2nd 現世はまるで夢のごとく 常世はまるで幻のごとし
誰しも人間であるならば、一生を振り返ってみて「ああ、ここで私の人生は変わったのだな」と実感するタイミングがあると思う。
俺にとってつい5分前がそうであり、10秒前がそうであり、5秒前がそうであった。それぞれ説明しようか?
一番初め、学校に向かおうと家を出て僅か4秒で忘れ物をとりに引き返したこと。
まぁ、普通だな、学生なら一度くらいするであろうことを俺もしただけだった。まだいいんだ。これは。
次からが、問題。
二番目、大通りに沿う形である横断歩道を歩いていて何故か猛スピードで突っ込んできた軽トラックに轢かれそうになっていた女子校生っぽい子を庇って代わりに轢かれたこと。
まぁ、これもい…よくないんだが、まぁ頭打ってないし左肩強打して滅茶苦茶痛かったが、まぁ、まだいいんだ。
最後。
荷台に何故かうず高く積まれていたパイプが慣性よろしく落ちてきて鳩尾を貫通したこと。
当時、俺は何も感じていなかった。痛みも苦しみも。ただ寒く、力が抜けていった。
「…!」
誰かが呼ぶ声が聞こえたような気がしたが、すでに知覚全てが曇っている。
「死・・い・!・・じゃ・・!」
あぁ、そういえば…。
女の子は無事だったのか、よかっ…た……
そうして俺は息を引き取った。
「っ!」
ぱちっと音がするくらい勢いよく開かれた目が写したのは見覚えのないダイニングルーム。俺は机に突っ伏して寝ていたようだ。10人くらいは一堂につけるであろう部屋にただ一人すわっていた。
「夢…だったのか?」
‐夢じゃないよ、全て。現実に起きたことで、君のリアルだ。‐
鼓膜を介さない声を聞き、眼前の恐怖に体が硬直した。
さっきまで誰もいなかった対面のイスに金髪の男性が座っている。
‐やぁ、神の国へようこそ。‐
頭に直接響く声に気分が悪くなる。
「神の…国…。」
‐そう、神の国。君は善行を積み、神となる権利を得た。‐
見た目は欧米人のようであるが、決定的に違う特徴が一つ、ある。
目が白いのだ。
‐驚かせてしまったかね、すまない。こうして人と会うのは実は初めてなんだ。‐
金と白のコントラストが彼の雰囲気をただの人ではなくしている。
もっと高位な、高次元な存在へと昇格させている。
または、名状しがたき…。
‐さて、本題に入ろうかな。これから君には3つの進む道が与えられる。‐
「・・・道?」
未だ頭がうまく働いていない。突発的に色々と起こりすぎている。
‐1つは元いた世界、地球に生まれ変わること。ただし、記憶は消させてもらうよ。‐
事故から2分とたっていないのだ。思考回路がショートしてもおかしくない。
‐もう1つはここで神様として働くこと。それなりの特権階級であると考えてくれて構わないよ。そして最後に…‐
‐異世界に転生すること‐
神がにこりと笑う。
読んでいただき、ありがとうございます。
誤字脱字がありましたら、ぜひご指摘くださいませ。
コメントしていただければ泣いて喜びます。