第71話 光速の発動術
回復妖精とファルダンが少しでも粘ってくれたおかげで、そこそこ傷口が治ったエリス。万全ではないといえ、十分戦える状態となった。
しかし村長はすぐさま小刀を構え、構えていないエリスを勢いよく刺した。
もちろんかわせるはずもなかった。
「ははははは……エリス、これで分かっただろう? 普通の人間はどうあがいても純金鉱石を取り込んだ人間には勝てないのだ!!」
大量の血が溢れ出す。またウィニングウィンゲンツの白い地面が赤色に染まる。
「また雪が血で赤く染まったな、エリス」
「……そうですね……でも、その血は誰のだと思いますか?」
「何を言っている!?」
エリスはすっと右肩に手を添えた。村長もエリスと同じ行動をとる。そしてエリスはその手を見た。また村長も同じ行動をとる。
すると村長の手には、赤い血が付着していた。
「なっ……!!」
そう、その血は村長の肩から出たものだった。
エリスは瞬間的に『光の弓剣』を召喚していた。矢のような剣と小刀では、明らかに弓剣の方がリーチが長い。そのリーチの長さで勝ったのだ。
「お前……なぜそんなに早く召喚できた!?」
「仲間が速術法を教えてくれたからです」
エリスは、この戦争が始まる前に、リラと連絡を取っていた。リラが無事にオーシャンアイランドに到着することが出来たという報告のためにだ。そのときにこんな会話をしていたのだ。
*
「もしもし、リラです」
「あ、リラさん! 無事にオーシャンアイランドに着いたんですね」
「うん。こっからみんなと最後の準備を進めていくんだ。エリスはどう? 特訓は順調?」
「ん~……順調っていえば順調なんですけど、順調じゃないっていえば順調じゃないんですよね~」
「どういうこと?」
「今までの召喚の中で一番強いものを召喚できる力を手に入れたのですが、発動までに時間がすごくかかってしまうんです。ウィニングウィンゲンツにだって、すごく強い人が来ると思うんです。その人に発動時間が遅いとこの技は通用しないと思いますから。そこら辺は順調じゃないんです」
「……速術法を使ってみたら?」
「速術法?」
「うん、配達は戦争までに間に合うと思うから、速術法についての本、約100ページと、小説〔ラブラブハイスクール〕を送るね。これを10分で読むんだ」
「ちょっと待ってください。色々気になることがあります。まず、10分で読むのは不可能ですし、何ですか、そのダサいタイトルの小説は?」
「ずべこべ言わずに読む!」
「は~い……」
*
「で、速術法についての本を読んだ後に〔ラブラブハイスクール〕を読むと、10分で読めたわけですよ。案外これが陰陽師にも使えるものだと知って、ラッキーだなーって」
エリスはある札を取り出し、村長に向けた。
「光の弓剣できり続けても十分勝てますが……生憎そんな力残っていないので、これで終わりにします。覚悟してください、村長!」
そう言ってエリスは最強の札を召喚した……
次話、ウィニングウィンゲンツでの激闘がついに決着!
勝つのはエリスか、村長か!?