第78話 煙の人と衝撃波
リラはトルネードキラーガードの刃の中へと投げ込まれた。
いくつもの刃がリラに襲い掛かる。
「……これまでか」
勝利を確信したジーラスは、消えてなくなったトルネードキラーガードの場所から離れ、去ろうとした。そのとき……!
「デンジャーストリーム!」
ジーラスをかなり傷つけたあの大技が発生した。
この技はリラしか発生させることができない。
それにジーラスは構えを取っておらず、たちまちその暴風へと飲み込まれていく。
「なぜ……生きている……」
リラは空にいた。そこから狙いを定め、ジーラスにデンジャーストリームを放ったのだ。
「また新たな呪文を使ったんだ。『スモークパーソン』っていう技」
スモークパーソンとは、リラ自身が煙となり、どんな攻撃をも受けなくなってしまう、いわば究極奥義だ。
それの影響でジーラスに投げ飛ばされた後、煙となってトルネードキラーガードを通過し、空高くジャンプし、ジーラスに向かってデンジャーストリームを放った。これが投げ飛ばされた後のリラの行動だった。
「ふぅ……ここまで手こずるとは……」
デンジャーストリームでかなりの傷を負ってしまったジーラス。だが、本人は動けなくても、刃は動けるのだ。
「やってしまえ! あの女を!」
ジーラスが刃に命令し、空中で身動きがとれないリラに向かって襲い掛からせた。
刃はすごい勢いでリラに襲い掛かる。
しかし、煙となっているリラにはまったく効かない。刃がリラの心臓部を貫いても、すぐに心臓部が煙と化し、そのまま通過してしまう。
ジーラスも予想外の展開に焦っている。
どんどんリラを斬るように命令する。だがリラをすり抜け、どんどん島の建物を破壊していっている。
それに少し嫌気がさしたリラは、ジーラスに止めを刺しに行った。しかし……
「所詮はお前、煙だろ?」
ジーラスは飛んでいた刃を自分のところに戻し、またいつもと違った持ち方をした。
「なら、このオーシャンアイランドすべてを破壊すればお前に逃げ場は無いわけだ」
「なっ!」
ジーラスの剣が赤色に光り出し、それを地面に突き刺す。その突き刺した場所から赤い衝撃波が巻き起こり、オーシャンアイランドを包み込んだ。
ここの誰もが逃げる余地はなかった……
◆
気づいたらそこはまぎれもないオーシャンアイランド。なのだが、何もかもが滅びてしまっている。……はずだった。
「お前……」
ジーラスが放とうとした衝撃波はオーシャンアイランドを包み込み、滅ぼすことができなかったのだ。ある青年が起こした行動によって……
「やりすぎやで……隊長」
近衛騎士の副隊長、ザメサだった。
そのザメサが起こした行動は、衝撃波が巻き起こった地面を手で押さえたのだ。おかげでザメサの手は血だらけだった。
「ここは……壊したらあかん……」
ザメサは強い目をしていた。
次話でオーシャンアイランド終了です。
それからは戻って北デューナ。
ファスニード大陸大戦もクライマックス!