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だんちょーの経緯  作者: nanodoramu
零章 過去の夢 一節 暗中模索
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四話 裏路地《スラム》 前

 訓練を終えてクリスがやってきたのは裏通り。

 昼でも薄暗いそこは、夜が近い今はなお暗い。

 

 物乞いの眼は死んでおり、けれども、必死に生にすがりつく。

 露天にあるのはご禁制の品ばかり、賄賂でもって切り抜ける。

 死体は無作為に下水に投げ込まれ。

 通る人種は後ろ暗いものばかり。


 領地が浮かれた雰囲気だというのに、何も変わらなぬ平常運転。

 誰も彼もが生きるの必死で、欲望を滴らせている。

 

「俺より余程、生きている……」


 皮肉げに感想を呟いて、クリスは少しばかり落ち着いた。

 目的は露天にある魔法道具(マジックアイテム)だ。


 筋力などが足りなければよそから持ってくればいい。

 魔法が使えなければ変わりに魔法を使ってくれる物を持てばいい。

 態々、今の戦闘スタイルを変える必要は無いとクリスは考えた。


 考えぬいた先、行き着いたのはは通常の店では扱われないような、危険度(リスク)の高い魔法道具(マジックアイテム)を手に入れる事である。


 故にクリスは裏路地(スラム)に足を運んだのである。


 魔法道具(マジックアイテム)の露天を見つけ覗きこむ。

 筋力増強から、魔力補助、精神補助、色々なものがある。

 店主に聞きながらもクリスは商品を吟味する。


「この筋力増強はどのくらいの割合だ?」


「本人の能力の一割と言った所すね」


「こちらの脚力増強は?」


「二割すね……」


 店主の説明に思ったより効果が低い事に落胆する。

 確かに、表の店では一割も効果をあげる魔法道具(マジックアイテム)はなかなか見られない。

 なぜなら効果が上がるほど、体に掛かる負担が増えるからだ。

 けれども、一割二割では、クリスの予定より大幅に下回る。


 俗にいう身体強化の魔法などは、最低でも五割、最高でも三倍の効果を及ぼすものがあるのをクリスは知っていた。


 ふと、クリスは、二つ魔法道具(マジックアイテム)を同時に手にとった。

 思考が漏れていてのだろうか、店主がそれに反応する。


「言っとくけど重ねて装備してもどちらかしか効果は出ないすよ?」


「……なぜだ?」


 先読みされ、クリスは少しばかり憤然とする。


「効果が重複すると、確かに体の性能もあがりますが、その分負担もでかくなるんでね。身体強化の魔法道具(マジックアイテム)は一個しか効果がでないように設定してあるすよ」


「そうか……その設定を変えるにはどうしたらいい……?」


「あんた、話し聞いてたすか?」


 店主が呆れたように問いかける。


「聞いてたとも、聞いてた上で言っている」


 一瞬のにらみ合い。


 折れたのは店主だった。


「……専用可すればいいんすよ」


「専用化?」


「ええ、使う人個人に合わせた専用化、彫師と一緒にどこまで負担がかからないでいけるかギリギリを見極めて出力を調整するすよ」


「彫師というのは加護を刻む連中か……?」


「そうす、彫師じゃないとそういうものの設定はできないすよ、この辺じゃ……最近流れてきたロイドってのが一番腕がいいすね」


「ロイド?」


 その言葉を聞いて少しばかり、心当たりがあるのか、クリスは何かを思い出すように首を傾げた。


「王都のほうから流れてきたんすが、彫師としての腕は良いようすね」


「ふむ……伺ってみよう、居場所はわかるか? 後この身体強化の魔法道具(マジックアイテム)を一通り寄越せ」


 そう言って金貨を一枚握らせた。


「毎度あり。この先のトンクスの酒場って所でよく飲んでるよ。彫師の癖に騎士くずれみたいな体してるからすぐわかると思うすよ」


「情報感謝する」


「いいすけど、お嬢さん気をつけるすよ?」


「何がだ?」


「女癖が悪いそうす……」


「無用だ」


 品物を受け取るとクリスは、トンクスの酒場へ向かうべく歩き出した。


 すぐにそれは見つかった。

 

 ももいろの雰囲気ただよう店である。


 クリスが店内にはいると、カランコロンと耳障りの良い鈴の音が店内に響き渡る。


「いらっしゃいお客さん……」


 店員が一人駆け寄ってくる。


「人を探してるんだが、ロイドとという男を知らないか?」


 その言葉に店員は一瞬まゆを潜めると、呆れたような顔をして、奥の席を指出した。


「あそこだ」


 そう言うと店員は下がる。


 雑な態度にまゆを顰めるも、言われた通リに奥の席を目指す。


 視線がクリスに突き刺さる。

 それもそのはず、どうにも客は男しかいない。

 男の横につくのは、明らかにその手の服装をした女達。

 

 最も桃色の雰囲気の店の時点でクリスには大方予想はついていたのだが。


 その男は最奥の席の真ん中に座っていた。


 精悍な顔つきの、体格のいい男。


 なるほど、騎士崩れ傭兵崩れと言われても納得のできる体である。


 左右を囲むのは、その職業とわかる女達。


「失礼する。ロイドはいるか?」


 気分よく飲んでた所を邪魔されたのか、ロイドは一瞬不機嫌な顔をするが。

 クリスを見て、急に笑顔になった。

 単純な男である。


「誰、君……?」


「俺はクリスだ、お前に仕事を頼みたい」


「……仕事?」


 あからさまにがっかりした顔になるロイド。

 けれども、問いなおす。


「どんな内容? 加護? 魔法道具(マジックアイテム)の製作依頼?」


「これらの魔法道具(マジックアイテム)を専用化して欲しい」


 そうやって机の上に置いたのは、先ほど露天で買いあさった身体強化の魔法道具(マジックアイテム)だ。


 その量にロイドは顔を顰めた。


「……見たところどこぞの貴族さんの使いかな? 使い手は?」


「俺が使う」


「女の子用の装備!?」


 ロイドが声をあげて驚いた。

 

 しかし、驚いたのもつかの間、ロイドは急に唸り、手を組んで悩みだした。


「うーん」


「やれるのか、やれないのか?」


「やれるっちゃやれるよ? でもなんで俺んとこ来たの? 彫師なんて他にもいるでしょ?」


「この辺じゃ、一番腕が良いと話しを聞いた」


「そりゃ、ありがとさん、でもなぁ……」


「作れないのか?」


「せっかちだなぁ、もう……やれるけどさぁ? 理由が知りたいんだよねぇ……じゃないと俺も専用化に身が入らない」


「少しばかり特殊な事情でな、これは話すわけには行かない……金なら言い値でだそう」


「なら帰んな……こちとら、別段金は困ってない。専用化は使い手の意思を汲む。そのためには使い手の事を知らなきゃ行けない」


 ロイドの言い分も、確かにある。

 クリスはそう思い、話すことを決めた。

 何せこれから、命を預ける道具でもあるのだ。

 しっかりと事情を話し、良いものにしてもらおうと思うのは当然だ。


「……人払いが必要だ」


 クリスがそう言うとロイドは我が意を得たりとばかりに、厭らしく笑った。


「奥へ行こう。マスター! 色部屋借りるぜぇ!」


 マスターがロイドに鍵を投げ渡す。

 マスターは困ったよう、苦笑し、クリスを悲哀の眼で見た。


 二人は酒場の地下へと足を進めた。


 地下の薄暗い道を進み一番奥の部屋に入り込む。

 薄暗い部屋だ。

 中には机とベットが一つあるだけ。


 机の上にある燭台に火を付ける。

 少し明るくなるが、依然薄暗い。


「話すのに向いてない部屋だな……」


 クリスが顔を顰めるも、ロイドは笑う。


「いや、これが案外向いてる、なんたって地下だしな、悲鳴がもれねぇ」


 違和感を感じたクリスが振り返るのも、遅く、ロイドはベットに向かいクリスを押し倒した。


「何をするっ」


「何ってナニだよ! せっかく男と女なんだ、相手を知るにはこれが一番だろう」


 そう言ってロイドは手早くクリスの肩を抑えた。

 体重を掛けてしまえば、小柄なクリスと騎士崩れと言われるロイド。

 体格差が大きい二人である。

 クリスがいくら暴れようともびくともしない。


「お前っ!」


 怒りを込めてクリスが叫ぶもロイドは気にもしない。


「なんだよ、一発くらいやらせろよ、そしたら専用化してやるよ、お嬢ちゃん」


 ロイドはクリスの腹を殴る。

 強い衝撃。

 ベットの上だというのにクリスは軽く跳ね上がる。

 肺から空気が吐出される。

 痛みでクリスの顔が歪み、動きが鈍くなる。


「おとなしくしてれば痛くしねーよ」


 卑下た笑みを浮かべ、ロイドはクリスの服を脱がす。

 馬乗りになり、顕になった下着を脱がそうとする。


「俺の話しを聞いて来たんだろ? じゃあ、こういう展開も覚悟してるだろ?」


 ロイドは無理やりクリスの下着を引っ張ろうとして、それに気づいた。

 

「なんだよ、腰に剣なんか刺しちゃって、色気もヘッタクレもねーなぁ」


 剣を鞘ごと投げ捨て。

 ロイドはクリスの髪を掴み、強引に引き上げた。


「げほっごほっ」


 クリスは吐血した。

 先ほどの拳で内蔵を痛めたのだ。


「ありゃ、やり過ぎちゃった? まあ後で治してやるよ」


 けれども、ロイドは気にした風もなく、淡々と事におよぼうとしている。

 手際の良さから、既に何度も行っているだろう事が伺える。


「……しえ……る」


 クリスの小さな呟き。


「んあ?」


「専用化、する理由を……教えてやる」


「今更、そんな事に興味はねーよ……」


 呆れた、とばかりにロイドがあいてる手をクリスの胸にのばそうとした時だった。


「……だよ、……に」


「あ?」


 小さな声、哀願してるのだろうかと思うが、どうにも目が違う。

 喋るのも辛いであろうに、クリスはその高慢な態度を崩さない。

 まるで嘲るようにロイドを見つめていた。

 流石にロイドも少しばかり気になり、少しばかりクリスの言葉に意識を割いた時だった。


「俺は入るんだよ! 翼竜騎士団に! お前の親父っ、グラン・サーシェス率いる翼竜騎士団に! わかったか? ロイド・サーシェス!」

 

 クリスは大声で、叫ぶ。

 ロイドが反射的に耳を防いで離した手。

 さらに、叫びに名前を入れた事でロイドが思考を巡らせようとするその隙。

 結果、怯んだその瞬間。

 

 クリスは全力でもってロイドを蹴り飛ばす。

 衝撃で、ロイドはベットから落ちてテーブルに打つかり倒れこむ。

 テーブルは勿論、蝋燭も倒れ、テーブルに火が移る。


「がってええ、てめぇ……」


 ロイドが起き上がろうとした、その目前。

 一瞬の銀光が煌めいた。


 ロイドに喉元に突きつけられたのは先ほど横に投げ飛ばされた、クリスの護身用の片手平剣(ブロードソード)

 クリスは獰猛に笑った。


「挨拶がまだだったな。俺の名前はクリス・リリィ。アーノルド・リリィ公爵が次男。クリス・リリィだ! 騎士学校以来だな、臆病者のロイド!」


 燃え広がる火の中。

 クリスの眼には、驚き怯えて縮こまる、かつての学友の姿が写っていた。

 


 

エロくなりそうでならないくおりてぃ(ぁ

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