十一話 レイダルス伯爵家 夜会
改修
日も沈み時間も大分経つというのに、そこは明るかった。
シャンデリアは煌々と辺りを照らし、闇夜を追い払うがごとく蝋燭が燃え続ける。
広間には大きな机がいくつかあり、豪華絢爛な食事が並べられている。
脇には執事や侍従が控え、常に気を配っている。
入口には屈強な衛兵が立っており、何か起きてもすぐに対応できるように控えている。
舞台には専用の楽師がおり、心地よいメロディーを奏でている。
立食宴のである。
あちこちらにドレスを着た女性の姿が見える。
男が異様に少ないのはご愛嬌か。
広間中央付近の机では 黒い背広を着た白髪の初老の男性と騎士服の銀髪の女性が会話をしていた。
「急の用立てというのに、これほどまでに盛大な催しをして頂くとはありがたく存じ上げます」
銀髪の女性、クリスが初老の男性に話しかける。
「いえいえ、リリィ公爵家に連なる方が私のおさめる街にこうして居らしてくれたのです。礼を尽くすのはこのエフレディア王国で伯爵の位を承ってるレイダルス家としては当然のことです」
うやうやしく頭を下げるこの初老の男、この街をおさめるジンム・レイダルス伯爵その人である。
見た限りには人が良さそうに見えるが、目は力強く未だに野心を宿してみえ、現役の騎士として前線にでることもあるという。
服の上からでも見て取れるほどに鍛えられた肉体は見事としいかいいようがないくらいだ。
この辺りの奴らはどうしてこう筋肉が凄いんだろうか。
世界樹の影響か……?まさかな……。
考えた所で、答えなどでないか、とクリスは諦める。
「自分はリリィ家と言えど末席に過ぎませぬし、過分な配慮は身に余ります故」
騎士の礼を取るクリス。
「末席といえどリリィ公爵家で御座います、尚且つ神殿の高位神官であらせられる。どうして粗野に扱う事などできましょうか。ここで何もせずに帰らせてしまうなど家名の恥でございます。どうか歓迎をお受けください」
またも頭をさげるジンム。
「そこまで仰られるならば、歓迎ありがたく承ります」
そこで横から声が掛かった。
「いつまで面倒くせぇことしてやがる、親父。こいつなら普段通りでも大丈夫だ」
レジールである。
いつもの騎士服とは違い貴族のような装いの黒い背広を着ている。
「貴様、ご無礼を!申し訳ありませぬ、不詳の息子が……」
クリスは息子、という言葉に驚いた。
思わず素に戻る。
「親子だったのか?」
「知ってて俺に宿を頼んだんじゃねーのか?」
不思議がるレジール。
首をふり、否定するクリス。
「関係者だとは思っていたが、騎士団の宿舎の一部くらい借りれれば御の字だと思っていたよ、本当に屋敷を手配できるくらいの地位にいるとは思わなんだ」
その答えを聞くなり、笑い出すレジール。
「俺の早とちりかよ、ちくしょうめ」
言葉とは裏腹に顔は笑っている。
自分に対して呆れて笑っているのだ。
「早とちり?」
「いや、ただの俺の勘違いだ、気にしないでくれ」
レジールはひとしきり笑った後ため息をついた。
「仲がよろしいのですな」
ジンムが間に入ってきた。
クリスとレジールを交互に見る。
「そういえば、クリス様ご結婚は?」
ジンムの行き成りの台詞にクリスは一瞬吹き出しそうになるのをこらえた。
「いえ、自分にはそういう話はございません、レジール殿にお聞きかもしれませんが、これから王妃様の勅命にて女性だけの騎士団を立ち上げねば成りませぬゆえ、これからもないかと、それに一応神殿に名を連ねるものですから」
クリスは遠回しに否定する。
「それは、なんとももったいない話でございます、クリス様の美しさなら引くて数多でしょうに、神殿にはいられてなければレジールを婿にとでも思いましたが、口惜しいですな」
宣うジンム。
クリスの顔が硬直する。
「いえ、私などではとてもレジール殿には釣合いませぬ……ご容赦ください」
クリスは絞りだすようになんとか言葉を吐き出した。
聖騎士になってて良かった。
一般的に聖騎士とは高位の神官にしか慣れない者だと思われているのが幸いした。
神殿内部の者でなければ、精々官位くらいしかわからないものである。
クリスにとって聖騎士が初めて役に立った瞬間である。
レジールは硬直したクリスが面白いのかからかい交じりに近づいてくる。
「俺は構わないぜ? なんなら神殿を抜けるのを待っててもいい」
真面目な表情とは裏腹に目は完全に笑っている。
その言葉にジンムは顔を輝かせた。
「どうですかな?」
この野郎。
クリスは顔を引きつらせながらも、「申し訳ありませんが」とどうにか言葉を絞り出した。
「わかってるよ、冗談だ、そんなに睨むな」
レジールは降参だとばかりに、両手を上げた。
「にしても、折角ねぎらいの宴で土耳長やアリシア嬢ちゃんでさえ、貸ドレスを着てるというのにお前は、騎士服か?色気のねえこって」
呆れ顔でクリスを揶揄するレジール。
「ドレスか……」
クリスは何を思ったのか苦虫を噛み潰したかのような表情になる。
その心情はレジールには窺い知れない。
「そんなに嫌いかね?」
レジールは不思議そうに尋ねた。
「お前くらいの年頃の娘は普通、夜会だお茶会だってドレスなんて日常茶飯事だろ?」
自分がドレスを来て、キャッハウフフと夜会やお茶会に……そこまで想像して顔を青くするクリス。
見た目は初代王妃だ、何の問題もない。
だが心はついこの前まで、現役騎士で、荒事を中心の世界観だったのだ、確かに、騎士団として貴族の護衛はしたことがある。
侯爵や伯爵の茶会やお茶会を護衛をしたことがないわけではない。
けれども、護衛をしたからこそ言える。
そんな日常は嫌だ。
笑顔で男の爵位や領地に探りを入れる令嬢たち。
玉の輿など常に狙っている。
笑顔で夜の話をする令嬢たち。
やれ誰がすごかった、やれ誰は小さいだの。
笑顔で侍従を躾けと称して弄る令嬢たち。
紅茶が合わないだけでぶち撒けるのは、まだ生ぬるいほうだ。
笑顔で互いに毒を吐く令嬢たち。
令嬢は常に戦っている。
陰謀渦巻く令嬢社会。
変身魔法を使えるようになってから、いつか役に立つかもしれないと覚えさせられた最低限の知識。
だがそれはクリスにトラウマを植えつけただけであった。
護衛の経験も含め、クリスは令嬢という生き物が苦手である。
「普通の者に……、前代未聞の騎士団を作らせるか?」
自嘲気味に笑うクリス。
表情には陰りが指す。
その虚ろで深淵を覗くかのような表情をする。
それに一瞬だが惚けて見入ってしまうレジール。
「いや、悪かった……お前にも何かしらあるんだろうよ」
容姿は良すぎるくらいにいいんだがな。
レジールはそう思ったが口には出さないで謝罪した。
「別に気にしているわけではない、気を揉ませたなら済まないな」
クリスも普段の表情にもどった。
「少し仲間の様子を見てきます」
クリスはジンム伯爵に挨拶をしてその場を去った。
「……さっきの言葉、冗談にしとくのはもったいなかったかな」
レジールの呟きは誰の耳にも聞こえる事なかった。
楽師が奏でる音楽にかき消された。
そんな様子を遠くから眺めていたアリシア、耳たぶに光が宿っている。
「アリシア、耳が光っているぞ? それは何の聖痕だ?」
一緒に食事をしていた、ユカラが尋ねる。
「これは聞き耳の聖痕です、クリス達の会話を盗み聞きしてるんです」
アリシアは牛のオーブン焼を齧りながら、盗み聞きをしていた。
ユカラは感心し、頷いた。
「何か面白いことが聞こえたか?」
「面白くはないけどむかつきますね」
アリシアが言いながら、赤葡萄酒を煽る。
「どうした? 何かあったのか?」
「クリスがレジールに求婚されてました」
アリシア飲み干した、盃をつまらなそうに見つめながら言う。
「なんだ……そんな事か……」
思った以上に、普通の事にユカラは胸をなでおろした。
けれども、女という生き物は好いた惚れたの話は大好きである。
ユカラもその例にもれなかった。
「それでクリスは何と?」
ユカラは面白そうに目を細める。
「やんわり断ってましたけど、どうもレジールを見てると本気っぽいですね」
私が貴族の時とは大違いだとアリシアは思う。
アリシアとて何度か夜会くらいは行ったことがあるが。
そんな事は一度もなかった。
可愛らしいとこそ言われたことがあるが。
女性として見られた事など一度もない。
許嫁がいたので当時のアリシアにとってはそれは別にどうでもよかったのだが。
しかし、あの許嫁を思い出したのだろう。
若干苛立ち、口調が少しばかり冷たくなるアリシア。
鳥の香草揚げを胸の中にいるベルサイユにあたえている。
「あの器量で貴族なのだろう? 引くて数多だろうに騎士団など酔狂な奴だ」
ユカラはクリスを変な奴だと笑う。
アリシアは視線だけはクリスを追いつつも蒸し芋の乳油添えを頬張った。
「騎士団は、ハフ、王妃様の命令ですので、ハム、王国に使える騎士であるクリスには拒否権はないんですよ、ハム、私は志願しましたが」
ユカラは驚き目を見開く。
アリシアはゴクリと飲み込んだ。
「忠義で命をかけるか……なるほど。クリスにも何か背負うものがあるのかもな」
ユカラは何かを感じたのか、黙り込む。
同じ戦うものとして通じるものでもあったのだろう。
アリシアはなんだかもやもやしていた。
手近にあった、焼き鳥をベルサイユに与える。
二人でクリスの事を話しているとそこへ、巨漢のハゲた男が近づいてきた。
知らぬ足音に急いでベルサイユを胸元の奥に押し込むアリシア。
ふと見あげれば、そこには灰狼騎士団の団長。
ダライがそこに居た。
一瞬誰だかわからなかったアリシアだが、思い出したのかむっと目を細める。
「そう睨まないでくれ、あの時非礼は詫びよう、すまなかった」
ダライは素直に頭をさげた。
「謝ってくれるならこちらも、別に咎めたりはしませんが」
口ではそう言っているが、どこか冷たい口調のアリシア。
「そう言ってくれると有難い、俺にも昔、娘がいてなとある事情から会えなくなってな、アリシアちゃんくらいの背格好の子供を見るとついな……」
何かを思い出すように、目を細めるダライにアリシアも強くでれず話を収めた。
「宴は楽しんでるかな? 俺も今日いきなりだったから、今来たばかりで理由は聞かされてないんだが、お嬢さんたちが多いし、大方レジールの嫁探しだと思ったんだが、どうやらそうでもなさそうでな、戸惑っている……料理が美味しいからいいけどな」
団長なのに何も聞いてないのだろうか。
アリシアの中に微妙な疑問が浮かぶが、いいかと思いと無かったことにする。
ふと視線をあげるとユカラがダライをみて口をパクパクさせていた。
「どうしました?」
アリシアも声をかけるが。
陸にあがった魚のように口を開閉するだけだ。
ダライもその様子に気づきとユカラを見る。
「どうした?」
「……ち」
ち?
「父……上?」
絞り出すように出した言葉はダライの耳に届いた。
目を見開くダライ。
「お前、ユカラか?」
何度も首を縦にふるユカラ。
「そうか、大きくなったな」
ユカラを抱き寄せるダライ。
二人は抱擁を交わす。
「生きてっ……居たなら、どうして……」
ユカラは嗚咽をもらしながらも、声をだす。
「すまない……」
ダライは謝り、泣き始めたユカラを宥めた。
***
「これはどういう事だ?」
話を終えたクリスが現場に来てみれば、ダライがユカラ達に取り囲まれ、口々に父さんと言われている。
「どうと言われましても、ダライさんが土人でユカラさん達のお父さんだったらしいです」
アリシアはありのままを説明した。
右手には挽肉包焼をもっている。
「なるほど、道理であのときアリシアを捕まえる事ができたわけだ」
「なんふぇふぇすか?」
アリシアは口にパイを含みながら喋る。
ゴクリと飲み込む。
「あの時は油断しただけです、次があったら捕まりません」
ふんと鼻息を荒くする。
「おかしな事ではないさ、土人は六大部族の中では鬼人に次いで力はあるし、耳長に次いで機敏だという、鍛冶の技術ばかり注目されがちだが、純粋な肉体能力は鬼人に次いで高いらしいからな、俊敏の魔法を使かったら、素の聖騎士とじゃ、いい勝負するんじゃないか?」
クリスが考察を述べる。
「しかし、そう考えると猿人って本当繁栄できたのが不思議なくらい弱いよなぁ……戦は数か……」
何処かしみじみとクリスは呟いた。
「聖騎士は単体で全ての種族を凌駕するはずなんですけど……でなければ歴史の辻褄があいません」
アリシアが言い切りながら、牛肉の葡萄酒煮にフォークを突き刺した。
「土耳長を聖騎士にしたときが見ものだな、試すなら本当は魔法が使える男がいいが、そういうわけにもいかんしな……チャンスがあれば試したいな……」
ぶつぶつと呟くクリス。
アリシアは牛肉の葡萄酒煮を齧っている。
わぁっと歓声があがった、拍手がパラパラと聞こえる。
「どうやら、終わりそうだな」
落ち着いたのか、話がまとまったのかは判らない。
とりあえず切りは良いだろうと近づくクリス。
するとユカラと目があった。
ユカラは涙を拭きながらクリスに礼を言う。
「クリス。偶然とはいえ、お主のおかげだ。亡くなったと思っていた父上に会うことができた、有難う」
ユカラが礼を言うとダライも進み出て頭を下げた。
「俺からも礼を言わせてくれ、十数年前、俺は蛇女の誘惑により困惑し崖から落ち死にかけた、ジンム伯爵様に助けて頂かなければ死んでいただろう。当然、娘達にはもう会えないと思っていた。本当にありがとう。騎士団の話も聞いた、俺にできることあれば手伝おう、なんでも言ってくれ」
「気にするな……お前らの運が良かったのさ」
二人の話を聞いて思案するクリス。
「一日やろう。出発は明日のつもりだったが、明後日にしよう」
ユカラや他のダライの子達は目を輝かせた。
「すまないな、ありがとう」
クリスは口々に礼を言われる。
別に礼を言われる所以もないのだが。
照れくさいのか頬をぽりぽりとかいている。
「こちらもやることがありそうでな、ちょうど良かっただけさ」
「そうですなぁ、皆さん疲れていそうですし、そろそろお開きにいたしましょうか、あす一日頂けるらしいので。よかったですね、ダライ」
いつの間にか居たのか、ジンム伯爵が話を纏めた。
「これも命を救ってくれたジンム様のおかげです」
ダライが頭を下げ、ユカラ達も頭を下げた。
「よいよい、私もこうしてクリス様との交友ができた、田舎の伯爵家にとってはこんな名誉なことはないよ」
笑うジンム伯爵。
「田舎だなどとご謙遜を……」
クリスが苦笑する。
面倒な爺だ。
笑顔の裏で何を考えているかはクリスには判らない。
「では皆さんを宿舎にご案内を」
パンパンとジンム伯爵が手を叩くと侍従達が現れ、担当が決まっているのか三、四人づつ案内されていく。
人が減っていく大広間。
「クリスはこっちだ」
声をかけられたほうを見るといつの間にかレージルが居た、どうやら案内をするようだ。
付いて行こうとすると、服を掴まれるクリス。
アリシアが上目遣いでクリスを見つめていた。
ため息をつくクリス。
「アリシアも一緒で構わないか?」
「問題ねーよ」
レジールが笑う。
レジールがアリシア担当の侍従になん事か言うと、付いて来いと歩き出す。
「しかし、五十人分の部屋をよく用意できたな、割と驚いたぞ?」
「侍従用の宿舎とか空き部屋とか、騎士団の空き部屋とかな? おかげで掃除が大変だったぜ」
レジールは愚痴をこぼした。
「助かったよ、有難う」
クリスは微笑みながら礼を言った。
「まぁ、クリスをそっちに止めるわけにはいかねーからな? 今日はうちに止まってもらうぜ? 公爵家ご令嬢様」
レジールはからかう様に笑う。
「立場上仕方あるまい、しかし、次その言い方したら殴る」
クリスは顔は微笑っているが眼が完全に怒っていた。
そのこめかみには青筋が浮かぶほどに。
「こえーこえー」
レジールは巫山戯る。
「まったく」
クリスため息をついた。
そして、ふと思い出した。
クリスはポケットから銀の首飾りを取り出した。。
「なんだい、そりゃ?」
レジール興味がそそられたのか、顔を近づけて首飾りを凝視した。
「おそらく攫われてた子供のものだろう、魔物の巣に落ちていた」
それを聞いてレジールの雰囲気がかわる。
「人攫いの正体ってか? 魔物が?」
頷くクリス。
「詳細は省くが蛇女の巣に落ちていた、恐らくだが蛇女自体は討伐したからもう人攫いはなくなるだろう」
「蛇女だぁ? そんな神話にでてくるような魔物が居たってのか? しかも討伐しただと……」
頷くクリス。
「信じられないぜ……」
レジール眼を見開いて唖然とした。
「信じる信じないはお前の自由だが、それが事実だ」
そんなやり取りをしているとツンツンとクリスの袖を引っ張られる。
「どうしたアリシア?」
みればアリシアは眠そうに目を擦っている。
「部屋はまだか?」
それで理解し、クリスはレジールを急かした。
「すぐそこだよ」
レジールが呆れたように笑う。
古めかしい扉の前につくと、ここだと扉を叩くレジール。
「じゃぁな」
踵を返えした。
扉をあければ、そこは豪勢な部屋だった。
まず目に入るのは大きな革張りのソファに古美術と思わしきテーブル。
今は火が入っていないが大きな暖炉の前に設置してある。
テーブルの上には水差しが置かれている。
次いで目に入るのは赤い絨毯だ、部屋中に敷き詰められている。
踏めばしっかりと反発してその高級さを物語るようだ。
壁には女神の絵画がかけられている。
天蓋付きの大きな寝具も目を引く。
奥のテラスに向かえば、そこからアルザークの街を一望できるだろう。
二つあるクローゼットの片方を開ければ、便所が現れ、もう一つをあければ水道が通っているのか、五階という高さなのに蛇口とシャワーが備え付けられている。
シャンデリアの豪華さにも目を見張る、今はすでに火を落としてあるが、代わりに机の上に洋燈が置いてある。
クリスが部屋の確認をしている間に気づけばアリシアは着替えもせずに、貸ドレスを脱いだそのまま天蓋付きのベットに潜り込んでいた。
ベルサイユは手に抱え込まれている。
食べたら寝るか、まんま子供じゃないか。
そんなアリシアをみて苦笑しながら、クリスはソファに座った。
「アリシアは見てて飽きないな……」
苦笑し、騎士服を緩めるクリス。
ソファに寄りかかり天井を仰ぎ見る。
「これで五十人、王都を任せたセシリア姉さまのほうはどうなっているかな……」
あの人事務できんのかな。
あれやこれや、とこれからのことを考える。
けれども、やがて思考はまとまらなくなっていく。
旅の疲れがでたのだろう。
クリスの瞼は段々と下がっていった。
改修




