表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/7

幸せの涙、悲しい涙、恋しい涙

#幸せの涙、悲しい涙、恋しい涙


ガタンゴトン…

平日の朝の都内の電車は、大抵どの時間でも混み合う。

今日は運良く座ることができたが、毎日こうはいかない。

スマホをかざし、自分の顔色を見る。案の定優れない。

昨日実家に帰った時にも「きちんと眠れているのか」などと心配されてしまった。

一昨日自分でしたことが未だに信じられない。あの時の緊張がまだ残っている。

でも、あの表情を見たら、今しか告白できないって、思ったんだ。

「…はぁ」

そのままスマホの電源を入れ時計を確認。カフェの最寄り駅まではあと5分ほどだ。

「今日、来てくれるかな」



「おはようございますー…ってあれ、マスターいない…」

スタッフルームの裏口から入ると、いつもなら先に着替えているはずのマスターがいなかった。私物用の冷蔵庫に、『娘が「遊びに行きたい」と言って聞かないので午前中だけお店頼みます。特に予約は入ってないから、通常通りでよろしくね マスター』と書かれた紙をみつけ、あの親バカさには呆れを通り越して尊敬すら覚える。

「おはようございま…す、秋葉さん」

あ、嫌なのが来た。

「ああ、おはよう雅くん。これ、マスターまた午前いないってさ。笑っちゃうよね」

「…またですか」

「はは、じゃあ先掃除してるから。ゆっくり着替えなよ」

嫌な奴のことはほっとくのが一番、だ。


ロッカーを開けた時には気づかなかったが、小さな付箋がロッカーの表面に貼られていた。

はがして店内に出て、ちらりと確認する。

『凌さんへ お幸せに。 Rin』

「っ!?」

無意識に握りしめて隠してしまう。

これは、どういう意味なのかな、凛ちゃん。

あの子は今日のシフトではないから、聞きようがない。

「…楓、昨日来たのかな」

気にしない、と割り切って掃除にとりかかる。

テーブルを拭いていると、胸ポケットに入れたスマホが通知を知らせて震える。

「…!、来れるのかっ…」

通知の詳細をみると、それは楓からで。

『今日、開店してすぐにおじゃまします。ちょっとでも早く、お伝えしたいことがあります』

楓。俺、期待してもいいのかな。

少しだけ軽い足取りで、床用のモップを取りに行った。


    *  *


顔色良好、髪型OK。メガネも昨日帰りがけにメガネ屋で超音波洗浄機にかけてきたばかりだ。だからといって雰囲気が変わるわけではないが。

お店の開店時間は10時。現在9:30なので、凌さんももうお店にいるころだろう。

「一応、連絡、を…」

スマホをいじり、無心で伝えたいことを入力し即座に送信する。

昨日吹っ切れてから、変わることが怖くなくなった。

今すぐ凌さんに会いたい、好きだって伝えたい、いっぱい触れたいし触れて欲しい。

自分は返事をするだけなのに、ここまで緊張している。告白されたとき、凌さんは涼しいカオをしていたようにみえた。それでも死ぬほど緊張したんだろう。

表情に出さなかっただけだ、お互い緊張はしてる、と言い聞かせ、玄関で靴を履きドアを開け一歩外へ出る。

天気は快晴、清々しい風がふく。

「よし!」

はやく、凌さんに会いたい。


    *  *


カフェまではいつも歩いて行っている。のんびり歩いて15分、早歩きで10分。

カフェについた時には10時3分。お店の立て看板も出ているので開店しているだろう。

「いつもどおり、いつもどおり!」

ドアを押し入ると、凌さんが神妙な顔つきでカウンターの向こう側にいた。

「凌さん」

「うおっ!?あ、か、楓っ…!い、いらっしゃい」

「凌さん、カウンター越しじゃなくて、面と向かってきちんと伝えたいんです。出てきてもらえますか?」

「…わかった」

い、いつもどおりかな。凌さん、緊張してるみたいだ。顔も赤いし、目を合わせてくれない。

そうだ、緊張してるのは同じだ。

目の前に立つと、5cmの身長差がすごく大きなものに見えて。

すぅ、と息を吐いてから、ゆっくりと。

「凌さん、僕もあなたが好きです。こんな僕ですが、付き合ってください!」

いえた。ちゃんと言えた!

きゅっと目を閉じていると、返事がない。

「あの、凌さ…えっ!?」

「楓ぇ…っ」

そこには、ぽろぽろと涙を流しながら笑う凌さんがいた。

「え、しっ、凌さん!?大丈夫ですか…!?」

「うん、大丈夫っ…ごめんな、嬉しすぎて涙止まんね…」

嬉しすぎて、という言葉で、僕の目にも涙が浮かぶ。

「楓。もう一度、俺からも言わせて。俺も好きです。よろしく、な」

「はいっ…!」

スっと手が伸びてきて、僕の頬に添えられる。

「今度こそ、キス、させて」

ふにゃ、と笑う凌さんがたまらなく愛しくて。

こくりと頷き目を閉じると、ちゅ、と軽く唇が触れる。

いったん離れ、今度は深くキス。

されるがままに、幸せに浸っていた。

凌さん、もっと触れてください。もっと、触れさせてください。

凌さんの首元に腕を回すと、凌さんの腕は腰に回された。完全に恋人だなあ、と思いながら、夢中で幸せを求めていった。

僕たちは、夢中になると周りが見えなくなるらしい。

雅くんが自分の背後まできていることにすら、気づけないくらいに。


「っなんで…!!!」

雅くんの声に、我に返る。

振り向くと、わなわなと拳を震わせ涙目で立っていた。

「…ご、ごめん雅くんっ、店内でこんなことしちゃ迷惑だよねっ…!」

「…だって」

「え?」

「おれだって、楓さんのこと好きだったのに!!!!いつ告ろうかずっと考えてたのに!!!秋葉さんに先越されてその上目の前でカップル成立とかっ…まじ、ないですよぉ…」

ボロ泣きの雅くんを見ながら、呆然としてしまった。

み、雅くんに好かれてたのか…てっきり嫌われてるんだとおもってた…

「悪いけど、雅くん。(こいつ)はもう俺のものだから、おとなしく引き下がってもらってもいいかな?」

言いながら、腰に回した腕を引き寄せられ体を密着させた。

凌さんの何気ない「俺のもの」発言に爆発寸前になったのはお察しの通りだ。嬉しすぎてまた涙出そう。

「~~~~~っ、か、楓さん、今からでも俺にっ…!」

「あ、ごめんそれだけはない」

思わず即答してしまった。傷つけてしまっただろうか…?でも、ごめん、こんな幸せな時に、ほかの人にするなんて絶対できないから。

完全に膝をついてよよよと泣く雅くんに、凌さんが追い討ちをかけに行った。あーあ…。

「雅くん、今日はもう帰りな。このまま俺と仕事するの、嫌でしょ?午後にはマスター帰ってくるし楓も手伝ってくれるみたいだからさ。マスターには俺から言っとくから、な?」

しゃがんで子供に言い聞かせるみたいにいう凌さんは、心なしか楽しそうに見えた。

「楓さん、俺、待ってますからね!!!」

そういって出て行く雅くんにひらひらと手を振り、凌さんと顔を見合わせて笑う。

雅くんには申し訳ないけど、僕は本当に幸せだ。








またのご来店を、ふたりそろってお待ちおります。  凌&楓


やっと、やっとです!!カップル成立です!!!やったぜ!!!!!

緋乃です。

まだ完結しません。もうちょっと二人をいちゃつかせてみたり、雅くんの傷を癒したりします。

そしてもう2章のストーリーは脳内で完結しているという圧倒的妄想力があります。褒められたものかはわかりませんが。

私事ですが、本日定期テスト終了しました!わーい、終わった!!(いろんな意味で)

なので、これから一ヶ月くらいはたくさん更新できるのでは?と思います。

今週末にでも、全話誤字脱字校正をしようと思ってます。今まで読みづらいままで本当に申し訳ないです…!!!


ここまでお読みいただき本当にありがとうございました!

また次回の更新、そうですねえ今日か明日!にお会いしましょう!

テンション超絶アップ(当社比)でお送りしました、緋乃でした★

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ