7th 異世界は木目から始まった
名家の皆様方。私めは一般家庭の生まれ、育ちでございますゆえ突っ込みどころは笑って許していただきたく思います。
この小説はフィクションです。
余計な設定入れなければよかったw
ではお楽しみに。
パチリ
雲が晴れるように意識が浮かび上がる。
天井の美しい木目が目に入る。鮮やかな薄茶色。
我が家の天井を思い出す。
いまどき日本の木造建築は珍しい。
懐かしの我が家はいわゆる田舎の旧家だったため、冷暖房設備も最低限しかない日本家屋であった。
実家をもう拝めないというのは少々物悲しい気分になるが、諦めるしかない。
あの口煩い小言が聞けぬのも、今となれば寂しいと思える。
話がそれた。
木目にしばらくみとれながら考えていたが、どうもこの体、かなり不便である。主に身体能力的に。
寝返りできないほどに体が動かないのはまだ赤ん坊であるからだろう。
首もすわっていないし、動かせるのは手足と目だけだ。
きょろきょろと周りを見渡す。
衣装箪笥のようなものと綺麗な花が入った花瓶、あと入口であろう扉と、そのすぐ横にあるサクスホーンのような形をした取っ手…取っ手なのかあれは?
異世界に来たんだ、わからないものはあって当然と考えるべきか。
窓から日の光が入り明るい。時間は正午あたりであろうか。
窓の外は角度的に見えない。せめて起き上れればと思うが無理であった。すでに試した。
寝転がった赤ん坊の視界は非常に狭い。きょろきょろと見渡してもわかるのはそれくらいであった。
唯一の救いは思考がはっきりしていることか。
精神年齢まで生まれ変わってしまったら色々と大変だった。
しかし…暇である。誰しも経験があるとは思うが、一度はっきり目を覚ましてしまうと寝付けないものである。
赤ん坊であればなおのこと。
ドタドタドタ・・・ガチャ
扉が開いた。
異世界初、人との接触である。
「#&$#%&$~?」
入ってきたのは二人の女性。一人が腰を折って何かを言っている。
話しかけてきたのはメイド服を着た見た目普通の女性。
歳はレディというよりは未だ女の子といった方がよさそうであるが。
もう一人はおばさんといった感じのこれまた普通の女性。
あ、普通とは顔のことではなく、種族的な意味な、ここ重要。
さて、それよりも…。
…。…。うむ、言葉がわからない。というか聞き取れていない。片仮名ですら表記できそうもない言語ってどう学べばいいんだ?
仕方があるまい。一回目のあれを使うか。
目を瞑り精神を統一する。
神様からやり方は教わった。魔法がある世界ならそんなこともあるのだろう。
キーワードを強く思い浮かべる。念じる。
― 開け 技能の扉 ―
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