第84話 飛び交った龍と不死鳥
教皇が技を発動させると、球が虹色に輝きだした。それ以外には特に変わった点は見られない。
さっきと同じように教皇がロサイルとバレンアに目掛けて球を投げかける。だが、先ほどとはスピードが桁違いだった。一瞬にしてロサイルとバレンアの元にたどり着いたのだ。
「いつの間に……」
「気をつけろロサイル! 多分爆発だ!」
ずっと爆発系の技を発動させてきた教皇。バレンアがそう考えるのも仕方がない。
だが、爆発なんていう科学的なものではなく、本当に原始的、原点といわれるような攻撃方法だった。
虹色の球はそのままロサイルたちに直撃し、単なるパワーで押し切って壁に叩きつけた。凄まじい威力で壁自体の形が変わってしまった。壁に押さえつけられてしまった体は、まるでブーメランのように曲がってしまっていた。
「これが最強の技、虹色球」
その威力に圧倒されてしまったロサイルとバレンアはその場で倒れる。ずきずきと痛むお腹を押さえながら。
しかしそれに耐えながら2人は立ち上がった。
「今度は俺たちの番だな」
「やってやろうよ。エグレサッタコンビの技!」
ロサイルは炎のチャージ状態に戻り、一気に教皇の後ろをとった。そこから通常状態に戻り、腕に炎を集中させ、一気に放つ。
「炎龍波!」
炎のドラゴンの衝撃波がロサイルの腕から放たれた。
しかし教皇は簡単にかわしてしまう。これも2人にとっては作戦の範囲内だった。
炎龍波の先には大きなシルクハットを持って炎龍波を受け止めようとしているバレンアの姿があった。
そう、この技は炎の不死鳥だった。
炎の不死鳥はバレンアの大きなシルクハットに、絶大な火炎力を持ったものを入れ、撥ね返すことによって生じる技。
それを炎龍波でやるとなると、最強の威力の上に、塔中に不死鳥たちが飛び交う。そう、教皇の逃げ道がなくなる。
「撥ね返せ! バレンア」
「炎の不死鳥、炎龍波SP!」
シルクハットに入り込んだ炎龍波を見事に撥ね返し、無数の不死鳥を塔に飛ばせた。
火炎力が強すぎたからか、不死鳥に変換し切れなかった炎龍波も不死鳥のように飛んでいる。
教皇に逃げ道はなく、ただ傷を負う瞬間を待つだけとなる。
そして、炎の不死鳥は教皇に襲い掛かった。
教皇もダメージを最小限に抑えようと必死で魔法を唱えていく。爆発で攻撃を防いだり、虹色球で一掃したり。しかしロサイルが出した大量の炎龍波によって、不死鳥は何度でもよみがえるどころか増加していっている。
次第に対抗できなくなっていき、教皇は大きなダメージを負っていった。色んなところが火傷と化していく。
これが2人に見えた完全勝利の時だった。
次話もよろしくお願いします。
いつもみたいに予告したらネタバレに……