第53話 祖父
新章です。
「ここだよ」
ファルダンについて行った場所は何の変哲もない普通の家だった。もちろんここにロサイルのおじいちゃん、ヒョウルスが住んでいるのだが。
「ヒョウルスさん、入りますよ~」
ファルダンはそう言ってヒョウルスの家の中に入っていった。ロサイルたちもそれに続く。
家に入るとヒョウルスが暖炉の前にある揺り椅子に座りながらコーヒーを飲んでいる。外の寒さとは変わってとても温かい部屋だ。
「おお、ファルダンか。……そっちの3人は?」
「私はエリスと申します」
「僕はバレンアです」
バレンアの名前を聞いて、ヒョウルスは驚いた表情を浮かべた
「君、バレンア君なのか!? 大きくなったな~」
ヒョウルスは昔エグレサッタ村に住んでいたので、ロサイルといつも一緒に遊んでいたのでもちろん知っているし、遊び相手になったこともあったのだ。異端審問官の1件で死んだと思っていたがマジシャンとしての活躍を知ったときはとてもホッとしたそうだ。
そして、ヒョウルスはロサイルのほうを見た。
「お前も大きくなったなロサイル……お前はわしの顔なんて覚えてないだろう?」
「悪いけどな」
ロサイルの声を聞いた途端にヒョウルスは涙を浮かべた。バレンアが無事なのは前々からテレビで分かったが、ロサイルの安全は今会うまで分からなかった。ロサイルが生きているか死んでいるか、それでずっと悩んだ日もあったそうだ。無事でよかったという涙なのだろう。
「そちらのお嬢さんは一緒に旅をしている人か?」
「はい」
「ロサイルがお世話になっているな」
「いえいえ」
こうして一通り自己紹介は終わった。
「ところで何の用件でここに来たんだ?」
ヒョウルスに会いに来たのはたまたま着地した場所がウィニングウィンゲンツが近かったというのがある。どうせそこに行くならヒョウルスに会おうと思ったのもある。でもロサイルが今1番聞きたいことが1つあった。
「俺たち、教皇と戦って世界を変えようと思うんだ。それで、今のままじゃ教皇どころか、異端審問官にすら勝てない。俺たちの特訓に付き合ってほしいんだ」
ヒョウルスは色々な戦闘の仕方を知っている。炎の手、陰陽師などもだ。教皇に勝つにはそれしかないとロサイルは考えたのだろう。
「いいだろう。ただし、生半可な気持ちではかかるなよ」
「分かったよ」
こうして最後の特訓が始まる。
*
「ついたぞ~! ウィニングウィンゲンツ!」
そのころリラはようやくウィニングウィンゲンツに到着した。市役所に向かい、ヒョウルスの家を教えてもらい、ヒョウルスの家に向かった。
次話、特訓開始!