雲
高い場所に憧れていた。
世界はキラキラ輝いていて、はやく上ろうと躍起になっていた。
だが、それは段々と薄れて行く。
いつの間にか日々に追われ、見えていたものは、輝いていたものは雲に覆われる。
時は過ぎ去り、登ることをやめる。
雲の下に降りてくれば、昔見た光景とは違うものにみえる。
自分は変わってしまった。
社会の雲に覆われて、目に見えるものがくすんで見える。
いつしか、体にガタがきた。
高く高く上ろうとした体は疲れを蓄積している。
思い出が薄れ、過去を取りこぼす。
そうして、体はそのまま、意識は昔に帰って行く。
蓄積のない世界へと。
知らない人が自分のことで争っていた。
お金がどうの、介護がどうの。
難しい話をしていた。
よくわからないけど、大きな人は目が曇ってる。
小さい子は私とあそぶ。
「おばあちゃん、一緒にあそぼ」
私はおばあちゃんじゃないけど、子供の目に曇りは無い。
ああ、高いところに雲がある。
雲に覆われて見えなくないのか、心配だ。
キミもあの雲に覆われないといいな。
あれ、なにを考えてたっけ?
そうそう、この子とあそばないと。
なにしてあそぼっか?