しゅうまく もとのさや
改修
パカポカパカポカ。
一定のリズムを刻みならが馬車は進む。
時おりなだらかな傾斜を踏み越え進み。
いくら進んだのだろうか、やがてリズムが遅くなり、完全にその動きを止めた。
馬車の扉が外側から開かる。
髪をポニーテイルにした銀髪紅髪の女性が立っていた、レイトである。
「周辺は確認致しました、何も問題はありません、どうぞこちらへ」
レイトが馬車の中にいた、赤い髪の女性、フランシス王妃に手を伸ばした。
「そう、ありがとう」
フランシスは軽く礼を言うとレイトの手をとり馬車の外に出る。
その目はどこか虚ろで、疲労しているようにみえる。
「馬車酔いでもなされましたか?」
フランシスを気遣うレイト。
「……なんでもないわ」
フランシスはうつろな眼で呟いた。
それを聞いてレイトは詮索するのをやめたようだ、一歩下がって待機する。
馬車の中からさらに一人降りてくる。
こちらはレイトと同じ銀髪紅眼をしており、白い騎士服を着込んでいる。
王女筆頭侍女兼護衛のセシリアである。
何故か頬をさすっている。
「ひどい目にあいました……」
呟くセシリア。
その瞬間フランシスの眼光が鋭くセシリアを貫いた。
「……なんでもないです」
セシリアは憮然とした表情をする。
フランシスは鼻をならしセシリアを一瞥する。
「さて、聖騎士の宿舎だけど、王宮の裏の山なのよね、つまりこっからは馬車は使えない。面倒な位置にあるのね」
王宮は山岳部に建造されており、聖騎士の宿舎も渓谷を挟んだ反対外に位置している。
王宮内に頓所がある王宮近衛騎士を除けば王宮に最も近い騎士団駐屯地になる。
「王宮まで戻らないで、そのまま登れば良かったかしら……」
独りごちるフランシス。
聖騎士の宿舎に向かうには、二つの道がある、城下街からそのまま山を上がっていく道と王宮の裏道を抜けて渓谷に掛かる橋を超える道である。
少なくとも城下街から直接向かえば馬車は使えたはずだが。
「まったく、リリィ家め……」
ぼやくフランシス。
色々な事があって低下していた判断能力を全てリリィ家に責任に押し付けた形になるが、あながち間違っていない。
「うちがどうかしたんですか?」
不思議そうに問いかけるセシリア、けれどもフランシスはセシリアを無視して話を進めた。
「……いいわ、王宮の裏道を抜けましょう、時間だけなら直線の多いこっちのほうが早いから。でもあそこ細い橋一本だから怖いのよね……」
王国建国以来、変えられていない掛け橋はとても細長くボロい。
けれどもボロく見えるのは魔法によるもので、木でできているというのに三百年以上もその姿を保っている。
魔法が掛かっているのを知っているのは王家の一部のものだけだが、知らないものがみたらただのボロ橋にしか見えないようになっている。
もっとも道幅は一メートルにも満たず、渓谷を超えるためには二キロメートルはあるという延々と細長い道を渡る必要があるのだが。
考えて見て欲しい、延々と続く細い橋、その下五百メートルはあろうかという渓谷の高さ、そこの上を延々と歩き続ける恐怖。
心臓の弱いものなら見ただけで倒れる可能性すらあるだろう、そんな場所である。
しかし、今からまた戻って上り直しとなるとそれにかかる時間は到底許容できるものではない、第一王妃というのは案外忙しいのである。
面倒臭さにため息をつくフランシス。
その時だった、一瞬フランシス達の上を影が通り過ぎた。
鳥かな?
ふと気になり、空を見上げるとそこにはゆっくりと下降してくる翼竜の姿が見えた。
翼竜の姿を確認すると、庇うようにフランシスの前にでるレイト。
どうやら警戒しているようだ。
「大丈夫ですわよ、あれは……」
テートが言いかけたその時、目の前に翼竜が降り立った。
その背には黒い騎士服を着込んだ、銀髪紅眼の女がが騎乗していた。
タンっと軽い音と共に飛び降りる女性。
フランシスに近づき頭を垂れ、洗練された騎士の礼をとった。
フランシスの周りにいるニワカ新人騎士とは違う、やり慣れているという感じの騎士の礼。
もっとも新人たちもリリィ家に預けられたタメか動きこそキビキビとしているが、まだまだ硬いところがある、流石に比べるべくもなく年季が違う。
「お迎えにあがりました、フランシス王妃様」
元翼竜騎士団……現女騎士団の団長。
クリスが出迎えに来ていた。
「……クリスね、団長様自らお出迎えとはご苦労なこと」
「なにぶん、礼儀を心得ているものなど他にいないもので……」
フランシスの労いの言葉に苦笑で返すクリス。
クリスの言葉に思わずセシリアを見るフランシス。
セシリアは不思議そうな顔をしてフランシスを見つめ返した。
察した様子でクリスがフランシスを労った。
「……姉がご迷惑をおかけしまして」
「いいわ、慣れてるし、あなたよりは付きあいもながいしね……今更だわ」
「ハハハッ」
乾いた笑いをもらすクリス。
そこに空気を読めず、セシリアが声をかけた。
「久しぶりですね、クリス、可愛くなって」
「……っ姉上も御健勝でなにより、変異蛇竜との激戦でのご活躍は耳に入っております、よくご無事で」
可愛いという言葉に一瞬だけ頬を引きつらせるが、すぐさま素面にもどり挨拶を続けるクリス。
「それで、迎えって翼竜一騎で? 数人は乗れるかもしれないけど……」
セシリアが何か変な事を言う前にと話を進めるフランシス。
「いえ、後二騎ほど、後からくる二騎には人用籠を持たせて空で待機しています……、呼んでも構いませんか?」
「構わないわ」
許可をだすフランシス。
するとクリスは人差し指と中指を唇に当てて、ピーーーと長く高い音をだした。
するとどこにいたのだろうか、人用籠を二頭で器用に足に抱え、翼竜が二頭、ゆっくりと羽ばたきながら下降してきた。
ピッピッピッピピーー。
動きに合わせて指笛で指示を飛ばすクリス。
ドスンッと重厚な音をだして人用籠が地面に置かれた。
そして翼竜も初めに着地していた一頭の横に着地した。
「おぉー……」
上がる複数の歓声、どうやらフランシスたちは大分驚いたようだ。
クリスは何事もなかったかのように澄ました顔をして待機している。
「見事なものねぇ……、翼竜騎士団でもここまで一人で複数翼竜を指揮できるのもそうは居ないでしょうに」
フランシスが感想を述べると、「恐縮です」とクリスがかしこまった。
この態度が普通の騎士よね……、と思うフランシス。
あそこまで、不必要に警戒しながら動く子どもたちはいったいなんなのだろうと思う。
「それでは人用籠に全員お乗りください、宿舎まで向かいます」
入口を開けるクリス。
人用籠とは言っているがようは大型馬車の荷台の車輪を外して、上に翼竜用の取っ手をつけただけである。
「道中多少揺れますので、中の椅子に付いているベルトをお使いください」
中へ入っていくフランシスたち。
クリスが全員中に入ったかと辺りを確認していると、一人だけ外にいる女性がいた。
「どうした? 君も速く中へ……ってテート殿か?」
テート・サーシェスだけが外に残って翼竜を見上げていた。
「ポチ、タマ、ゴローですわね? クリス様どうやって翼竜騎士団からもらったんですか?」
不思議そうに首を傾げて問いかけるテート。
「……交渉したらテート殿の父君が快く譲ってくれたよ」
少しばかり間の空いた返答をするクリス。
「嘘ばっかり……、大方出資者の件でもちらつかせてもぎ取ったのではなくて?」
その言葉に苦笑するクリス。
「似たような事はしているが、そんなに酷い事はしていないよ」
「あら残念はずれましたわ……まぁ、私もこの子達が好きだから別にいいですけどねぇ? あなたはタマかな?」
グルゥと喉を鳴らすタマ。
「あってたみたいね……翼竜騎士団の頃が懐かしいわ……」
思い出すように言葉を紡ぐテート。
「公言はしないでくれると助かるがな……しかし、懐かしいといってもほんの二、三ヶ月前だぞ?」
「言わせないくださいな恥ずかしい……」
クリスには理解できない言葉を吐き出し、頬を染めるテート。
別に鈍感でもないクリスだが、テートの行動はいまいち意味がつかみきれない。
何が恥ずかしいんだ? まじで……このこ苦手なんだよなぁ、とクリスは辟易する。
「そ、そうか……、それは済まないな、まぁ皆待っているし、テート殿もはやく人用籠に乗ってください」
とりあえず謝って、人用籠の中に入れてしまおうと考え、テートを促した。
しかし、立ち止まり「テートで……」と呟くテート。
「ハ?」
思わず間抜けな声で返すクリス。
「名前だけで呼んでください、もうあなたの部下になるのですから、殿はおかしいでしょ?」
妖艶に微笑みながら告げるテート、正論であるが何か裏があるのは明白である。
「あ、ああ……それもそうだな……、じゃぁテート、人用籠に乗るんだ。テートが乗って皆が安全用のベルトをつけたのを確認したらすぐに出発する」
クリスがそう告げると「わかりました団長」とテートは嬉しそうに微笑み略式の騎士の礼をして人用籠に乗り込んだ。
「年頃の娘は何考えてるかわからんな……」
クリス・リリィ一八歳雄、女に悩むお年頃である。
***
テートが人用籠に乗り込むと待っていた十二人の瞳が一斉にテートに向けられた。
「ベルトをしたら、出発するそうですわ」
何事もなかったように、テートは空いている席に座りベルトを閉める。
すると、どうやって確認したのだろうか、外からクリスの、出発します、と声が聞こえて、竜の羽ばたく音が聞こえ始めた、やがて人用籠がふわりと浮いた。
「おおぉ……」
興奮して変な声をだすセシリア。
しかし、いつものようにフランシスが突っ込むとも思ったが、フランシスも若干そわそわしている、というかテート以外そわそわしている。
「空の旅は初めての経験ですか?皆さん?」
テートが問いかける。
「ああ」
「うん」
「もちろん」
「ええ……」
様々な返答が帰ってくるが言い方こそ違えど意味は同じだった。
「テート殿は初めてではないのか? ああ、そうか父君は翼竜騎士団の団長殿であったな?」
レイトが納得したという風にうなづいた。
「それもありますが、私は直接翼竜の背中に乗った事もあるので、クリス様と一緒に……」
頬を染めるテート、一応恋する乙女である。
「そうか……、そういえば外で団長と何を話していたんだ? 少し遅かったが」
レイトが話を振った。
「軽い昔話を……それと少しばかりアプローチを……名前で呼び捨ててくれるよう頼みましたの」
その言葉ににわかに沸く人用籠内、例え見た目がどうであれ恋バナであれば食いつくのが女というものだ。
「……それで結果は?」
以外にも続きを促したのはフランシスだった。
案外気になるらしい。
セシリアは弟の恋路に興味はないのか窓の外を見つめてひたすら、おー、だの、うおお、だのと唸っていた。
「快諾してもらいましたわ」
満面の笑みを浮かべるテート。
間違ってはいないのだが、現場に誰かいたら、名前で呼ぶにしても意味が違うだろうと誰もが突っ込みをいれるだろう……というか、すぐに気づきそうなものであるが。
つまりこれは他の騎士団員に対するテートなりの牽制なのである、女ばかり男ばかりのとなれば同性愛に走るものは決して珍しくはない、神殿でも騎士団でも修道院だろうとそれはある。
そしてテートは、クリスが変身魔法でその身を変身させていることを知っている。
つまり団員に気がなくてもクリス本人がということは大いにあり得るのだ、ならば牽制しておくしかないだろう。
要するに、私が唾つけたんだから手だすなよ?って意味である。
もっとも、その場でその意味に気づけたものが何人いたことだろうかは不明だが、むしろ男だとわかったとき用の保険かもしれない。
「団長もそちらの人なのだろうか……」
レイトがぼそりと呟く。
「至って普通だと思うわ……」
フランシスが返した。
あれ、でも、普通だからある意味問題がある……のかしら?と思わなくもない。
フランシスが悩むも自分が悩んでもどうにもならない事であると思い至り、その考えを投げ捨てた。
「まぁクリスも団長になった経緯が少しばかり特殊だからね、十八だっけ? あんたらより若い……こともないか十二とかいるし」
言いながら横目で孤児院組みを見つめるフランシス。
黙って座ってるだけなら可愛いのに、警戒してる時のあの目つきはなんなんだろう。
ため息をつくフランシス。
「渓谷を越えましたよ、まもなく到着すると思います」
テートがそう告げるとほぼ同時に一瞬の浮遊感。
その後ズシンと響くような衝撃が人用籠に伝わる。
どうやら着いたようだ。
「流石翼竜……ね、馬車なんかとは比較にならない速度だわ……」
コンコンと扉がノックされ、ガチャリと外から扉が開かれクリスが顔をのぞかせた。
「到着しました、何か問題はありますか?」
中を見て一声かけるクリス。
「では、外へどうぞ」
待ってましたと言わんばかりにセシリアは先頭に進み出る。
フランシスの警護はどうするのかと思いきや、いつの間にやら決めたのか、どうやらレイトがそれをこなしている。
人用籠を出るとそこには、大きな厩があった、中を覗けば竜が軽く入れるくらいである、中にはなぜか一角獣や走竜果ては蛇女までが繋いである。
眼を輝かせ見入るセシリア。
他のものも概ね驚き感嘆しながらも厩を見学している。
「随分騎獣を用意したのね?」
フランシスがクリスに尋ねた。
「半ば成り行きですが、まぁ居て損するものではないでしょう、特に一角獣などうってつけでしょう?」
ニヤリと笑みを浮かべるクリス。
「……蛇女もいるけど、まぁ私は詳しくないし良いわ、それで他の聖騎士たちはどこで何をしてて、全部で何人くらい集まったの?」
騎士団結成の進行具合を尋ねるフランシス。
「現状、私を含め合計で五十四ですね、後から元から現存する女聖騎士を神殿が招集しているので、おそらくは十人くらいは増えるのではないかと、他の聖騎士たちは、とりあえず騎士としての礼儀と基礎訓練を叩き込んでいる最中ですね、姉上と姉上が連れてきたものを合わせて確定しているのは六十七人になりますね」
クリスの説明に、まだ足りないわね……と少しばかり落ち込むフランシス。
「宿舎を見る限り二百人規模だとは思っていますが、目的が明確に提示されていない以上なかなか難しいものです、……戦える女性というのは中々居ませんしね……神託の内容はまだ明かせませんか?」
最後は呟くように小声で尋ねるクリス。
「結成したらね……いくら神託とはいえ私たちも流石に半信半疑なのよ」
フランシスは小さな声で言い返す。
「そうですか、では引き続き人集めに従事致します」
クリスは諦めて頷いた。
「それと、何か当てはありませんか? 闇雲に探し回るというのもなかなか効率が悪い、噂やおとぎ話でも構いませんので」
「当てねぇ……」
そういえばと思い当たる。
「南のほうの……砂漠の小国ウェスタリアの民族、精霊を祀り、怪しげな術を使うとか……」
この前、遊園会に芸人として来ていたのだけれど、間違ってはいないわよね。
「ウェスタリアですか、あそこは十字教じゃないですよね? ……ふむ」
思案するように顎を摩るクリス。
「あっ」
と何かひらめいたように声をあげるフランシス。
「どうなさいました?」
「公募もうしちゃいましょう、式典とか最低限の動きができればいいし、やる気のある子を鍛えればそれなりにはなるでしょう、そういうわけで来てそうそうなんだけど、私はそろそろお暇するわ、皆の事よろしく頼むわね」
そう言うと厩に釘付けのセシリアを呼び出すフランシス。
「セシリア帰るわよ、早く来なさい!」
「えっーー、なんでですか?」
騎士としての生活に思いを馳せていたセシリア。
けれどもそれは一瞬で打ち果てられ、そのため悲痛な声をあげる。
「あんたはあたしの護衛がメインなの忘れてんじゃないわよ?」
「ああっ、そうでしたね……」
セシリアは思い出したようにその後項垂れる。
「帰るのに馬を借りれるかしら?」
「お送り致しましょうか?」
「少しばかり、セシリアと話すこともあるから自分で帰るわ……」
意味深に告げるフランシス。
クリスはふむと頷き。
「それでしたら、お好きな一角獣をお使いください、二人乗りで手綱をもたずともゆっくり気遣って進んでくれます、王宮についたら軽く角を撫でてやってください、そしたら勝手に帰ってきますので」
厩を指さした。
「そう、ありがとう、行くわよセシリア!」
言いながらフランシスは一角獣に向かう。
「はーい……」
セシリアはしぶしぶといった感じでついていく。
他の聖騎士達と別れの挨拶を交わし帰っていく二人。
残された聖騎士達は不思議そうな顔をしている。
「それじゃ、厩の見学は後にして宿舎に行こう、ついてきてくれ!」
空気を変えようと大きな声で先導するクリス。
人用籠の裏に回っていく。
するとすぐそれは見えた。
大きな宿舎である、王宮の後宮なみの大きさである。
ぞろぞろと連れ立ち宿舎に向かう。
すると宿舎の前に緑の僧服を来た小さな一人の聖騎士が立っていた。
「新鋭の聖騎士の皆様ようこそおいでくださいました、現在聖痕の指導を仰せつかってます、アリシア・スワンです、よろしくお願いします」
アリシアである、どうやら待機していたようだ。
「ちょうどいいアリシア、皆の案内を頼めるか?」
「はい、そのために来ましたから」
「今日は訓練の見学と部屋割りだけ教えてやってくれ」
***
一角獣の上に横に座り、二人はゆっくりと帰り道を進んでいた。
「公募の概要はどうしようかしらね……」
「求む、女騎士とかでいいんじゃないですか?」
「そんなんで来るのはあんただけよ……」
「強者求むとか」
「強者は欲しいけど、女性だけだからね?」
「フランはわがままです……」
セシリアはため息をつく。
「なんか釈然としないんだけど……」
フランシスは頬を引きつらせる。
「騎士団の生活楽しみだったのに、連れてこられたので、フランはわがままです」
セシリアは頬を膨らませて、不機嫌そうだ。
フランシスは、なんだそんな事か、と思い至り、笑った。
「あんた、元から言ってたでしょうに……、それに宿舎に入っちゃったら、いつも見たい私に会えなくなるわよ? それでもいいの?」
「む……」
言葉を詰まらせるセシリア。
二人は幼少から仲がよく、それこそ姉妹のように育った。
フランシスが王妃になると決まったときも、セシリアは泣きじゃくり、そのためフランシスが自分の侍女に抱え上げたのだ。
「それは良くない……です……寂しいです……」
会えないことを想像したのか、セシリアは沈んだ表情になった。
「でしょう、だからこれでいいのよ!」
鼻息を荒く言い切るフランシス。
前に座るセシリアに背中から抱きついた。
すると沈んでいた表情からセシリアは不思議そうな表情に変わった。
「なんですか?」
「しばらく、こうさせときなさい王妃命令よ」
「甘えんぼうですねぇ」
セシリアは笑う。
フランシスの頬には若干赤みが差している。
言ってしまえば寂しいから一緒に居ろという事だ、なんというツンデレ。
本当に余談だが大臣もこれで堕ちた……。
二人はゆっくりと王城へ進んで行った。
空には見守るかのように真っ赤な夕焼けが二人を照らしていた。
改修




