第66話 かけた命と危ない命
バレンアがマジックによって出した無数の不死鳥。それらがレミーの出した炎の流星群に向かって飛び立っていく。
不死鳥は決して死ぬことのない鳥。どんなに弾かれても、また立ち向かっていく。そうしているうちに、炎の流星群の数が減ってきた。
終いには全てを消し、炎の流星群からの脅威は逃れた。
そしてバレンアはランスの方を振り向く。
「さぁ、邪魔も消えた事だし、再開しよう……と、言いたいところだけど、やめにしないか? こっちにはまだ無数の不死鳥を持っている。あんたに勝ち目はないと思うんだけど?」
「はっはっは、本当に面白い奴だな。冗談もいいところにしとけよ。こんなとこでやめて教皇様のところへ行かす側近がどこにいる?」
「それもそうだよね……やっぱ戦うしかないか……」
「ああ、戦うしかない。それと、決して死なない鳥、不死鳥を持っていたら無敵気取りか……笑わせてくれる。不死鳥が死なないなら……」
喋りながら、ランスは剣を突き出し、目に留まらぬ速さでバレンアの方に向かって走った。
あまりの速さにバレンアは反応が出来なかった。
そしてそのまま、肩に剣が刺さってしまう。
「不死鳥を持っている本人を殺すまでだ」
バレンアはその場で膝をつき、肩を抑える。
肩からは大量の血が溢れ出していた。肩を押さえている手も、すぐに赤色に染まってしまう勢いで。
その場で苦しそうにしているバレンアに、ミーモとリキリョウが駆けてくる。
「おい、大丈夫か!?」
「大丈夫だよ……これくらい……」
再び立ち上がって、バレンアはランスの方に向かって歩いていく。
リキリョウはそれを見ているだけだった。
「……本当にこれでいいと思う、リキリョウ?」
「ミーモ……」
「だってこれじゃあ、今までの私たちと変わらない! ただ弱くて、見てるだけで……」
「…………」
ミーモは泣きそうな顔で言った。それと同時に、リキリョウも頭の中で色んなことを考えた。
――ロサイルたちは、自分のやるべきことのために、自分の全て、命までをもかけている。俺らはどうだった? 復讐なんて、いいことではもちろんなかったが、命までかけたか? 死んでも成し遂げようと思ったか? 思っていなかった。だって俺たちは弱かったから。人に頼ってばかりいるやつらだから。今だって、ただ怖くてビクビクしているだけ。仲間のヴァームは、命をかけている。仲間のために。だったら……
リキリョウは、ミーモのほうを見て、力強く言った。
「命……かけてみるか」
「うん!」
2人はランスの方へ向かって歩き出した……
*
一方、炎の流星群の被害を受け、ほぼ生存不可能なロサイルは、何とか生きていた。(ヴァーム調べ)
本人曰く、炎属性だったから、炎は左手に最大限吸収されたので、威力が落ちた、そう言っていた。
だが、とても動ける状態ではなく、ただ地面に倒れているだけだった。
そこに、あいつがやってくる。
「哀れだな。こんな形で最後を迎えるとは」
「…………」
レミーは剣の先をロサイルに向けている。それを落とされたら、もうロサイルの命はない。
「私はお前を確実に殺す義務がある。お前には引っ込んでもらうぞ。移動封印!」
すると、ヴァームの動きも封じられてしまった。まさに絶体絶命だ。
「さらばだ、エグレサッタ村の少年……」
レミーは剣を勢いよく振り下ろした……
次話もバレンア&ロサイルです。
次々話からウィニングウィンゲンツの方をやっていきます。