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感染戦線  作者: ヘロおやじ
第 一 章 調 布 編
14/72

14.Pday 2日目

今回の投稿はここまでです


AM07:20 調布飛行場側 調布[ひよく寮] 門前


 俺達がパジェロ改で、門前にて待っていると待ち合わせ10分前だが、二人が[バイパー]を油断なく構えやって来た。


 この様な状況で、待ち合わせの10分前での集合は合格点だ。


 警戒も怠らずにやって来た姿勢も、戦士としての嗜みがある漢である事を示している。


 早速車に乗せ改めて挨拶をする。


「始めまして、私は鬼山君の上司である、旭グループ代表の甘莉丈太郎と申します」


「お初にお目にかかります、田嶋工務店社長の田嶋務と申します。


 こちらが我社の片腕の、逆髪 義樹現場長です」


「宜しく逆髪と申します」


「お二人共そんなに固くならずに行きましょう、お互い命を預けるわけですしね」


「ハイ解りました、しかし甘莉さんはあの旭建設の代表でもあるのでしょう?


 業界では色々と新建材の開発や、特殊工法の開発で有名ですよ」


「ええ、まあうちは元々製薬会社でしてね、特殊な規格や安全基準の工場を作らなければ成らないので、自社の自由になる建設会社がどうしても欲しかったので、現在の建設会社を買収してテコ入れしただけですよ」


「ああそうだったんですか、確かにケミカルやバイオ工場の場合は、どうしても特殊な設備や安全基準が要りますしね。


 しかし短時間にあれだけの会社を作り上げて、利益も上げられるとは凄いものですね。


 後、我々は自衛官出身ですが、[ライジングサン]の噂も良く聞きますよ。


 何よりこの[バイパー]の出現は、思わず喝采を上げてしまいました。


 電動のエアーガンでこの性能ですからね。


 私の陸自の後輩にあたる奴らも、警備会社にだいぶ再就職していますが、御蔭でこれを装備して居ると、襲撃が有っても反撃の手段が出来た御蔭で、大陸系のギャングからの犯罪が減って、本当に助かっていますからね。


 ましてやSライン製の戦闘服を着用していると、通常の拳銃程度じゃケガもさせられないと来た。


 だから[ライジングサン]への転職は、狭き門になってしまったと後輩がぼやいていましたよ」


「まあ[ライジングサン]も、製薬会社の警備の必要に迫られて作った会社なんですがね。


 何せ国内はスパイ天国で、会社の重要技術が、C国やK国そしてA国にR国が平気で盗んで行きますから、その行為を阻止する為に作った組織ですよ。


 国が守ってくれないので、自分で行動しないと大事な資産が流失していくだけで、誰も責任を取ってくれないですからね」


「本当にそうですね、だから今回の総理大臣の判断を我々は支持しますよ。


 C国など、自分らで発生させたウィルスを、世界に蔓延させたくせに、それから逃げる為に他国の領土に、侵攻するとは許せん連中だと思いますから。


 其れを後押しするK国など、どうなろうと知った事かと、ハラワタが煮えくり返る思いですよ。


 もし自分が海自出だったら、即座に複官して一兵卒でも、参戦して居る所です」


「全くですね、でも海は松浦海将に任せておけば大丈夫でしょう。


 あの人は成果主義であり、現実主義者の軍人ですから、任せて置けば必ず成果を出すので、大丈夫でしょうね。


 航空戦略も得意な人なので、リムパック等ではアメリカ軍では、あの人と模擬戦をしたくない将官が、続出して居るのが実情ですからね。


 後、南太平洋は横山提督が、ASEAN連合艦隊の指揮を取って迎撃体制を敷いているので、まず負ける要因はないでしょう」


「え、横山提督と言うと、あの横山海将補ですか?


 “提督”閣下がまさかASEAN艦隊の指揮官とは驚きました。


 5~6年前に海自を退官した時は、自衛隊中が大騒ぎだったのに、確か民間のシンクタンクに、再就職なさったと聞いていたんですがね・・・」


「今回の決定は安部総理と、ASEANの総意で決まった人事だそうですので、今頃南太平洋と東シナ海で虎視眈々と、2匹の海竜が牙を研いでいるでしょうね」


「いい人事を行った物だ、じゃあC国K国連合艦隊の未来は、決まったわけですね・・・・(合掌)」


「彼等は恐らく、水漬く屍を晒すでしょうね」


「まあ自業自得ですな、大国意識ばかりで実が伴わない、実質三流国家が何を勘違いしたか、自身を一流国と誤認して覇権主義に邁進し出し、一流国としての技術も見識も無い、自身の惨めさに気づかず、道を誤ってしまったと言う所でしょう。


 まあ今更気がついても、彼の国を助ける国はアジアには、まず居ないでしょうね」


「その通り、後我々がするのは一刻も早く、ワクチンを完成させる事です」


「其の辺は社長さんに任せますので、薬の開発を早急にお願いしますよ」


「ええ、それから今日我々が行うのは、この町周辺の商店やショッピングモール、スーパーやトラックターミナルの状況把握ですね。


 これらの施設は、長期保存の効く食料を、大量にストックしている施設です。


 特にトラックターミナルや、食品会社の倉庫は死角にあるため、狙い目ですからね」


「そうですね、一般家庭のストックも精々あって1週間位ですから。


 トラックターミナルは意外と盲点ですね」


「それと今回用意した[バイパー]km4タイプは、先ほど鬼山君から聞いたかも知れませんが、殺傷モードがあるスペシャルタイプです。


 始めからサプレッサーとフォワグリップ、0~10倍望遠&ナイトeyeダットサイト、折畳みショルダーストックは常備された、特殊戦タイプです。


 Kモードつまりキルモードにすると、弾速が1.6倍に上り、弾も鉄制の11mmBB弾を時速1000kmで発射出来ますので、注意して下さい。


 ヘットショットでなら、約150m以内ならほぼ1発で、頭蓋を打ち抜く性能がありますので、下手なハンドガンやSMGなど、寄せ付けない性能があります。


 バッテリーはKモードで、約7500発分は持つ計算ですが、充電は車のシガーライターや家庭のコンセント、USBソケット及び太陽光発電機から給電が出来ます。


 弾丸も、パチンコ店のパチンコ玉を流用出来ますので、さほど弾丸の節約をしないでも供給は困らないでしょうね。


 メンテナンス方法と機材は、その他の装備品と一緒にマニュアルを渡しますので、帰ったら読んで置いて下さい」


「通常の[バイパー]も凄いのに、この銃は殺傷モードもあるんですか?


 しかし弾をパチンコ玉の径にしたのは秀逸ですね、これで弾薬をかなり気にしないで撃てますから」


「近所のパチンコ店の場所も、良くチェックしておいて下さい、補給は大事ですので我々が旅立った後にも、色々必要でしょうからね。


 それに貴男方が居るので、町会に[バイパー]を20丁と、メンテナンス用品に100発入弾倉を各5個ずつと、1000発入るドラム弾倉を5個置いていきますので、有効に使って身を守って下さい」


「20丁もですか? しかし多すぎやしませんかね?


 まるで市街戦を想定した数ですね」


「ええ、ゾンビ自体の駆除は慣れてしまえばそんなに脅威じゃ無いんですが、怖いのはサイコパスやチンピラ等の暴徒による襲撃です。


 奴ら暴徒はなまじ人間であるだけに、始末に追えない存在です。


 ましてこの様な無政府状態に於いて、奴ら犯罪者集団が何をするか想像に難くないですからね。


 皆さんが生き残る為には、暴徒と云う人と戦う覚悟が必要ですし、この様な事態で暴徒になる奴らは、平気で嘘を付き皆さんを油断させて入り込み、隙を見つけると容赦なく殺し、犯し、奪う連中ですので注意して欲しいです」


「そうですか?・・・・・・・・・。


 そうですね! 確かに奴らはそうするでしょうね。


 厳しく対処しないと、自分だけじゃなく自分の妻や子、親や兄妹・友人が犠牲になってしまうんでしょう。


 こう言う状況では人を性善説で見るより、皆の安全の為性悪説で見ないと指導者としては落第ですし、そう手を打つべきなんですね」


「悲しいかなそうですね、鬼山君など元傭兵経験者ですから、戦場の犯罪者の性悪さが身に沁みる程解っているから、その場合容赦はしないですよ。


 人権人権と言って、緊急事態に人権ごっこをしたい者が居れば、他所へいって遣りなさいと言って、私ならコミュニティから追い出しますね」


「ええ、奴らの人権屋の尻馬に乗る犯罪者の奸悪さは、いっそ見事と言う他ない程巧妙ですからね。


 あたら慈悲を与えたばかりに、その奴が慈悲を与えた兵士の家族を惨殺したのを実際に見ましたから。


 この手の連中は見つけ次第、処置していくしかないのが現状です」


 鬼山君が戦場での経験を話すと、田嶋社長は言った。


「そんなに酷いのですか、やはり話しても解りませんか。


 そう言えば駐屯地周辺でも、結講嫌な思いをして来ましたから、なんとなくは想像付きますが・・・・・」


「奴らに人間の言葉は通用しませんよ、なまじ人語を解するせいで馬鹿な人権屋は、慈悲を垂れて自己満足していますが、再犯した場合人権屋は責任を取らないで、又人権人権と犯罪者の権利ばかり主張して、殺された者や家族の権利を踏み躙る、人外の外道ですからね。


 死後彼らの往く先を、知って居るから未だ耐えられますが、絶対に行きたく無い場所ですからね」


「え?代表、そんなに凄い所に行くんですか奴ら人権屋は・・・・」


「ええあそこには2度と行きたくも無いし、近づくのも嫌ですね。


 所謂地獄の貧民窟ですし、現在と同じく自説を曲げず自分の思う通り、他人を操ろうとする亡者の世界です。


 何より臭いのに辟易しますし、一度体に染み込むと簡単に落ちない死臭を数百倍酷くした匂いですよ」


「ええと・・・・どう言う事なんでしょう?


 甘莉さんはそれ系の物が見える人なんでしょうか?」


「はい代表は経営者であると同時に、多分当代一の陰陽師でもあるんですよ、だから霊界や神界の探訪した事を偶に話してくれます」


「へ~じゃあ色々見えて大変ですね、実は私の父方が“かんなみち”の血筋なんで、昔から色々それ系では苦労していたんですよ」


「へー本道ですか? 地場ですか?」


「元々は本道でしたが、地場の神を祀るために派遣された、蹈鞴系統ですね」


「本家筋ですか分家筋ですか?」


「分家ですね」


「私の師匠は皇室の流れを汲む一派で、土御門にも間系していますが、師匠はあまり拘りがない方ですので、あっちこっちの呪を取り入れていましたね。


 今更何かを抑えるお役目以外、そんなに拘る事も無いだろうと言う考えのようですので」


「失礼ですが師匠の尊名をお聞きしても宜しいでしょうか?」


「現し世の名は[***]ですがそれで解りますか?」


「え[***]導師ですか、ひょっとすると貴方は導師の跡目を継ぐと言われる甘莉様でしょうか?」


「いえその様な話もありましたが、私にはある方の“おやくめ”があり、お受け出来ない事を納得なさって下さいました」


 うわ、そっち関係の人に当たっちゃったよ、面倒な事にならなきゃいいんだが。


「そうですか、本家の当主にお噂は聞いた事がありますよ、[***]導師にとても優秀なお弟子が着いたと。


 それが貴方でしたか、私は山梨県の笛吹にある****神社の神主職にある、貴実家の分家である***神社の神主の家系に連なるものです」


「あの辺だと山神関係の封じですか、嘗ては鉱山が多かった土地柄で、山神を封じる一族が多いと聞いた事がありますからね」


「まあその系統の一派ですよ、しかしこんな所でご同輩と知り合うとは奇縁ですね」


「全くですね」


「そろそろKマート三鷹店に着きますよ、向かいはビートバックスです」


「ビートバックスは閑散としているな、人の気配はないね。


 Kマートはバリケード有りで、ゾンビもかなり集まっているな、どうやら立籠りがいるね」


「次は100m程先のグルマンシティへお願いします」


「ここは略奪に合ったみたいだね、店にゾンビがうろついているな。


 次に行ってくれ」


「次はダン・キーですね・・・・・・・。


 と着いた、ここも略奪済みかひどいね。


 次に行ってくれ」


 俺達は次々と大型スーパーと、ショッピングモールを訪れたが、8割方のスーパーが略奪に合った跡があった。


「しかしゾンビの数が多くなって来たな、避けるのが難しくなってきたぞ」


 鬼山君がぼやきだす位に、ゾンビ化した人間が増えて来た。


 やはりゾンビの数は、双曲線を描いて乗数倍に増えている様だ。


「排土板を装備していなければ、アニマルガードだけだと車体に損傷を受けて故障の原因になりましたね。


 稼働角度も上に上げれば、エンジングリルとフロントガラスを半分位覆うので、防弾板としても活用できるし、上1/3に開けた肉抜きスリットで視界も確保できるし、強度も落ちてないので使い易いですね。


 アンダーガードのチタン板も、ミッションや動力シャフトにオイルパンの防護をしてくれるので心強いですよ」


「やはり転ばぬ先の杖ですよ、多少のデットウェイトでも故障を阻止してくれる方が、こう言う場合は正解だからね。


 人を巻き込むと場合に因っては大型トラックでさえ、ミッションや動力系統を損傷して、止まってしまうのが自動車ですからね。


 ノーマル装備の自動車で、故障や損傷を少なく人を引ける速度は、20kmが限度だそうですからね」


「そうですね、しかしライトやフロントガラスは、壊れる可能性がありますよ。


 やはり軍用の装備で強化した、軽装甲車でないと50km位で人は引けないでしょうね」


「現代の車は意外と精密部品の塊で、衝突にはボディを壊す事で衝撃を吸収させて、乗員や衝突した人間を守る様に作られていますからね。


 良く有る轢き逃げの犯罪は、早い段階で車を処分出来る組織犯罪者でないと、難しいそうですよ直ぐに足が付くので。


 昔のアメ車ならボディも頑丈に作られて居るので、殺りやすかったみたいですがね」


 「所でそろそろ昼飯にしませんか? 1230に成る頃ですし幸い傍に、郷土の林公園の総合体育館バス停の、引き込みコンコースがあるから駐車していても目立ちませんよ」


「よしじゃあそこで昼食にしようか、玉川も近いしこの辺は人口密度も低いから、ゾンビもあまりいないだろうからな」


「じゃあ侵入しますので揺れますよ」


 鬼山君の運転するパジェロ改は、バス亭右手前の植え込みから歩道の縁石を乗り越えて、総合体育館前の公園内に入った。






Pday 2日目

PM12:35 郷土の林公園 総合体育館前 広場


 思った通り園内は、ゾンビが疎らに居るぐらいで殆ど空いていた為、車外に出て車を背に持参して来たおむすび弁当を食べ出した。


「あ~あ、ゾンビさえ居なければ丁度いい秋の行楽シーズンなのにな、まったく無粋なこった」


 逆髪君がぼやいた。


「そういや田嶋さんに逆髪さんは、結婚しているんですか?」


「私はしているけど逆髪君は独身ですよ。


 私は子共が男女二人いるんですがね、双子で今年3才になるんですよ。


 毎日五月蝿くて敵いませんわ! ここ二日は毎日親父が家に居るせいか私にまとわりついて大変ですね」


 田嶋氏は嬉しそうに子供の話をしだした。


 独身男には少々羨ましくもあり鬱陶しくもある話だ。


「子供か良いですね賑やかで、俺らなんか休みの日は前の晩に酔いつぶれて寝くたれているか、洗濯や掃除をしているかで持て余しているからな」


「俺もだよ、彼女でもいるなら別なんでしょうがね・・・・。


 代表はどうです? やはりデートとか付合いがあるんでしょう?」


「フッ、私も似たり寄ったりだよ。


 仕事人間なんで、女性とお付き合い所の話じゃないよ、休みだと精々近所に買い物へ行くか、部屋に篭って掃除洗濯で日が暮れるのさ」


「代表が変な女に捕まると、会社の存続に影響しますから、其の辺は自重しているみたいで安心ですが、我々と同じ様な行動パターンじゃ逆の意味で心配になりますね、せっかくのセレブが夢も希望も無い休日とは・・・・・。


 やはりどっかの財閥のお嬢さんと、結婚して早く後継を設けて頂かないと我々が心配ですよ」


「今時政略結婚かい? 古いね、どうせなら恋愛結婚に憧れるんだがな~。


 しかし仕事ばかりで付き合っている暇もないし、付き合えば仕事々で遊んでもくれないと、文句を言われて直ぐ振られるしで、結局見合いで政略結婚かな」


「田中君なんかどうなんです? 年齢も近いし結講お似合いですよ」


「う~ん、彼女とは仕事の同志みたいな関係だからな。


 気の置けない仲間として見た事しか無いし、あまり恋愛感情なんか二人共無いよな」


 そんなたわいもない事を話していると、右手奥のハデな建物から悲鳴が上り、高校生位の男女2人が、ゾンビ7体に追いかけられてこちらに逃げてきた。


 少年が鉄パイプを振り回しながら牽制し、少女がこちらに走って来る

なかなか度胸があるが、多勢に無勢ですぐ手詰まりに成って仕舞うだろう。


「おい少年、もう大丈夫だから此方に来い!」


 呼びかけると少年は、少女の背を守る進路で走って来た。


「田嶋さん、逆髪さん、目標まで約60!。


 ダットサイトの照準システムは、自動補正されるのでレティクルのドットに合わせて引き金を引けば当たります。


 狙撃をお願いします」


「「了ゥ解、状況始め」」


 二人は慣れない武器での動体狙撃に、初弾の2~3発は外したがコツを掴むと面白い様に当て始めた。


 パス・パパス・パス・パス・パパパ・パパ


「うん、扱い易い銃だな」


「ええ反動も少ないし、ダットサイトも見やすいので、コツさえ掴めば簡単に当たりますね」


 ゾンビを処理し終えると、[バイパー]の扱い易さに感想を言う二人。


 そこへ男女二人が駆込んで来た。


「ハア・ハア・ハア・・・・あ、アリガトウ御座います」


「ハア・ハア・ハア・ハア・・助かりました・・・」


「ああ大丈夫か二人共、噛まれていないだろうな」


「ハア・ハア・・・・はあ~、大丈夫です噛まれていません・・・はあ・はあ」


「二人共落ち着いて、水でも飲んでから息を整えて話してご覧」


 俺は二人に車から取り出した、水の500mlペットボトルをそれぞれ渡すとそう言った。


 水を受け取った二人は、一気に2/3を飲むと少し落ち着いた様だった。


 そしてゾンビからの逃走劇を少年が話し始めた。


「僕達は都立府中高校の2年生の、咲島翔と真壁美希と言います、三日前の日曜日に僕たち2人の他4人の、計6人でこの公園まで自転車でスケッチに来たんです」


「三日前か・・・大変だったね、他の4人は一緒じゃないの?」


「ええ日曜日の10時半位に着いて、皆んなそれぞれに散ってスケッチを始めたんですが、4時位に成ってそろそろ帰る時間になった時に、あいつ等が現れて人を襲い始めたんです」


「日曜日にはパンデミックが始まっていたのか。


 運が悪かったね、日曜のお昼頃に総理大臣が記者会見をして、ゾンビパンデミックの危険を説いたんだけど、君達は間に合わなかったんだな」


「そうなんですか? 知らなかったな・・・・。


 スケッチ中は五月蝿いので、スマホの電源を落としていたんでそんなニュースが有ったなんて知りませんでした、そして奴らが公園内の人達を襲って来て各自散り散りに逃げたので、皆んなどうなったか解りません。


 僕らは逃げている途中偶然再会したので。


 それからあの建物に逃げ込んで、今日まで篭っていたんですが、食料が無くなった所で、皆さんを見つけたんで、建物から出て助けてもらおうと思ったら奴らに見つかってしまったんです」


「俺達は調布飛行場北東部にある、水原公園近くの水原町6丁目町会の自警団の者だよ。


 今後ゾンビパンデミックを生き残る為に、物資が貯蔵されている倉庫やショッピングモール、スーパー等の調査に来たんだ。


 君たちは確か府中高校に通っているんだよね、高校から家は近いの?」


「ええ俺達の家は西調布の駅と高校の中間位にある、同じマンションです。


 美希の家は4階で、俺ん家は3階で幼馴染なんです」


「そうか此処から遠く無いんで送って行ってあげるか。


 皆んなはどう思う?」


「私は構いませんよ、此処から近いですし」と田嶋。


「私も良いです」、「俺も構いません」


「と言う訳で君達を家まで送って行こう。


 その前に俺達の弁当の残りで悪いんだが、取敢えず飯でも食って英気を養ってくれ」


「「有難う御座います!!」」


 二人は余程腹が減っていたんだろう、元気に礼を言った。


 おれたちはそれぞれ残した、おにぎり3つとオカズの残りを二人に渡し、カブリつくのを眺めなながら、この3日二人がどう過ごしたのかを聞いた。


 二人はあの建物に2階から入り、カギを掛けて立て篭ったそうだ。


 水は水道が生きていた為、困らなかったが食料は昼の弁当の残りと、デイパックに入れた菓子類だけしかなく、昨日には殆ど食べてしまったので大変だったみたいだ。


 夜はかなり冷え込み、カーテンを外して二人で包まって、暖を取ったそうだ。


 ゾンビ共は二人の居る建物に先ほどの7体が群がり、離れなかった為建物から出られず、食料を調達もできず、脱出も不可能で困っていたそうである。


 多分二人の匂いか生活音に惹かれて、まとわりついていたのだろう。


「そう言えば友達にスマホで連絡は着かなかったの?」


「全然繋がりませんでした、家にも電話してみたけれどダメでした」


「やはり携帯は緊急時には役立たずか・・・。


 全員インカムが基本装備に入っているので、最大3km以内の短距離なら通話出来るので後で周波帯を決めとこう」


「でも失礼ですが皆さんの装備は凄いですね、その銃は確か[ライジングサン]製のRA03s[バイパー]ですよね。


 いや型が違うから特殊モデルかな・・・・」


「へー君は武器マニアかい、これは正式名称RA03skm4だよ。


 [バイパー]でも要人警護用の特殊戦仕様さ、主に海外の銃砲可の国に輸出されている[バイパー]なんだ。


 サプレッサーに0~10倍望遠&ナイトeye仕様のダットサイト、折たたみフォワグリップ、折畳みショルダーストックが標準装備された、スペシャル仕様だよ」


「うわ~凄いな! これがあればあの化物なんか1擊でたおせますね。


 しかしこんな最新兵器が良く手に入りましたねー、通常ならRA03sの10発バージョンしか国内では手に入らないのに、本来殺傷能力が極めて低いから日本の警視庁も採用に踏み切ったんでしょ?


 どんなコネがあればこんな凄い銃が手に入るんですか?


 それに皆さんが着ている戦闘服は、[ライジングサン]の都市戦闘服RS050Tじゃないですか。


 ベストやマガジンポーチ・キャップも全部本物でしょう?


 上着だけをオークションに出品したら、一着30万は固いですよ。


 ウエアーだけで1セット、100万以下には成らないでしょうね。


 [ライジングサン]の関係者の方ですか?」


 ヤバイこいつはヲタだ! みりヲタの重傷患者だ、俺の感がそう告げる!


 良し鬼山君に押し付けよう、なんせ警備部門の責任者の一人だから俺を守る義務がある、精神的な意味に置いても!


「私と鬼山君は関係者と言ったら関係者だね。


 鬼山君は[ライジングサン]警備部・要人警護第1課の隊長さんだからね。


 実戦を経験した傭兵出じゃないと、入隊出来ない腕っこきのプロ中のプロの集団を纏める、軍で言えば中尉か大尉待遇さ」


「うわ~凄いな~! 僕も将来実は[ライジングサン]に入社したいんですよ。


 どうすれば入社出来るか教えて下さい」


 キラキラ光る純粋な目に見つめられタジログ鬼山隊長。


 それを生暖かく見詰める4対の瞳と言う、シュールな光景を思わず鬼山君が壊すべく発言した。


「イ、イヤ~人事権は俺には無いから、やはり人事はトップである甘莉代表に聞くのが一番ダヨ~ウン!」


 あ、俺を指差して言いやがったこのアホ、裏切者め~人に押し付けるなよな~。


 この手の奴はいつも、田中君が処理してくれるんだが、今日は居ないし、どうしようか~。


 俺はニッコリ笑って言いました。


「イヤ~日本人で採用する場合はやはり、陸自の空挺部隊出の柏葉持(レインジャー章)ちが最低ラインだし、陸自でどうやったら空挺に就職して、柏葉の試験を受けるかは経験者じゃないと分からないですネ!


 そこは経験者の、元GSDF逆髪一等空挺陸曹にお聞きして下さい」


 俺は更にニッコリ笑って逆髪君を指差し丸投げした。


 引き攣る逆髪元一等空挺陸曹。


 戦士は常住常に戦の心構えがないと、いつ思わぬ攻撃を受けるか判らないのである。


 油断大敵火は必ず己に向かって、噴いてくるものだ。


 生暖かい目と、キラキラした目で見られる逆髪元一等空挺陸曹。


 頭上をカラスが アホー アホー と鳴きながら飛び去った。


 チーン


 何処からかおリンの音が聞こえる様な気がした・・・・・(合掌)。

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