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6th 揺り籠は静かに城は喧ましく

 微睡みの中にいた。

 誰かが俺を呼んだ気がした。


 ぼー、と何も考えない、何も考えられない時間が過ぎていく。


 目は光をとらえるけれどそれが何か全くもって認識できない。


 耳は音をとらえるがくぐもっている。いや、日本語ではないことぐらいはわかる。

 ただ、話の中身がつかめない。

 ただの音。


 まるで機械が人間の感情を理解できないように、俺は五感が伝えてくる情報を理解できない。

 一つを除いて。


 触感。


 暖かいのだ。

 羽毛のようなものにくるまれ、ぬくぬくと、まるで春の木漏れ日の中にあるようだ。

 その温もりは再び俺を微睡みの中に溶かしてゆく。



 誰かに呼ばれた気がした。





 視点は変わり、キリシターナ国領レグナス公爵家公領、その中央に位置する国城の三階、執務室。


 その主アレックスは平和な自領に満足しつつも一向に上がらない収益に頭を抱えていた。


 レグナス公爵家は代々続く由緒正しい家柄である。

 キリシターナ王国設立当時から王家に仕え、懐刀としてキリシターナ王国の発展に貢献してきた。


 しかし、20代目を超えたあたりから自領経営の雲行きが怪しくなってくる。

 伝統というものは正しく受け継がれることによってその本質を発揮する。


 しかし、積み重なる人間の欲望によって多くは捻じ曲げられてしまう。ここレグナス公領でも同様であった。

 税率を上げようとすれば商人たちからの非難でお金が回らなくなる。

 かといって安くすれば赤字が増えるばかり。

 新規事業など軍事一辺倒であったアレックスに考えられるはずもなく。


 打つ手はなく、すでに袋小路であった。

 

 「っ~!旦那様ぁ~!旦那様はどちらに~!」


 廊下からドタドタとけたたましい足音が聞こえる。

 メイド長のアリスだ。普段ならばむしろ彼女が注意をする側であるのに今日はいったいどうしたものか。


 「アリス、こっちだ。執務室だ。どうしたのだ、そんなに急いで。」

 「あぁ、旦那様、こちらにいらしたのですね。急ぎの早馬が着きました。旦那様宛でございます。送り主は・・・」


 レグナス公爵家屋敷執事長ルーブルより


 「っ!早馬の用意を、今日の仕事はこれで打ちきりだ!急げっ!」


 手紙の中身を見るや否や大声を上げた。その声は4階建ての城の上から下まで響き渡る。


 「旦那様・・・ようやっとお世継ぎが・・・。」

 「ああ、待望のわが子が、生まれた。」


 執務室を出て階段を飛び下りる。大広間に続々と人が集まっていた。外には馬車が見える。


 「さぁ、皆の者ついてこい!今日は、祝宴だ!!」

 

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