第58話 懐かしい顔
険しい雪道を何日間か歩き、ついに北デューナまであと4kmとなった。ファスニード大陸大戦もあと1週間で始まる。少しゆっくりめのペースでやってきた2人だった。
「ふぅ~、もう少しだねロサイル」
「そうだな。ここまで大変だとは思わなかった」
かれこれ2人は1週間歩き続けている。そのうえウィニングウィンゲンツと北デューナの間に宿や道の駅は1つしかなく、体力はもう限界寸前だった。とりあえずふかふかのベッドで寝たかった。まるで大雨の日の学校の帰り道だ。
そのままロサイルたちは止まることなく北デューナを目指して歩いていった……
*
「やっと……着いた~!」
「はぁ……疲れた~」
やっと北デューナに到着したロサイルとバレンア。これでやっと休憩できる……とは2人とも思っていなかった。
なんせここは教皇軍の者たちがいっぱい集う場所。1番計画の邪魔をしているロサイルたちを泊まらせたり、商品に触れさせたりはしないはずだ。北デューナは入り口付近は警備があまりしっかりしていないのであっさり入ることは出来た。問題はここからどうするかだ。
「なぁ、バレンア。マジックでここに宿を作ってくれ」
「ごめん。僕そこまで出来たマジシャンじゃない」
バレンアのマジックでもどうにも出来なかった。出るものといえばペットの鳩くらいだ。
「あと1週間何して過ごす?」
「ん~、ずっと僕のマジックでも見てる?」
「そんな糞つまんない生活嫌だ」
しばらく沈黙が続いた。
結局その日は北デューナから出て、門の近くで野宿をした。
*
翌日、再び北デューナに入り込んだロサイルとバレンア。といってももちろんやる事がない。ということでそこら辺を、ぴったん〇かん〇ん並にぶらぶらしてると……
「ん? お前ロサイルじゃないか?」
1人の男性が声をかけた。もちろん見覚えのある男性だ。ペットの犬もロサイルに挨拶をする。その男性は……
「もしかして……ヴァームか?」
「そうそう。ガルナタスのヴァーム」
何と北デューナにはガルナタスで戦ったことのあるヴァームがいた。すごく弱かったのを覚えている。あれからも随分と日が経ったものだ。
となると、もちろんバレンアはヴァームの事をしらない。バレンアはロサイルとヴァームが話しているときに、(何かバームクーヘンみたいな名前だな)と思っていた。
「それで、そっちの人は?」
ヴァームがバレンアに問いだす。
「僕はバレンア=ウルビーノです」
「うそ!? あのバレンア!?」
ヴァームはバレンアのことを知っているようだ。どうやらヴァームの仲間のミーモがバレンアの大ファンらしい。可愛い顔をしていると。ちなみにマジックより顔を見ている人だ。
「それでロサイルたちは何をしてるの?」
「それがな……俺たち教皇側からしたら思いっきり指名手配犯なんだ。だからさ、泊まることも出来ないし、遊ぶことも出来ないんだよ」
「別に遊ばなくてもいいんだけどね」
事を説明したロサイル。そしたらヴァームが「だったら家に来いよ」と言った。もちろんお言葉に甘えさせてもらい、ファスニード大陸大戦まで泊まらせてもらった。
そしてファスニード大陸大戦の日がやってくる……
次話、ついにファスニード大陸大戦開幕!
北デューナから戦争は始まります!