第72話 世界が変わる瞬間
今回でウィニングウィンゲンツでのお話は終了です。
エリスは回復妖精と光の弓剣を札に戻し、新たな札を取り出した。
そしてその2つの札を召喚した。
「斬殺狼! 光の帯剣!」
1つの切り札と1つの伏せ札を召喚した。それは陰陽の隠れ里での戦いの時に里を滅ぼした狼と、エリスの身長くらいの帯剣が現れ、その2つを合体させた。
すると、狼が金色に輝きだして、牙の1つが大きな帯剣と化した。
「これが必殺の札技……」
『狼剣!』
金色の狼が村長に襲い掛かる。
しかし、村長も引き下がるはずがなく、同じ技で対抗しようとした。
「お前に出来るなら私にも出来る! 狼剣!」
斬殺狼と光の帯剣を召喚し、村長も狼剣を召喚した。
しかし、うまく発動せず、そのまま札に戻ってしまった。
「なぜだ!? エリスに出来てなぜ私には出来ない!?」
「教えてあげますよ……この斬殺狼……あなたのなんですよ村長」
「何!?」
「陰陽の隠れ里のみんながこの前送ってくれたんです。つまりは陰陽の隠れ里みんなの思いが詰まってるんです。もちろん、優しいころのあなたの思いも……」
そうして狼剣が村長を襲った。
こうしてウィニングウィンゲンツの激戦は幕を閉じた……
*
ヒョウルスも雑魚を片付け終えたみたいで、その真っ白な地面にぺたんと座っていた。
「おう、終わったか」
「はい」
「しっかし驚きだな~。純金鉱石を取り込んだ奴に立ち向かえるなんて。しかも勝つなんて」
「そりゃあ、怖かったですよ。でも……ロサイル君やバレンア君、リラちゃんだったら絶対に立ち向かうだろうなって……」
ヒョウルスは煙草の煙を口の中からたくさん出して、少し嬉しそうに笑い、そしてエリスに言葉を投げかけた。
「行かなくていいのか? 北デューナ」
「え?」
「元気があるなら行ってこい。あそこは間違いなく激戦区だ。2人で勝てるとは思えないからな。純金鉱石を取り込んだ奴が多数いる」
「でも、ここからじゃ遠いですよ?」
「家の横にあるスノーモービルに乗っていけ。それにお前は北デューナに行く必要があるんだ」
またヒョウルスはたくさん煙を口から出した。そして、こう言って送り出した。
『行って、見てくるんだ。世界が変わる瞬間を』
その言葉を聞いてエリスは何も言わずにスノーモービルに乗った。
そして大きな音を上げながら北デューナへと行ったのだ……
次話、オーシャンアイランド!