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9th 出来るメイドとメイド長の苦悩

 扉を軽くたたき、中に入る。メイド長に声はかけなくていいと先刻言われいていた。


 中は子供部屋、とでもいうべきか。あまり広くないこじんまりとした部屋だが、きちんと整理整頓されていて、配置が美しい。

 なによりも目を引かれるのが、その中央。揺りかごにて目を開けている、一人の赤子。


 アルフレッド・J・レグナス様。

 髪の毛は漆のように黒く、目は琥珀のようにすんだ茶色。肌はレグナス公爵家代々の薄茶色。

 その目は私の一挙手一投足を見逃すまいとでもいうようにこちらを見ていた。

 「ルー・レイラスです。本日よりアルフレッド様に仕えさせていただくことになりました。どうぞ、よろしくお願いいたします。」

 赤ん坊といえど、挨拶は必須。伝わらなくても、これも礼儀。

 揺りかごの近くにある机にて、哺乳器の用意をする。

 一般の村の生まれでは母親から直に乳を吸うのだが、公爵家ともなると全てメイドによって行われる。

 場所によっては乳母の場合もあるが、メイドの方が安く、しかも安全である(主に暗殺、病気などにおいて)ためにそちらが採用される場合が多いとはメイド長の発言。

 粉ミルクをコップにて、魔技で温かくしたお湯で溶く。万遍なく溶けたのを確認したところでアルフレッド様を見て、私はコップを落としかけた。

 アルフレッド様の右目に三角形を二つ重ねたような刻印が映し出されていた。

 部屋に入った時には全くその気配もなかったというのに。

 本来ならキリシターナ国本領にある教会にて、しかもその最高司祭が一週間の準備をした後にのみ為しえると言われている奇跡を、わずか数秒の間にこの場で行った。

 私の知識がそれを理解した。体が震える。

 「メ、メイド長!」

 その震えは声にまで表れていた。

 「なんですか騒がしい、お静かになさい、殿下の前で失礼ですよっ!」

 厳しい叱責が飛ぶ。がそんなことは最早気にもならない。

 「アルフレッド様の目、目を見てください!」

 「ですから騒がしいと・・・・っ!そんな、まさか!」


 アリスは愕然としていた。

 刻印とは、キリシターナ国に伝わる秘儀の一つである。

 刻印を生まれつき持つ人は何かしらの特技を持って生まれる。

 また、生後新たに刻印を施す場合には多額の資金を持って中央協会に願い出て、特別な儀式を受けなければならない。

 アルフレッド・J・レグナス殿下がこの世に生誕された際、メイド長はその場に居合わせ、身体に刻印がないことは確認されていた。

 自分の血族にどれだけの刻印保有者が存在するのか。その数が貴族の力の象徴であるために生まれた赤子は 体の隅々まで刻印の有無を確認される。そしてアルフレッド殿下は刻印を保有していなかった。いなかったはずなのだ。

 しかし、殿下は今、その目にある刻印を爛々と光らせている。

 ありえないことだった。ありえてはならないことだった。

 しかし。

 「いえ、取り乱してはなりません。アルフレッド・J・レグナス様はいかなる理由があろうとも、私たちの主であり、それは不変なのですから。ルー・レイラス、わかっていますね?」

 「はい、メイド長、このことは他言無用、ですよね?」

 打てば響くとはこのことか。ルー・レイラス、新人にしては見どころがありますね。

 「よろしい。では食事の続きを。急がねば殿下がおなかをすかせてしまいますよ?」

 「はい、メイド長。」


 それにしても・・・。

 スキルが同じであれば、表れる刻印も同じであるという絶対のルールが存在する。

 刻印を施すことによって、スキルを会得することができるのだからそのルールが崩れることはない。


 元々私は中央教会にて育てられた孤児であった。

 その教育方針に従い、発見されている全ての刻印に一度は目を通している。

 それと私自身のスキル”鷹の目”によって相手の刻印を見ることによって相手のスキル、手の内を知ることができるために、レグナス公爵家における対暗殺者の地位を確立させた。

 しかし、そんな私であっても、あの刻印は・・・・。


 あの刻印はみたことがない(・・・・・・・)

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