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恋された人に、恋した人

#恋された人に、恋した人


あの日から数日経った。

まだ、あの人を思い出すと心臓が早まる。

この感情がなんなのか、未だに分かっていない。

ただ、ひとつだけわかる。

僕はまた、あの人に会いに行かなくちゃいけない。



カランカラン、と、同じ音をだすドアを開け、店内に入る。

休日なのもあってか、今日は店内に少しお客がいた。

凌さんは…とさがしていると、

「いらっしゃいませ。おひとり様でしょうか」

凌さんではない店員さんが声をかけてきた。

「はい、カウンターでもいいですか」

「どうぞ、お好きな席へ」

年下みたいだ。静かな人だけど…なんか、羊っぽい。

「…どなたかお探しですか」

「あっ・・・は、はい、えと…凌さんって、今日お勤めですか」

「ああ…秋葉さんですか。今はいないのですが、あと20分ほどで出勤してくると思いますよ。お知り合いですか」

「あ、はい。この前の平日に来た時に、話し込んでしまって。

…来るまで待っていてもいいですか?」

「もちろんですよ。ご注文は?」

「ええと…じゃあ、コーヒーのセットで。」

「はい。セットのスイーツはいかがいたしましょうか」

「んー…これ、フルーツタルトで。コーヒーはオリジナルのでお願いします」

「かしこまりました。少々お待ち下さい」

ううん、ちょっと冷たい・・・?凌さんがフレンドリーだっただけに、余計にそう感じているのかもしれない。

凌さん、早く来ないかなー…

    *  *

見ていると、さっきの店員さんはホールのお客さんの注文取りとレジを行ったり来たり。ホールスタッフなんだろうか。その奥では、きっとマスターなんだろうな、というお兄さんが無人のカウンターの前でコーヒーを淹れている。キッチンでスイーツを作っているのは、ポニーテールの可愛い女の子。

もしかして、凌さんが言っていたケーキを作っているバイトの子、だろうか。

無意識のうちにガン見してしまって、ふと顔を上げた女の子と目が合う。

「何かご用ですか?」

「いっ、いえ…!

…あの、今僕が食べてるタルトなんかも、全部作ってるんですか?」

「ええ、そうですよ。気に入っていただけました?

それと、私きっと年下なので敬語でなくて大丈夫ですよ」

「あ、そう…?うん、すごく美味しいよ。この前来た時はベリームースのをおすすめされて。あれも美味しかった!」

「ホントですか!アレ自信作なんですよー。良かったです」

すごく生き生きしてる…ケーキとか作ってるくらいだし、甘いもの好きなのかな。

「よかったら新作のケーキ試食します?今度季節限定で出すものなんですけど―」

「え、いいの?じゃあお金を…」

「あ、大丈夫ですよ。感想をいただければそれで」

「ほんと!?ありがとう…!じゃあ、頂いてもいいかな?」

「あれ、楓さんじゃないですか」

「ぴゃっ!?」

いきなり、後ろから凌さんが声をかけてきた。私服姿なので出勤してきたところだろうか。

びびびびっくりした…!!ほんとに心臓破裂するかと思った!!!!

ホールのお客さんから小さな嬌声が聞こえたのは、凌さんを待っていた人たちだろうか。

「来てくれてたんですね、すぐ着替えてきます。お話しましょうよ」

「凌さん…!あ、いや、ほかのお客さんもいますし!もう少しここにいさせてもらいますのでお構いなく」

にこりと微笑み、『STAFF ONLY』のドアに入っていってしまった。

や、やっぱり心拍数上がるよ…!なんでなんだあああ…

「ふふ、やっぱり凌さん大人気ですね」

目の前に小さめのケーキが置かれ、我に返る。

「そ、そうなんだ?僕が前来た時は、ほかにお客さんいなかったから」

「うーん、このお店は普通にコーヒー飲みに来てる人もいるんですけど、女性は大半がスタッフ目当てですね。マスターもイケメンですし、ホールの羊っぽいのも何故か人気なんですよ。まあ凌さんが一番人気ですけどね」

ちょうどその時、ドアから前と同じ制服に身を包んだ凌さんが出てくると同時に、『すみませ~ん♥』という声があちこちからあがった。

凌さんは、困ったような笑顔で、それでもスマートに一つ一つ対応していく。

思ったより、凌さんはずっとモテていた。


    *  *

凌さんがカウンターに戻ってきたのは、あれから30分後のことだった。

「ほんとに、おまたせしました…土日はいつもこうなんですよ。お店が繁盛するのは嬉しいんですが…スタッフが少ないんでしょうか」

やっぱり、自分目当てできている人たちが待ち構えていたとは思っていないんだろうなあ。

「ふふ、でもちゃんとこうしてきれくれるんだから、凌さんは優しいですよね」

「そりゃ、私が来てくれと言ったわけですし。きてくださるのを待っていましたよ」

「僕も来るのが楽しみすぎて、今日の予定切り上げてきちゃいました」

こんな会話ができるのは、互いに楽しみにしてたってこと…だよな。

すごく、嬉しい…!


    *  *


結局、また長話をしてしまった。

ホールスタッフの、羊っぽいと思った人は野口雅くん。19歳で、どうやら僕と同じ大学らしい。

キッチンを一任されている室本凛さん。なんとまだ高校生だそうだ。

マスターさんは、基本的に店頭ではコーヒーを淹れているだけらしい。

ここまで教えてもらったところで予定時間が来てしまった。

でも、今日は寂しくない。

連絡先を交換してもらったから!

ちょっとだけ女性たちの目が痛かったが。

『え、連絡先!?』『いいなぁ~、あたしも聞いてみようかな…』『あ、ダメだよー、教えてもらえないよー。前に聞いてみたんだけどさあ…』なんて会話も聞こえてきて。

お話したいだけだから…!友達としてだから!許してください。

『こちらから連絡します』と言われたので、友人を待ちつつ着信を気にしてしまう。

「これじゃまるで恋する乙女じゃんか…」

「誰が?」

後ろから顎をのせスマホを覗いてくる。

「…急に現れるのやめろ明」

「はいはいごめんごめん。で?どこのカラオケ行くの」

「んと…駅前でいい?」

早く連絡、こないかな。


3月28日

今日、土日には珍しい男性一人客が来た。

最初女かと思うくらいの可愛い格好だった。

…秋葉さんとしゃべりに来たようだったが。

可愛い。俺もよく言われるけど、あの人の方が絶対可愛い。

凛とも喋っていた。楽しそうに。

ずるい。俺だって、しゃべりたかった。

秋葉さん目当てだって構わない、振り向かせてみせる。

だって、僕より可愛いもん。



またのご来店を、お待ちしております。


新キャラのご紹介。

野口雅(ノグチミヤビ)くん、19歳。お酒のめないお年頃。最後に日記書いてたのは雅くんです。イケメン根暗君!

室本凛(ムロモトリン)さん、18歳。女子高生!ちなみに、今のところ本編中で出てくる予定はないですが、サークル出してる腐女子という裏設定があります。出来たら凛ちゃん中心で番外編書いたりしたいなあ。

そして、名前とちょこっとセリフがあっただけですが、ご紹介。神田明(カンダアキラ)くん、21歳。楓くんのお友達です。第二章で活躍します。一章ではほぼ空気です。


読んでくださる方が少しでもいてくださって感無量です。

ありがとうございます。お時間のある方はぜひ、コメント等付けてくださいませ。励みになります。

では、今回はこのへんで。

またお会いできますよう。

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