくれ!」


 ようやく部屋の中から返事が帰って来た。


「いやー良かった、人の気配はしていたので、病気で動けないのかと心配しました。


 私達は、野川の200m程上流にある対岸の水原町の町会の者ですが、隣に有る長谷病院を今日我々がゾンビより開放しました。


 そしてご存知と思いますが、この都営団地と隣のT大職員宿舎を合わせて外界より隔離し、内部のゾンビを今制圧し終わりました。


 そして残るは貴方の居らっしゃるこの部屋が最後になるのです。


 そこでお願いが有って参った次第です、扉を開けて貰えないでしょうか?」


 おれは唯一の生き残り、吉岡氏に下手に出て話しをした。


「・・・・・・・・・・・・・・・解った、今開ける」


 かなり躊躇してから彼はとびらを開けた。


 出て来た男は20代半ばの、小太りで長髪の如何にもと言う雰囲気を醸している男だった。


 格好はジーンズにロゴ付きのトレーナーとメガネに長髪の、如何にも秋葉原系の住人だった。


 俺は穏当に挨拶をした。


「私は先程も申しました通り、斜向かいの町会に属する水原6丁目町会に属する、今回の病院奪回作戦の責任者の甘莉と申します。


 多分ご存知だと思いますが、先程この都営団地をゾンビから完全に奪回が終わりました。


 付きましては吉岡さんに、お願いが有ってやって来たのです」


「・・・・どう言うお話ですか? 出てけと言うなら無理と応えるしか無いです。


 無理やり追い出すのなら、石油を被って焼身自殺をするが?


 そうしたいならするが良いさ!」


「別にそんな無体な要求をする為、来た訳ではないですよ。


 ご存知かどうかこの都営住宅には貴方しか、生き残りは居ないのです。


 ここを今回私達が占拠したのは近い将来、都心部のゾンビが生者を求めて大挙して押し寄せる、ゾンビのスタンビートが起る可能性が大変大きいのです。


 無論私達も町会全体を覆う擁壁の工事を始めて居ますが、もしその壁が破られたら避難先が無い事態になります。


 その事態の保険として、内の町会としてはゾンビの決壊に因って実質壊滅した、この辺一帯を避難所として確保した訳です。


 そこでお願いですが、貴方にこの辺の管理をして頂けないかと言う事です」


「管理だって?! 何を管理するんだ? 


 俺は見た通りの引篭りだぞ! ゾンビや不審者が此処に入ったとして追い出す実力何て無いんだ、あんた方が持って居る[ライジングサン]の[バイパー]が有ってもまず無理だよ!


 それに協力したとしてどんな見返りがあるんだ?」


「いえ私達が望むのは貴方に戦えと言って居る訳では有りません。


 イザとなったら、見つからない様に隠れていて、身の安全を確保して欲しいのです。


 我々が欲しいのは、ゾンビが侵攻した場合の情報や、暴徒が敷地内に侵入しそうだと言う情報です。


 そして見返りとして、無償の電力の供給と水・食料の配給、そして最大の目玉は衛星を使ったインターネットへの、アクセスシステムです。


 これが有れば仮に国内各所が停電になり、ネットにアクセス出来なくなる事態が起きても、米軍や日本軍のネット環境と同じく、何時でもネットに衛星を使いアクセスする事が可能です。


 又、電気は旭工機製のソーラーユニットを、このアパートと病院に設置するので料金を気にする必要が無く使う事が可能です。


 無論外から見られない様に遮光カーテンを付けますがどうします?」


 俺は吉岡氏に聞いた。


 結論?


 無論否は無かったよ? オタクに無尽蔵のネット環境と電力、そして食料と水以外何が必要だ?


 ついでに最新型のパソとプリンターに、25インチTVも付けましたが何か?


 家電量販店やダンキーに行けば、今ならタダで幾らでも手に入るさ!


 後は田嶋工務店に頼んで、戸建用ソーラーシステムと電気温水器と、IH調理器を最優先で着ける約束をした。


 水は裏山に使用中の井戸が有ったので、ポンプから直で元栓から先に水パイプを繋いで、アパートに供給をする様に約束した。


 無論其れは今後を考えれば、必要な措置だからね。


 これで町会は避難先を確保することが出来たし、利用しない場合はアルテミスの疎開先としても使えるから、無駄には成らないからね。


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